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4章 言霊のカタチ
映画館
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我が家から映画館に行くには、駅前まで行き電車に乗って二つ隣の街へ行かなくてはいけない。
車で行く予定だったところ、キョウさんとダイさんは電車に乗りたいと騒ぎ、常識や人の移動手段も覚えさせようという事で、電車の移動になった。
「おお! 兄者、テレビで見たヤツじゃ」
「おお! 本当だ! これは迷子になってしまうな」
嬉しそうにはしゃぐキョウさんとダイさんは電車の窓から外を眺め、周りからは「なんだろう?」という目で見られて入るけど、他者に踏み込んだりしないのが最近の人達だ。
よって、遠目でチラッと見られて終わりというところ。
「キョウ、ダイ。降りるぞ」
コゲツが声を掛けると二人は窓から名残惜しそうに離れて、電車の出入り口に移動した。
改札口でも二人は「通行手形か!?」と、大騒ぎして電子カードをまじまじと眺めまわして、進まないものだから、流石にこればかりは二人を引っ張って駅から出ることに……これは恥ずかしい。
「感動したのは分かりましたから、映画館に行きますよ」
「主、主! あそこに飲み物の店が!!」
「主! テレビでやっていたやつだ! 買わなくていいのか!?」
コゲツが手で額を押さえながら、深い溜め息をつく。
その気持ちはよくわかる。
「キョウさん、ダイさん。映画館にも飲み物は売っているし、ポップコーンという豆を使ったお菓子もあるので、ここで買わなくても大丈夫です!」
「おお! そうなのか!」
「ならば、主! 急ごうではないか!」
やはりはしゃいだ声を出す二人にコゲツと二人で苦笑いをして、映画館へ着くまでの道すがら、二人の「アレはなんだ!」を掻い潜って辿り着いた。
映画館のチケットはコゲツが購入してくれて、わたしは二人と一緒に飲み物とポップコーンを売店で買った。
「本当にこれは豆なのか?」
「トウモロコシです。普通に食べるトウモロコシとは違う、硬い豆を使った物ですよ」
「美味い。んっ、こっちは甘いな」
「どれどれ。あー、これは美味いな」
「二人共、零してるってば!」
大きなサイズの塩味とキャラメル味を買ったけれど、二人が鷲掴みで取っていくから、ポロポロ零れてしまう。
コゲツが合流して映画館の中へ入り、まだ上映前のほんのりと明るい劇場内でそれぞれに飲み物を配る。
「コゲツはコーヒーで、キョウさんが炭酸の柚子、ダイさんが炭酸のイチゴ、そしてわたしがレモネード」
「んーっ、シャワシャワする」
「くはぁ。この炭酸というのは、面白い」
「二人共、上映前だからいいが、上映が始まったら、騒いでは駄目だからな」
「そこら辺は、家で教えられたから大丈夫だ」
「心配性だな、主は」
本当に大丈夫かなぁ? と、心配もあるけれど楽しみにしていた二人なので、そこは大丈夫だと信じたい。
テレビも大人しくというより、真剣に見ていることが多いからね。
最初の頃は質問が多くて、テレビどころでは無かったのも、少しだけ懐かしい。
今回はテレビっ子な二人が、テレビの宣伝で見たというコメディアクション映画だ。
「コゲツ、二人が楽しそうで良かったね」
「そうですね。嫁殿も楽しんで下さいね。そろそろ、始まりますよ」
「うん。映画は久しぶりだから、楽しみ」
劇場の照明が落とされ、スクリーンでは劇場内での注意を映画のキャラクターが説明している。
キョウさんとダイさんは、小さく頷いて食い入るように見ていた。
横のコゲツを見上げると、目隠しを外していて、映画の時は暗いから外しても周りからは見えないし、これからも映画に誘ってみようかな? と思う、わたしだったりする。
車で行く予定だったところ、キョウさんとダイさんは電車に乗りたいと騒ぎ、常識や人の移動手段も覚えさせようという事で、電車の移動になった。
「おお! 兄者、テレビで見たヤツじゃ」
「おお! 本当だ! これは迷子になってしまうな」
嬉しそうにはしゃぐキョウさんとダイさんは電車の窓から外を眺め、周りからは「なんだろう?」という目で見られて入るけど、他者に踏み込んだりしないのが最近の人達だ。
よって、遠目でチラッと見られて終わりというところ。
「キョウ、ダイ。降りるぞ」
コゲツが声を掛けると二人は窓から名残惜しそうに離れて、電車の出入り口に移動した。
改札口でも二人は「通行手形か!?」と、大騒ぎして電子カードをまじまじと眺めまわして、進まないものだから、流石にこればかりは二人を引っ張って駅から出ることに……これは恥ずかしい。
「感動したのは分かりましたから、映画館に行きますよ」
「主、主! あそこに飲み物の店が!!」
「主! テレビでやっていたやつだ! 買わなくていいのか!?」
コゲツが手で額を押さえながら、深い溜め息をつく。
その気持ちはよくわかる。
「キョウさん、ダイさん。映画館にも飲み物は売っているし、ポップコーンという豆を使ったお菓子もあるので、ここで買わなくても大丈夫です!」
「おお! そうなのか!」
「ならば、主! 急ごうではないか!」
やはりはしゃいだ声を出す二人にコゲツと二人で苦笑いをして、映画館へ着くまでの道すがら、二人の「アレはなんだ!」を掻い潜って辿り着いた。
映画館のチケットはコゲツが購入してくれて、わたしは二人と一緒に飲み物とポップコーンを売店で買った。
「本当にこれは豆なのか?」
「トウモロコシです。普通に食べるトウモロコシとは違う、硬い豆を使った物ですよ」
「美味い。んっ、こっちは甘いな」
「どれどれ。あー、これは美味いな」
「二人共、零してるってば!」
大きなサイズの塩味とキャラメル味を買ったけれど、二人が鷲掴みで取っていくから、ポロポロ零れてしまう。
コゲツが合流して映画館の中へ入り、まだ上映前のほんのりと明るい劇場内でそれぞれに飲み物を配る。
「コゲツはコーヒーで、キョウさんが炭酸の柚子、ダイさんが炭酸のイチゴ、そしてわたしがレモネード」
「んーっ、シャワシャワする」
「くはぁ。この炭酸というのは、面白い」
「二人共、上映前だからいいが、上映が始まったら、騒いでは駄目だからな」
「そこら辺は、家で教えられたから大丈夫だ」
「心配性だな、主は」
本当に大丈夫かなぁ? と、心配もあるけれど楽しみにしていた二人なので、そこは大丈夫だと信じたい。
テレビも大人しくというより、真剣に見ていることが多いからね。
最初の頃は質問が多くて、テレビどころでは無かったのも、少しだけ懐かしい。
今回はテレビっ子な二人が、テレビの宣伝で見たというコメディアクション映画だ。
「コゲツ、二人が楽しそうで良かったね」
「そうですね。嫁殿も楽しんで下さいね。そろそろ、始まりますよ」
「うん。映画は久しぶりだから、楽しみ」
劇場の照明が落とされ、スクリーンでは劇場内での注意を映画のキャラクターが説明している。
キョウさんとダイさんは、小さく頷いて食い入るように見ていた。
横のコゲツを見上げると、目隠しを外していて、映画の時は暗いから外しても周りからは見えないし、これからも映画に誘ってみようかな? と思う、わたしだったりする。
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