上 下
4 / 24
アリス、不思議な世界に落ちる。

Ⅲ エルティナお姉ちゃん大暴走

しおりを挟む
「はぁ……はぁ……また、死ぬかと、思った……」

 こちょこちょされて死ぬとか。
 ちょっとこの体は敏感でさ……あ、変な意味じゃなくてね? そういう意味でも敏感なのかもしれないけど。

 笑いすぎて息が出来なかったもん。フィリスまで混ざってさぁ……途中からちょっと変な声になってたような? こう、艶っぽい? くすぐったいんじゃなくて変な感じだったし。

「さっきの声って何だったのかな? ねえ、エルティナさんとフィリスは分かる?」

「へ? ……そ、その、エルティナに聞いてあげて? お姉ちゃんなら妹に〝そういう事〟を教えるのも大事でしょ?」

「えっ……そ、それは卑怯じゃないですか?」

「任せたわよ、エルティナ」

 キリッとした顔でエルティナさんの肩に手を置く。いや、うん、そのやり取りで大体分かったけどさ、全部押し付けるのはどうなの?
 まあ、どんな説明をするのか気になるから分かったことは言わないけどね。……はい、私も同罪でした。

「エルティナさん、教えて?」

「……あの、ですね、気持ちいいと、出ちゃうんです」

「気持ちいいっていうのは、具体的にどんなタイプの?」

「ど、どんな? ……エッチな、感じですよ」

 そのくらいで赤くなること無いのに。
 だけど楽しいからやめません。凄く楽しい。

「ふーん、エルティナさんは経験ある?」

「経験っ!? それ、は……一人で、なら」

 一人エッチの経験があるそうです。
 そっか、王女様でも女の子だもんね。多感な時期だもの、仕方ないよ。うんうん。……全部小声で話してるから、フィリスはニヤニヤとエルティナさんを見てるだけ。
 これを知られたら軽蔑されそう。

 それにしても、女の子としての経験はするべき――気持ち悪っ。

「……女の子になっても、男の人としたいとは思わないや」

「あ、アリス、それって……?」

「うん、普通に女の子が好き」

「そうなんですかっ!?」

 そうなんです。ただ、知ってもなお離れないエルティナお姉様には驚き。優しいね。フィリスなんて……同じ位置だった。おかしいなぁ、危機感っていうものが無いの? 全く……。

「ありがと、フィリス、エルティナさん」

「どういたしまして? 何の話か分からないけれど……」

「………」

「えっと、エルティナさん? どうして黙ってるの?」

 じーっと見詰められて困った。
 嫌ではないんだけどね? さすがに照れるというか、チョロインな私は即落ちといいますか……

「お姉ちゃん、って呼んで貰えませんか?」

「え……それは、ちょっと恥ずかしいかな……」

「そ、そうですよね? ごめんなさい!」

 ああっ! 口調も崩れてきて心を開いてくれてるのに、悲しそうな顔を……よ、よし。やるよ、私は。

「お姉……ちゃん……」

「っっ!?」

 うぅ、思った以上に恥ずかしい……!
 どうしよ、エルティナさんを見れない。いやね、元の歳だと同い歳くらいなんだもの。恥ずかしいでしょ?
 でもなぁ、エルティナさんが喜んでるから……

「はいっ、お姉ちゃんですよっ♪」

 ほら。「私、嬉しいです!」という感情を、私に抱きつく事で示してるもん。驚きの大きさを誇る双丘に包まれる顔、やばいです。何がやばいって、やばいとしか言い様が無くなるくらいにやばい双丘で……。
 何回やばいって言ったかな?

「お、お姉ちゃん、あのね、私が女の子好きだって忘れた?」

「大丈夫、お姉ちゃんとして頑張りますから……!」

「エルティナ、落ち着きなさい。好きな人とか居るでしょ? 妹に捧げて良いわけ?」

「好きな人なんて居ません。強いて言うならアリスちゃんが大好きになりました。ええ、妹の為ならこの身を捧げて見せましょう……!」

「常識人だと思ってたのに……」

 やめたげて、フィリス。シスコン(?)を拗らせてるだけだと思うから。たぶん、妹が居なかった反動じゃない? 暫くしたら普通になる……閃いた!

(フィリス、いい事思い付いたよ)

(何でもいいから試してちょうだい)

 長年の付き合いでアイコンタクトが出来るようになっている私達は、言葉を発さず考えている事を理解し合った。

「お姉ちゃん、まだ説明することあるよね?」

「ありますけど……アリスとお話したいですし」

 そう言ってくれるのは嬉しい。
 でもね、色々と困っちゃう。私と言うより、お姉ちゃんの私生活に影響が出そう。王女様としての大事な仕事中に抜け出してきたり……わお、本当にやりそうで怖い。

 だから、

「ちゃんとしてくれないと嫌いにな――」

「そんな酷い事言わないで下さいっ! 私はアリスと一緒に居ることも許されないんですかっ!?」

「だから、ちゃんとしてくれれば……」

 足りない……何かもう一押し必要だね。
 というかさ、キャラ変わりすぎじゃない? これはこれでいいキャラしてると思うけど……

「あ、ねえねえ、お姉ちゃんがちゃんとしてくれたら、何でも一つお願いを聞いてあげるっていうのは?」

「……何でも、良いんですか?」

「まあ、お姉ちゃんが変な事をさせるとは思わないし」

 男の人と寝て下さい、とか言わないのは分かってるもん。どちらかと言えば、『男の人と話さないで下さい』なら言いそう。

「約束、出来ますか?」

「う、うん」

 その念押しは何……?

『契約が成立しました』

「ふぁ? け、契約?」

 何それ、と思いつつ開く。

『契約···エルティナが本日の役目を果たした瞬間から、アリスへの〝お願い〟が可能になる。

 ・ペナルティ···無し。
 ・お願いの制限···無し。
 ・達成条件···アリスとフィリスに説明を終えた後、浴場へ案内、アルティアとの謁見、部屋の案内、を順番に行うこと。』

「今日の予定を知ってしまった……」

「便利ね……普通に地球より発達してるじゃないの」

「ホントだねぇ……」

 遠い目をして「ふっ」と笑うフィリス。
 それと、お姉ちゃん。どうして「何でも……うふふ」って悪戯っ子の顔をしながら笑ってるの? ちょっぴり怖い。大丈夫、お姉ちゃんは酷いことなんてしないよね!

「では、ユニオンの説明から始めましょうか」

「「あ、はい」」

 切り替えは早いんだね。切り替えは。
 ダメなお姉ちゃんっていうのもありなんだけどさ……王女様はそれじゃまずいから。

「エルティナさん、この『種族』『体質』『姫能』っていうのはなに?」

「お姉ちゃんって呼んで貰えないんですか……?」

「お姉ちゃん「はいっ♪」……って言うとこうなるかなって思ったから、大事なことが終わるまではエルティナさんね」

 今度は、しょんぼりした感じで「はい……」って返事するお姉ちゃん。正直に言うと可愛い。
 それからは、最初の様にしっかり話すお姉ちゃん。きっと、妹関連で暴走するだけで、これが本来のお姉ちゃんなんだろうなぁ……。

 頑張れ、お姉ちゃん!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

達也の女体化事件

愛莉
ファンタジー
21歳実家暮らしのf蘭大学生達也は、朝起きると、股間だけが女性化していて、、!子宮まで形成されていた!?

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…

ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。 しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。 気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

処理中です...