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1巻
1-2
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翌朝登校すると、朝礼後に担任と入れ替わるように副担任が教室にやってきた。
「少しの間、各自自習すること。自由時間じゃないから騒がないように。――一、職員室へ行くように」
「あ、はい」
クラスメイトの好奇の目に晒され、わたしは首を傾げつつ席を立った。
何か呼び出されるようなことをしでかしただろうか?
結婚していることはコゲツが話をつけてくれている。加えて、入学が一年遅れということもあり気後れしてしまって、地味で目立たない高校生活を送っていた。
呼び出される理由が思い浮かばない。
問題はないはずのこれまでの言動を思い返しては色々と考えてしまって、重い足取りで職員室へ入った。
「失礼します」
室内を見渡して担任を見つけると、その隣には中年の女性と警察官が二人いる。
副担任が「一です」とわたしを紹介すると、中年女性が鬼気迫る顔で詰め寄ってきた。
「うちの千佳はどこに行ったの⁉ 貴女が一緒に帰ったのよね?」
「えっ? 千佳……ですか? 昨日の学校帰りなら、途中で別れてからは会っていませんけど……?」
うちの、ということは、この人は千佳のお母さんだろうか?
顔立ちは、あまり似ているとは言えない。千佳はとにかくサッパリした顔つきで、猫のようなツリ目をしている。目の前の女性は、あえて言えば狸っぽい、全体的にまん丸な感じで正反対だ。
千佳はお父さん似なのかもしれない。
「一さん。昨日、どこで美空さんと別れたか話してもらえる?」
「はい。商店街の、ファーストフードのお店が並んでいる通りのハンバーガー屋さんの前です。千佳が買い食いをすると言うので、そこで別れました」
別れた時間も思い出せるだけ話して、警察官が差し出したメモに簡単な地図を描く。
何かが起きたのだろうということだけは、わたしにも理解できた。
「美空さんが、家のことや学校のことで悩んでいたという話を聞いたことはある?」
「いいえ。千佳とは家族の話をしたことはありません。学校で悩んでいるという話も聞いたことはないです」
これは本当。お互いの家族の話はしたことがないし、そもそも、したくてもわたしからは言いづらくてできない。
十六歳で結婚しています……なんて言えないよ。
それに、不思議と千佳は家族の話を振ってこないし、話す内容の大半は学校の授業やクラスメイトのことばかりだった。
「交友関係で悩んでいたというような話は?」
「いつでも明るくて、誰とでも気さくに話せる子ですから、そういう悩みはなかったと思います」
一年遅れを気にしてクラスに上手く溶け込めなかったわたしに声をかけてくれるような子だ。千佳は人懐っこい犬みたいな性格をしていると思う。
「美空さんに、お付き合いをしている男性がいるという話はありましたか?」
「それはよく分からないです。けど……今まで部活で忙しくて誰かと付き合うような時間はなかったと思います」
母親や教師の前だから言わないが、千佳に好きな人がいることは知っている。
それも、この職員室の中に。
現代文を担当する天草悟先生が、千佳の意中の人だ。
眼鏡をかけた優しい雰囲気の先生で、気の弱そうな感じもあるけれど、教え方が上手で、とても心地のよい声をしている。
確か二十六歳ぐらいだっただろうか?
わたしが天草先生をチラリと見ると、心配そうに眉尻を下げてこちらの様子を見守っていた。
「部活ができなくて家出……なんてことはないよなぁ?」
「それはないですね。大会もないですし、一年生はボール拾いや雑用ばかりだからサボる口実ができてラッキーって、言っていましたし」
あっ、これは失言だったかも? と、口元を手で隠す。周囲を窺うと、苦笑いが返ってきた。
最後に「このことは言いふらさないようにね」と念を押され、わたしは職員室から追い出された。
「千佳……。事件に巻き込まれた、とかじゃなきゃ良いのだけど……」
あの元気な千佳が、家庭や友人、恋人、部活動、他の何かに悩んでいたとは思えない。
まぁ、人のことだから全て分かる訳じゃないけれど、千佳は普通の女子高生だ。家出するタイプには見えないし、かといって、事件や事故かと考えるのは怖い。
しかし、もし事件だったら……左手の使えない千佳を誘拐するのは、簡単なことかもしれない。
「千佳、大丈夫かな」
廊下から外を見て、わたしは溜め息を吐いた。
何事もなく、千佳が顔を出してくれたらいいのだけれど……
なぜだか、非日常に触れてしまった気がした。
千佳の行方が分からなくなって、一週間が経った。
相変わらずの日々ではあるけれど、このところ教室では千佳の噂話が飛び交っている。
耳に入るヒソヒソ声に、勝手な話をと眉をひそめた。
千佳は明るく、クラスのムードメーカーだ。
そうだったはずなのに……同級生達は面白おかしく吹聴して回っていた。
『あの子、援助交際していたんだって』
『家庭環境が悪いって、中学の時に同級生だった子に聞いたよ』
『千佳の母親、継母らしい』
『男の家にいるって聞いたけどー?』
どこ情報よ? と問い詰めたくなるような噂話ばかりだ。
「ホシさん。貴女、チカと仲良かったよね?」
ふと、今まで挨拶程度しか交わしたことのない女子三人組が話しかけてきた。
好奇心を隠せていないその三人を、わたしはジッと見つめ返す。
人が一人、しかもクラスメイトが行方不明なのに、何が面白いのだろう。
「わたしより貴女達のほうが、仲が良かったと思うけど?」
「えー? うちらは普通に喋ってただけだよ」
「そうそう。一緒に帰ったりはしなかったしさ」
「チカって、誰とでも話すじゃん。あの子誰とでも仲良くなるから」
笑いながら否定する彼女達は、お互いに自分は関係ないと言わんばかりだ。
けれどわたしだって、千佳が腕を折らなければ、一緒に下校していたかどうかは分からない。それぐらい彼女達と大差ない、ただのクラスメイトという関係だった。
「それで、何が聞きたいの?」
そう問い返しながらも、わたしは彼女達から興味をなくしていた。わたしが机の上の教科書をカバンに入れ始めると、彼女達が引き留めるように口を開く。
「ホシさんさぁ、最後にチカに会ったんだよね?」
「何か知っていることがあったら、教えてほしいなぁ」
「大丈夫。内緒にするからさ」
この『大丈夫』も『内緒』も、きっと守られることはないだろう。
それに、無関心を装うクラスメイト達も、興味のないふりをしながら、わたし達の会話に聞き耳を立てているようだ。放課後だというのに、だらだらと帰る準備を長引かせて、一向に帰ろうとしないのだから。
「悪いけど、警察から何も話さないように言われているの。それに、知っていることは貴女達と変わらないから、気にするだけ無駄だよ」
わたしはカバンを手に立ち上がると、彼女達を無視して教室を出る。
背後からは密かなざわめきと「だから、あの子に聞いても無駄って言ったじゃん!」という声がした。
『人の不幸は蜜の味』と言うけれど、これ以上根も葉もないことを吹聴されたら、戻ってきた千佳は不愉快な思いをするだろう。
わたしもできた人間ではないから、噂話に興じる彼女達を正面から批判したり、その噂を否定して回ることはできない。
できることと言えば、精々、自分の口からは余計なことを言わないでおくことだけだ。
この一週間、千佳の件になんの進展もないことで、噂だけが独り歩きしている。そろそろ行方不明者として公開捜査が始まるかもしれない。ただ、高校生は家出の可能性が高いと見なされることが多いらしく、事件性が高くないとなかなか公開捜査に踏み切れないのだと、コゲツから聞いた。
コゲツがこうしたことに詳しいというのも新しい発見である。
「ただいまー」
玄関を開けると、見慣れない男物の革靴が揃えて置いてあった。
お客さんだろうかと、居間に顔を覗かせる。
コゲツと現代文の天草先生が向かい合って、何かを受け渡していた。
なんだろう? 小さな物のようだけど……
「おかえり。今日は早かったですね」
「あ、うん。学校が今日から、下校時間を早めるって……」
千佳の一件の影響だ。目が合った気がしてコゲツに説明すると、天草先生は一礼して静かに玄関から出ていった。
天草先生、何をしに来たのだろう?
「嫁殿、手洗いとうがいを。今日の宿題は?」
コゲツはお母さんみたいだ。わたしがもっと幼かったら、反抗しているかもしれない。
「今日は宿題はありません。この間コゲツに教えてもらった小テストと同じ問題が出たからね。間違えなかったよ」
「嫁殿の役に立ったようで、何よりです」
「コゲツには感謝しています」
わたしの頭をコゲツが撫でた時、もう一方の手の中の物がチラリと見えた。天草先生に渡されていた物だ。
それは、手のひらに納まる小さな木箱で、随分と古い物。何十年、下手をしたら何百年も経っていそうな、朽ち果てる寸前の年代もののように見える。
こんな物をなぜ、天草先生はコゲツに渡したのだろう?
わたしの視線に気付いたのか、コゲツは「ほら、早く手洗いとうがいですよ」と、わたしを居間から追い出した。
尋ねてみたかったのに、この雰囲気から察するに、聞くなということなのだろう。
諦めて手洗いとうがい、着替えも済ませて居間に戻ると、コゲツの姿はなくなっていた。
「コゲツー?」
台所を覗いても、コゲツは見当たらない。
部屋にでもいるのだろうか?
わたしの部屋は二階にあるけれど、コゲツは一階の和室を自室にしている。夫婦といえどプライベート空間は必要だし、わたしがまだ学生というのもあって、部屋は分けているのである。
コゲツの部屋の前に立ったところで、本人が中から出てきた。
「嫁殿、どうかしましたか?」
「あ、ううん。コゲツ、どこに行ったのかなって思って……」
コゲツの口元を見ると、口角が上がっている。
「心配させてしまいましたね。出掛ける時は声をかけますので、安心してください。……という話をしたそばからすみませんが、今日は一人で食べてもらっていいですか。夕飯の支度はしてありますから」
「いいけど、コゲツどこかに出掛けるの?」
「ええ。仕事です」
「そっか……じゃあ、仕方がないね」
「嫁殿。一応言っておきますが、外を出歩いたりはしないように」
頭を上下に振って頷き、再びコゲツを見上げる。
コゲツはわたしの頭をポンポンと叩くと、白いシャツの上に黒いジャケットを羽織り、玄関に鍵をかけて出掛けていった。
それを見送って、わたしは台所で夕飯を食べる準備をする。
我が家の今夜の夕飯は『レンコンの海老ハーブ揚げ』だ。
すりおろしたレンコンに、海老のすり身、片栗粉と刻み青じそ、バジル、塩と砂糖を少々混ぜ合わせて、油で揚げたもの。片栗粉が入っているからふわっと、砂糖のおかげでしっとりもした食感。
「相変わらず、わたしが作るより上手なんだから」
カニカマと溶き卵の中華スープもトロミがあって美味しいし、クルトンと温泉たまごが入ったベビーハーブのサラダも、乾燥パプリカとオニオンが載っていて文句なし。
ほんのりと香ばしい味わいと、クルトンの歯ごたえもバッチリだ。
「これを、あと二年は味わえるのよね」
わたしは大学への進学は希望していないから、高校を卒業後は専業主婦になる。そうしたら、家事はわたしの役目になるのだ。
中学を卒業して十六歳になったら嫁入り、と決められていたから、今高校に行けているだけでも十分だと思う。
本家の水島家がコゲツの決定に逆らわなかったのもあり、わたしが高校へ通っていることに関しては誰も何も言ってこない。
当初わたしの両親は、とりあえず籍だけ入れて高校を卒業してから一緒に暮らすほうが良いのではないかと考えていたみたいだ。けれど、結局はコゲツのもとにいるのが一番いいという結論に落ち着いた。
その辺りの詳しい話はわたしは知らないのだけど。
「そういえば、お母さん達に連絡入れてないな……」
この家に引っ越してきてから、両親には片手で足りるぐらいしか電話していない。
嫁いだばかりの娘がしょっちゅう連絡を取るのもなんだか問題がある気がしたのと、新生活に手一杯だったのもある。
「あっ。スマートフォン、二階だ」
女子高生の必需品と言われるスマートフォンを持ち歩かないのが、わたしである。
中学時代も持ってはいたけれど、学校内では使用禁止だし、家に帰れば両親がいるから、必要になることがなかった。受験勉強で忙しい親しい友人達の邪魔はできなかったし、中学卒業と同時にわたしは花嫁修業を始めたので、自然と連絡を取らなくなった。
皆きっと高校で新しい友達ができたのだろう。
別にそれは悲しくない。ただ、そういうものなのだと諦めた。
だからわたしはスマートフォンに執着しておらず、持ち歩く癖がない。
「ご馳走様でした」
手を合わせてから、台所で食器を洗って片付ける。
二階へ上がり自分の部屋に戻ると、カバンからスマートフォンを取り出した。
通知なし。
スマートフォンの電話帳から『実家』の文字を探し、タップする。
数回コール音が鳴って、母が電話に出た。
『はい。江橋です』
「お母さん。ミカサだけど、元気にしてた?」
『あらミカサったら、どうしたの? コゲツくんから苛めにでも遭った?』
「なんでコゲツがわたしを苛めるのよ。そういうことはありません」
コロコロと笑う母は相変わらずだ。
腕にヨークシャーテリアのピノンを抱っこしているのか、たまにヘッヘッと興奮した息遣いが聞こえる。ピノンは抱っこが大好きなので、嬉しくて仕方がないのだろう。
「お母さんとお父さんが元気にしているか気になっただけだよ」
『あらまぁ、ホームシック? ミカサのところに行ってあげたいけど、遠いからねぇ』
「そういうのじゃないの。たまには声を聞かせておかなきゃって思っただけ」
うふふと笑うお母さんは、わたしの言うことを信じていないようだ。
確かに、お母さんの声を聞いたら少しだけ、会いたいとは思ったけど……
『そうそう。ミカサが前に気にしていた、コゲツくんとの結婚が決まった嫁探しの行事。多分これかなー? っていうアルバムが出てきたのよ』
「本当⁉ 送って!」
『なら明日にでも、そっちに送っておくわね』
「ありがとう。お母さん」
『じゃあ、テレビが良いところだから、またね』
娘よりテレビなの! と、言いたいところではあるけど、わたしが花嫁に選ばれた行事は凄く気になっているから、写真が手に入るならありがたい。
明日送ってもらっても届くのに二日はかかるだろうから、焦っても仕方がないけど。
両親とわたしが住んでいる場所は、それだけ距離がある。
「花嫁選びかぁ……」
どんなものだったのか、わたしは幼すぎて覚えていない。
コゲツに聞いても「覚えていません」と言われてしまったのよね。
でも、コゲツのハッキリした口調から、むしろ絶対に覚えていると思う。
顔が半分隠れている分、コゲツの考えは口調からなんとなく分かる。一緒に過ごした時間は短いけれど、こういうのが夫婦というものなんだろうか?
母との電話を終えてお風呂に入り、ベッドの上でスマートフォンを弄る。
お風呂上がりのわたしが着ているのは、お気に入りのパイル生地でできたパーカーとハーフパンツのパジャマ。薄ピンクに灰色の横線が入ったもので、子供っぽい気もするけど、わたしはまだ十六歳だしお子様だから良いのだ。
大人の色気を求められても困るし、着心地と可愛らしさが今は一番。
わたしとは対照的に、コゲツの寝間着は着物。多分浴衣だろうけど、よく似合っているから大人だなぁと思う。
「事件……事故」
スマートフォンの小さな画面でニュースの記事を読む。わたしの最近の日課だ。
『行方不明』――この文字にドキッとしてしまう。
千佳のことではないかとざっと目を通し、彼女の名前がないことにホッとする。
「んーっ、目がショボショボする……」
スマートフォンの電源を落とし、大きく伸びをしてから一階へ下りた。
台所で紅茶を淹れて、砂糖とミルクをたっぷり入れる。夜にこの飲み物はカフェインやカロリーを考えると暴力的な感じもするけど、明日は学校が休みだし、砂糖の入れ過ぎを困った口調で注意するコゲツも今は留守。
紅茶に砂糖を控えるという選択肢は、ない!
「ふふふっ、甘いミルクティーはダージリンに限る」
アッサムのほうが渋みがないのでミルクティーには最適と言われているけれど、砂糖をたっぷり入れるなら、渋みのあるダージリンが良い。と、わたしは思う。
いつもならここで「嫁殿、寝る前のカフェイン摂取はどうかと思います。砂糖も入れ過ぎです」と、窘めるコゲツの声がかかるのだ。
「そういえば、コゲツってば『嫁殿』呼びで定着しているのよねぇ……」
他人行儀に感じるから、ミカサと名前で呼んでほしい。
以前にそう伝えた時、コゲツは「名は奪われては困るものだから」と、訳の分からないことを言っていた。
うちの一族は名前を漢字とカタカナとで使い分けているから、それも関係しているのかもしれない。子供が生まれた時には漢字を付けるが、普段の生活で使われるのはカタカナ。結婚相手にだけ、漢字を教える習わしだ。
わたしは『美嘉沙』という漢字が付けられていて、結婚したコゲツは知っている。
それ以外の他人に教えていいのはカタカナの『ミカサ』だけだと、口を酸っぱくして言われていた。
わたし自身、『嘉』の字を書いたことがないから、ちゃんと書けるかも怪しいところだ。
それと、人の名前を呼ぶ時には、相手の顔を思い浮かべながら漢字をイメージしてはいけないと言われている。
「少しの間、各自自習すること。自由時間じゃないから騒がないように。――一、職員室へ行くように」
「あ、はい」
クラスメイトの好奇の目に晒され、わたしは首を傾げつつ席を立った。
何か呼び出されるようなことをしでかしただろうか?
結婚していることはコゲツが話をつけてくれている。加えて、入学が一年遅れということもあり気後れしてしまって、地味で目立たない高校生活を送っていた。
呼び出される理由が思い浮かばない。
問題はないはずのこれまでの言動を思い返しては色々と考えてしまって、重い足取りで職員室へ入った。
「失礼します」
室内を見渡して担任を見つけると、その隣には中年の女性と警察官が二人いる。
副担任が「一です」とわたしを紹介すると、中年女性が鬼気迫る顔で詰め寄ってきた。
「うちの千佳はどこに行ったの⁉ 貴女が一緒に帰ったのよね?」
「えっ? 千佳……ですか? 昨日の学校帰りなら、途中で別れてからは会っていませんけど……?」
うちの、ということは、この人は千佳のお母さんだろうか?
顔立ちは、あまり似ているとは言えない。千佳はとにかくサッパリした顔つきで、猫のようなツリ目をしている。目の前の女性は、あえて言えば狸っぽい、全体的にまん丸な感じで正反対だ。
千佳はお父さん似なのかもしれない。
「一さん。昨日、どこで美空さんと別れたか話してもらえる?」
「はい。商店街の、ファーストフードのお店が並んでいる通りのハンバーガー屋さんの前です。千佳が買い食いをすると言うので、そこで別れました」
別れた時間も思い出せるだけ話して、警察官が差し出したメモに簡単な地図を描く。
何かが起きたのだろうということだけは、わたしにも理解できた。
「美空さんが、家のことや学校のことで悩んでいたという話を聞いたことはある?」
「いいえ。千佳とは家族の話をしたことはありません。学校で悩んでいるという話も聞いたことはないです」
これは本当。お互いの家族の話はしたことがないし、そもそも、したくてもわたしからは言いづらくてできない。
十六歳で結婚しています……なんて言えないよ。
それに、不思議と千佳は家族の話を振ってこないし、話す内容の大半は学校の授業やクラスメイトのことばかりだった。
「交友関係で悩んでいたというような話は?」
「いつでも明るくて、誰とでも気さくに話せる子ですから、そういう悩みはなかったと思います」
一年遅れを気にしてクラスに上手く溶け込めなかったわたしに声をかけてくれるような子だ。千佳は人懐っこい犬みたいな性格をしていると思う。
「美空さんに、お付き合いをしている男性がいるという話はありましたか?」
「それはよく分からないです。けど……今まで部活で忙しくて誰かと付き合うような時間はなかったと思います」
母親や教師の前だから言わないが、千佳に好きな人がいることは知っている。
それも、この職員室の中に。
現代文を担当する天草悟先生が、千佳の意中の人だ。
眼鏡をかけた優しい雰囲気の先生で、気の弱そうな感じもあるけれど、教え方が上手で、とても心地のよい声をしている。
確か二十六歳ぐらいだっただろうか?
わたしが天草先生をチラリと見ると、心配そうに眉尻を下げてこちらの様子を見守っていた。
「部活ができなくて家出……なんてことはないよなぁ?」
「それはないですね。大会もないですし、一年生はボール拾いや雑用ばかりだからサボる口実ができてラッキーって、言っていましたし」
あっ、これは失言だったかも? と、口元を手で隠す。周囲を窺うと、苦笑いが返ってきた。
最後に「このことは言いふらさないようにね」と念を押され、わたしは職員室から追い出された。
「千佳……。事件に巻き込まれた、とかじゃなきゃ良いのだけど……」
あの元気な千佳が、家庭や友人、恋人、部活動、他の何かに悩んでいたとは思えない。
まぁ、人のことだから全て分かる訳じゃないけれど、千佳は普通の女子高生だ。家出するタイプには見えないし、かといって、事件や事故かと考えるのは怖い。
しかし、もし事件だったら……左手の使えない千佳を誘拐するのは、簡単なことかもしれない。
「千佳、大丈夫かな」
廊下から外を見て、わたしは溜め息を吐いた。
何事もなく、千佳が顔を出してくれたらいいのだけれど……
なぜだか、非日常に触れてしまった気がした。
千佳の行方が分からなくなって、一週間が経った。
相変わらずの日々ではあるけれど、このところ教室では千佳の噂話が飛び交っている。
耳に入るヒソヒソ声に、勝手な話をと眉をひそめた。
千佳は明るく、クラスのムードメーカーだ。
そうだったはずなのに……同級生達は面白おかしく吹聴して回っていた。
『あの子、援助交際していたんだって』
『家庭環境が悪いって、中学の時に同級生だった子に聞いたよ』
『千佳の母親、継母らしい』
『男の家にいるって聞いたけどー?』
どこ情報よ? と問い詰めたくなるような噂話ばかりだ。
「ホシさん。貴女、チカと仲良かったよね?」
ふと、今まで挨拶程度しか交わしたことのない女子三人組が話しかけてきた。
好奇心を隠せていないその三人を、わたしはジッと見つめ返す。
人が一人、しかもクラスメイトが行方不明なのに、何が面白いのだろう。
「わたしより貴女達のほうが、仲が良かったと思うけど?」
「えー? うちらは普通に喋ってただけだよ」
「そうそう。一緒に帰ったりはしなかったしさ」
「チカって、誰とでも話すじゃん。あの子誰とでも仲良くなるから」
笑いながら否定する彼女達は、お互いに自分は関係ないと言わんばかりだ。
けれどわたしだって、千佳が腕を折らなければ、一緒に下校していたかどうかは分からない。それぐらい彼女達と大差ない、ただのクラスメイトという関係だった。
「それで、何が聞きたいの?」
そう問い返しながらも、わたしは彼女達から興味をなくしていた。わたしが机の上の教科書をカバンに入れ始めると、彼女達が引き留めるように口を開く。
「ホシさんさぁ、最後にチカに会ったんだよね?」
「何か知っていることがあったら、教えてほしいなぁ」
「大丈夫。内緒にするからさ」
この『大丈夫』も『内緒』も、きっと守られることはないだろう。
それに、無関心を装うクラスメイト達も、興味のないふりをしながら、わたし達の会話に聞き耳を立てているようだ。放課後だというのに、だらだらと帰る準備を長引かせて、一向に帰ろうとしないのだから。
「悪いけど、警察から何も話さないように言われているの。それに、知っていることは貴女達と変わらないから、気にするだけ無駄だよ」
わたしはカバンを手に立ち上がると、彼女達を無視して教室を出る。
背後からは密かなざわめきと「だから、あの子に聞いても無駄って言ったじゃん!」という声がした。
『人の不幸は蜜の味』と言うけれど、これ以上根も葉もないことを吹聴されたら、戻ってきた千佳は不愉快な思いをするだろう。
わたしもできた人間ではないから、噂話に興じる彼女達を正面から批判したり、その噂を否定して回ることはできない。
できることと言えば、精々、自分の口からは余計なことを言わないでおくことだけだ。
この一週間、千佳の件になんの進展もないことで、噂だけが独り歩きしている。そろそろ行方不明者として公開捜査が始まるかもしれない。ただ、高校生は家出の可能性が高いと見なされることが多いらしく、事件性が高くないとなかなか公開捜査に踏み切れないのだと、コゲツから聞いた。
コゲツがこうしたことに詳しいというのも新しい発見である。
「ただいまー」
玄関を開けると、見慣れない男物の革靴が揃えて置いてあった。
お客さんだろうかと、居間に顔を覗かせる。
コゲツと現代文の天草先生が向かい合って、何かを受け渡していた。
なんだろう? 小さな物のようだけど……
「おかえり。今日は早かったですね」
「あ、うん。学校が今日から、下校時間を早めるって……」
千佳の一件の影響だ。目が合った気がしてコゲツに説明すると、天草先生は一礼して静かに玄関から出ていった。
天草先生、何をしに来たのだろう?
「嫁殿、手洗いとうがいを。今日の宿題は?」
コゲツはお母さんみたいだ。わたしがもっと幼かったら、反抗しているかもしれない。
「今日は宿題はありません。この間コゲツに教えてもらった小テストと同じ問題が出たからね。間違えなかったよ」
「嫁殿の役に立ったようで、何よりです」
「コゲツには感謝しています」
わたしの頭をコゲツが撫でた時、もう一方の手の中の物がチラリと見えた。天草先生に渡されていた物だ。
それは、手のひらに納まる小さな木箱で、随分と古い物。何十年、下手をしたら何百年も経っていそうな、朽ち果てる寸前の年代もののように見える。
こんな物をなぜ、天草先生はコゲツに渡したのだろう?
わたしの視線に気付いたのか、コゲツは「ほら、早く手洗いとうがいですよ」と、わたしを居間から追い出した。
尋ねてみたかったのに、この雰囲気から察するに、聞くなということなのだろう。
諦めて手洗いとうがい、着替えも済ませて居間に戻ると、コゲツの姿はなくなっていた。
「コゲツー?」
台所を覗いても、コゲツは見当たらない。
部屋にでもいるのだろうか?
わたしの部屋は二階にあるけれど、コゲツは一階の和室を自室にしている。夫婦といえどプライベート空間は必要だし、わたしがまだ学生というのもあって、部屋は分けているのである。
コゲツの部屋の前に立ったところで、本人が中から出てきた。
「嫁殿、どうかしましたか?」
「あ、ううん。コゲツ、どこに行ったのかなって思って……」
コゲツの口元を見ると、口角が上がっている。
「心配させてしまいましたね。出掛ける時は声をかけますので、安心してください。……という話をしたそばからすみませんが、今日は一人で食べてもらっていいですか。夕飯の支度はしてありますから」
「いいけど、コゲツどこかに出掛けるの?」
「ええ。仕事です」
「そっか……じゃあ、仕方がないね」
「嫁殿。一応言っておきますが、外を出歩いたりはしないように」
頭を上下に振って頷き、再びコゲツを見上げる。
コゲツはわたしの頭をポンポンと叩くと、白いシャツの上に黒いジャケットを羽織り、玄関に鍵をかけて出掛けていった。
それを見送って、わたしは台所で夕飯を食べる準備をする。
我が家の今夜の夕飯は『レンコンの海老ハーブ揚げ』だ。
すりおろしたレンコンに、海老のすり身、片栗粉と刻み青じそ、バジル、塩と砂糖を少々混ぜ合わせて、油で揚げたもの。片栗粉が入っているからふわっと、砂糖のおかげでしっとりもした食感。
「相変わらず、わたしが作るより上手なんだから」
カニカマと溶き卵の中華スープもトロミがあって美味しいし、クルトンと温泉たまごが入ったベビーハーブのサラダも、乾燥パプリカとオニオンが載っていて文句なし。
ほんのりと香ばしい味わいと、クルトンの歯ごたえもバッチリだ。
「これを、あと二年は味わえるのよね」
わたしは大学への進学は希望していないから、高校を卒業後は専業主婦になる。そうしたら、家事はわたしの役目になるのだ。
中学を卒業して十六歳になったら嫁入り、と決められていたから、今高校に行けているだけでも十分だと思う。
本家の水島家がコゲツの決定に逆らわなかったのもあり、わたしが高校へ通っていることに関しては誰も何も言ってこない。
当初わたしの両親は、とりあえず籍だけ入れて高校を卒業してから一緒に暮らすほうが良いのではないかと考えていたみたいだ。けれど、結局はコゲツのもとにいるのが一番いいという結論に落ち着いた。
その辺りの詳しい話はわたしは知らないのだけど。
「そういえば、お母さん達に連絡入れてないな……」
この家に引っ越してきてから、両親には片手で足りるぐらいしか電話していない。
嫁いだばかりの娘がしょっちゅう連絡を取るのもなんだか問題がある気がしたのと、新生活に手一杯だったのもある。
「あっ。スマートフォン、二階だ」
女子高生の必需品と言われるスマートフォンを持ち歩かないのが、わたしである。
中学時代も持ってはいたけれど、学校内では使用禁止だし、家に帰れば両親がいるから、必要になることがなかった。受験勉強で忙しい親しい友人達の邪魔はできなかったし、中学卒業と同時にわたしは花嫁修業を始めたので、自然と連絡を取らなくなった。
皆きっと高校で新しい友達ができたのだろう。
別にそれは悲しくない。ただ、そういうものなのだと諦めた。
だからわたしはスマートフォンに執着しておらず、持ち歩く癖がない。
「ご馳走様でした」
手を合わせてから、台所で食器を洗って片付ける。
二階へ上がり自分の部屋に戻ると、カバンからスマートフォンを取り出した。
通知なし。
スマートフォンの電話帳から『実家』の文字を探し、タップする。
数回コール音が鳴って、母が電話に出た。
『はい。江橋です』
「お母さん。ミカサだけど、元気にしてた?」
『あらミカサったら、どうしたの? コゲツくんから苛めにでも遭った?』
「なんでコゲツがわたしを苛めるのよ。そういうことはありません」
コロコロと笑う母は相変わらずだ。
腕にヨークシャーテリアのピノンを抱っこしているのか、たまにヘッヘッと興奮した息遣いが聞こえる。ピノンは抱っこが大好きなので、嬉しくて仕方がないのだろう。
「お母さんとお父さんが元気にしているか気になっただけだよ」
『あらまぁ、ホームシック? ミカサのところに行ってあげたいけど、遠いからねぇ』
「そういうのじゃないの。たまには声を聞かせておかなきゃって思っただけ」
うふふと笑うお母さんは、わたしの言うことを信じていないようだ。
確かに、お母さんの声を聞いたら少しだけ、会いたいとは思ったけど……
『そうそう。ミカサが前に気にしていた、コゲツくんとの結婚が決まった嫁探しの行事。多分これかなー? っていうアルバムが出てきたのよ』
「本当⁉ 送って!」
『なら明日にでも、そっちに送っておくわね』
「ありがとう。お母さん」
『じゃあ、テレビが良いところだから、またね』
娘よりテレビなの! と、言いたいところではあるけど、わたしが花嫁に選ばれた行事は凄く気になっているから、写真が手に入るならありがたい。
明日送ってもらっても届くのに二日はかかるだろうから、焦っても仕方がないけど。
両親とわたしが住んでいる場所は、それだけ距離がある。
「花嫁選びかぁ……」
どんなものだったのか、わたしは幼すぎて覚えていない。
コゲツに聞いても「覚えていません」と言われてしまったのよね。
でも、コゲツのハッキリした口調から、むしろ絶対に覚えていると思う。
顔が半分隠れている分、コゲツの考えは口調からなんとなく分かる。一緒に過ごした時間は短いけれど、こういうのが夫婦というものなんだろうか?
母との電話を終えてお風呂に入り、ベッドの上でスマートフォンを弄る。
お風呂上がりのわたしが着ているのは、お気に入りのパイル生地でできたパーカーとハーフパンツのパジャマ。薄ピンクに灰色の横線が入ったもので、子供っぽい気もするけど、わたしはまだ十六歳だしお子様だから良いのだ。
大人の色気を求められても困るし、着心地と可愛らしさが今は一番。
わたしとは対照的に、コゲツの寝間着は着物。多分浴衣だろうけど、よく似合っているから大人だなぁと思う。
「事件……事故」
スマートフォンの小さな画面でニュースの記事を読む。わたしの最近の日課だ。
『行方不明』――この文字にドキッとしてしまう。
千佳のことではないかとざっと目を通し、彼女の名前がないことにホッとする。
「んーっ、目がショボショボする……」
スマートフォンの電源を落とし、大きく伸びをしてから一階へ下りた。
台所で紅茶を淹れて、砂糖とミルクをたっぷり入れる。夜にこの飲み物はカフェインやカロリーを考えると暴力的な感じもするけど、明日は学校が休みだし、砂糖の入れ過ぎを困った口調で注意するコゲツも今は留守。
紅茶に砂糖を控えるという選択肢は、ない!
「ふふふっ、甘いミルクティーはダージリンに限る」
アッサムのほうが渋みがないのでミルクティーには最適と言われているけれど、砂糖をたっぷり入れるなら、渋みのあるダージリンが良い。と、わたしは思う。
いつもならここで「嫁殿、寝る前のカフェイン摂取はどうかと思います。砂糖も入れ過ぎです」と、窘めるコゲツの声がかかるのだ。
「そういえば、コゲツってば『嫁殿』呼びで定着しているのよねぇ……」
他人行儀に感じるから、ミカサと名前で呼んでほしい。
以前にそう伝えた時、コゲツは「名は奪われては困るものだから」と、訳の分からないことを言っていた。
うちの一族は名前を漢字とカタカナとで使い分けているから、それも関係しているのかもしれない。子供が生まれた時には漢字を付けるが、普段の生活で使われるのはカタカナ。結婚相手にだけ、漢字を教える習わしだ。
わたしは『美嘉沙』という漢字が付けられていて、結婚したコゲツは知っている。
それ以外の他人に教えていいのはカタカナの『ミカサ』だけだと、口を酸っぱくして言われていた。
わたし自身、『嘉』の字を書いたことがないから、ちゃんと書けるかも怪しいところだ。
それと、人の名前を呼ぶ時には、相手の顔を思い浮かべながら漢字をイメージしてはいけないと言われている。
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