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4章 言霊のカタチ
変質
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コゲツに怒られるのは決定事項のようなものだけど、二、三日は帰れないということだしその間にコゲツの気持ちが少しでも軟化してくれることを祈ろう。
千佳と別れて家に帰ると玄関には狼姿のキョウさんにダイさん、そして火車が出迎えてくれた。
「ただいまー。キョウさんにダイさんはコゲツから依頼されたことは終わったの?」
「うむ。我らは優秀だからな」
「しかしまぁ……ミカサは主を怒らせるような、何をしたんだ?」
「ニィー」
キョウさんとダイさんに左右から頭をポンポン叩かれて、わたしは頬を膨らませる。
ううっ、わたし達が悪いのは百も承知だけど、すでにキョウさんとダイさんの耳にまで話がいっているとは……
「この間、映画館に『何か』がいたでしょう? あれが学校にも出て、千佳が祓おうとしたら……逆に増やしちゃって、コゲツに怒られただけ」
「ほうほう。それはまた美味そうな話だな」
「兄者、学校とやらに行ってみるか」
二人は舌なめずりをしていることから、『何か』を食べに行く気なのだろう。
でも、その方がコゲツにわたし達の後処理をしてもらわなくて済むから良いのでは? ふむ。この二人に任せてしまおうかしら。
そんなことを思っていたら、二人はわたしの両腕をガッシリ掴んできた。
「行くぞ。ミカサ」
「案内するがいい」
「ハァ!? ちょっ、二人共!? わたし、帰ってきたばっかりなんだよ?」
「何を言っている。本来ならば、まだ帰ってくる時間ではないだろう?」
「そうだぞ。早引けというやつなのだろう? 案内じゃ」
「うう~っ。せめて着替えてから! 少しはわたしを労わってよー!」
結局、二人に引きずられるように学校へ戻ることになったのだけど、まだ警察はいるしテレビ取材の人達が入らないように門は閉まっていて、守衛さんまで立っている。
「二人共諦めよう! 帰ろう!」
「何を言う」
「あっちの裏手の林から入れば見つかることはないだろう」
「ニィー」
ああ、この人達本当に学校に不法侵入する気だ。
火車もなぜかついてきてしまって、仕方なくカゴバッグに入れてキョウさんに持っていてもらっている。
二人は学校の裏手に少しだけ生い茂ってフェンスを覆い隠している林の中に入り、木の枝に手をかけると軽々とフェンスを越えて侵入し、わたしの手を持って引き上げると腰を持ち上げてくれた。
「見つからなきゃいいんだけど……よっと」
一応、着替えてはきたけど在学生だとバレて、停学処分などになろうものならコゲツを含め、両親にどやされるんだろうなぁ。どやされるだけで済めばいいけど、うん。怖いからこれ以上考えるのは止めておこう。
「ミカサ。お前は確か『何か』だと言ったよな?」
「うん。そうだよ」
「あれはどう見ても、変質して別のものになっておるぞ」
キョウさんとダイさんの見つめる方向に、数匹の黒い四つ足で動く人型が歩いていた。
顔は無い。口だけで、お互いに罵り合っている。
『お前が悪い』『お前が悪い』とお互いに睨み合い罵倒しているけれど、何がしたいのかは分からない。
「あれは食べられない感じ?」
「あんなのを食べたら腹を壊す」
「あんなものを食えと言うのか?」
二人にジトッと睨まれ、わたしは頬を小さく掻く。
そんなことを言われても、わたしにだって変質したとかなんとか言われても分かる訳が無い。
それが食べれるかどうかもだ。
「じゃあ、どうするの? 帰る?」
「いや、放置しておけば余計な悪さをしてミカサにも害が出るだろう」
「主が心配するだろうからな。我らがなんとかしてやろう」
そう言うや否や、キョウさんは火車の入ったカゴバッグをわたしに渡して、二人は黒い物体に狼姿で襲い掛かって行った。
「もぉー! すぐに言っちゃうんだから!」
「ニャーォウ」
「火車は大人しくしていようね」
「ニィー」
分かったと言うようにひと鳴きして、火車はカゴバッグの中で丸くなって欠伸をした。
千佳と別れて家に帰ると玄関には狼姿のキョウさんにダイさん、そして火車が出迎えてくれた。
「ただいまー。キョウさんにダイさんはコゲツから依頼されたことは終わったの?」
「うむ。我らは優秀だからな」
「しかしまぁ……ミカサは主を怒らせるような、何をしたんだ?」
「ニィー」
キョウさんとダイさんに左右から頭をポンポン叩かれて、わたしは頬を膨らませる。
ううっ、わたし達が悪いのは百も承知だけど、すでにキョウさんとダイさんの耳にまで話がいっているとは……
「この間、映画館に『何か』がいたでしょう? あれが学校にも出て、千佳が祓おうとしたら……逆に増やしちゃって、コゲツに怒られただけ」
「ほうほう。それはまた美味そうな話だな」
「兄者、学校とやらに行ってみるか」
二人は舌なめずりをしていることから、『何か』を食べに行く気なのだろう。
でも、その方がコゲツにわたし達の後処理をしてもらわなくて済むから良いのでは? ふむ。この二人に任せてしまおうかしら。
そんなことを思っていたら、二人はわたしの両腕をガッシリ掴んできた。
「行くぞ。ミカサ」
「案内するがいい」
「ハァ!? ちょっ、二人共!? わたし、帰ってきたばっかりなんだよ?」
「何を言っている。本来ならば、まだ帰ってくる時間ではないだろう?」
「そうだぞ。早引けというやつなのだろう? 案内じゃ」
「うう~っ。せめて着替えてから! 少しはわたしを労わってよー!」
結局、二人に引きずられるように学校へ戻ることになったのだけど、まだ警察はいるしテレビ取材の人達が入らないように門は閉まっていて、守衛さんまで立っている。
「二人共諦めよう! 帰ろう!」
「何を言う」
「あっちの裏手の林から入れば見つかることはないだろう」
「ニィー」
ああ、この人達本当に学校に不法侵入する気だ。
火車もなぜかついてきてしまって、仕方なくカゴバッグに入れてキョウさんに持っていてもらっている。
二人は学校の裏手に少しだけ生い茂ってフェンスを覆い隠している林の中に入り、木の枝に手をかけると軽々とフェンスを越えて侵入し、わたしの手を持って引き上げると腰を持ち上げてくれた。
「見つからなきゃいいんだけど……よっと」
一応、着替えてはきたけど在学生だとバレて、停学処分などになろうものならコゲツを含め、両親にどやされるんだろうなぁ。どやされるだけで済めばいいけど、うん。怖いからこれ以上考えるのは止めておこう。
「ミカサ。お前は確か『何か』だと言ったよな?」
「うん。そうだよ」
「あれはどう見ても、変質して別のものになっておるぞ」
キョウさんとダイさんの見つめる方向に、数匹の黒い四つ足で動く人型が歩いていた。
顔は無い。口だけで、お互いに罵り合っている。
『お前が悪い』『お前が悪い』とお互いに睨み合い罵倒しているけれど、何がしたいのかは分からない。
「あれは食べられない感じ?」
「あんなのを食べたら腹を壊す」
「あんなものを食えと言うのか?」
二人にジトッと睨まれ、わたしは頬を小さく掻く。
そんなことを言われても、わたしにだって変質したとかなんとか言われても分かる訳が無い。
それが食べれるかどうかもだ。
「じゃあ、どうするの? 帰る?」
「いや、放置しておけば余計な悪さをしてミカサにも害が出るだろう」
「主が心配するだろうからな。我らがなんとかしてやろう」
そう言うや否や、キョウさんは火車の入ったカゴバッグをわたしに渡して、二人は黒い物体に狼姿で襲い掛かって行った。
「もぉー! すぐに言っちゃうんだから!」
「ニャーォウ」
「火車は大人しくしていようね」
「ニィー」
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