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27章
ドラゴンハーレム3
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「ど・れ・に・し・よ・う・か・な♪ うふふ~」
我が家の屋敷の広間で、私がテーブルに広げられた色とりどりのケーキを物色していると、後ろからにゅっと手が伸びて、私が狙っていたメローネのドーム型ケーキが持ち去られた。
私のメローネのケーキを奪ったのは、氷竜グリムレイン。
一口でペロッと食べてしまう。
「うむ。中がクリームだけだの。周りにコーティングされたメローネの果汁と上に載ったメローネ以外は、メローネを食った気にはならんの」
中身がホイップで作られているところが、口の中でふわふわして美味しいと評判なのに、グリムレインにはお気に召さなかったらしい。
「じゃあ、これにしようかなー」
私が次に手を伸ばしたのは、ミッカが丸ごと載ったレアチーズケーキ。
しかし、それもグリムレインがひょいっと取って、一口で食べてしまう。
「ああぁぁ……」
「んー。これは甘酸っぱ過ぎだのう」
「グーリィームゥレーイーン~っ!!」
「なんだ? 嫁は、何を不貞腐れておる?」
グリムレインを見上げて頬を膨らませると、揶揄うような顔で私の頬を片手で下から挟んでくる。
「むぅ、はにゃひにゃさい!」
「嫁の頬は子供のようにモチモチだのう」
「むひゃー!」
ポカスカとグリムレインのお腹を拳で叩き、兄妹喧嘩のような感じになる。
従者のくせに生意気な! とは、毎回思うものの……悪びれも無いのがグリムレインでもある。
「もぉー。折角子供たちが居ないから、ケーキを独り占めできると思ったのに」
「まだいっぱいあるではないか」
「私が食べようとしているものを、横からヒョイヒョイ取るんだもの」
「早い者勝ちと言うではないか」
カラカラ笑ってグリムレインはまたケーキに手を伸ばす。
ええい! それならば先に取るのみ!!
私が手に取ったのは、フルーツがたっぷり載ったタルト。
「いただきまーす!」
ん~っ! ブドウと桃とイチゴの甘さと香りの良さ、タルト生地のサクサク感に、カスタードもたっぷり入っていて、とっても美味しい。
「ふむ。このパイ生地の段重ねはなかなか」
「んっ!! それ! 一番高いヤツ!?」
「サクサクしておって、美味いぞ」
イチゴのミルフィーユがぁぁぁ……グリムレインはフルーツ系ばかり選ぶから、パイ生地にはいかないだろうと踏んでフルーツタルトにしたのに、一番高いのを食べられていた。
くぅ、不覚。
「アカリ。ほうじ茶、淹れてきたぞ」
ハガネがキッチンからお茶を三つ持って現れ、ハガネもケーキを物色し始める。
今日は、子供達はルーファスに連れられて『刻狼丸』の船で夜まで遊んでいる。
夜に花火が打ちあがるとあって、夜遅くなるまでは帰ってこないだろう。
「にしても、随分あるな」
「ふふ~っ。ルーファスが、たまには子供を気にせずにいっぱい食べろって、買ってくれたのよ」
「今日は嫁と我とハガネで、ケーキ三昧だの」
いつもなら、ここらへんで「ははうー」と子供達にケーキをせがまれ、私は休む暇なくケーキを子供たちに食べさせ、そして食べようと思った時には……ドラゴンたちも加わって、私のケーキが無い! って、よくある事なのよね。
天下の【刻狼亭】の大女将が意地汚いとか、金持ちなのに? とか、思うだろうけど……子供やドラゴンにお金持ちとかそういうのは、関係ないのである。
「俺は、これもーらい」
「チョコレートと木の実のケーキとは、ハガネはチョイスが渋いね」
「そうか? これ結構ブランデーが入ってていい香りなんだぜ?」
「へぇー。お酒入ってるんだ」
お酒の好きなハガネらしいチョイスだった。
他にもティラミスもハガネが食べていたし、これは下のスポンジにコーヒーリキュールが使われているものだ。サバラン等、お酒の入った物を中心に選んでいた。
グリムレインは、ブルーベリーたっぷりのタルトに桃色のミルクレープを食べて「美味い」と言っていて、私は生地がほうじ茶で出来ているロールケーキに、チーズケーキを食べた。
「ふぁー……お腹いっぱい。もう食べられない……」
「まだ残ってっけど、どうする?」
「氷室に入れて、お夕飯の後のデザートにしましょう」
「嫁が太るのも時間の問題だの」
「なんですってぇー」
ハガネはすぐさまケーキの入った箱を避難させ、私はグリムレインを追いかけまわす。
グリムレインの腰にしがみつくと、グリムレインは私を抱きしめてそのまま私をくるくると自分ごと回す。
「ひぇぇぇ~!」
「ハハハ。冬になったら氷の上でこれをやってみるか!」
「ノォォ~!」
私の悲鳴が屋敷にこだまして、ハガネに「なにやってんだか」と呆れられた。
基本、ドラゴンは子供みたいなところがあるからね。私も子供たちが居ない時は、童心に帰ってこうして遊びに付き合う事だってあるのだ。
日が暮れ始めると、花火を見ようと温泉街の人達も家の屋根に上ったりして、屋根の上で小さな宴会がチラホラ出来ている。
私達三人も勿論、宴会をしている。
「酒よし!」
「おつまみよーし!」
「デザートもバッチリだの」
グリムレインの作った氷の徳利と御猪口でお酒を酌み交わして、「カンパーイ」と声を上げる。
花火が上がり、花火の光で海の上の【刻狼丸】もシルエットが浮かび上がる。
「ルーファス達も楽しんでいるかしら?」
「がきんちょ共が今頃は大騒ぎして、大旦那も大変だろうな」
「アルビー達もおるのだから、心配は要らんだろうさ」
流石にね、ルーファス一人に押し付けるのは可哀想で、アルビー達他のドラゴンも一緒に行っている。
グリムレインとハガネは、私の護衛みたいなものかな? おもりかもしれないけど。
ケルチャやケイトにエデンも残りたがっていたけれど、ピスターシュや小さなドラゴン達も花火を見に降りてきていて、人手が足りないのもあったからね。居残り組は、私達三人だけだ。
「アカリ。少しは羽は伸ばせたか?」
「うん。ありがとう。お母さん業をお休みして、のんびりさせてもらって、リフレッシュできたよ!」
「婿がよく嫁を一人にしておこうと、考えたものよのう」
それに関しては、『母の日』の遅ればせながらのプレゼントという名の『自由』と言ったところだろうか?
ルーファスにも今度『父の日』で何か企画を立ててあげよう。
子供たちは可愛いし、いつでも傍に居てあげたいけれど、たまにはお母さんだって自由が欲しい。
そんな私のささやかかどうかは分からない願いを、ルーファスは叶えてくれたというわけだ。
羽を伸ばして、明日からはまたお母さん業に戻らなければ!
「花火、今年も豪華だねぇ」
「まぁ、夏といやぁ花火だからな。リューも花火に関しちゃ、金に糸目をつけねぇからな」
「大方、キリンにでも『花火が素敵』と言われたのだろうさ」
グリムレイン鋭い! あたりです!
リュエールはキリンちゃんに『花火ってエルフの森では見たことが無いのよね』と、言われて……毎年、キリンちゃんの為に盛大な花火を打ち上げているのよ。
おかげで毎年、温泉大陸の花火を見ようと観光客が集まるようにもなっているから、どこまで計算しているのか我が子ながら分からない。
「また三人で、のんびり何もない日を過ごしたいね」
「そうだな。いつもの賑やかなのもいいけど、たまにゃあ、こういう日があっても良いよな」
「我はいつでも暇をしているぞ」
「それじゃあ、三人でまた飲める日を楽しみに__乾杯!」
乾杯をして、私達は花火を肴に何もない日を楽しんだ。
ルーファス達が帰ってくる頃には、三人共お酒で潰れて大広間で寝ていたのはご愛嬌というところだ。
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「ああぁぁ……」
「んー。これは甘酸っぱ過ぎだのう」
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従者のくせに生意気な! とは、毎回思うものの……悪びれも無いのがグリムレインでもある。
「もぉー。折角子供たちが居ないから、ケーキを独り占めできると思ったのに」
「まだいっぱいあるではないか」
「私が食べようとしているものを、横からヒョイヒョイ取るんだもの」
「早い者勝ちと言うではないか」
カラカラ笑ってグリムレインはまたケーキに手を伸ばす。
ええい! それならば先に取るのみ!!
私が手に取ったのは、フルーツがたっぷり載ったタルト。
「いただきまーす!」
ん~っ! ブドウと桃とイチゴの甘さと香りの良さ、タルト生地のサクサク感に、カスタードもたっぷり入っていて、とっても美味しい。
「ふむ。このパイ生地の段重ねはなかなか」
「んっ!! それ! 一番高いヤツ!?」
「サクサクしておって、美味いぞ」
イチゴのミルフィーユがぁぁぁ……グリムレインはフルーツ系ばかり選ぶから、パイ生地にはいかないだろうと踏んでフルーツタルトにしたのに、一番高いのを食べられていた。
くぅ、不覚。
「アカリ。ほうじ茶、淹れてきたぞ」
ハガネがキッチンからお茶を三つ持って現れ、ハガネもケーキを物色し始める。
今日は、子供達はルーファスに連れられて『刻狼丸』の船で夜まで遊んでいる。
夜に花火が打ちあがるとあって、夜遅くなるまでは帰ってこないだろう。
「にしても、随分あるな」
「ふふ~っ。ルーファスが、たまには子供を気にせずにいっぱい食べろって、買ってくれたのよ」
「今日は嫁と我とハガネで、ケーキ三昧だの」
いつもなら、ここらへんで「ははうー」と子供達にケーキをせがまれ、私は休む暇なくケーキを子供たちに食べさせ、そして食べようと思った時には……ドラゴンたちも加わって、私のケーキが無い! って、よくある事なのよね。
天下の【刻狼亭】の大女将が意地汚いとか、金持ちなのに? とか、思うだろうけど……子供やドラゴンにお金持ちとかそういうのは、関係ないのである。
「俺は、これもーらい」
「チョコレートと木の実のケーキとは、ハガネはチョイスが渋いね」
「そうか? これ結構ブランデーが入ってていい香りなんだぜ?」
「へぇー。お酒入ってるんだ」
お酒の好きなハガネらしいチョイスだった。
他にもティラミスもハガネが食べていたし、これは下のスポンジにコーヒーリキュールが使われているものだ。サバラン等、お酒の入った物を中心に選んでいた。
グリムレインは、ブルーベリーたっぷりのタルトに桃色のミルクレープを食べて「美味い」と言っていて、私は生地がほうじ茶で出来ているロールケーキに、チーズケーキを食べた。
「ふぁー……お腹いっぱい。もう食べられない……」
「まだ残ってっけど、どうする?」
「氷室に入れて、お夕飯の後のデザートにしましょう」
「嫁が太るのも時間の問題だの」
「なんですってぇー」
ハガネはすぐさまケーキの入った箱を避難させ、私はグリムレインを追いかけまわす。
グリムレインの腰にしがみつくと、グリムレインは私を抱きしめてそのまま私をくるくると自分ごと回す。
「ひぇぇぇ~!」
「ハハハ。冬になったら氷の上でこれをやってみるか!」
「ノォォ~!」
私の悲鳴が屋敷にこだまして、ハガネに「なにやってんだか」と呆れられた。
基本、ドラゴンは子供みたいなところがあるからね。私も子供たちが居ない時は、童心に帰ってこうして遊びに付き合う事だってあるのだ。
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私達三人も勿論、宴会をしている。
「酒よし!」
「おつまみよーし!」
「デザートもバッチリだの」
グリムレインの作った氷の徳利と御猪口でお酒を酌み交わして、「カンパーイ」と声を上げる。
花火が上がり、花火の光で海の上の【刻狼丸】もシルエットが浮かび上がる。
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ケルチャやケイトにエデンも残りたがっていたけれど、ピスターシュや小さなドラゴン達も花火を見に降りてきていて、人手が足りないのもあったからね。居残り組は、私達三人だけだ。
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「花火、今年も豪華だねぇ」
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「大方、キリンにでも『花火が素敵』と言われたのだろうさ」
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おかげで毎年、温泉大陸の花火を見ようと観光客が集まるようにもなっているから、どこまで計算しているのか我が子ながら分からない。
「また三人で、のんびり何もない日を過ごしたいね」
「そうだな。いつもの賑やかなのもいいけど、たまにゃあ、こういう日があっても良いよな」
「我はいつでも暇をしているぞ」
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