14 / 14
閑話
義弟の昔話と思い
しおりを挟む突然だけど俺の兄さんはすごく可愛い。
えっ?どんなところがだって?
兄さんの全部だよ。
今では大好きって言葉では言い表せないくらい大切になったけど昔の俺は兄さんが嫌いだった。
これはちょっと僕の昔話になる。
実は俺と父さんは血が繋がっていない。
本当の親…母親は俺を産んですぐ死んでしまった。
そのせいだろうか。父親とは呼びたくないが俺の本当の父親は俺を毎日殴ったり蹴ったりしてきた。ひどい時はタバコの火を押し付けてきたりした。
だけど俺が五歳ぐらいになった時、あいつは事故で死んだ。そっからは母方の身内だがなんだか知らないがたらい回し状態。その時点で俺は人間不信になっていた。
今の父さんに出会ったのは俺が小学二年の頃かな。あいつの友人だった父さんを俺は最初信じられなかったけど、父さんはカウンセラーの仕事をしていて人間不信になった俺でもすごく話しやすかった。
そんな父さんとの二人暮らしが慣れた時に父さんは結婚の話を俺にしてきた。俺は正直嫌だった。
だってやっと安心して暮らせると思ったのにそこにまた知らない人が入ってくる。それだけでもう僕にとっては恐怖だった。
だけど父さんが紹介した新しい母さんとなる人は優しそうで紹介している時、父さんはすごく幸せそうな顔をしていた。
父さんに恩しかない俺には自分で拒否権などないと思っ た。
一緒に暮らすことになってから新しい母さんには子供が二人いることがわかった。僕と同い年のと一個上のやつ。
正直、仲良くしたくなかった。子供は何でもかんでも聞きたがる。
父さんと家族なのに本当の父さんじゃないんでしょ?とかタバコの火傷の後をなにこれ変なのと言ってくる。
人の気も知らないくせに人の心を抉るようなことを言ってくる。
俺の周りはそんな奴ばっかりだった。
だから一緒に暮らしてからも父さんの前ではきちんとしたが、父さんがいない時は基本突っぱねてた。
今思うとその頃の俺を引っ叩きたいけどね。
初めて会った時も兄さんは
「初めまして!!僕さっきも言ったけど桜木律って言うんだ!!よろしくねっ!」
と言われても僕は無視した。
さっき父さんたちがいる時に自己紹介したからいいだろと思った。
兄さんは少し戸惑ったような顔をしていた。俺はその時点で母親とかに言うかなと言われても思ったけど俺に話し続ける。
「名前蘭っていうんだね。いい名前だね!そういえばお花でも蘭って言う名前のがあるんだけどね、すごく綺麗なんだよ!!」
あいつが付けた名前の話をされた俺はイライラして叩いてしまう。
あっ、泣くかなと思った。
だけど兄さんは泣かなかった。
でも涙目だった
「僕は蘭のお兄さんになるんだから泣かないんだ」
だって。
今思うとこれはもう尊いの一言に尽きる。涙目の兄さん…可愛かった。
俺はそんな言葉を信じられずにまた無視をした。一緒に暮らすようになってからも兄さんはめげずに話しかけてくる。その度に俺は無視をした。
でもある日パッと兄さんは話しかけてこなくなった。
話しかけてこなくなった理由はわからないけど俺にとってはどうでもよかった。
父さんの前では猫を被るということが日常になりつつあっだけど、環境が変わったせいかストレスで昔よりは少なくなったが俺はまた悪夢を見る頻度が増えてきた。
でも悪夢を見る夜はだいたい誰かが頭を撫でて背中を摩ってくれたから悪夢を見なくなったんだ。
その時は父さんがしてくれたんだろうと思っていた。
で父さんにありがとうって言ったんだけど、なんのこと?と言われた。
だから気になって一回狸寝入りをしたら頭を撫でてくれてたのは兄さんだってわかった。
その手はいつものようにすごく優しくて暖かかった。俺は父さん以外の人に頭を撫でられたことなかったからね...。
あと兄さんはタバコの火傷の跡を見ても何も言ってこなかった。だけど俺がいないところで泣いてくれていた。
あぁ、俺の為に泣いてくれてるんだなって俺は嬉しかった。
それがわかってからは少しずつ兄さんと話せるようになって義母さんとも杏ちゃんとも話せるようになった。
だから兄さんがいなかったら俺は変われなかったんだ。
兄さんがいたから俺は今幸せなんだ。
今では兄さんの写真集を作ろうと思ってるよだけどどうかな?と悩んでる。
まぁ、ちょっと今はその他に悩んでることがあるんだよね。
はぁー、もう一年早く産まれてればなぁ。
でも弟ポジションも捨てがたいから、もうちょいこのままの生活で。
だけど早く兄さんを俺のものだけにしたいな。
涙目の兄さんが一番可愛い。
俺のためだけに泣いてくれる兄さん。
今度はベッドの上で鳴かせたいな...。
高校の入学式に行った兄さんの帰りを待つそんな義弟の昔話と思い。
0
お気に入りに追加
88
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
王道にはしたくないので
八瑠璃
BL
国中殆どの金持ちの子息のみが通う、小中高一貫の超名門マンモス校〈朱鷺学園〉
幼少の頃からそこに通い、能力を高め他を率いてきた生徒会長こと鷹官 仁。前世知識から得た何れ来るとも知れぬ転校生に、平穏な日々と将来を潰されない為に日々努力を怠らず理想の会長となるべく努めてきた仁だったが、少々やり過ぎなせいでいつの間にか大変なことになっていた_____。
これは、やりすぎちまった超絶カリスマ生徒会長とそんな彼の周囲のお話である。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
攻略対象者やメインキャラクター達がモブの僕に構うせいでゲーム主人公(ユーザー)達から目の敵にされています。
慎
BL
───…ログインしました。
無機質な音声と共に目を開けると、未知なる世界… 否、何度も見たことがある乙女ゲームの世界にいた。
そもそも何故こうなったのか…。経緯は人工頭脳とそのテクノロジー技術を使った仮想現実アトラクション体感型MMORPGのV Rゲームを開発し、ユーザーに提供していたのだけど、ある日バグが起きる───。それも、ウィルスに侵されバグが起きた人工頭脳により、ゲームのユーザーが現実世界に戻れなくなった。否、人質となってしまい、会社の命運と彼らの解放を掛けてゲームを作りストーリーと設定、筋書きを熟知している僕が中からバグを見つけ対応することになったけど…
ゲームさながら主人公を楽しんでもらってるユーザーたちに変に見つかって騒がれるのも面倒だからと、ゲーム案内人を使って、モブの配役に着いたはずが・・・
『これはなかなか… 面白い方ですね。正直、悪魔が勇者とか神子とか聖女とかを狙うだなんてベタすぎてつまらないと思っていましたが、案外、貴方のほうが楽しめそうですね』
「は…!?いや、待って待って!!僕、モブだからッッそれ、主人公とかヒロインの役目!!」
本来、主人公や聖女、ヒロインを襲撃するはずの上級悪魔が… なぜに、モブの僕に構う!?そこは絡まないでくださいっっ!!
『……また、お一人なんですか?』
なぜ、人間族を毛嫌いしているエルフ族の先代魔王様と会うんですかね…!?
『ハァ、子供が… 無茶をしないでください』
なぜ、隠しキャラのあなたが目の前にいるんですか!!!っていうか、こう見えて既に成人してるんですがッ!
「…ちょっと待って!!なんか、おかしい!主人公たちはあっっち!!!僕、モブなんで…!!」
ただでさえ、コミュ症で人と関わりたくないのに、バグを見つけてサクッと直す否、倒したら終わりだと思ってたのに… 自分でも気づかないうちにメインキャラクターたちに囲われ、ユーザー否、主人公たちからは睨まれ…
「僕、モブなんだけど」
ん゙ん゙ッ!?……あれ?もしかして、バレてる!?待って待って!!!ちょっ、と…待ってッ!?僕、モブ!!主人公あっち!!!
───だけど、これはまだ… ほんの序の口に過ぎなかった。
目覚めたそこはBLゲームの中だった。
慎
BL
ーーパッパー!!
キキーッ! …ドンッ!!
鳴り響くトラックのクラクションと闇夜を一点だけ照らすヘッドライト‥
身体が曲線を描いて宙に浮く…
全ての景色がスローモーションで… 全身を襲う痛みと共に訪れた闇は変に心地よくて、目を開けたらそこは――‥
『ぇ゙ッ・・・ ここ、どこ!?』
異世界だった。
否、
腐女子だった姉ちゃんが愛用していた『ファンタジア王国と精霊の愛し子』とかいう… なんとも最悪なことに乙女ゲームは乙女ゲームでも… BLゲームの世界だった。
真冬の痛悔
白鳩 唯斗
BL
闇を抱えた王道学園の生徒会長、東雲真冬は、完璧王子と呼ばれ、真面目に日々を送っていた。
ある日、王道転校生が訪れ、真冬の生活は狂っていく。
主人公嫌われでも無ければ、生徒会に裏切られる様な話でもありません。
むしろその逆と言いますか·····逆王道?的な感じです。
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる