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27章
エミール
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ミルアが子供を産んで五日後にフィリアちゃんが産気づき、五人目の孫の女の子が誕生した。
シュトラールの二人目の子供も第一子のルビスちゃんと同じ女の子で、フィリアちゃんの髪色をした子だった。シュトラールは大喜びだけど、フィリアちゃん的には男の子が欲しかったみたいで、「次は男の子!」と、産んだばかりなのに次の子を考えている辺り、若いよねぇって思ってしまった。
「母上~、お世話になりますわー」
「はーい。ゆっくりしてなさいな。エミール君はベビーベッドを用意してあるから、そこに寝かせてあげて頂戴」
ミルアが退院してきて、今日から我が家で床上げまでは一緒に暮らす事になる。
まぁ、元々ミルアは妊娠中も出入りしていたし、ミールも職場は【刻狼亭】だから勤務地の横で、直ぐに会える距離なんだけどね。
「ミルア、来たか。エミールはどうだ?」
「父上、お世話になりますの。エミールは元気ですわよ~」
「どれ、やはり乳児は小さいな。コハルが今まで一番小さいと思っていたが、こうして見ると段違いだな」
「そりゃ、二歳児と生まれて一週間の子供を、一緒にしてはいけませんわ」
ルーファスがベビーベッドを覗き込んで、すっかりお爺ちゃんの顔になっているけれど、肉体が若い分、ミルアの夫と言っても頷けそうではある。
「みるー。コハルもみるー」
「コハルも見たいのか? どれ、【水玉】赤ちゃんを触る時は手を洗うんだぞ【乾燥】」
「んむぅー」
相変わらずルーファスは除菌の人で、コハルは頬を膨らませて口をとがらせている。でも、赤ちゃんに触る時は気を付けないとね。特にコハルは何処でも触って歩くから。
コハルは、一歳を過ぎてから言葉が段々上手になって、今では一番お喋りさんになっている。
スクルードより喋るかもしれない。
ルーファスに抱きかかえられてコハルがエミール君を見て、ルーファスの腕に顔を隠したりして照れているのは、見ていてこちらも微笑んでしまう。
嬉しいやら、見たいやらで感情がよく分からない感じなのだろう。
「コハル。エミールですわ。可愛がってあげて下さいね?」
「あい! ちっちゃい!」
「ええ。小さいのですわ。そのうちコハルみたいに大きくなりますから、それまではお願いしますわね?」
「んふー。ちいちゃい」
「そっと触ってあげて下さいまし」
エミール君に触った瞬間、コハルの顔がパァーッと輝いて、周りに花がポポポンと咲き乱れる。
これはこれは、嬉しそうで何より。私達もコハルの嬉しそうな表情に目を細めてしまう。
「コハルもこれでお姉さんだな」
「あら、ピスターシュが居るんだから、もうお姉さんよねー」
「んふふー」
可愛い顔で笑って、こういう時に写真を撮るべきなのよねーと、割烹着のポケットからカメラを取り出してカシャカシャとシャッターを切る私に、ルーファスがハッとしたような顔をする。
ルーファス、甘いのだよ。見逃せない一瞬ってあるからね。
ミルアに産後用の一人用椅子を用意して座らせ、お昼ご飯をテーブルに並べていく。
産後も食事には気を付けなくてはいけない為に、乳製品はなるべく避けている。
生クリーム系は胸がガチガチになってしまったりするから、駄目なのよね。
用意したのは、柿の白和え、ササミ肉のハーブソテー、ほうれん草たっぷりのキッシュ、アサリのお味噌汁、そしてデザートはカボチャのプリン。
大豆は妊娠中も産後もとてもお世話になる食べ物だから、率先的に摂っていきたい食べ物なのよね。
カボチャも女性ホルモンのバランスを整えるのに必要だから、産後のバランスの崩れた今はいっぱい摂らせなきゃね。
お母さんとしては、娘にしっかり食事とバランスで体をいたわってあげたい。
出産という大仕事の後は、体を元に戻す為にも出来ることはしてあげたいのである。
「ピピィ!」
「ただいまー」
「腹へったー」
ピスターシュが居間に顔を出すと、スクルードとハガネもその後に次いで居間に顔を出した。
私にピスターシュがしがみ付くと、コハルがルーファスに下ろしてもらい、二人は私の取り合いを始める。最近はいつも二人で私を取り合っていて、お互いに顔に手を押し合って牽制し合っている。
「こらこら、二人共喧嘩しないの。駄目よ」
「ピィー、ピピィー」
「コーハールーのぉぉー」
「こら。もう、あなた達は~、邪魔ですよ? ほら、お昼にしますよ」
「母上は人気者ですわね」
「ふふっ。ミルアも、ナルアと一緒によくやっていたわよ?」
「そうでしたかしら?」
「してましたとも。少し大きくなったら、次は父上の取り合いをしていましたしね」
年子や双子はこういう一面もある。
まぁ、双子でも一概にそうとは言えないけど、我が家の場合はいつも自分の片割れと取り合うのだから、困った物なのよね。
「二人共、母上はオレのものだぞ?」
そう言って私に抱きついてきたルーファスに、コハルとピスターシュが今度はルーファスの足をペシペシと手で叩いて絡んでいる。
うーん。これは私を救う為に自ら犠牲にしたのか、ただ単に自分の物だとアピールしたのか分からない所だわ。
ルーファスだと半々だろうけど、昔からルーファスは母親の取り合いをする子供達に毎回これをやっているのよね。
我が家は本当に変わらないわね。
シュトラールの二人目の子供も第一子のルビスちゃんと同じ女の子で、フィリアちゃんの髪色をした子だった。シュトラールは大喜びだけど、フィリアちゃん的には男の子が欲しかったみたいで、「次は男の子!」と、産んだばかりなのに次の子を考えている辺り、若いよねぇって思ってしまった。
「母上~、お世話になりますわー」
「はーい。ゆっくりしてなさいな。エミール君はベビーベッドを用意してあるから、そこに寝かせてあげて頂戴」
ミルアが退院してきて、今日から我が家で床上げまでは一緒に暮らす事になる。
まぁ、元々ミルアは妊娠中も出入りしていたし、ミールも職場は【刻狼亭】だから勤務地の横で、直ぐに会える距離なんだけどね。
「ミルア、来たか。エミールはどうだ?」
「父上、お世話になりますの。エミールは元気ですわよ~」
「どれ、やはり乳児は小さいな。コハルが今まで一番小さいと思っていたが、こうして見ると段違いだな」
「そりゃ、二歳児と生まれて一週間の子供を、一緒にしてはいけませんわ」
ルーファスがベビーベッドを覗き込んで、すっかりお爺ちゃんの顔になっているけれど、肉体が若い分、ミルアの夫と言っても頷けそうではある。
「みるー。コハルもみるー」
「コハルも見たいのか? どれ、【水玉】赤ちゃんを触る時は手を洗うんだぞ【乾燥】」
「んむぅー」
相変わらずルーファスは除菌の人で、コハルは頬を膨らませて口をとがらせている。でも、赤ちゃんに触る時は気を付けないとね。特にコハルは何処でも触って歩くから。
コハルは、一歳を過ぎてから言葉が段々上手になって、今では一番お喋りさんになっている。
スクルードより喋るかもしれない。
ルーファスに抱きかかえられてコハルがエミール君を見て、ルーファスの腕に顔を隠したりして照れているのは、見ていてこちらも微笑んでしまう。
嬉しいやら、見たいやらで感情がよく分からない感じなのだろう。
「コハル。エミールですわ。可愛がってあげて下さいね?」
「あい! ちっちゃい!」
「ええ。小さいのですわ。そのうちコハルみたいに大きくなりますから、それまではお願いしますわね?」
「んふー。ちいちゃい」
「そっと触ってあげて下さいまし」
エミール君に触った瞬間、コハルの顔がパァーッと輝いて、周りに花がポポポンと咲き乱れる。
これはこれは、嬉しそうで何より。私達もコハルの嬉しそうな表情に目を細めてしまう。
「コハルもこれでお姉さんだな」
「あら、ピスターシュが居るんだから、もうお姉さんよねー」
「んふふー」
可愛い顔で笑って、こういう時に写真を撮るべきなのよねーと、割烹着のポケットからカメラを取り出してカシャカシャとシャッターを切る私に、ルーファスがハッとしたような顔をする。
ルーファス、甘いのだよ。見逃せない一瞬ってあるからね。
ミルアに産後用の一人用椅子を用意して座らせ、お昼ご飯をテーブルに並べていく。
産後も食事には気を付けなくてはいけない為に、乳製品はなるべく避けている。
生クリーム系は胸がガチガチになってしまったりするから、駄目なのよね。
用意したのは、柿の白和え、ササミ肉のハーブソテー、ほうれん草たっぷりのキッシュ、アサリのお味噌汁、そしてデザートはカボチャのプリン。
大豆は妊娠中も産後もとてもお世話になる食べ物だから、率先的に摂っていきたい食べ物なのよね。
カボチャも女性ホルモンのバランスを整えるのに必要だから、産後のバランスの崩れた今はいっぱい摂らせなきゃね。
お母さんとしては、娘にしっかり食事とバランスで体をいたわってあげたい。
出産という大仕事の後は、体を元に戻す為にも出来ることはしてあげたいのである。
「ピピィ!」
「ただいまー」
「腹へったー」
ピスターシュが居間に顔を出すと、スクルードとハガネもその後に次いで居間に顔を出した。
私にピスターシュがしがみ付くと、コハルがルーファスに下ろしてもらい、二人は私の取り合いを始める。最近はいつも二人で私を取り合っていて、お互いに顔に手を押し合って牽制し合っている。
「こらこら、二人共喧嘩しないの。駄目よ」
「ピィー、ピピィー」
「コーハールーのぉぉー」
「こら。もう、あなた達は~、邪魔ですよ? ほら、お昼にしますよ」
「母上は人気者ですわね」
「ふふっ。ミルアも、ナルアと一緒によくやっていたわよ?」
「そうでしたかしら?」
「してましたとも。少し大きくなったら、次は父上の取り合いをしていましたしね」
年子や双子はこういう一面もある。
まぁ、双子でも一概にそうとは言えないけど、我が家の場合はいつも自分の片割れと取り合うのだから、困った物なのよね。
「二人共、母上はオレのものだぞ?」
そう言って私に抱きついてきたルーファスに、コハルとピスターシュが今度はルーファスの足をペシペシと手で叩いて絡んでいる。
うーん。これは私を救う為に自ら犠牲にしたのか、ただ単に自分の物だとアピールしたのか分からない所だわ。
ルーファスだと半々だろうけど、昔からルーファスは母親の取り合いをする子供達に毎回これをやっているのよね。
我が家は本当に変わらないわね。
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