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26章
ドラゴンマスター4
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ヒルルクが再び我が家にローランドと一緒に来たのは、一週間程してからだった。
屋敷の居間で二人を座らせて、お茶菓子を出してお茶を淹れつつ、繁々と様子をうかがう。
今、この屋敷には私一人だけで、ルーファスはコハルを連れて買い物に行っているし、ハガネもスクルードとピスターシュを連れて、いつもの魔法の練習に神社に行っている。
ローランドは全体的な赤い色をしたドラゴンだけど、ヒルルクは赤茶色で何というか……トカゲというかイグアナっぽい感じの顔をしている。
「なんだか、この間よりも丸々としているね?」
「爺様に色々食わせてもらって、なんとか糸ミミズからは抜け出した感じだよなー、ヒルルク」
「うっせーなぁ。俺っちは、謝んねぇぞ!」
ペシンとローランドに叩かれて、ヒルルクがベシャッと床に転がる。
ヒルルクの口調って、子供っぽいというか独特な感じだわ。ローランドも割りとヤンチャな口調ではあるんだけど、今までにないタイプかも? ありすさん寄りの口調かな?
「謝るって言うから、連れて来てやったんだぞ? 爺様の所に戻してやろうか?」
「うっせーなぁ。あそこはガキ共がピィピィ鳴いてて眠れないんだから、仕方ねぇだろ!」
「まぁ、そんなに大事は無かったから大丈夫よ。でも、ここは温泉大陸だから、お客さんも多いし、ああいうのは困るのよ。もうしないで欲しいわね」
私が少し大袈裟に溜め息を吐き、チラチラとヒルルクを見ていると、「わかったよ。ったく、でも、俺っちに気安く話し掛けんなよ!」と悪態をついてくる。なかなかに気難しそうだ。
玄関の方から音がして、バタバタと騒がしい音がし始めた。誰かしらが帰ってきたのだろうと立ち上がると、尻尾を全力で振っているピスターシュが走り込んで来た。
「ピイッ! ピピピィ~!!」
「ピスターシュ、おかえりなさい。お外は楽しかった?」
「ピピイ」
よしよしと頭を撫でると、丸い一つ目がパチパチ瞬きをしながら、嬉しそうに細くなる。続いて居間に上がってきたのはスクルードで、私にしがみ付くとニッコリ笑う。
「スーちゃん、おかえり。今日は早くお勉強終わったんだね。今日はどうだったかな?」
「アメふらせるー!」
「おお、雨が降らせるようになったの? 凄いね! 流石、私のご自慢の息子さんだよ~」
「んふーっ!」
スクルードの頭も撫でて、可愛い子ちゃん二人分ゲットだわーと、喜んでいるとハガネがありすさんを連れて居間に上がってきた。
「アカリっちー、相談があるんだけどさー……って、うわっ! トカゲ!」
「ありすさん、一応その子もドラゴンなのよー」
「誰がトカゲだよ! そこの一つ目の方がよっぽど変だろうが!」
「ピイイ~……」
「コラッ! 小さい子は苛めちゃダメッしょ! うちも悪いけど、あんたも悪いかんね!」
ビシッとありすさんがヒルルクに指を差して怒ると、ヒルルクとありすさんの睨み合いが始まって「まぁまぁ」と、二人の間に入ったものの、久々にありすさんにアルビー以来の好敵手が現れてしまったようだ。
「えーと、ヒルルクもこんなチビッこいので、許してあげてほしいなー……なんて」
「チビとか言うな! お前だって人族にしてはチビだかんな!」
「ムッ! この、口が、悪いことを言っしょ!」
ムギィと、ありすさんがヒルルクの頬を引っ張り上げ、私達はありすさんの手を心配したんだけど、全然平気のようだ。
「やめほ! ふぁふぁおんふぁー!(やめろ! バカ女ー!)」
「まだ言うっしょかー!!」
今度は両手で頬を摘まみ上げるありすさんに、こちらとしてはヒヤヒヤしつつ「手は平気?」と聞くしか無かった。
「別に何ともないっしょ」
「ヒルルクは今は魔力が安定してるからね。そう簡単には、熱は出さないって。俺も居るし、俺は火竜だから熱竜のヒルルクの熱を押さえられるから安心しろって!」
「そう言う事は早く言ってよ。ローランドは、もぅ」
「いーから、放せっ! ったく、何なんだよ! この女! 俺はドラゴンだぞ!」
「そっちがドラゴンなら、こっちは聖女だし! フフーン。崇め奉るがいいっしょ!」
ヒルルクもありすさんも、一向に引かない辺り凄い。ハガネがありすさんの分のお茶を淹れてくれて、とりあえず座ってもらったんだけど、ありすさんはヒルルクを指でうりうり弄りながら、楽しそうに笑っている。
これは意外と相性が良いという事だろうか?
「あの、ありすさん。相談というのは?」
「そうそう。実はうち三人目を授かっちゃったしょ!」
「あらまぁ! おめでとうございます!」
「うんうん。それでなんっしょ。どうもリリちゃんも二人目が出来たらしくて、出来ればアカリっちに少しお世話になりたいなぁって……」
「任せてって言いたいんだけど。うちはコハルも居るし、ミルアもフィリアちゃんも妊婦だから、優先的に自分の家の子になっちゃうと思うのよ。それでも良ければ、手伝うよ」
「うん。それはまぁ、仕方がないし、うちもそこら辺は了承済みっしょ! アカリっち、宜しくね!」
ありすさんに手を握られてブンブンと上下に振られ、少し困り笑いで私はルーファスに怒られそうだなぁと思っていた。
今年の蜜籠りは十人目って張り切っていたし、すでに何回か濃密なのをしているから、妊娠していないとも言えないのが何とも言えない。この世界に妊娠検査薬が必要かも? と、思ってしまうのよね。
ハガネには「お人好しだな」と言われたけど、ハガネもしっかり「来年は大忙しだな」と、言っている辺り動いてくれる気満々なので天邪鬼なんだから仕方がない従者だ。
十分過ぎるぐらいハガネの方が、お人好しなんだよね。
ヒルルクは温泉大陸の熱源のありそうな場所を探しに行くと言い出て行き、ローランドはナルアはちゃんと魔国でも友達も出来ているから心配ないと言って、当分はヒルルクの面倒を見るついでにピスターシュの成長を見るみたいだ。
新しいドラゴンはまだ言語が作られていないので、他のドラゴンを冬眠させないようにして、ピスターシュに言葉を発しないでも会話を出来るように皆で教えるそうだ。
ちなみにヒルルクがピスターシュを「変なヤツ」呼ばわりしたのは、ピスターシュが私を「母上」と呼んでいるからだそうだ。
卵が孵った時に近くに居たからだろうか?
屋敷の居間で二人を座らせて、お茶菓子を出してお茶を淹れつつ、繁々と様子をうかがう。
今、この屋敷には私一人だけで、ルーファスはコハルを連れて買い物に行っているし、ハガネもスクルードとピスターシュを連れて、いつもの魔法の練習に神社に行っている。
ローランドは全体的な赤い色をしたドラゴンだけど、ヒルルクは赤茶色で何というか……トカゲというかイグアナっぽい感じの顔をしている。
「なんだか、この間よりも丸々としているね?」
「爺様に色々食わせてもらって、なんとか糸ミミズからは抜け出した感じだよなー、ヒルルク」
「うっせーなぁ。俺っちは、謝んねぇぞ!」
ペシンとローランドに叩かれて、ヒルルクがベシャッと床に転がる。
ヒルルクの口調って、子供っぽいというか独特な感じだわ。ローランドも割りとヤンチャな口調ではあるんだけど、今までにないタイプかも? ありすさん寄りの口調かな?
「謝るって言うから、連れて来てやったんだぞ? 爺様の所に戻してやろうか?」
「うっせーなぁ。あそこはガキ共がピィピィ鳴いてて眠れないんだから、仕方ねぇだろ!」
「まぁ、そんなに大事は無かったから大丈夫よ。でも、ここは温泉大陸だから、お客さんも多いし、ああいうのは困るのよ。もうしないで欲しいわね」
私が少し大袈裟に溜め息を吐き、チラチラとヒルルクを見ていると、「わかったよ。ったく、でも、俺っちに気安く話し掛けんなよ!」と悪態をついてくる。なかなかに気難しそうだ。
玄関の方から音がして、バタバタと騒がしい音がし始めた。誰かしらが帰ってきたのだろうと立ち上がると、尻尾を全力で振っているピスターシュが走り込んで来た。
「ピイッ! ピピピィ~!!」
「ピスターシュ、おかえりなさい。お外は楽しかった?」
「ピピイ」
よしよしと頭を撫でると、丸い一つ目がパチパチ瞬きをしながら、嬉しそうに細くなる。続いて居間に上がってきたのはスクルードで、私にしがみ付くとニッコリ笑う。
「スーちゃん、おかえり。今日は早くお勉強終わったんだね。今日はどうだったかな?」
「アメふらせるー!」
「おお、雨が降らせるようになったの? 凄いね! 流石、私のご自慢の息子さんだよ~」
「んふーっ!」
スクルードの頭も撫でて、可愛い子ちゃん二人分ゲットだわーと、喜んでいるとハガネがありすさんを連れて居間に上がってきた。
「アカリっちー、相談があるんだけどさー……って、うわっ! トカゲ!」
「ありすさん、一応その子もドラゴンなのよー」
「誰がトカゲだよ! そこの一つ目の方がよっぽど変だろうが!」
「ピイイ~……」
「コラッ! 小さい子は苛めちゃダメッしょ! うちも悪いけど、あんたも悪いかんね!」
ビシッとありすさんがヒルルクに指を差して怒ると、ヒルルクとありすさんの睨み合いが始まって「まぁまぁ」と、二人の間に入ったものの、久々にありすさんにアルビー以来の好敵手が現れてしまったようだ。
「えーと、ヒルルクもこんなチビッこいので、許してあげてほしいなー……なんて」
「チビとか言うな! お前だって人族にしてはチビだかんな!」
「ムッ! この、口が、悪いことを言っしょ!」
ムギィと、ありすさんがヒルルクの頬を引っ張り上げ、私達はありすさんの手を心配したんだけど、全然平気のようだ。
「やめほ! ふぁふぁおんふぁー!(やめろ! バカ女ー!)」
「まだ言うっしょかー!!」
今度は両手で頬を摘まみ上げるありすさんに、こちらとしてはヒヤヒヤしつつ「手は平気?」と聞くしか無かった。
「別に何ともないっしょ」
「ヒルルクは今は魔力が安定してるからね。そう簡単には、熱は出さないって。俺も居るし、俺は火竜だから熱竜のヒルルクの熱を押さえられるから安心しろって!」
「そう言う事は早く言ってよ。ローランドは、もぅ」
「いーから、放せっ! ったく、何なんだよ! この女! 俺はドラゴンだぞ!」
「そっちがドラゴンなら、こっちは聖女だし! フフーン。崇め奉るがいいっしょ!」
ヒルルクもありすさんも、一向に引かない辺り凄い。ハガネがありすさんの分のお茶を淹れてくれて、とりあえず座ってもらったんだけど、ありすさんはヒルルクを指でうりうり弄りながら、楽しそうに笑っている。
これは意外と相性が良いという事だろうか?
「あの、ありすさん。相談というのは?」
「そうそう。実はうち三人目を授かっちゃったしょ!」
「あらまぁ! おめでとうございます!」
「うんうん。それでなんっしょ。どうもリリちゃんも二人目が出来たらしくて、出来ればアカリっちに少しお世話になりたいなぁって……」
「任せてって言いたいんだけど。うちはコハルも居るし、ミルアもフィリアちゃんも妊婦だから、優先的に自分の家の子になっちゃうと思うのよ。それでも良ければ、手伝うよ」
「うん。それはまぁ、仕方がないし、うちもそこら辺は了承済みっしょ! アカリっち、宜しくね!」
ありすさんに手を握られてブンブンと上下に振られ、少し困り笑いで私はルーファスに怒られそうだなぁと思っていた。
今年の蜜籠りは十人目って張り切っていたし、すでに何回か濃密なのをしているから、妊娠していないとも言えないのが何とも言えない。この世界に妊娠検査薬が必要かも? と、思ってしまうのよね。
ハガネには「お人好しだな」と言われたけど、ハガネもしっかり「来年は大忙しだな」と、言っている辺り動いてくれる気満々なので天邪鬼なんだから仕方がない従者だ。
十分過ぎるぐらいハガネの方が、お人好しなんだよね。
ヒルルクは温泉大陸の熱源のありそうな場所を探しに行くと言い出て行き、ローランドはナルアはちゃんと魔国でも友達も出来ているから心配ないと言って、当分はヒルルクの面倒を見るついでにピスターシュの成長を見るみたいだ。
新しいドラゴンはまだ言語が作られていないので、他のドラゴンを冬眠させないようにして、ピスターシュに言葉を発しないでも会話を出来るように皆で教えるそうだ。
ちなみにヒルルクがピスターシュを「変なヤツ」呼ばわりしたのは、ピスターシュが私を「母上」と呼んでいるからだそうだ。
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