947 / 960
27章
ドラゴンハーレム13
しおりを挟む
『大会のルールでは、大将を倒されると負けです~。団体六名同士で掛かるもよし、一人ずつ戦うでも良しとなりますが~……今回は、六人で総攻撃戦でお願いしますね~』
テンのルール説明がされている間に、すでに試合場ではそれぞれが位置についていた。
試合場はバスケットコート二つ分という所だろうか?
確か、バスケットコートのサイズは一つで縦二十八メートル横十五メートルだったかな?
戦いにおいて、それが広いのか狭いのかは分からないけどね。
「温泉大陸はやはり、他種族の集まりのようだな」
ベルドラ国の男性にそう言われて、温泉大陸側は「あー、確かに」という顔を今更している。
大会は中継魔法で見える為、会話も筒抜けで、今回はその音声や画像のテストも兼ねた事前試合だ。
「でも、オレ等は家族だからね。皆、親戚!」
「俺は微妙だけどな」
「何言ってんの! ハガネもオレ等の家族でしょ!」
「まぁ、保護者ではあるな」
そういえば、今、試合場に居るハガネ以外は親戚同士ではある。
シュトラールとキリンちゃんは元より、リロノスさんもナルアの義父になるわけだし、イルマールくんも然り。
種族で言うなら、獣人、エルフ、魔族とバラバラ。
「統一感のない奴等だ」
「種族が一緒なら統一感があるって、考えるのは時代遅れだよ。オレのお嫁さん精霊族だしね! オレ自身も獣人と人族が半々だもの。娘達も可愛いし!!」
ベルドラ国側はどうも挑発したいらしいのだけど、うちのシュトラールにそういう挑発って、効かないのよね。
こういう挑発で頭に血が上りやすいのは、実はリュエールの方だったりするから、リュエールが参加しなくて良かった……と、いうべきかな?
「シューは冷静なのか聞く耳持たないだけか、分からん奴だな」
「ふふっ、そこがシューちゃんの良いところなのよ」
「何事においても、頭に血が上った方が動きが鈍るから、この点では有利か」
ルーファスは顎に手を当ててじっくり観察中ではあるけれど、我が家の息子さんはただ単に、マイペースなだけ。
「いけー! シューやっちゃえー!」
「ボッコボコにしちゃえー!」
「こらぁ。あなた達、うちのシューちゃんを悪のりさせようとしないで」
「だってアカリ。私達だって、シューの家族だもの。馬鹿にされたら怒るよー」
「そうだぞ! 嫁。ここは先制攻撃あるのみだ!」
「ボッコボコよー!」
「アルビー、スピナ、グリムレイン。あなた達は~、もう!」
三人を叱りつけて、シュトラールに視線を戻せば、戦闘開始となっていたらしく、一番初めに動いたのはハガネだった。
「【防御上昇】【速度上昇】【攻撃力上昇】っと、こんなもんで良いか」
「ありがとー! ハガネは後は下がっててよ」
「ほいほい。俺は見学しとく」
ハガネは魔法で全員の身体強化をすると、早々に降参して試合場から出てしまう。
なんともハガネらしいというか、やる気が無いというべきか……
「あーっ! ハガネの根性無しー!」
「うっせー! だから、本番前に全力でやるかっつーの!」
「テンは全力でって、言ってるだろー!」
「知るかー! 俺は、元々全力でやっても後衛だから関係ねぇー!」
野次を飛ばす外野にハガネが拳を上げて文句を言えば、倍返しで返ってきている。
困った外野の応援団だ。
「ふざけた奴等だ」
ベルドラ国の人も呆れ気味で、手に持っていたシャムシールを振りかざした。
シャムシールは、半月刀といわれる刃が月のようにカーブを描いた細身の剣。
東北の国ではそうした形状の剣が多く、ミシリマーフ国出身のイルマールくんの武器もシャムシールなので、私達としては見慣れた武器だ。
イルマールくんのシャムシールと違ったのは、ベルドラ国の人達のシャムシールは魔法が付与された剣だったことだ。
彼等の剣は火をまとっていた。
「うわぁ……魔法剣は初めてかも!」
「シューくん! 感心してないで!」
キリンちゃんがシュトラールを叱りつけ、手に持っていた弓矢を素早い速度で三本ずつ連射していく。
キリンちゃんの矢が届く前にシャムシールの一振りで、矢は黒焦げになってしまう。
しかし、うちのお嫁さんは不敵な笑みを浮かべている。
「わたしの矢は、特別なんだから!」
キュルキュルと風を切るような音がすると、燃え落ちた矢の矢じり部分だけは残り、相手の肌をかすめていく。
「ここはアタシが!」
ベルドラ国の紅一点だった女性が飛び出し、まるで踊るようにシャムシールでキリンちゃんに襲い掛かる。
キリンちゃんもまた踊るように避けるのだから、エルフの身軽さには目を見張るものがある。
「女は女同士、やり合いましょうね!」
「エルフは森に帰って、木の実でも齧ってなさいよ!」
弓本体を攻撃武器として振り回すキリンちゃんに、弓ってそういう風に使うものじゃないよね!? と、野暮な事を叫ぶのはやめておこう。
女性陣が戦う周りでは、男性陣も戦い始めている。
シュトラールが一番体格のいい男性を相手にし、リロノスさんとイルマールくんが残りを受け持つ感じだ。
それぞれが白熱した戦いを見せ、相手に押され気味になるとシュトラールの全体回復で回復してしまうものだから、相手が持久戦に負けてしまった形だ。
結果としては、温泉大陸の勝ちは勝ちだったものの……ハガネが実は大将だったものだから、それはどうなの!? と、ブーイングがあり、勝敗は無し!
『もっと派手に会場を壊したりして欲しかったですねぇ~』
テンが残念そうなアナウンスをして、第一回戦の事前試合は終わった。
テンのルール説明がされている間に、すでに試合場ではそれぞれが位置についていた。
試合場はバスケットコート二つ分という所だろうか?
確か、バスケットコートのサイズは一つで縦二十八メートル横十五メートルだったかな?
戦いにおいて、それが広いのか狭いのかは分からないけどね。
「温泉大陸はやはり、他種族の集まりのようだな」
ベルドラ国の男性にそう言われて、温泉大陸側は「あー、確かに」という顔を今更している。
大会は中継魔法で見える為、会話も筒抜けで、今回はその音声や画像のテストも兼ねた事前試合だ。
「でも、オレ等は家族だからね。皆、親戚!」
「俺は微妙だけどな」
「何言ってんの! ハガネもオレ等の家族でしょ!」
「まぁ、保護者ではあるな」
そういえば、今、試合場に居るハガネ以外は親戚同士ではある。
シュトラールとキリンちゃんは元より、リロノスさんもナルアの義父になるわけだし、イルマールくんも然り。
種族で言うなら、獣人、エルフ、魔族とバラバラ。
「統一感のない奴等だ」
「種族が一緒なら統一感があるって、考えるのは時代遅れだよ。オレのお嫁さん精霊族だしね! オレ自身も獣人と人族が半々だもの。娘達も可愛いし!!」
ベルドラ国側はどうも挑発したいらしいのだけど、うちのシュトラールにそういう挑発って、効かないのよね。
こういう挑発で頭に血が上りやすいのは、実はリュエールの方だったりするから、リュエールが参加しなくて良かった……と、いうべきかな?
「シューは冷静なのか聞く耳持たないだけか、分からん奴だな」
「ふふっ、そこがシューちゃんの良いところなのよ」
「何事においても、頭に血が上った方が動きが鈍るから、この点では有利か」
ルーファスは顎に手を当ててじっくり観察中ではあるけれど、我が家の息子さんはただ単に、マイペースなだけ。
「いけー! シューやっちゃえー!」
「ボッコボコにしちゃえー!」
「こらぁ。あなた達、うちのシューちゃんを悪のりさせようとしないで」
「だってアカリ。私達だって、シューの家族だもの。馬鹿にされたら怒るよー」
「そうだぞ! 嫁。ここは先制攻撃あるのみだ!」
「ボッコボコよー!」
「アルビー、スピナ、グリムレイン。あなた達は~、もう!」
三人を叱りつけて、シュトラールに視線を戻せば、戦闘開始となっていたらしく、一番初めに動いたのはハガネだった。
「【防御上昇】【速度上昇】【攻撃力上昇】っと、こんなもんで良いか」
「ありがとー! ハガネは後は下がっててよ」
「ほいほい。俺は見学しとく」
ハガネは魔法で全員の身体強化をすると、早々に降参して試合場から出てしまう。
なんともハガネらしいというか、やる気が無いというべきか……
「あーっ! ハガネの根性無しー!」
「うっせー! だから、本番前に全力でやるかっつーの!」
「テンは全力でって、言ってるだろー!」
「知るかー! 俺は、元々全力でやっても後衛だから関係ねぇー!」
野次を飛ばす外野にハガネが拳を上げて文句を言えば、倍返しで返ってきている。
困った外野の応援団だ。
「ふざけた奴等だ」
ベルドラ国の人も呆れ気味で、手に持っていたシャムシールを振りかざした。
シャムシールは、半月刀といわれる刃が月のようにカーブを描いた細身の剣。
東北の国ではそうした形状の剣が多く、ミシリマーフ国出身のイルマールくんの武器もシャムシールなので、私達としては見慣れた武器だ。
イルマールくんのシャムシールと違ったのは、ベルドラ国の人達のシャムシールは魔法が付与された剣だったことだ。
彼等の剣は火をまとっていた。
「うわぁ……魔法剣は初めてかも!」
「シューくん! 感心してないで!」
キリンちゃんがシュトラールを叱りつけ、手に持っていた弓矢を素早い速度で三本ずつ連射していく。
キリンちゃんの矢が届く前にシャムシールの一振りで、矢は黒焦げになってしまう。
しかし、うちのお嫁さんは不敵な笑みを浮かべている。
「わたしの矢は、特別なんだから!」
キュルキュルと風を切るような音がすると、燃え落ちた矢の矢じり部分だけは残り、相手の肌をかすめていく。
「ここはアタシが!」
ベルドラ国の紅一点だった女性が飛び出し、まるで踊るようにシャムシールでキリンちゃんに襲い掛かる。
キリンちゃんもまた踊るように避けるのだから、エルフの身軽さには目を見張るものがある。
「女は女同士、やり合いましょうね!」
「エルフは森に帰って、木の実でも齧ってなさいよ!」
弓本体を攻撃武器として振り回すキリンちゃんに、弓ってそういう風に使うものじゃないよね!? と、野暮な事を叫ぶのはやめておこう。
女性陣が戦う周りでは、男性陣も戦い始めている。
シュトラールが一番体格のいい男性を相手にし、リロノスさんとイルマールくんが残りを受け持つ感じだ。
それぞれが白熱した戦いを見せ、相手に押され気味になるとシュトラールの全体回復で回復してしまうものだから、相手が持久戦に負けてしまった形だ。
結果としては、温泉大陸の勝ちは勝ちだったものの……ハガネが実は大将だったものだから、それはどうなの!? と、ブーイングがあり、勝敗は無し!
『もっと派手に会場を壊したりして欲しかったですねぇ~』
テンが残念そうなアナウンスをして、第一回戦の事前試合は終わった。
30
お気に入りに追加
4,621
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。