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26章
金竜と赤毛
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秋の行楽シーズン前になり、温泉大陸も紅葉が深まる前にお客さんに新しい催しで楽しんでもらおうと、企画の話が常に事務所で行き交っている。
小鬼さん二人は情報から面白そうなものを提案しては、リュエールに却下されたり、一部企画として企画案を出すように言われたりしている。
その横で、金竜エデンと製薬部隊のロタルスとウエイトが、紐でエスタークさんをぐるぐる巻きにして製薬室へ連行している。
「離せ! 止めろ! 主の裏切者ぉぉ―ッ!!!!」
主こと、イルマールくんはエスタークさんに「逆らえなかった」と微妙な顔で謝りながら見送っていた。これも最近の日課と言えば、日課だろうか?
イルマールくんは、義母であるありすさんに逆らえず、「ドラゴンハーフから人間に戻れるならいい事っしょ?」と、言いくるめられてしまったのだ。
エスタークさんとしては、ドラゴンハーフの強靭な肉体を失うことは、イルマールくんを助ける上でマイナスだと思っている。
実際、相方のダリドアさんは身軽ではあるけれど、ドラゴンハーフの時のような力は発揮できないらしい。
主従関係を結んでしまうと、やはり主人を守るのが従者の務めだと思うようで、色々思う所があるらしい。
しかし、ドラゴンの多いこの温泉大陸で、会うたびにドラゴン達に火を吹かれたり、土を掛けられたり、嫌な顔をされるのは辛いと思う。
光竜のアルビーですら、凄く嫌な顔をするし、ドラゴン達としては、自分の仲間を早く解き放って返して欲しいのもある。
私もね、ドラゴンを分離させて、またこの世界に蘇らせられるなら、それに越したことは無いと思う。
アクエレインみたいに、時間をかけて少しずつ失った体を戻していかなきゃいけないから、時間も掛かるし、ドラゴンが何処へ解き放たれるかも見付けるのは至難の業だからね。
アクエレインは運が良かっただけともいえる。
これに関してはアルビーが、ドラゴンはそれぞれの好きな場所に帰ってしまうだろうから、底で探すしかないみたいで、ドラゴン達は「あいつはここが好きなはずだ!」と、よくドラゴン談議をしている。
「母上、エデンと製薬部隊が無茶しないように見張りに行ってて」
「はぁーい。皆、企画頑張ってね」
「はい。大女将もあいつ等が無茶しないようにしてくださいよ」
「うふふー、それはどうかしら~?」
私が言って聞く様な製薬部隊では無いと思うのよね。
ただ、ドラゴン関係は私に一任してしまった方が、なにかミラクルを起こしそうだというリュエールの提案ともいえるし、ただ単に、私がここに居るとルーファスがソワソワして落ち着かないのもある。
何年経ってもルーファスの私に対する『番』への愛情は減ることは無いし、秋に入るから蜜籠りシーズンで十人目をご希望らしくて、隙あらば手を出そうとしてくるのよね……ルーファスも元気の良い人と言える。
まぁ、あと一人くらいなら……と、思わないでも無いんだけど、コハルが手を焼く魔の一歳児の時点で、これで妊娠に乳幼児抱えてコハルの面倒も見るとなると……少し地獄を見そうな気がする。
スクルードみたいに下に妹や弟が出来たと、お姉さんの自覚をコハルが持てばいいけど……今のところは我が儘お姫様なのよね。
それにミルアも子供を産むし、フィリアちゃんも産むし……母親の手が必要な気がするんだけど、ルーファスとしては「それは夫婦で何とかすれば良い」という感じでねー、でも、きっと私が動くことになると思うのよ。
妊婦でふぅふぅ言いながら動くのはキツイとだけ言っておこう。
製薬室の扉を開けると、室長のマグノリアさんとテッチにピルマーが手に怪しげなポーション瓶を持っているのを見て、また別のポーションの実験台にしようとしているなぁというのが見て取れる。
「こらぁ! ドラゴンハーフの分離するポーション以外は使ったら駄目よ!」
「嫌だなぁ大女将ったら、あははー」
サッとポーションを自分達の後ろ手に隠した時点でアウトだと思うの。
油断も隙も無い製薬部隊の面々である。これだから、エスタークさんも嫌がって逃げるんだってば。
「さぁ! 赤毛、覚悟するのー! 死ねなのー!!」
「それ、ドラゴンの台詞かー!?」
エデン、死ねって言っちゃう辺り駄目だと思う。
エデンが手から金色に光る魔法の渦を出して、羽交い絞めにされたエスタークさんの鳩尾に魔法を叩き込む。
「ぎゃあああああ!!!!」
悲痛なエスタークさんの叫びが上がり、製薬部隊が気絶したエスタークさんに土留色のクワの実の様な黒紫色のポーションを口に入れ始め、大丈夫かな? と、心配していたら、エスタークさんが痙攣し始めて、エデンと製薬部隊が一斉に私を見る。
「はいはい。やればいいんでしょー! 『水癒』」
アクエレインが力を貸してくれなくても、一人くらいなら水の最上級回復魔法を私一人でも使えるようになったのよ。まぁ、魔力の消費が凄いけど……
エスタークさんを水で包み込んで回復させると、エデンも製薬部隊も「また次だー!」と騒いでいる。
反省しない人達だ。
これはまだまだ続きそうな予感がする。
小鬼さん二人は情報から面白そうなものを提案しては、リュエールに却下されたり、一部企画として企画案を出すように言われたりしている。
その横で、金竜エデンと製薬部隊のロタルスとウエイトが、紐でエスタークさんをぐるぐる巻きにして製薬室へ連行している。
「離せ! 止めろ! 主の裏切者ぉぉ―ッ!!!!」
主こと、イルマールくんはエスタークさんに「逆らえなかった」と微妙な顔で謝りながら見送っていた。これも最近の日課と言えば、日課だろうか?
イルマールくんは、義母であるありすさんに逆らえず、「ドラゴンハーフから人間に戻れるならいい事っしょ?」と、言いくるめられてしまったのだ。
エスタークさんとしては、ドラゴンハーフの強靭な肉体を失うことは、イルマールくんを助ける上でマイナスだと思っている。
実際、相方のダリドアさんは身軽ではあるけれど、ドラゴンハーフの時のような力は発揮できないらしい。
主従関係を結んでしまうと、やはり主人を守るのが従者の務めだと思うようで、色々思う所があるらしい。
しかし、ドラゴンの多いこの温泉大陸で、会うたびにドラゴン達に火を吹かれたり、土を掛けられたり、嫌な顔をされるのは辛いと思う。
光竜のアルビーですら、凄く嫌な顔をするし、ドラゴン達としては、自分の仲間を早く解き放って返して欲しいのもある。
私もね、ドラゴンを分離させて、またこの世界に蘇らせられるなら、それに越したことは無いと思う。
アクエレインみたいに、時間をかけて少しずつ失った体を戻していかなきゃいけないから、時間も掛かるし、ドラゴンが何処へ解き放たれるかも見付けるのは至難の業だからね。
アクエレインは運が良かっただけともいえる。
これに関してはアルビーが、ドラゴンはそれぞれの好きな場所に帰ってしまうだろうから、底で探すしかないみたいで、ドラゴン達は「あいつはここが好きなはずだ!」と、よくドラゴン談議をしている。
「母上、エデンと製薬部隊が無茶しないように見張りに行ってて」
「はぁーい。皆、企画頑張ってね」
「はい。大女将もあいつ等が無茶しないようにしてくださいよ」
「うふふー、それはどうかしら~?」
私が言って聞く様な製薬部隊では無いと思うのよね。
ただ、ドラゴン関係は私に一任してしまった方が、なにかミラクルを起こしそうだというリュエールの提案ともいえるし、ただ単に、私がここに居るとルーファスがソワソワして落ち着かないのもある。
何年経ってもルーファスの私に対する『番』への愛情は減ることは無いし、秋に入るから蜜籠りシーズンで十人目をご希望らしくて、隙あらば手を出そうとしてくるのよね……ルーファスも元気の良い人と言える。
まぁ、あと一人くらいなら……と、思わないでも無いんだけど、コハルが手を焼く魔の一歳児の時点で、これで妊娠に乳幼児抱えてコハルの面倒も見るとなると……少し地獄を見そうな気がする。
スクルードみたいに下に妹や弟が出来たと、お姉さんの自覚をコハルが持てばいいけど……今のところは我が儘お姫様なのよね。
それにミルアも子供を産むし、フィリアちゃんも産むし……母親の手が必要な気がするんだけど、ルーファスとしては「それは夫婦で何とかすれば良い」という感じでねー、でも、きっと私が動くことになると思うのよ。
妊婦でふぅふぅ言いながら動くのはキツイとだけ言っておこう。
製薬室の扉を開けると、室長のマグノリアさんとテッチにピルマーが手に怪しげなポーション瓶を持っているのを見て、また別のポーションの実験台にしようとしているなぁというのが見て取れる。
「こらぁ! ドラゴンハーフの分離するポーション以外は使ったら駄目よ!」
「嫌だなぁ大女将ったら、あははー」
サッとポーションを自分達の後ろ手に隠した時点でアウトだと思うの。
油断も隙も無い製薬部隊の面々である。これだから、エスタークさんも嫌がって逃げるんだってば。
「さぁ! 赤毛、覚悟するのー! 死ねなのー!!」
「それ、ドラゴンの台詞かー!?」
エデン、死ねって言っちゃう辺り駄目だと思う。
エデンが手から金色に光る魔法の渦を出して、羽交い絞めにされたエスタークさんの鳩尾に魔法を叩き込む。
「ぎゃあああああ!!!!」
悲痛なエスタークさんの叫びが上がり、製薬部隊が気絶したエスタークさんに土留色のクワの実の様な黒紫色のポーションを口に入れ始め、大丈夫かな? と、心配していたら、エスタークさんが痙攣し始めて、エデンと製薬部隊が一斉に私を見る。
「はいはい。やればいいんでしょー! 『水癒』」
アクエレインが力を貸してくれなくても、一人くらいなら水の最上級回復魔法を私一人でも使えるようになったのよ。まぁ、魔力の消費が凄いけど……
エスタークさんを水で包み込んで回復させると、エデンも製薬部隊も「また次だー!」と騒いでいる。
反省しない人達だ。
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