黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

文字の大きさ
上 下
914 / 960
26章

ドラゴンマスター2

しおりを挟む
 朝はエスタークさんの発光騒動があり、きっと他の所でも発光騒動があるのだろうなー……と、少しばかりドラゴンハーフの人達がパニックになっていそうな気がした。
でも、私がそれを気にする前に、我が家の長男リュエールが冒険者ギルドと小鬼通信網を使って、『突然緑色の発光をした人達の情報を求める。遺伝性の病気なので治療薬の治験に参加をしてもらえれば、謝礼金を出す。ギルドを通して連絡をするよう求む』と、依頼を出していた。

「リューちゃんはお仕事早いわねぇ」
「こういうのは初動が肝心なの。目印をしてても、発光状態じゃ身を隠すだろうしね。隠れられたら探すのが大変だよ」
「リューちゃんは、母上の自慢の息子さんだよー」
「それは聞き飽きたよ。まったく、母上はそれよりも、アレをどうにかして」
「はぁーい」

 【刻狼亭】の執務室でリュエールが指さすのは棚の上に逃げ込んでいる小さな光る物体。
色は蛍光緑よ。うん、どうやらねぇ……目印の魔法って、抜け出たドラゴンにも付いちゃっているみたいで、手の平サイズの小さなドラゴンが執務室に逃げ込んだようで、リュエールに私は首根っこを掴まれて連行されてきたのよ。
母親の扱いが酷い……

「おいでー。うちにはね、グリムレインやアルビーやエデンやスピナとか、ドラゴンがいっぱい居るの。今は、ドラゴンハーフの情報を貰って出掛けてるから居ないんだけど、怖がらなくても大丈夫よー」

 話し掛けて手を伸ばすけど、フーッフーッと興奮しているみたいで、鼻息だけしか聞こえない。蛍光緑に光っているから、元の色も分からない状態。
アクエレインみたいに紐状かもしれないし、姿もよく分からないんだよね。

「ピピィ!!」

 バンバンと執務室の縁側の窓を叩く小さなドラゴンの姿が見えた。
ピスターシュが庭を歩いて来たようで、開けて欲しそうに尻尾を振っている。

「ピスターシュ、ごめんねー。もう少し待ってね」
「ピィィ~、ピィー」
「ああ、泣かないで。寂しがり屋さんなんだから」

 ポロポロと涙を零して「開けて開けて」とバンバン叩く姿に、仕方なく窓を少し開けるとピスターシュが私の足に飛びついてきて、頬を擦り寄せて尻尾を振り、窓を閉めようとしたら風のように蛍光緑の光る物体が外へと飛び出してしまった。

「あっ!」
「しまった! もう、母上少しは考えてよ!」
「だって、泣かせちゃうと執務室を石に変えられたら、大変じゃない?」
「まぁ、そりゃそうだけど……これは、探すのは夜の方が光って見付けやすいかもね?」
「そうねぇ……グリムレイン達に怒られなきゃいいんだけど……」
「ピピイ」

 リュエールは従業員に「蛍光緑に光る物を見たら知らせるように」と、従業員達に知らせに行き、私はピスターシュの相手をしながら、散らばった書類整理と、地図とか色々ルーファスが溜め込んだ物などを整頓させられてしまった。
トリニア家の収集癖を本当に止めさせないと駄目だわ。

「ピィーピピピ?」
「ふふっ、これはねー、文鎮ぶんちんっていって物を押さえるのに使う物だよ」
「ピィー」

 散らばった物を一つ一つピスターシュが「何これ?」と、手に持っては首を傾げるので一つ一つ答えてあげて、そのうちコハルも「あれなに? これなに?」って、なになに攻撃が始まるんだろうなーと、思うと少し早めの予備練習かな? 
スクルードもよく「なにー?」って聞いてきていたけど、ハガネが教えてくれたりしてたから、スクルードは知識だけはいっぱい詰まっているんだよね。それをコハルに披露しているけど、コハルが分かっていないから、無駄に終わっているのを、ルーファスやハガネと一緒になって「スー、物知りだな偉いぞ」って褒めて伸ばしている。
我が家は褒めて伸ばす方針でスクルードは育てていきたい。

「ピィピ?」
「ふふっ、これはお菓子だよ。食べてみる?」

 床に散らばった茶菓子の包みを開けて「はい、あーん」と、ピスターシュの口を開けさせて、黒糖の皮で出来た餡子の入り蒸し饅頭をあげようとした時、手の中の蒸し饅頭が消えていた。
そして、少し離れた床で一心不乱に蒸し饅頭を食べる蛍光緑の小さなミミズのような物が居た。
やっぱり、アクエレインと同じで細く小さくなっているみたいだ。

「ピィ……」
「あ、ピスターシュ、もう一個開けてあげるね」

 ぺりぺりと包みを開けると、またミミズのようなドラゴンが近付いてきた。
手の平にお饅頭を乗せて近付いてきたミミズドラゴンを捕まえると、ジュワッと手が熱い鉄を触った様に焼けただれた。

「アッ、痛ぅー!!」
「ピィィ!?」

 ヒドラのクリスタルで手の平の爛れは直ぐに治り始めたけど、これはルーファスの方にも伝わるから、怒られそうだな……と、思った時には腕輪が震えていた。

『アカリ! どうした!? 何があった!?』
「少しドジっただけだから、大丈夫ー……って、ピスターシュ、止めなさいッ!!」

 私が腕輪に気を取られている間に、ピスターシュがミミズドラゴンを追い駆けていて、止めに掛かった時にはピスターシュの両手が焼けただれ血が滲んで「ピアアアアッ!!!!」と悲鳴を上げて転がり回っていた。
ピスターシュを抱き上げて【水癒アクアヒーリング】を施して、傷を直ぐに治したけど、ドラゴン同士でもこんなに相性の悪い危険な子が居るなんて思わなかった。
しおりを挟む
感想 1,004

あなたにおすすめの小説

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。

恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。 パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

婚約者である皇帝は今日別の女と結婚する

アオ
恋愛
公爵家の末娘として転生した美少女マリーが2つ上の幼なじみであり皇帝であるフリードリヒからプロポーズされる。 しかしその日のうちにプロポーズを撤回し別の女と結婚すると言う。 理由は周辺の国との和平のための政略結婚でマリーは泣く泣くフリードのことを諦める。しかしその結婚は実は偽装結婚で 政略結婚の相手である姫の想い人を振り向かせるための偽装結婚式だった。 そんなこととはつゆ知らず、マリーは悩む。すれ違うがその後誤解はとけマリーとフリードは幸せに暮らしました。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。