黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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26章

ドラゴンマスター6

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 オパール色に光る髪長い髪、分厚い赤い色の眼鏡。久々の冒険者服は少しばかり体にフィットし過ぎて、秋は食べ物美味しいから……と、自分を誤魔化ごまかしてみる。
少しばかり、自分でもむっちりしたかなぁと思ってはいたんだけど、パッツンパッツンは駄目ね。
 髪の色を変えるポーションを飲んだのは、竜人の国では私は死んだことになっている為に、この様な変装になったんだけど……うーん。
四十代でハーフパンツの網タイツにロングブーツ……そしてパツパツのタートルネックに、ドワーフのお爺ちゃん達が作ってくれた雷耐性のある袖のあるケープ。
 鏡の前で「うーん……」と、唸ってみるものの外見は若いし……大丈夫、うん。大丈夫。若者気取りのオバサンじゃないはず! 

「さてと、行く準備は万全にしないとね」

 ポーションホルダーにポーションをギッシリ詰めて腰に巻き付け、ブーツのかかとのギミックがちゃんと動くかを確認する。
このギミックは手を縛られたり、足を縛られたりした場合に小さなナイフが出るようになっていて、留め金を外せば出るようになっている。
 まぁ、ここまでは要らないんじゃないかなー? とは思ったんだけど、過去にさらわれたことがあるから、色々と私は装備を持たされているのだ。

 クロの魔法反射のネックレスは竜人の国ではバレているから、今回は使えない。
よって今回のアクセサリー類は、居場所を知らせる耳飾りに、いつもの通信の腕輪と魔力増幅の腕輪をしている。
ドラゴン達と主従関係にある為に魔力値は高いから、あとは魔力が尽きなければ、非力な私でも魔法で勝てる! という訳ですよ。

「あとは……ちょっと冷たいけど、グリムレインのくれた髪飾りを付けたら完成!」

 迷子防止は二個ですよ! 二個! この氷の髪飾りは、ずっと前にグリムレインが猛暑の時に作ってくれた物で、これがあればグリムレインは私を見付けられる。

「リュックサックもー……って、ピスターシュにコハル、駄目よ。あなた達はお留守番なんだからね?」
「あい?」
「ピ?」

 私のリュックサックを二人が開けて中の物を引きずり出して、コハルは獣化して小さくなりピスターシュと仲良く入っている。
可愛いけど、危ないから連れていけないのよね。

「はい。二人はハガネと一緒に居ましょうねー」

 二人をリュックサックから出して、中の物を詰め直すと二人は私の足にしがみ付いてくる。
直ぐに帰ってくるつもりではあるんだけど、私やドラゴン、それにルーファスのピリピリした雰囲気に、この二人も何か察した物があるのだろう。
子供は意外とこうした事に敏感だからね。

「二人共、私のご自慢の子供さん達なんだから、良い子にしていてね。母上、直ぐに帰って来るからね」
「あふぁひ、やーな。やーな」
「ピピイ」
「ふふっ、コハル。アカリじゃなくて、母上って呼んで欲しいなー。それに嫌なんて言わないで? 母上もコハルを置いていきたくないよ。でもね、ドラゴンさんを助けてあげられるのは、母上とエデンだけなの。分かってね?」
「あふぁ……ふぁふぁう、やーなぁー……うーっ」
「コハル。泣かないで。折角、コハルが母上って言ってくれたんだもの。母上、頑張って早く帰ってくるよ」

 コハルとピスターシュを両手で抱きしめて、少しだけ涙が出そうになった。
初めてコハルが母上と呼んでくれた事に感動もしたし、私の事を求めてくれる小さな手が愛おしくてたまらない。
ピスターシュも鼻水をスンスン言わせて泣いているし、コハルと良い姉弟関係になってきた事も嬉しい。

「もう、泣かないの。お土産持って帰ってくるからね」
「ふぁふぁう、ふぁふぁうー……」
「ピピィー……」

 重たいけど、肩にリュックサックを掛け、二人を抱っこして、コハルの部屋を出て居間に行くと、ルーファスの足にスクルードがガッシリ掴まっていた。こちらもお兄さんとは言え、小さな子供。コハルとピスターシュが私に来てたから、ルーファスの方に行っちゃったのかな?
 ルーファスが少し眉を下げて笑い、ハガネがコハルとピスターシュをグリグリと撫でまわす。

「アカリ、三人共俺に任せとけって。コハルもピィ助も泣くな。スーもな」

 ハガネが私からコハルとピスターシュを受け取り、私の方を見上げて泣きべそをかいているスクルードに小さく笑う。
私は床に膝を下ろして、スクルードに手を広げると、顔をくしゃくしゃにさせて飛び込んできた。

「ははうー、どこいくぅー……ここいるの! いっちゃダメなのー」
「スーちゃん。ごめんね。皆がピリピリしてるから怖いんだよね? 大丈夫だよ。直ぐに帰ってくるからね」
「ううー、ははうーが、ここにいるの!」

 首を左右に振って、スクルードがこんな風に我を通す事は滅多に無いから、きっと私が心の中で竜人を怖がって、脅えている事が伝わってしまっていたのかもしれない。
私の心の弱さが、子供達を不安にさせているのかも……
 
「スーちゃん。母上は大丈夫だよ。スーちゃんや、コハルやピスターシュがお家で待っていてくれたら、怖いものなんか何にもない。母上、頑張るからね。スーちゃん、コハルとピスターシュの事を、お願いしていい?」
「うー……わかた……。でも、すぐかえるの!」
「うん。約束するよ。母上はスーちゃんの所へ、直ぐに帰って来るから、スーちゃんはここで妹と弟を守ってあげてね」
「わかたー!」

 怖がりな私はもう捨てなきゃいけない。過去を乗り越えて、子供達の為にも強くならないとね。剣だって、私は包丁を持てるようになったのだから、竜人だって乗り越えられる。

 ルーファスに「そろそろ行こう」と手を差し伸べられて、スクルードの額にキスを落とし、コハルとピスターシュの頬にそれぞれキスをしていく。

「それじゃあ、母上と父上の居ない間は、スーちゃんに任せました! ハガネもお願いね!」
「わかたー! いってらしゃー!」
「おう。任せとけ。無茶だけはすんなよ? 何かあったら直ぐにリューに言えよ。駆け付けるからな」
「その時は、頼りにしてます! じゃあ、いってきます!」

 ハガネの腕の中でコハルとピスターシュが泣いていたけど、笑顔で私達は手を振って出掛けて行った。
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