黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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27章

ドラゴンハーレム6

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 旧・女将亭でドラゴン達を集めて作戦会議中である。
 武術大会に出たいと騒ぐのは、黒狼亭の従業員だけではない。我が家のドラゴン達も物見遊山気分で行きたいと騒いでいるのだ。

「召喚士っぽくさ、アカリが召喚術を使っているような振りで、ボクの光魔法で屈折させて皆で登場とか!」
「アルビー、それは私がドラゴン召喚士とか変な称号付けられそう」
「いいじゃない。アカリは色々もう称号付きまわっているんだし」

 アルビーの提案を却下し、ハイハイ! と、声をあげる他のドラゴン達の意見も聞く。

「我は参加するからな! 我が嫁の一番初めのドラゴンなのだから!」
「それならエデンも! エデンもー!」
「こらこら。喧嘩しないの」

 ドラゴン達はとにかく自分がいくと言って聞かず、この話し合いは堂々巡りを繰り返している。
 いつもならば、「ボクは興味ないかなー」と言うアルビーですら、行きたがっているのは、世界の名だたる英雄と呼ばれる人々が一ヵ所に集まる。つまり、ドラゴン達にとって知識として覚えていたいことらしい。
 ドラゴンは永遠を生きる為に、他の種族をつぶさに観察しなければ、いつの間にか死んでいるから……という、ドラゴンらしいといえば、らしい理由だ。

「アカリ~連れて行って―」
「あー、もう。皆ワガママ言わないの。私を含めて六人までなの。あとは観客として見に行くしか無いけど……観客席もチケットがほぼ完売だし……」

 揉める理由の一つは、この観客席の無さもある。
 各国の人々がこぞって来るために、観客も多い訳で……

「なら、アカリの髪飾りに擬態するからぁ~」
「じゃあ、アタシはアカリの着物の帯どめにでも擬態するわ」
「ちょっと、待って、待ってー! それじゃバレた時、私が怒られるじゃない!」

 ドラゴン達はお互いに顔を見つめ合った後「わかんない」と言わんばかりに首を傾げる。
 傾げても、私が怒られるのは変わらないだろう……

「おかーさん、いっしょ、いこう?」
「ピスターシュも行きたいの? うーん。小さい子は連れ去られると怖いから、お留守番よ」
「やーだー! おかーさんといくのー!」

 ピスターシュまでもが床でジタバタと手足を動かして、ワガママを言い始め、これはもう収集付きそうにない。
 私が困り果てた顔をしていた頃、【黒狼亭】でも私と同じ顔をしていた人物がいた。

 そう、私の息子リュエールである。

「いい加減にしてよね! 温泉大陸の代表として行くなら、ヒドラの一匹や二匹倒せるぐらいの人材で無きゃ駄目だし、温泉大陸の警備も手薄には出来ないんだからね!」
「えー! オレ、ヒドラの称号『七つ首斬首』持ってるよー!」
「シューは黙って! 前回のヒドラ討伐のクリスタルは父上と母上が使ってしまったから、参加者にも同じものを持たせたいんだよね。何があるか分からないからさ。勿論、以前の回復だけのヒドラのクリスタルでも良いけど」

 この時点で、脱落する者とヒドラ狩りだー! と息巻く者とで別れ、あとはお祭り騒ぎの従業員達が「拳で語り合って決めよう!」と対抗試合を提案したりと、なかなかにこちらもリュエールが苦虫を噛みつぶしたような顔で「仕事をして!」と叫ぶ姿があったそうだ。


 ―――数日後。

 ドラゴニア国のチームは、私とルーファス、アルビー、グリムレイン、ニクストローブ、ネルフィームの六人。
 ネルフィームも聞きつけて参加すると駄々をこねるから、ギルさんになんとかしてもらおうと思ったけど、無駄だった。

「ネルフィームと愛息子アルビーの応援をする為に、私はイルブールに観覧席を用意してもらったよ。勿論、他のドラゴン達も観客席で私と一緒がいいだろう?」

 そんな言葉に、ドラゴン達は大はしゃぎで……あれよあれよという間に決まってしまった。
 ギルさんは貴族の権力を最大限に使ったようで、金持ちは恐ろしい。

 温泉大陸の代表チームは、シュトラールを筆頭に、ハガネ、リロノスさん、イルマールくん、キリンちゃん、テンの六人。
 シュトラールは出たいと騒いでいたし、回復魔法に冒険者でもあるから納得なのだけどね。
 ハガネは、従業員の対抗試合でヤジを飛ばして揶揄からかっていたら、いつの間にか巻き込まれて、勝ち抜けしてしまった。
 リロノスさんも巻き込まれで、イルマールくんはリリスちゃんに『賞金をとってきて!』とお願いされての参加。
 キリンちゃんは「温泉大陸にエルフを呼ぶには、わたしが一番でしょ? 宣伝です!」と、逞しい女将ぶりで参加を勝ち取った。
 テンは興味なさげだったのだけど、小鬼ちゃんが「たまには実家に顔を出したいですね」という一言で、イルブール行きを決めたのだから、相変わらずの小鬼ファーストだ。

 そして、招待状も届き、観客席も幾つか確保できたから、ここでも争奪戦が起きたのだけど、それは割愛しておこうかな。
 こうして、私達は武術大会に向けて参加者のエントリーだけは済ませたのだった。
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