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26章
ドラゴンの谷④
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コンコンコンコンッと、我が家のドラゴン達が並べられて頭を杖で叩かれ、中型犬程の大きさにさせられ、それぞれが文句を洩らしていた。
「だから我は爺様の所に来るのは止めようと言ったのだ」
「来ないと、もっと酷い目に遭うの」
「そうだよ。コレで済んだんだから良いじゃない」
「兄者は口先だけなのだから……」
ブツブツ言い合うドラゴン達に私は苦笑いをして、ルーファスはお爺さんに招かれて入った小屋の中を珍しそうに見ている。
お爺さんの部屋の中は暖炉をそのまま大きなキッチンにしたタイプで、床は赤い石で出来たブロックが敷き詰められていて、斜めに傷が均等に入っているのは多分滑り止めなのだろう。
キッチンの横のリビングは壁一面が薬草棚になっていて、ちょっとした魔女の家のようだ。製薬部隊が居たら、とても喜んだことだろう。
そして談話室のような場所に私達は通されたのだけど、この談話室がルーファスは物珍しいみたいで「凄いな……」と呟いては頷いている。
談話室は様々な色のクリスタルを、金色が錆び付いた様な金具で巻きつけてあって、私には珍しいとも思えないのだけれど……ルーファスの尻尾がゆらゆらと機嫌良さそうに揺れているから、きっと良い物なのかな?
「さて、客人。儂はウォルベクス。この谷の護り手じゃ。儂の育て子達が世話になっておるようだが、何用かね?」
ウォルベクスさんが鈍色の瞳で私とルーファスを見て、ドラゴン達をジロッと見る。我が家のドラゴン達は、口をへの字に曲げてブスッとした顔で頬を膨らませているところが、いつもより子供っぽくて可愛い。
「オレは、温泉大陸からきたルーファス・トリニアという。こちらは『番』のアカリ。今日はドラゴン達がここへ調べごとをする為に、番を連れて行くというのでついてきた」
「アカリ・トリニアです。グリムレインとアクエレインとエデンとケルチャとケイトの主君をしています」
挨拶は大事なので頭を下げつつ笑顔で答えると、ウォルベクスさんはお鬚を撫でつけながら、ルーファスと私を交互に見る。
「黒天狼族の子孫か。お嬢ちゃんは、妙な気配が入り混じっているな……儂の育て子達は好奇心旺盛だからな。妙な気配に惹かれたのかのう?」
「なるほど。私も、妙にドラゴンが次から次に懐くと不思議でした」
うんうんと、私が頷けばウォルベクスさんは少し妙な顔をして、ルーファスは困ったような口元で薄く笑っているし、ドラゴン達は首をブンブン横に振っている。何か間違えただろうか?
「カッカッカッ、グリムレインが気に入るわけじゃ。一番のひねくれものが主従契約をするなど、無理やり従わせられた訳では無さそうだしのぅ」
「あっ……! 実は知らなくて、グリムレインが怪我を負って気絶してたから、ほぼ無理やりだったかもなんですよー。あははは~」
「嫁! それは内緒だっ!!」
グリムレインがワーッと、私の足にしがみ付いてアワアワと口をパクパクさせている。
私とグリムレインの主従契約は、怪我をして呪いの掛かったグリムレインを治すのに、ポーションに『聖域』を混ぜたからなんだよね。血が契約条件なんて知らなかったから、グリムレインには恨みがましい目で見られたのは懐かしい思い出だ。
ウォルベクスさんも他のドラゴンも半目でグリムレインを見て、グリムレインの氷色の頬がほんのり赤くなり「嫁のスカポンタン!」とテシテシ叩いてくる。
何だろう? この可愛いドラゴンは……中型犬サイズだから余計に可愛いわ。
「他の育て子達はどうしておる?」
「スピナとニクストローブはオレが契約をしている。アルビーは息子達が契約を、ローランドは娘達が契約を、ネルフィームは叔父が契約をしている」
「そうかそうか。皆、それぞれ一ヶ所に集まったか。バラバラに行動する子らだから、心配しておったが一ヶ所に集まっておるなら、よいよい」
ウォルベクスさんは優しそうな目でドラゴン達を見て、ドラゴン達は尻尾を左右に振っている。本当に大切に育てられていたんだろうなぁ。
「あの、ウォルベクスさんはどうして、この谷でドラゴンのお世話をしているんですか?」
「儂の親がこの谷を見付け、根を下ろしてしまったからのぅ。それに、この子らは放っておくと『癒し木』の実で延々と卵孵りを繰り返すからの」
あー、確かにこの子達は美味しい物に目が無いからね……死ぬほど美味しいって言ってたし、死んでまで食べるんだから、困ったドラゴン達を放ってはおけないよね。
ウォルベクスさんの周りにグリムレイン以外が集まって、頭を撫でてもらうとクルクルと喉を鳴らして目を細めるドラゴン達に、ウォルベクスさんも嬉しそうだ。
「それはそうと、お前達は何をしに来たんだ?」
「ハッ! そうなの! 爺様、ドラゴンハーフからアクエレインが分離出来たの! それでドラゴンハーフがどれだけいるかを知りたいの! 爺様なら判るでしょ?」
「ほう。アクエレイン、最近見んと思ったら食われとったのか」
「うぐぅ……爺様、知ってたくせに」
ポカスカとアクエレインがウォルベクスさんを叩き、グリムレインが「爺様が耄碌して感知出来なかったんだろうさ」と、悪態をついて杖で頭をコンッと叩かれた。
ウォルベクスさんの前ではドラゴン達は小さな子供のようで、微笑ましい。
「だから我は爺様の所に来るのは止めようと言ったのだ」
「来ないと、もっと酷い目に遭うの」
「そうだよ。コレで済んだんだから良いじゃない」
「兄者は口先だけなのだから……」
ブツブツ言い合うドラゴン達に私は苦笑いをして、ルーファスはお爺さんに招かれて入った小屋の中を珍しそうに見ている。
お爺さんの部屋の中は暖炉をそのまま大きなキッチンにしたタイプで、床は赤い石で出来たブロックが敷き詰められていて、斜めに傷が均等に入っているのは多分滑り止めなのだろう。
キッチンの横のリビングは壁一面が薬草棚になっていて、ちょっとした魔女の家のようだ。製薬部隊が居たら、とても喜んだことだろう。
そして談話室のような場所に私達は通されたのだけど、この談話室がルーファスは物珍しいみたいで「凄いな……」と呟いては頷いている。
談話室は様々な色のクリスタルを、金色が錆び付いた様な金具で巻きつけてあって、私には珍しいとも思えないのだけれど……ルーファスの尻尾がゆらゆらと機嫌良さそうに揺れているから、きっと良い物なのかな?
「さて、客人。儂はウォルベクス。この谷の護り手じゃ。儂の育て子達が世話になっておるようだが、何用かね?」
ウォルベクスさんが鈍色の瞳で私とルーファスを見て、ドラゴン達をジロッと見る。我が家のドラゴン達は、口をへの字に曲げてブスッとした顔で頬を膨らませているところが、いつもより子供っぽくて可愛い。
「オレは、温泉大陸からきたルーファス・トリニアという。こちらは『番』のアカリ。今日はドラゴン達がここへ調べごとをする為に、番を連れて行くというのでついてきた」
「アカリ・トリニアです。グリムレインとアクエレインとエデンとケルチャとケイトの主君をしています」
挨拶は大事なので頭を下げつつ笑顔で答えると、ウォルベクスさんはお鬚を撫でつけながら、ルーファスと私を交互に見る。
「黒天狼族の子孫か。お嬢ちゃんは、妙な気配が入り混じっているな……儂の育て子達は好奇心旺盛だからな。妙な気配に惹かれたのかのう?」
「なるほど。私も、妙にドラゴンが次から次に懐くと不思議でした」
うんうんと、私が頷けばウォルベクスさんは少し妙な顔をして、ルーファスは困ったような口元で薄く笑っているし、ドラゴン達は首をブンブン横に振っている。何か間違えただろうか?
「カッカッカッ、グリムレインが気に入るわけじゃ。一番のひねくれものが主従契約をするなど、無理やり従わせられた訳では無さそうだしのぅ」
「あっ……! 実は知らなくて、グリムレインが怪我を負って気絶してたから、ほぼ無理やりだったかもなんですよー。あははは~」
「嫁! それは内緒だっ!!」
グリムレインがワーッと、私の足にしがみ付いてアワアワと口をパクパクさせている。
私とグリムレインの主従契約は、怪我をして呪いの掛かったグリムレインを治すのに、ポーションに『聖域』を混ぜたからなんだよね。血が契約条件なんて知らなかったから、グリムレインには恨みがましい目で見られたのは懐かしい思い出だ。
ウォルベクスさんも他のドラゴンも半目でグリムレインを見て、グリムレインの氷色の頬がほんのり赤くなり「嫁のスカポンタン!」とテシテシ叩いてくる。
何だろう? この可愛いドラゴンは……中型犬サイズだから余計に可愛いわ。
「他の育て子達はどうしておる?」
「スピナとニクストローブはオレが契約をしている。アルビーは息子達が契約を、ローランドは娘達が契約を、ネルフィームは叔父が契約をしている」
「そうかそうか。皆、それぞれ一ヶ所に集まったか。バラバラに行動する子らだから、心配しておったが一ヶ所に集まっておるなら、よいよい」
ウォルベクスさんは優しそうな目でドラゴン達を見て、ドラゴン達は尻尾を左右に振っている。本当に大切に育てられていたんだろうなぁ。
「あの、ウォルベクスさんはどうして、この谷でドラゴンのお世話をしているんですか?」
「儂の親がこの谷を見付け、根を下ろしてしまったからのぅ。それに、この子らは放っておくと『癒し木』の実で延々と卵孵りを繰り返すからの」
あー、確かにこの子達は美味しい物に目が無いからね……死ぬほど美味しいって言ってたし、死んでまで食べるんだから、困ったドラゴン達を放ってはおけないよね。
ウォルベクスさんの周りにグリムレイン以外が集まって、頭を撫でてもらうとクルクルと喉を鳴らして目を細めるドラゴン達に、ウォルベクスさんも嬉しそうだ。
「それはそうと、お前達は何をしに来たんだ?」
「ハッ! そうなの! 爺様、ドラゴンハーフからアクエレインが分離出来たの! それでドラゴンハーフがどれだけいるかを知りたいの! 爺様なら判るでしょ?」
「ほう。アクエレイン、最近見んと思ったら食われとったのか」
「うぐぅ……爺様、知ってたくせに」
ポカスカとアクエレインがウォルベクスさんを叩き、グリムレインが「爺様が耄碌して感知出来なかったんだろうさ」と、悪態をついて杖で頭をコンッと叩かれた。
ウォルベクスさんの前ではドラゴン達は小さな子供のようで、微笑ましい。
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