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完結後の番外編
アリルゥとルードニアの沐浴 日常まったり編
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黒い目をパチパチと瞬きをさせて、十番目の子供ルードニアがルーファスを見上げる。
双子の片割れである妹が傍に居なくても泣かないのは、大好きなお父さんが沐浴をさせてくれているからだ。
母親のアカリが沐浴させると泣いてしまうので、ルードニアの沐浴はルーファスの係りなのである。
逆にいえば、アリルゥの沐浴はアカリでなければ泣いてしまう為、アリルゥの沐浴係りはアカリだ。
「ルード、気持ちいいだろう」
手でルードニアの体を優しく撫で、父子の語らいを試みる。
獣人族の子供というより人族の子供そのもので、アカリの血を濃く受け継いでしまったのか、狼の耳も無ければ尻尾も無い。
アカリの黒目黒髪をそのまま受け継ぎ、今までの子供の中で早産のティルナールのように小さい。
しかし、アリルゥも同じように小さいため、二人そろえば気にならないサイズ感なのである。
こうして一人ずつ扱う時に、小柄な子供だと改めて気付く。
その分、ルーファスの手はいつも以上に丁寧に扱う。
だからこそルードニアは父親が入れてくれる沐浴が好きなのである。
「くぁ~……」
口を大きく開けて欠伸をするルードニアにつられて、ルーファスも欠伸を噛み殺す。
ふるっと頭を振り眠気を飛ばすと、ルードニアを柔らかい布で包む。
「さて、アカリの方は終わったかな。なぁ、ルード」
「はぷ」
「あー、こらこら。オレの指を吸わないでくれ。食いしん坊め」
ちゅっちゅと指に吸い付くルードニアにルーファスは困ったような顔で笑い、用意した小さな浴衣を片手で広げて着せる。
「ルーファス、ルードの沐浴は大丈夫だった?」
「ああ。そっちの沐浴はどうだった?」
「アリルゥはいい子にしてたよ、ねー」
アカリの腕の中で、沐浴上がりにほんのり頬が色づいているアリルゥにルーファスも頷く。
ルードニアと同じ様に狼の耳も尻尾も無いが、目だけはトリニア一族の金の目をした末娘はいい香りがする。
「アリルゥ。気持ち良かったか。んー、今日はメローネみたいな匂いがするな」
「うふふ。そうなの。ベビーソープを新しい匂いにしてみたの。だからご機嫌なのよ」
「本当にこの子は色んな匂いが好きだな」
末娘アリルゥは匂いにうるさい子のようで、匂い付きの物が大好きだ。
アカリがベビー用のボディシャンプー類を数多く集め、一つ一つアリルゥの前に持って行き、小さな手を伸ばしてお気に入りの一本をチョイスするまで繰り返される。
その分、沐浴はそれまで開始できず、時間が掛るのだ。
ルーファスは「もう子の匂いで良いんじゃないのか?」と押し切ろうとする為、一緒になって「このベビーソープはいい香りね。でもこっちも色も綺麗だし」と、悩んでくれるアカリの方がアリルゥは好きなのである。
「さぁ、ルード。アリルゥが来たぞ」
「良かったね。アリルゥ、ルードだよ」
双子は、お互いに横に並べてやると機嫌よく手足をぱたぱたと動かして、満足そうに顔を笑顔にする。
仲良しの双子にルーファスとアカリも微笑んで「うちの子は可愛い」と親ばか状態になったところで、コハルが部屋に顔を出した。
「ははうえ。ルーとアーは、ねんねした?」
「まだよ。湯冷ましを飲ませないといけないからね」
「うーっ」
「コハル。父上が遊んでやろう」
「それはやだぁ」
「コハル、父上は嫌か? 父上はコハルと遊んで欲しいんだがな」
「うー……ははうえがいいの」
口をへの字にさせたコハルに、ルーファスとアカリは目で「任せた」と役割分担を即座に決める。
アカリはコハルを抱きしめて、ルーファスは湯冷ましの哺乳瓶を用意して双子を両腕に抱く。
「さて、コハル。今日は何をして遊ぼうか?」
「えほん! ははうえ、えほんよんで!」
「絵本が良いの? おままごととか、お人形さん遊びじゃなくて良いの?」
「コハル、えほんをおぼえる! ルーとアーにおしえたげるの!」
「うんうん。コハルはすっかりお姉ちゃんだね。母上、張り切って絵本を読んじゃう!」
「やった!」
「さぁコハル、絵本をお部屋から持ってきて」
まるでボールが弾むようにコハルは部屋から出て行く。
小さな足音が二階に駆け上がっていく音に、ほんの少し前まで両親を我が物顔で独占していたコハルの成長ぶりにやはりルーファスとアカリは、うちの子は可愛いと微笑んで頷く。
「コハルにオレの絵本の読み聞かせは、お好みじゃないみたいだな」
「まぁまぁ。ルードとアリルゥにはルーファスが読み聞かせてあげれば良いじゃない」
「それはコハルに役目を譲ろう」
「それもそうね。コハルはお姉ちゃんになろうとしているのだものね」
「オレ達はコハルの応援をしながら、支援役に徹しよう」
アカリにキスをしてから双子をアカリに渡す。コハルが絵本を両手に抱えきれずに廊下に絵本を落として歩くのを見て、苦笑いしつつ絵本を拾い集めに行く。
笑顔でお気に入りの絵本を持ってコハルが頭の上に掲げる。
「これよんで!」
「いいよ。一緒に読もうか」
絵本を広げてルードニアとアリルゥに見えるように手前に持って、コハルの尻尾がパタパタと揺れる。
コハルの元気な声が絵本を読み聞かせ、「ははうえ、これなに?」と質問しつつ一生懸命な姿はお姉ちゃんになろうと幼いながらに微笑ましい。
そのうち上手に読み聞かせ出来るようになるのだろうと、楽しみなルーファスとアカリだった。
双子の片割れである妹が傍に居なくても泣かないのは、大好きなお父さんが沐浴をさせてくれているからだ。
母親のアカリが沐浴させると泣いてしまうので、ルードニアの沐浴はルーファスの係りなのである。
逆にいえば、アリルゥの沐浴はアカリでなければ泣いてしまう為、アリルゥの沐浴係りはアカリだ。
「ルード、気持ちいいだろう」
手でルードニアの体を優しく撫で、父子の語らいを試みる。
獣人族の子供というより人族の子供そのもので、アカリの血を濃く受け継いでしまったのか、狼の耳も無ければ尻尾も無い。
アカリの黒目黒髪をそのまま受け継ぎ、今までの子供の中で早産のティルナールのように小さい。
しかし、アリルゥも同じように小さいため、二人そろえば気にならないサイズ感なのである。
こうして一人ずつ扱う時に、小柄な子供だと改めて気付く。
その分、ルーファスの手はいつも以上に丁寧に扱う。
だからこそルードニアは父親が入れてくれる沐浴が好きなのである。
「くぁ~……」
口を大きく開けて欠伸をするルードニアにつられて、ルーファスも欠伸を噛み殺す。
ふるっと頭を振り眠気を飛ばすと、ルードニアを柔らかい布で包む。
「さて、アカリの方は終わったかな。なぁ、ルード」
「はぷ」
「あー、こらこら。オレの指を吸わないでくれ。食いしん坊め」
ちゅっちゅと指に吸い付くルードニアにルーファスは困ったような顔で笑い、用意した小さな浴衣を片手で広げて着せる。
「ルーファス、ルードの沐浴は大丈夫だった?」
「ああ。そっちの沐浴はどうだった?」
「アリルゥはいい子にしてたよ、ねー」
アカリの腕の中で、沐浴上がりにほんのり頬が色づいているアリルゥにルーファスも頷く。
ルードニアと同じ様に狼の耳も尻尾も無いが、目だけはトリニア一族の金の目をした末娘はいい香りがする。
「アリルゥ。気持ち良かったか。んー、今日はメローネみたいな匂いがするな」
「うふふ。そうなの。ベビーソープを新しい匂いにしてみたの。だからご機嫌なのよ」
「本当にこの子は色んな匂いが好きだな」
末娘アリルゥは匂いにうるさい子のようで、匂い付きの物が大好きだ。
アカリがベビー用のボディシャンプー類を数多く集め、一つ一つアリルゥの前に持って行き、小さな手を伸ばしてお気に入りの一本をチョイスするまで繰り返される。
その分、沐浴はそれまで開始できず、時間が掛るのだ。
ルーファスは「もう子の匂いで良いんじゃないのか?」と押し切ろうとする為、一緒になって「このベビーソープはいい香りね。でもこっちも色も綺麗だし」と、悩んでくれるアカリの方がアリルゥは好きなのである。
「さぁ、ルード。アリルゥが来たぞ」
「良かったね。アリルゥ、ルードだよ」
双子は、お互いに横に並べてやると機嫌よく手足をぱたぱたと動かして、満足そうに顔を笑顔にする。
仲良しの双子にルーファスとアカリも微笑んで「うちの子は可愛い」と親ばか状態になったところで、コハルが部屋に顔を出した。
「ははうえ。ルーとアーは、ねんねした?」
「まだよ。湯冷ましを飲ませないといけないからね」
「うーっ」
「コハル。父上が遊んでやろう」
「それはやだぁ」
「コハル、父上は嫌か? 父上はコハルと遊んで欲しいんだがな」
「うー……ははうえがいいの」
口をへの字にさせたコハルに、ルーファスとアカリは目で「任せた」と役割分担を即座に決める。
アカリはコハルを抱きしめて、ルーファスは湯冷ましの哺乳瓶を用意して双子を両腕に抱く。
「さて、コハル。今日は何をして遊ぼうか?」
「えほん! ははうえ、えほんよんで!」
「絵本が良いの? おままごととか、お人形さん遊びじゃなくて良いの?」
「コハル、えほんをおぼえる! ルーとアーにおしえたげるの!」
「うんうん。コハルはすっかりお姉ちゃんだね。母上、張り切って絵本を読んじゃう!」
「やった!」
「さぁコハル、絵本をお部屋から持ってきて」
まるでボールが弾むようにコハルは部屋から出て行く。
小さな足音が二階に駆け上がっていく音に、ほんの少し前まで両親を我が物顔で独占していたコハルの成長ぶりにやはりルーファスとアカリは、うちの子は可愛いと微笑んで頷く。
「コハルにオレの絵本の読み聞かせは、お好みじゃないみたいだな」
「まぁまぁ。ルードとアリルゥにはルーファスが読み聞かせてあげれば良いじゃない」
「それはコハルに役目を譲ろう」
「それもそうね。コハルはお姉ちゃんになろうとしているのだものね」
「オレ達はコハルの応援をしながら、支援役に徹しよう」
アカリにキスをしてから双子をアカリに渡す。コハルが絵本を両手に抱えきれずに廊下に絵本を落として歩くのを見て、苦笑いしつつ絵本を拾い集めに行く。
笑顔でお気に入りの絵本を持ってコハルが頭の上に掲げる。
「これよんで!」
「いいよ。一緒に読もうか」
絵本を広げてルードニアとアリルゥに見えるように手前に持って、コハルの尻尾がパタパタと揺れる。
コハルの元気な声が絵本を読み聞かせ、「ははうえ、これなに?」と質問しつつ一生懸命な姿はお姉ちゃんになろうと幼いながらに微笑ましい。
そのうち上手に読み聞かせ出来るようになるのだろうと、楽しみなルーファスとアカリだった。
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