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3.兄妹か姉妹か
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「ん……」
朝、やたらとくすぐったくて目が覚める。
外は薄らと明るいし、4月下旬の今なら4時くらいかな。魔法が解けたのか体の見た目と意識が女の子の方なので、さくらが来る前に起きれてよかった。
……あれ? なんか、暖かいような……。
「っ!?」
毛布を捲った直後、嫌な汗が出てくる。
そこに居たのはさくら。鑑定の添い寝がどうこうというのが証明されたのはいいとして……いや良くは無いけど、問題はいつから居たのか。
今思えば、体調が悪かったとは言え幻想魔法の効果時間も確かめなかったのはありえない。
辛うじてアイテムは拡張鞄に入れてあるので、この姿さえ見られてなければ大丈夫。見てないよね? ね?
「えへ……お兄、ちゃん……ふふ」
ビクッとしたけど、ただの寝言っぽい。
相変わらず、血が繋がっているとは思えない程可愛いし、やたらといい匂いもする。そんな妹がわたしを呼びながら頬を緩ませているのは、嬉しくもあるけど、ブラコンなのを考えると微妙に直視出来なくなる。
でも、可愛いから頭を撫でるくらいはいいよね。
さらさらの髪を撫でて、柔らかいほっぺをつんつんする。けれど、ちょっと顔を顰めたさくらが手を掴んで自分の頬に導く。
甘えん坊で可愛い妹。
けど、さくらが好きなのは〝お兄ちゃん〟のわたし。
「今のわたしじゃ、きっと嫌われちゃう……バレる前に一人暮らしでも始めようかなぁ……」
何気なく呟いたその言葉に、
「――だ、ダメっ! 居なくならないで!」
力強い返事があった。
「……え? さ、さくら、起きて――」
「嫌いになったりしないっ! 大好きだから出ていかないでっ……! お願いだからぁっ……!」
「わ、分かったから落ち着いて、ね? 出ていかないから……」
泣き始めるさくらを慌てて宥めるわたし。
一人暮らしをするだけでそんなに泣かなくても……。
「……お兄ちゃん、ずっと一緒……? さくらのこと一生見守ってくれる……?」
やばい、さくらが幼児退行してる。
そのくせ言葉の中身が重い。
「い、一生はさすがに……」
「……ぐすっ」
「さ、さくらだって恋人が出来たり結婚したりするでしょ? そしたら一緒に住むわけにもいかないし……」
「結婚なんてしないもん! お兄ちゃんが居れば彼氏なんて必要ないもんっ!」
「そ、そっか……じゃあ、さくらの気が変わらなかったらずっと一緒に居てあげる。それでいい?」
「うんっ!」
さくらがわたしの胸に顔を埋める。
子供とする感じで約束しちゃったけど、これは色々と大丈夫なのかな。わたしが結婚しても一緒に住むくらいは良いとして、さくらが結婚しないのはわたしのため。
さくらがモテないはずはないし、その幸せを捨ててまでわたしがいいって事なんだろうけど。出来ればさくらには普通の幸せを掴んで欲しい。
……さくらが彼氏を連れてくるのもやだなぁ。
そんなことを考えていると、不意にさくらが震え出す。
「さくら、どうかしたの?」
「……お、お兄ちゃん、これ、夢じゃないの?」
「ん? ……うん、多分ね」
「ゆ、夢だと思って、話してたのにぃ……」
「あ~……」
さくらが腕の中で縮こまる。
夢だと思ってぶちまけたのに、実は現実でしたとか嫌すぎるドッキリだよ。気持ちはよくわかるから余計なことは言わないようにしないと。
「……本当は、そうやって甘えたかったんだ?」
しまった……意地悪したくてつい。
「お兄ちゃんの馬鹿……」
「照れなくてもいいのに。こっそり忍び込んで寝ちゃうくらいなら、毎晩一緒に寝てあげようか?」
ぽん、とわたしの胸を叩き、揺れたのをみて微妙な顔をするさくら。わたしも変な気分です。
そんな彼女に優しく囁くと……
「……うん」
「……えっと、本当に?」
「お兄ちゃんが言ったんだから、ちゃんと守ってよ」
「は、はい、頑張ります……?」
意地悪をするつもりが、逆にくすっと笑われてしまった。もしかしたら、この見た目がそういうことに対するハードルを下げてるのかも。
いつもだったら、「お兄ちゃんの馬鹿ぁぁぁぁっ!」と叫びながら自分の部屋に戻っているはずだし。
「……尻尾、触ってもいい?」
「どうしてもって言うなら……」
「へぇ~? その割に、お兄ちゃんの尻尾は嬉しそうに揺れてるけど。本当は触ってもらえるの嬉しいんでしょ? 素直になっちゃえば?」
「うぅ……妹のくせに」
嬉しくないと言ったら嘘になる。
今はさくらの方が身長が高いので、わたしの狐耳に囁くとまるで妹(わたし)が姉(さくら)に甘えているかのような構図になってしまう。
それが恥ずかしくて、なのに頭を撫でられるのが心地いい。
「妹は、お兄ちゃんの弱点を見抜いてるものなんですよ~だ。ふふっ」
勝ち誇ってるのがちょっとむかつく。
でも、この際シスコンだと認めて甘えてしまうのもそれはそれで楽しそうかもしれない。
「じゃ、じゃあ……お姉、ちゃん?」
「ふふ……なぁに、時雨?」
「……尻尾、触って」
「うん」
この後、めちゃくちゃもふもふされた。
朝、やたらとくすぐったくて目が覚める。
外は薄らと明るいし、4月下旬の今なら4時くらいかな。魔法が解けたのか体の見た目と意識が女の子の方なので、さくらが来る前に起きれてよかった。
……あれ? なんか、暖かいような……。
「っ!?」
毛布を捲った直後、嫌な汗が出てくる。
そこに居たのはさくら。鑑定の添い寝がどうこうというのが証明されたのはいいとして……いや良くは無いけど、問題はいつから居たのか。
今思えば、体調が悪かったとは言え幻想魔法の効果時間も確かめなかったのはありえない。
辛うじてアイテムは拡張鞄に入れてあるので、この姿さえ見られてなければ大丈夫。見てないよね? ね?
「えへ……お兄、ちゃん……ふふ」
ビクッとしたけど、ただの寝言っぽい。
相変わらず、血が繋がっているとは思えない程可愛いし、やたらといい匂いもする。そんな妹がわたしを呼びながら頬を緩ませているのは、嬉しくもあるけど、ブラコンなのを考えると微妙に直視出来なくなる。
でも、可愛いから頭を撫でるくらいはいいよね。
さらさらの髪を撫でて、柔らかいほっぺをつんつんする。けれど、ちょっと顔を顰めたさくらが手を掴んで自分の頬に導く。
甘えん坊で可愛い妹。
けど、さくらが好きなのは〝お兄ちゃん〟のわたし。
「今のわたしじゃ、きっと嫌われちゃう……バレる前に一人暮らしでも始めようかなぁ……」
何気なく呟いたその言葉に、
「――だ、ダメっ! 居なくならないで!」
力強い返事があった。
「……え? さ、さくら、起きて――」
「嫌いになったりしないっ! 大好きだから出ていかないでっ……! お願いだからぁっ……!」
「わ、分かったから落ち着いて、ね? 出ていかないから……」
泣き始めるさくらを慌てて宥めるわたし。
一人暮らしをするだけでそんなに泣かなくても……。
「……お兄ちゃん、ずっと一緒……? さくらのこと一生見守ってくれる……?」
やばい、さくらが幼児退行してる。
そのくせ言葉の中身が重い。
「い、一生はさすがに……」
「……ぐすっ」
「さ、さくらだって恋人が出来たり結婚したりするでしょ? そしたら一緒に住むわけにもいかないし……」
「結婚なんてしないもん! お兄ちゃんが居れば彼氏なんて必要ないもんっ!」
「そ、そっか……じゃあ、さくらの気が変わらなかったらずっと一緒に居てあげる。それでいい?」
「うんっ!」
さくらがわたしの胸に顔を埋める。
子供とする感じで約束しちゃったけど、これは色々と大丈夫なのかな。わたしが結婚しても一緒に住むくらいは良いとして、さくらが結婚しないのはわたしのため。
さくらがモテないはずはないし、その幸せを捨ててまでわたしがいいって事なんだろうけど。出来ればさくらには普通の幸せを掴んで欲しい。
……さくらが彼氏を連れてくるのもやだなぁ。
そんなことを考えていると、不意にさくらが震え出す。
「さくら、どうかしたの?」
「……お、お兄ちゃん、これ、夢じゃないの?」
「ん? ……うん、多分ね」
「ゆ、夢だと思って、話してたのにぃ……」
「あ~……」
さくらが腕の中で縮こまる。
夢だと思ってぶちまけたのに、実は現実でしたとか嫌すぎるドッキリだよ。気持ちはよくわかるから余計なことは言わないようにしないと。
「……本当は、そうやって甘えたかったんだ?」
しまった……意地悪したくてつい。
「お兄ちゃんの馬鹿……」
「照れなくてもいいのに。こっそり忍び込んで寝ちゃうくらいなら、毎晩一緒に寝てあげようか?」
ぽん、とわたしの胸を叩き、揺れたのをみて微妙な顔をするさくら。わたしも変な気分です。
そんな彼女に優しく囁くと……
「……うん」
「……えっと、本当に?」
「お兄ちゃんが言ったんだから、ちゃんと守ってよ」
「は、はい、頑張ります……?」
意地悪をするつもりが、逆にくすっと笑われてしまった。もしかしたら、この見た目がそういうことに対するハードルを下げてるのかも。
いつもだったら、「お兄ちゃんの馬鹿ぁぁぁぁっ!」と叫びながら自分の部屋に戻っているはずだし。
「……尻尾、触ってもいい?」
「どうしてもって言うなら……」
「へぇ~? その割に、お兄ちゃんの尻尾は嬉しそうに揺れてるけど。本当は触ってもらえるの嬉しいんでしょ? 素直になっちゃえば?」
「うぅ……妹のくせに」
嬉しくないと言ったら嘘になる。
今はさくらの方が身長が高いので、わたしの狐耳に囁くとまるで妹(わたし)が姉(さくら)に甘えているかのような構図になってしまう。
それが恥ずかしくて、なのに頭を撫でられるのが心地いい。
「妹は、お兄ちゃんの弱点を見抜いてるものなんですよ~だ。ふふっ」
勝ち誇ってるのがちょっとむかつく。
でも、この際シスコンだと認めて甘えてしまうのもそれはそれで楽しそうかもしれない。
「じゃ、じゃあ……お姉、ちゃん?」
「ふふ……なぁに、時雨?」
「……尻尾、触って」
「うん」
この後、めちゃくちゃもふもふされた。
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