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27章
ドラゴンハーレム15
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ギルド本部長のゴッチさんが『景品』をそれぞれの国から回収し、専用のガラスケースに仕舞い込まれていく。
ゴッチさんの左右にはギルドの警備忍と言われる……忍者? のような黒装束二人組がついて歩き、うちのドラゴン達は興味津々で忍者の周りをウロウロ中。
忍者も気になるし、景品がレアな事もあって、ドラゴンは不思議なものが好きだから目が離せないようだ。
「皆、お仕事の邪魔になるから、やめなさい」
私が注意すると、ドラゴン達は大人しく戻ってくるものの、会場に飾られていく景品のガラスケースを新聞の記事と交互に見ては、ルーファスに「アレ、欲しくない?」とおねだりしている。
ちなみに、うちのドラゴニア国からは、光竜アルビー特製の消えるマントもどき。
光の反射を利用して周りと同化させて見えるだけなので、違和感は多少ある。匂いも消せないので、獣人族には匂いでバレるし、不意打ち用ぐらいにしか使えない。
それでも、隠密行動を得意とする冒険者には便利な道具になるだろう。
「ルーファスは、どれが欲しいの?」
「オレか? そうだな……ドワーフの作ったブレスレットだな。攻撃に対して身を守る盾が出るらしい。コハルに持たせるには丁度いい」
「あー……そっかぁー」
小さな娘が大事なのは分かるけど、コハルにはルーファスや上の子達がついているから無用の長物だと思うのよね。
「うん? アカリも何か欲しいのか?」
「私は要らないかな。うん。欲しい物は、全部貰っているし」
ルーファスに抱き着いてぎゅぎゅーっと甘えて、大満足だと教える。
「アカリが、可愛い」
「ルーファスだけだよ。そう言ってくれるのは」
「オレの番が一番、可愛い」
「うんうん。ありがとう」
「可愛い」
「ルーファスも格好いいよ。世界一の旦那様。子供達の良いお父さん。私の愛してる番だものね」
ジッと見上げると、「オレのアカリが、好き過ぎて困る」と尻尾をブンブン振るところが、とっても可愛いルーファスだ。
ふふっ。ルーファスがとっても愛い~っ。
笑顔でルーファスに抱きついて、熟年夫婦のイチャイチャに周りのドラゴン達はしらけ切った顔をする。
そんなものに私達夫婦はお構いなしではあるけどね。
「アカリ。やはり十人目は必要じゃないか?」
「計画して子供を作るなんて野暮はしません。子供は授かりものだからね」
「アカリとなら、あと十人は作れそうだ」
「それは私が無理。子供は可愛いけど、私達にも寿命があるのだから、見た目は若くても年齢には勝てません」
何より、私とルーファスは命が繋がってしまっているから、死ぬときは同時。
残された子供が幼いと可哀想な気がしてしまうのよ。
それに子供達は成人を迎えて結婚して子供までいるのだから、私とルーファスは子沢山ファミリー。
望んだものはお互いに家族だったのだから、充分満たされている人生だ。
あとは子供達や孫達に、温泉大陸の皆が健康で幸せでのんびりと過ごしていく事だけが望み。
子供達が喜んでくれる事を―……と、考えたら、大会は優勝したら駄目かもしれない。
「ねぇ、ルーファス。私達は刻狼亭の為にも、本気はあまり出さないで挑みましょうね」
「それは無理だ」
「どうして?」
「勝負ごとに自分の力を出し惜しみしては、十五代目当主の名折れだ」
フッとルーファスが不敵な笑みを浮かべ、私は「あらあら」と手を口に当てる。
これは刻狼亭チームには決勝以外でかち合わない方がいいかも?
ルーファスはやる気満々のようだし、私もなんだかんだで負けず嫌いではあるしね。
うちのドラゴン達もきっと負ける気はないと思うし、オーバーキルしなきゃ良いのだけど。
むしろ、よく私達ドラゴニア国の参加を求めてきたなぁって、不思議なところ。
刻狼亭はともかく、ドラゴンを相手にしようなんて、私は腕試しでも嫌だけどなぁ。
「まぁ、アカリは後ろで応援だけしてくれれば、オレが一人でも勝ち進めてみせるさ」
「んーっ、私も他の国と戦うのは、少しだけ楽しみなんだよ?」
「なら二人で、あの景品を端から端まで奪ってしまおうか」
「いいねぇ。温泉大陸にドラゴニアのお店を出しちゃおうか?」
顔を見合わせて、「もう酒場があるな」と笑い合って私達は会場を後にした。
ドラゴン達も私達の後に続き、自分はあの国の景品は自分の物だと騒いで、もう貰う気でいる辺り、私達は勝者気分だったのかもしれない。
まさかの番狂わせがあるなんて、私達は想像していなかった。
ゴッチさんの左右にはギルドの警備忍と言われる……忍者? のような黒装束二人組がついて歩き、うちのドラゴン達は興味津々で忍者の周りをウロウロ中。
忍者も気になるし、景品がレアな事もあって、ドラゴンは不思議なものが好きだから目が離せないようだ。
「皆、お仕事の邪魔になるから、やめなさい」
私が注意すると、ドラゴン達は大人しく戻ってくるものの、会場に飾られていく景品のガラスケースを新聞の記事と交互に見ては、ルーファスに「アレ、欲しくない?」とおねだりしている。
ちなみに、うちのドラゴニア国からは、光竜アルビー特製の消えるマントもどき。
光の反射を利用して周りと同化させて見えるだけなので、違和感は多少ある。匂いも消せないので、獣人族には匂いでバレるし、不意打ち用ぐらいにしか使えない。
それでも、隠密行動を得意とする冒険者には便利な道具になるだろう。
「ルーファスは、どれが欲しいの?」
「オレか? そうだな……ドワーフの作ったブレスレットだな。攻撃に対して身を守る盾が出るらしい。コハルに持たせるには丁度いい」
「あー……そっかぁー」
小さな娘が大事なのは分かるけど、コハルにはルーファスや上の子達がついているから無用の長物だと思うのよね。
「うん? アカリも何か欲しいのか?」
「私は要らないかな。うん。欲しい物は、全部貰っているし」
ルーファスに抱き着いてぎゅぎゅーっと甘えて、大満足だと教える。
「アカリが、可愛い」
「ルーファスだけだよ。そう言ってくれるのは」
「オレの番が一番、可愛い」
「うんうん。ありがとう」
「可愛い」
「ルーファスも格好いいよ。世界一の旦那様。子供達の良いお父さん。私の愛してる番だものね」
ジッと見上げると、「オレのアカリが、好き過ぎて困る」と尻尾をブンブン振るところが、とっても可愛いルーファスだ。
ふふっ。ルーファスがとっても愛い~っ。
笑顔でルーファスに抱きついて、熟年夫婦のイチャイチャに周りのドラゴン達はしらけ切った顔をする。
そんなものに私達夫婦はお構いなしではあるけどね。
「アカリ。やはり十人目は必要じゃないか?」
「計画して子供を作るなんて野暮はしません。子供は授かりものだからね」
「アカリとなら、あと十人は作れそうだ」
「それは私が無理。子供は可愛いけど、私達にも寿命があるのだから、見た目は若くても年齢には勝てません」
何より、私とルーファスは命が繋がってしまっているから、死ぬときは同時。
残された子供が幼いと可哀想な気がしてしまうのよ。
それに子供達は成人を迎えて結婚して子供までいるのだから、私とルーファスは子沢山ファミリー。
望んだものはお互いに家族だったのだから、充分満たされている人生だ。
あとは子供達や孫達に、温泉大陸の皆が健康で幸せでのんびりと過ごしていく事だけが望み。
子供達が喜んでくれる事を―……と、考えたら、大会は優勝したら駄目かもしれない。
「ねぇ、ルーファス。私達は刻狼亭の為にも、本気はあまり出さないで挑みましょうね」
「それは無理だ」
「どうして?」
「勝負ごとに自分の力を出し惜しみしては、十五代目当主の名折れだ」
フッとルーファスが不敵な笑みを浮かべ、私は「あらあら」と手を口に当てる。
これは刻狼亭チームには決勝以外でかち合わない方がいいかも?
ルーファスはやる気満々のようだし、私もなんだかんだで負けず嫌いではあるしね。
うちのドラゴン達もきっと負ける気はないと思うし、オーバーキルしなきゃ良いのだけど。
むしろ、よく私達ドラゴニア国の参加を求めてきたなぁって、不思議なところ。
刻狼亭はともかく、ドラゴンを相手にしようなんて、私は腕試しでも嫌だけどなぁ。
「まぁ、アカリは後ろで応援だけしてくれれば、オレが一人でも勝ち進めてみせるさ」
「んーっ、私も他の国と戦うのは、少しだけ楽しみなんだよ?」
「なら二人で、あの景品を端から端まで奪ってしまおうか」
「いいねぇ。温泉大陸にドラゴニアのお店を出しちゃおうか?」
顔を見合わせて、「もう酒場があるな」と笑い合って私達は会場を後にした。
ドラゴン達も私達の後に続き、自分はあの国の景品は自分の物だと騒いで、もう貰う気でいる辺り、私達は勝者気分だったのかもしれない。
まさかの番狂わせがあるなんて、私達は想像していなかった。
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