939 / 960
27章
ドラゴンハーレム6
しおりを挟む
旧・女将亭でドラゴン達を集めて作戦会議中である。
武術大会に出たいと騒ぐのは、黒狼亭の従業員だけではない。我が家のドラゴン達も物見遊山気分で行きたいと騒いでいるのだ。
「召喚士っぽくさ、アカリが召喚術を使っているような振りで、ボクの光魔法で屈折させて皆で登場とか!」
「アルビー、それは私がドラゴン召喚士とか変な称号付けられそう」
「いいじゃない。アカリは色々もう称号付きまわっているんだし」
アルビーの提案を却下し、ハイハイ! と、声をあげる他のドラゴン達の意見も聞く。
「我は参加するからな! 我が嫁の一番初めのドラゴンなのだから!」
「それならエデンも! エデンもー!」
「こらこら。喧嘩しないの」
ドラゴン達はとにかく自分がいくと言って聞かず、この話し合いは堂々巡りを繰り返している。
いつもならば、「ボクは興味ないかなー」と言うアルビーですら、行きたがっているのは、世界の名だたる英雄と呼ばれる人々が一ヵ所に集まる。つまり、ドラゴン達にとって知識として覚えていたいことらしい。
ドラゴンは永遠を生きる為に、他の種族をつぶさに観察しなければ、いつの間にか死んでいるから……という、ドラゴンらしいといえば、らしい理由だ。
「アカリ~連れて行って―」
「あー、もう。皆ワガママ言わないの。私を含めて六人までなの。あとは観客として見に行くしか無いけど……観客席もチケットがほぼ完売だし……」
揉める理由の一つは、この観客席の無さもある。
各国の人々がこぞって来るために、観客も多い訳で……
「なら、アカリの髪飾りに擬態するからぁ~」
「じゃあ、アタシはアカリの着物の帯どめにでも擬態するわ」
「ちょっと、待って、待ってー! それじゃバレた時、私が怒られるじゃない!」
ドラゴン達はお互いに顔を見つめ合った後「わかんない」と言わんばかりに首を傾げる。
傾げても、私が怒られるのは変わらないだろう……
「おかーさん、いっしょ、いこう?」
「ピスターシュも行きたいの? うーん。小さい子は連れ去られると怖いから、お留守番よ」
「やーだー! おかーさんといくのー!」
ピスターシュまでもが床でジタバタと手足を動かして、ワガママを言い始め、これはもう収集付きそうにない。
私が困り果てた顔をしていた頃、【黒狼亭】でも私と同じ顔をしていた人物がいた。
そう、私の息子リュエールである。
「いい加減にしてよね! 温泉大陸の代表として行くなら、ヒドラの一匹や二匹倒せるぐらいの人材で無きゃ駄目だし、温泉大陸の警備も手薄には出来ないんだからね!」
「えー! オレ、ヒドラの称号『七つ首斬首』持ってるよー!」
「シューは黙って! 前回のヒドラ討伐のクリスタルは父上と母上が使ってしまったから、参加者にも同じものを持たせたいんだよね。何があるか分からないからさ。勿論、以前の回復だけのヒドラのクリスタルでも良いけど」
この時点で、脱落する者とヒドラ狩りだー! と息巻く者とで別れ、あとはお祭り騒ぎの従業員達が「拳で語り合って決めよう!」と対抗試合を提案したりと、なかなかにこちらもリュエールが苦虫を噛みつぶしたような顔で「仕事をして!」と叫ぶ姿があったそうだ。
―――数日後。
ドラゴニア国のチームは、私とルーファス、アルビー、グリムレイン、ニクストローブ、ネルフィームの六人。
ネルフィームも聞きつけて参加すると駄々をこねるから、ギルさんになんとかしてもらおうと思ったけど、無駄だった。
「ネルフィームと愛息子アルビーの応援をする為に、私はイルブールに観覧席を用意してもらったよ。勿論、他のドラゴン達も観客席で私と一緒がいいだろう?」
そんな言葉に、ドラゴン達は大はしゃぎで……あれよあれよという間に決まってしまった。
ギルさんは貴族の権力を最大限に使ったようで、金持ちは恐ろしい。
温泉大陸の代表チームは、シュトラールを筆頭に、ハガネ、リロノスさん、イルマールくん、キリンちゃん、テンの六人。
シュトラールは出たいと騒いでいたし、回復魔法に冒険者でもあるから納得なのだけどね。
ハガネは、従業員の対抗試合でヤジを飛ばして揶揄っていたら、いつの間にか巻き込まれて、勝ち抜けしてしまった。
リロノスさんも巻き込まれで、イルマールくんはリリスちゃんに『賞金をとってきて!』とお願いされての参加。
キリンちゃんは「温泉大陸にエルフを呼ぶには、わたしが一番でしょ? 宣伝です!」と、逞しい女将ぶりで参加を勝ち取った。
テンは興味なさげだったのだけど、小鬼ちゃんが「たまには実家に顔を出したいですね」という一言で、イルブール行きを決めたのだから、相変わらずの小鬼ファーストだ。
そして、招待状も届き、観客席も幾つか確保できたから、ここでも争奪戦が起きたのだけど、それは割愛しておこうかな。
こうして、私達は武術大会に向けて参加者のエントリーだけは済ませたのだった。
武術大会に出たいと騒ぐのは、黒狼亭の従業員だけではない。我が家のドラゴン達も物見遊山気分で行きたいと騒いでいるのだ。
「召喚士っぽくさ、アカリが召喚術を使っているような振りで、ボクの光魔法で屈折させて皆で登場とか!」
「アルビー、それは私がドラゴン召喚士とか変な称号付けられそう」
「いいじゃない。アカリは色々もう称号付きまわっているんだし」
アルビーの提案を却下し、ハイハイ! と、声をあげる他のドラゴン達の意見も聞く。
「我は参加するからな! 我が嫁の一番初めのドラゴンなのだから!」
「それならエデンも! エデンもー!」
「こらこら。喧嘩しないの」
ドラゴン達はとにかく自分がいくと言って聞かず、この話し合いは堂々巡りを繰り返している。
いつもならば、「ボクは興味ないかなー」と言うアルビーですら、行きたがっているのは、世界の名だたる英雄と呼ばれる人々が一ヵ所に集まる。つまり、ドラゴン達にとって知識として覚えていたいことらしい。
ドラゴンは永遠を生きる為に、他の種族をつぶさに観察しなければ、いつの間にか死んでいるから……という、ドラゴンらしいといえば、らしい理由だ。
「アカリ~連れて行って―」
「あー、もう。皆ワガママ言わないの。私を含めて六人までなの。あとは観客として見に行くしか無いけど……観客席もチケットがほぼ完売だし……」
揉める理由の一つは、この観客席の無さもある。
各国の人々がこぞって来るために、観客も多い訳で……
「なら、アカリの髪飾りに擬態するからぁ~」
「じゃあ、アタシはアカリの着物の帯どめにでも擬態するわ」
「ちょっと、待って、待ってー! それじゃバレた時、私が怒られるじゃない!」
ドラゴン達はお互いに顔を見つめ合った後「わかんない」と言わんばかりに首を傾げる。
傾げても、私が怒られるのは変わらないだろう……
「おかーさん、いっしょ、いこう?」
「ピスターシュも行きたいの? うーん。小さい子は連れ去られると怖いから、お留守番よ」
「やーだー! おかーさんといくのー!」
ピスターシュまでもが床でジタバタと手足を動かして、ワガママを言い始め、これはもう収集付きそうにない。
私が困り果てた顔をしていた頃、【黒狼亭】でも私と同じ顔をしていた人物がいた。
そう、私の息子リュエールである。
「いい加減にしてよね! 温泉大陸の代表として行くなら、ヒドラの一匹や二匹倒せるぐらいの人材で無きゃ駄目だし、温泉大陸の警備も手薄には出来ないんだからね!」
「えー! オレ、ヒドラの称号『七つ首斬首』持ってるよー!」
「シューは黙って! 前回のヒドラ討伐のクリスタルは父上と母上が使ってしまったから、参加者にも同じものを持たせたいんだよね。何があるか分からないからさ。勿論、以前の回復だけのヒドラのクリスタルでも良いけど」
この時点で、脱落する者とヒドラ狩りだー! と息巻く者とで別れ、あとはお祭り騒ぎの従業員達が「拳で語り合って決めよう!」と対抗試合を提案したりと、なかなかにこちらもリュエールが苦虫を噛みつぶしたような顔で「仕事をして!」と叫ぶ姿があったそうだ。
―――数日後。
ドラゴニア国のチームは、私とルーファス、アルビー、グリムレイン、ニクストローブ、ネルフィームの六人。
ネルフィームも聞きつけて参加すると駄々をこねるから、ギルさんになんとかしてもらおうと思ったけど、無駄だった。
「ネルフィームと愛息子アルビーの応援をする為に、私はイルブールに観覧席を用意してもらったよ。勿論、他のドラゴン達も観客席で私と一緒がいいだろう?」
そんな言葉に、ドラゴン達は大はしゃぎで……あれよあれよという間に決まってしまった。
ギルさんは貴族の権力を最大限に使ったようで、金持ちは恐ろしい。
温泉大陸の代表チームは、シュトラールを筆頭に、ハガネ、リロノスさん、イルマールくん、キリンちゃん、テンの六人。
シュトラールは出たいと騒いでいたし、回復魔法に冒険者でもあるから納得なのだけどね。
ハガネは、従業員の対抗試合でヤジを飛ばして揶揄っていたら、いつの間にか巻き込まれて、勝ち抜けしてしまった。
リロノスさんも巻き込まれで、イルマールくんはリリスちゃんに『賞金をとってきて!』とお願いされての参加。
キリンちゃんは「温泉大陸にエルフを呼ぶには、わたしが一番でしょ? 宣伝です!」と、逞しい女将ぶりで参加を勝ち取った。
テンは興味なさげだったのだけど、小鬼ちゃんが「たまには実家に顔を出したいですね」という一言で、イルブール行きを決めたのだから、相変わらずの小鬼ファーストだ。
そして、招待状も届き、観客席も幾つか確保できたから、ここでも争奪戦が起きたのだけど、それは割愛しておこうかな。
こうして、私達は武術大会に向けて参加者のエントリーだけは済ませたのだった。
60
お気に入りに追加
4,628
あなたにおすすめの小説

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。
鯖
恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。
パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。

婚約者である皇帝は今日別の女と結婚する
アオ
恋愛
公爵家の末娘として転生した美少女マリーが2つ上の幼なじみであり皇帝であるフリードリヒからプロポーズされる。
しかしその日のうちにプロポーズを撤回し別の女と結婚すると言う。
理由は周辺の国との和平のための政略結婚でマリーは泣く泣くフリードのことを諦める。しかしその結婚は実は偽装結婚で
政略結婚の相手である姫の想い人を振り向かせるための偽装結婚式だった。
そんなこととはつゆ知らず、マリーは悩む。すれ違うがその後誤解はとけマリーとフリードは幸せに暮らしました。

大きくなったら結婚しようと誓った幼馴染が幸せな家庭を築いていた
黒うさぎ
恋愛
「おおきくなったら、ぼくとけっこんしよう!」
幼い頃にした彼との約束。私は彼に相応しい強く、優しい女性になるために己を鍛え磨きぬいた。そして十六年たったある日。私は約束を果たそうと彼の家を訪れた。だが家の中から姿を現したのは、幼女とその母親らしき女性、そして優しく微笑む彼だった。
小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しています。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。