948 / 960
27章
ドラゴンハーレム14
しおりを挟む
武術大会の事前試合は、無事に終わったというべきか……お互いの国で睨み合いと、対策が色々とこれから練られていくのだろう。
私達はいつも通り、大きなレストランで『事前試合お疲れ様会』と称して、大きなテーブルで料理を並べどんちゃん騒ぎをしていた。
小鬼グループも一緒なので、それはそれは騒がしい。
貸し切りにして正解ともいえる。小さな子供がおかずの取り合いをするようなものだから、小鬼達もキャアキャア騒いでいるし、うちのドラゴン達もお酒で酔っぱらっているからね。
「きゃーん! このトマト煮の肉団子美味しい~っ!」
可愛い声をあげているのはキリンちゃんで、頬に手を当てて上機嫌だ。
上機嫌というより、酔っている。
「ちょっと、キリンちゃんにお酒を飲ませたの、誰?」
「えーと……」
「我は知らん」
「アタシも」
バッと、顔をそむけるドラゴン達にジト目で睨みつけ、これはリュエールに雷を落とされてしまうかも。
あの子も自分のお嫁さんを箱入りにしてしまいたい性質だから、今回はよく武術大会に参加させたというぐらいなのよね。
我が家の長男リュエールは、誰に似たのか計算高い所もあるから、大方、温泉大陸の宣伝には他種族の多さを利用するために、キリンちゃんの参加は欠かせなかったのがあるのだろう。
キリンちゃん自身も『エルフだって、温泉大陸で生活できることを証明しなきゃ!』と、息巻いていた。
「お義母さーん。これ、すっごーく美味しいんですよー」
「あ、うん。ありがとうね、キリンちゃん」
半熟卵のかかったサラダをベーグルで挟んだものを手に、キリンちゃんが私に絡みついてくる。
完全に出来上がっているわね。
私もお酒に酔うと、絡み癖があるというし、こんな感じなのかもしれない。
キリンちゃんに頬をすり寄られ、頬にいっぱいキスをされて苦笑いが漏れ出る。
「キリン。そろそろリューが癇癪を起す事態になるから、止めておけ」
「お義父さん。だいじょーぶ! リューは、こくろーてー忙しいからぁ」
ついにはルーファスにも絡み始め、息子嫁を無下にも出来ず、耳が下がり気味で助けてほしそうな顔で私を見た。
どうやら、リュエールが忙しすぎるのと自分が忙しい事で、夫婦間にすれ違いが起きてしまっているようだ。
確かに、私達夫婦も刻狼亭を切り盛りしていた時は、それなりに忙しかったし、子供も双子で大変だった。
ようやく落ち着いたのは、リュエールが跡目を継いでからだから、キリンちゃん達が落ち着くのはまだ先のことだろう。
ルーファスからキリンちゃんを預かり、頭をよしよしと撫でて彼女の愚痴を聞く。
これも姑のお仕事だ。
すっかり夜も更けて、それぞれがホテルの部屋に戻る頃には、真面な人が残っていたかはわからない。
お酒に弱いテンが、それぞれの首根っこを掴んで部屋に放り込んでいたのだけは薄っすら覚えている。
私もキリンちゃんに「お義母さんも飲んでー」とお酒を注がれて、記憶がぼんやりだ。
目を覚ますと、ドラゴン達が周りで寝ていて、中央で獣化したルーファスに丸め込まれるように私が寝ていた。
「あたた……」
頭がガンガンと痛み、二日酔いのようだ。
ヒドラのクリスタルでも、こうした現象は抑えきれるものではない。
病気じゃないからなのか、カウントされないのが不思議なところ。
「あー……随分と、酒臭いな」
「おはよー、ルーファスは二日酔いは平気?」
「少し頭に響く程度だ」
気怠そうな声からして、少しどころではないのだろう。鼻にしわが寄っている。
ドラゴン達も起きたのか「頭がー」と、騒ぎ始めていた。
「今日の朝は、ご飯に二日酔いにいい物を頼もうね」
「こうした時は、ハガネが何か作ってくれている物だが、今回は無理そうだな」
ドラゴン達の中から茶色いアナグマが手を出して「無理」と声を出す。
ハガネもしっかり飲んでいたから、これは二日酔いチームの出来上がりだ。
「お義父さん、お義母さん。おはようございまーす!」
元気な声でキリンちゃんが挨拶に現れ、昨日一番酔っぱらっていたよね!? と、驚いたのだけど、エルフ族は森の中で出来る濃度の高い果実酒を飲んでいる為に、二日酔いにはなりにくいのだとか……
そういえば、毎年キリンちゃんのご両親がお酒を大量に送ってきてくれていたわね……エルフ侮りがたし!
ついでに、ドワーフとの酒飲み大会に負けない為に、段々と濃度が高くなったのだとか。
「そうそう。新聞貰ってきましたよー」
キリンちゃんに新聞を貰い、ルーファスにも見えるように広げる。
写真が異世界でも広がったおかげで、新聞も写真付きでカラフル!
「ほう。景品一覧と事前試合の様子が載っているな。シューがよく映っている」
「シューちゃんは、ハンサムさんだよねぇ。流石、私の息子さんだわ」
「オレも髪を伸ばしてみるか?」
「ルーファスは、その髪の長さが一番似合っているから、シューちゃんに似せなくてもいいじゃない」
何より、シュトラールの髪の長さで後姿の見分けを付けている人達も居るぐらいだしね。
真正面じゃないと、ルーファスもシュトラールも似すぎているのよ。
「しかし、景品……全部集めたくなるな」
「ルーファス。収集癖を直さないと、リューちゃんに怒られちゃうよ?」
「あー、まぁ、そうなんだが……勝てば、貰えるわけだしな……」
もごもご言っているけれど、これは獲物を狙いに行く狩人の目だわ。
うん。勝てば、貰えるから……多少は、大目に見てもらえるだろうけど、リュエールに「父上ー!」とたまに雷を落とされているから、ほどほどにしないとね。
それにしてもだ……景品なのに、怪しい魔女の道具ばかりに見えるのは、気のせいなのかしら?
私達はいつも通り、大きなレストランで『事前試合お疲れ様会』と称して、大きなテーブルで料理を並べどんちゃん騒ぎをしていた。
小鬼グループも一緒なので、それはそれは騒がしい。
貸し切りにして正解ともいえる。小さな子供がおかずの取り合いをするようなものだから、小鬼達もキャアキャア騒いでいるし、うちのドラゴン達もお酒で酔っぱらっているからね。
「きゃーん! このトマト煮の肉団子美味しい~っ!」
可愛い声をあげているのはキリンちゃんで、頬に手を当てて上機嫌だ。
上機嫌というより、酔っている。
「ちょっと、キリンちゃんにお酒を飲ませたの、誰?」
「えーと……」
「我は知らん」
「アタシも」
バッと、顔をそむけるドラゴン達にジト目で睨みつけ、これはリュエールに雷を落とされてしまうかも。
あの子も自分のお嫁さんを箱入りにしてしまいたい性質だから、今回はよく武術大会に参加させたというぐらいなのよね。
我が家の長男リュエールは、誰に似たのか計算高い所もあるから、大方、温泉大陸の宣伝には他種族の多さを利用するために、キリンちゃんの参加は欠かせなかったのがあるのだろう。
キリンちゃん自身も『エルフだって、温泉大陸で生活できることを証明しなきゃ!』と、息巻いていた。
「お義母さーん。これ、すっごーく美味しいんですよー」
「あ、うん。ありがとうね、キリンちゃん」
半熟卵のかかったサラダをベーグルで挟んだものを手に、キリンちゃんが私に絡みついてくる。
完全に出来上がっているわね。
私もお酒に酔うと、絡み癖があるというし、こんな感じなのかもしれない。
キリンちゃんに頬をすり寄られ、頬にいっぱいキスをされて苦笑いが漏れ出る。
「キリン。そろそろリューが癇癪を起す事態になるから、止めておけ」
「お義父さん。だいじょーぶ! リューは、こくろーてー忙しいからぁ」
ついにはルーファスにも絡み始め、息子嫁を無下にも出来ず、耳が下がり気味で助けてほしそうな顔で私を見た。
どうやら、リュエールが忙しすぎるのと自分が忙しい事で、夫婦間にすれ違いが起きてしまっているようだ。
確かに、私達夫婦も刻狼亭を切り盛りしていた時は、それなりに忙しかったし、子供も双子で大変だった。
ようやく落ち着いたのは、リュエールが跡目を継いでからだから、キリンちゃん達が落ち着くのはまだ先のことだろう。
ルーファスからキリンちゃんを預かり、頭をよしよしと撫でて彼女の愚痴を聞く。
これも姑のお仕事だ。
すっかり夜も更けて、それぞれがホテルの部屋に戻る頃には、真面な人が残っていたかはわからない。
お酒に弱いテンが、それぞれの首根っこを掴んで部屋に放り込んでいたのだけは薄っすら覚えている。
私もキリンちゃんに「お義母さんも飲んでー」とお酒を注がれて、記憶がぼんやりだ。
目を覚ますと、ドラゴン達が周りで寝ていて、中央で獣化したルーファスに丸め込まれるように私が寝ていた。
「あたた……」
頭がガンガンと痛み、二日酔いのようだ。
ヒドラのクリスタルでも、こうした現象は抑えきれるものではない。
病気じゃないからなのか、カウントされないのが不思議なところ。
「あー……随分と、酒臭いな」
「おはよー、ルーファスは二日酔いは平気?」
「少し頭に響く程度だ」
気怠そうな声からして、少しどころではないのだろう。鼻にしわが寄っている。
ドラゴン達も起きたのか「頭がー」と、騒ぎ始めていた。
「今日の朝は、ご飯に二日酔いにいい物を頼もうね」
「こうした時は、ハガネが何か作ってくれている物だが、今回は無理そうだな」
ドラゴン達の中から茶色いアナグマが手を出して「無理」と声を出す。
ハガネもしっかり飲んでいたから、これは二日酔いチームの出来上がりだ。
「お義父さん、お義母さん。おはようございまーす!」
元気な声でキリンちゃんが挨拶に現れ、昨日一番酔っぱらっていたよね!? と、驚いたのだけど、エルフ族は森の中で出来る濃度の高い果実酒を飲んでいる為に、二日酔いにはなりにくいのだとか……
そういえば、毎年キリンちゃんのご両親がお酒を大量に送ってきてくれていたわね……エルフ侮りがたし!
ついでに、ドワーフとの酒飲み大会に負けない為に、段々と濃度が高くなったのだとか。
「そうそう。新聞貰ってきましたよー」
キリンちゃんに新聞を貰い、ルーファスにも見えるように広げる。
写真が異世界でも広がったおかげで、新聞も写真付きでカラフル!
「ほう。景品一覧と事前試合の様子が載っているな。シューがよく映っている」
「シューちゃんは、ハンサムさんだよねぇ。流石、私の息子さんだわ」
「オレも髪を伸ばしてみるか?」
「ルーファスは、その髪の長さが一番似合っているから、シューちゃんに似せなくてもいいじゃない」
何より、シュトラールの髪の長さで後姿の見分けを付けている人達も居るぐらいだしね。
真正面じゃないと、ルーファスもシュトラールも似すぎているのよ。
「しかし、景品……全部集めたくなるな」
「ルーファス。収集癖を直さないと、リューちゃんに怒られちゃうよ?」
「あー、まぁ、そうなんだが……勝てば、貰えるわけだしな……」
もごもご言っているけれど、これは獲物を狙いに行く狩人の目だわ。
うん。勝てば、貰えるから……多少は、大目に見てもらえるだろうけど、リュエールに「父上ー!」とたまに雷を落とされているから、ほどほどにしないとね。
それにしてもだ……景品なのに、怪しい魔女の道具ばかりに見えるのは、気のせいなのかしら?
50
お気に入りに追加
4,625
あなたにおすすめの小説

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。
鯖
恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。
パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。
「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて
アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。
二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。