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6章 武者首
球技大会
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ピーッとホイスルの音が公民館の体育館の中で響き、バレーの試合は一年と二年は終了した。
と、言っても女子だけである。男子はまだ続いていて、男らしく「おらぁ!」と掛け声が上がっている。
バレーのルールは先に二十五点入れた方の勝ちだから、点数は二十三対二十四と男子は接戦を繰り広げているようだ。
「あーっ、疲れたぁ~」
「でもこれで一年生は優勝だし、先生がジュースを奢ってくれるらしいよ」
「マジでー。じゃあ翼を授けてくれるお高いエネルギーチャージを注文しちゃおう!」
試合の終わった女子生徒達は口々にはしゃいだ声をあげ、コートから出て行った。
体育館のベンチでタオルを頭から被って、わたしと千佳はぐったりお疲れモードに突入。
三年から一年のクラス別の男女別で行われている球技大会なのだけど、三年生は受験もあって手を抜きまくりで、必死なのは一年生と二年生だけだったのもある。
しかも担任教師達が賭けをしているようで、生徒にも「勝てばジュースを奢ってやるから!」と交渉してきたぐらい。
ジュースごときで……とは思うものの、ついやる気を出してしまった千佳に釣られて皆引きずられるように白熱してしまったのだ。
「美空とホシちゃんお疲れー」
「お疲れ様でーす」
「マジで二人共、バレー部入りなって!」
「嫌でーす」
「わたしもパス。帰宅部で充分です」
活躍し過ぎたせいか、千佳とわたしは二年生のバレー部から勧誘を受けたりしている。
わたしは家に帰ったらバイトという名の飾り紐づくりがあるし、千佳も修行があるから二人共それどころではない。
千佳も大分能力のコントロールを覚えたけど、今日のバレーだってギリギリ合格点をコゲツから貰ったぐらいだから、部活動中に三灯天神の能力が暴走したら目も当てられない訳だ。
「ホシちゃんが意外と動けるのにビックリしたよ」
「んー、千佳に釣られただけですよ」
「えっへん。千佳さんを褒めたたえよー」
「千佳、調子に乗らないの」
両手で腰に手を当てた千佳を笑って窘める。
わたしが多少動けるのは、花嫁修業で色々やらされた成果でもあるから、意外とあのきついだけの花嫁修業も役に立たなかったわけでは無い。
ただわたしは瞬発性はあるんだけどスタミナがすぐに尽きてしまうから、こうした試合はサッと終わらないと後々ばててしまって、今まさにスタミナ切れを起こしているのである。
「美空くん、一くん。お疲れ様でした」
「あっ、天草先生~。あたし達で儲けられましたか?」
ニヤニヤと千佳が天草先生に詰め寄ると、先生はいつも通りの気弱な笑みを返してくるだけだ。
きっとそれなりに他の先生から巻き上げることに成功したのだろう。
なんせ、千佳の実力は一人でポイント稼ぎできるほどだから、それを知っている天草先生には有利な賭けだったに違いない。
千佳がマークされている時に他の子も動きやすかったから、千佳様様と言える。
「少し二人ともいいですか? 手伝って欲しいことがありまして」
「えーっ。じゃあジュース奢って下さいよ」
「それは担任の教師から奢ってもらってください」
「天草先生のケチぃー」
手伝いと言われて文句を垂れつつも天草先生についていくと、人気の居ない公民館の図書室前でキョウさんとダイさんが人型のまま姿を現した。
「二人ともどうしたの?」
「着替えを持ってきた」
「汗で冷えて風邪をひいてはいかんからな」
「あたしのもあるー! 学校から持ってきてくれたんだ。やった~学校にまた帰って解散って面倒だと思ってたんだよね」
「図書館の視聴覚室は開いていますから、中で着替えてきてください」
キョウさんとダイさんから着替えを受け取り、天草先生が見張りはしておくというので厚意に甘えて視聴覚室で着替えを済ませた。
二人にしては気が利いている……と言うより、十中八九コゲツが命令したのだろう。
着替えを終えて視聴覚室を出ると、試合の終わった生徒は帰り始めていた。
わたし達と同じように制服に着替えているのは二年生と三年生で、ジャージで学校に一度戻るのは一年生ぐらいだろう。
来年はきっとわたし達も制服を持ってくるに違いない。
だって、着替えが終わったら各自帰宅して良いのならば、このまま駅から帰る生徒や駅前で少し遊んで帰ろうという感じだろう。
「さて、我々も帰りましょうか」
「天草先生の車で?」
「残念ながら教師の立場上、女生徒を連れて帰ることは色々とあるので無理ですね」
「えーっ、疲れちゃったよー」
「そう言うと思いまして、コゲツ様が車で待っていますよ」
「コゲツが⁉」
「師匠が⁉」
ゆっくり着替えをしていたけど、待っているなら早く言ってほしいけど、これは天草先生の意地悪なのだろう。
仲が良いのか悪いのか分からないのが、コゲツと天草先生なのだ。
と、言っても女子だけである。男子はまだ続いていて、男らしく「おらぁ!」と掛け声が上がっている。
バレーのルールは先に二十五点入れた方の勝ちだから、点数は二十三対二十四と男子は接戦を繰り広げているようだ。
「あーっ、疲れたぁ~」
「でもこれで一年生は優勝だし、先生がジュースを奢ってくれるらしいよ」
「マジでー。じゃあ翼を授けてくれるお高いエネルギーチャージを注文しちゃおう!」
試合の終わった女子生徒達は口々にはしゃいだ声をあげ、コートから出て行った。
体育館のベンチでタオルを頭から被って、わたしと千佳はぐったりお疲れモードに突入。
三年から一年のクラス別の男女別で行われている球技大会なのだけど、三年生は受験もあって手を抜きまくりで、必死なのは一年生と二年生だけだったのもある。
しかも担任教師達が賭けをしているようで、生徒にも「勝てばジュースを奢ってやるから!」と交渉してきたぐらい。
ジュースごときで……とは思うものの、ついやる気を出してしまった千佳に釣られて皆引きずられるように白熱してしまったのだ。
「美空とホシちゃんお疲れー」
「お疲れ様でーす」
「マジで二人共、バレー部入りなって!」
「嫌でーす」
「わたしもパス。帰宅部で充分です」
活躍し過ぎたせいか、千佳とわたしは二年生のバレー部から勧誘を受けたりしている。
わたしは家に帰ったらバイトという名の飾り紐づくりがあるし、千佳も修行があるから二人共それどころではない。
千佳も大分能力のコントロールを覚えたけど、今日のバレーだってギリギリ合格点をコゲツから貰ったぐらいだから、部活動中に三灯天神の能力が暴走したら目も当てられない訳だ。
「ホシちゃんが意外と動けるのにビックリしたよ」
「んー、千佳に釣られただけですよ」
「えっへん。千佳さんを褒めたたえよー」
「千佳、調子に乗らないの」
両手で腰に手を当てた千佳を笑って窘める。
わたしが多少動けるのは、花嫁修業で色々やらされた成果でもあるから、意外とあのきついだけの花嫁修業も役に立たなかったわけでは無い。
ただわたしは瞬発性はあるんだけどスタミナがすぐに尽きてしまうから、こうした試合はサッと終わらないと後々ばててしまって、今まさにスタミナ切れを起こしているのである。
「美空くん、一くん。お疲れ様でした」
「あっ、天草先生~。あたし達で儲けられましたか?」
ニヤニヤと千佳が天草先生に詰め寄ると、先生はいつも通りの気弱な笑みを返してくるだけだ。
きっとそれなりに他の先生から巻き上げることに成功したのだろう。
なんせ、千佳の実力は一人でポイント稼ぎできるほどだから、それを知っている天草先生には有利な賭けだったに違いない。
千佳がマークされている時に他の子も動きやすかったから、千佳様様と言える。
「少し二人ともいいですか? 手伝って欲しいことがありまして」
「えーっ。じゃあジュース奢って下さいよ」
「それは担任の教師から奢ってもらってください」
「天草先生のケチぃー」
手伝いと言われて文句を垂れつつも天草先生についていくと、人気の居ない公民館の図書室前でキョウさんとダイさんが人型のまま姿を現した。
「二人ともどうしたの?」
「着替えを持ってきた」
「汗で冷えて風邪をひいてはいかんからな」
「あたしのもあるー! 学校から持ってきてくれたんだ。やった~学校にまた帰って解散って面倒だと思ってたんだよね」
「図書館の視聴覚室は開いていますから、中で着替えてきてください」
キョウさんとダイさんから着替えを受け取り、天草先生が見張りはしておくというので厚意に甘えて視聴覚室で着替えを済ませた。
二人にしては気が利いている……と言うより、十中八九コゲツが命令したのだろう。
着替えを終えて視聴覚室を出ると、試合の終わった生徒は帰り始めていた。
わたし達と同じように制服に着替えているのは二年生と三年生で、ジャージで学校に一度戻るのは一年生ぐらいだろう。
来年はきっとわたし達も制服を持ってくるに違いない。
だって、着替えが終わったら各自帰宅して良いのならば、このまま駅から帰る生徒や駅前で少し遊んで帰ろうという感じだろう。
「さて、我々も帰りましょうか」
「天草先生の車で?」
「残念ながら教師の立場上、女生徒を連れて帰ることは色々とあるので無理ですね」
「えーっ、疲れちゃったよー」
「そう言うと思いまして、コゲツ様が車で待っていますよ」
「コゲツが⁉」
「師匠が⁉」
ゆっくり着替えをしていたけど、待っているなら早く言ってほしいけど、これは天草先生の意地悪なのだろう。
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