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26章
コハルと朱里
しおりを挟む 温泉大陸で最近「今日も元気だねぇ」と言われている我が子に、少しばかり手を焼き始めている。
お買い物にコハルを連れて出たら、お店の前でチューリップに籠ってしまったコハルにどうしたものかと、腰に手を当てる。
場所はお団子屋さんの前、そう、コハルの興味を引いてしまったのはお団子屋さんで、コハルにはまだ食べれないと言い聞かせているのに、ピンクと白と緑色と黄色の四色団子を食べると言って聞かず、癇癪を起したのである。
「大女将、立派な花が今日も咲いてるねぇ」
「咲いてないですよ。蕾状態ですから。お店の前を占領してごめんなさいね。直ぐに退けますから。コハル! 出てきなさい!」
「やああぁぁーっ!」
「嫌じゃないでしょ! ケイト、ケルチャ、コハルを回収!」
花竜と木竜に命令を出して回収するのも、最近の日課でお買い物は二人に付き合ってもらわないと、なかなか上手くいかなくなってきた。
「仕方がないわね。ケイト、上のチューリップをお願いね」
「はい。兄さん。コハルちゃん、もいじゃうからねー」
「やあぁぁぁ!」
ケイトがチューリップの花弁部分を上に持ち上げて、下の茎部分をケルチャが枯らして足で地面を慣らす。
チューリップの中のコハルが、ぶっすり顔でケイトに花から出されて、私の腕に戻ってくる。
「コハル、お買い物の時は我が儘をいってはいけません。わかった?」
「やいなー!」
「知らないじゃないでしょ! 母上の言う事を聞かないと、お尻を叩きますよ?」
「やっ!」
プイッと顔を背けるコハルの反抗的態度……うちの子に一歳でここまで主張する子は居ただろうか?
スクルードは甘えてばかりな感じの子だったから、コハルの主張の激しさが余計に目に余る感じだ。
白と黒に別れた髪に黒と金の目、着物も白と黒の縦じまに赤いサクランボの絵柄、帯は赤い帯で、後ろが金魚のヒレになっていて、なかなかに目立つ上、チューリップを生やしたりするから、余計に目立つ。
着物に関しては髪の色が色なので、濃い目の配色でないと似合わないから、目立っちゃうんだよね。
温泉街の旅行客や常連さんには、ウケているみたいだけど、見世物では無いし、コハルの回収は結構手を焼くのだ。
「コハル、父上にも怒ってもらいますよ?」
「やっ!」
「じゃあ、ハガネに怒ってもらおうかしら?」
「やあぁぁぁ!!」
「嫌なら、お外でチューリップ出すのを止めなさい」
流石にハガネは怖いようで、コハルも全力で拒否して、大人しくなる。
ハガネは何だかんだで、説得力があるから、コハルもよく言い聞かされて言い負かされちゃうんだよね。
我が家の親指姫ちゃんは撫すくれたまま、私の胸に顔を埋める。
多分、少し早いイヤイヤ期なのだと思うけど、スクルードはもう少し可愛いイヤイヤ期だった様な? いや、ルーファスが散々イヤイヤされて困っていたから、どちらも似たようなものかな?
コハルを連れてケイトとケルチャと買い物の続きをしていると、我が家のお嫁さんフィリアちゃんと孫のルビスちゃんが手を繋いで歩いていた。
「フィリアちゃん、ルビスちゃん、お買い物?」
「あ、お義母様、こんにちは。お夕飯のお買い物です」
「おばあさま。こんにちはー」
「ふふっ、ルビスちゃんしっかりお姉さんらしくなったわね」
「あたし、おねえさんだもん!」
フィリアちゃんが第二子の妊娠で、最近はルビスちゃんが我が儘を言わずに、フィリアちゃんのお手伝いを進んでする様になったと、シュトラールが嬉しそうに話していたけど、やっぱり下の子が出来ると、小さくてもお姉さんの自覚がでてしっかりするみたいで、微笑ましい成長だ。
スクルードもお兄さんをしているから、コハルも下にも弟か妹が出来たら大人しくなるだろうか……いや、その為だけに、子供を作るのもね。
「コハルちゃん、こんにちはー」
「ぬぬあ!」
「ルビスお姉ちゃんでしょ? 呼び捨てはダーメ」
挨拶をしてくれたルビスちゃんに、コハルは「私、名前知ってますよ! 凄いでしょ!」と、言わんばかりのエッヘンとした得意顔をする。
これもコハルの成長ぶりで、人の名前はキチンと発音しては言えないけど、顔と名前を言い当てる凄いところである。
「お義母様って、赤ちゃんの言葉よく理解できますよね」
「なんとなくよ。これでも九人のお母さんだもの」
ほぼニュアンスで聞き取っているようなものだから、話が通じない時も多々ある。
フィリアちゃんとルビスちゃんに「折角だから、何か食べていく?」と誘うと、コハルが先程のお団子屋さんを指さす。
耳ざとい子である……そして、諦めの悪い子でもある。
「コハルがお団子屋さんが良いみたいなんだけど、一緒に行く?」
「はい。ご一緒させてください」
「わぁーい。おだんごー」
「あいあーい!」
「コハルはアンコ玉だからね?」
「あんあ!」
お団子屋さんに入って、お店の人にコッソリと「赤ちゃん用に小さいアンコを串に刺したお団子に見立てたの作ってもらえます?」と聞いて、コハル用に作ってもらった。
こし餡の練りきりで色とりどりの串団子にしてもらい、コハルが手づかみでワシワシと口に入れても、これなら大丈夫である。
コハルはお口いっぱいに頬張るのが好きな、小さい頃の私に似てしまって、証拠写真がある為に私も「そんなに頬張るんじゃありません!」と、怒りきれないでいる。
ルーファスは「可愛い」とコハルの食事写真をよく撮っているから、コハルが大きくなったら恥ずかしがりそう。
「フィリアちゃんは、今回は悪阻はどう?」
「今回はそれ程ないですね。むしろ色々食べ過ぎちゃって、シューが心配するくらいですし」
「シューちゃんが? なら、いっぱい食べているのね。ふふっ」
「健診の時に、体重増加し過ぎても怒られるので、気を付けなきゃいけないんですけどね」
「それは分かるわ。スクルードの時に食べ過ぎて、私も怒られたもの」
お腹の赤ちゃんの為にいっぱい食べたい気持ちもあるし、周りの皆も気をつかって色々食べ物を持って来てくれたりで、つい食べ過ぎちゃうのも妊婦の悩みだよねえ。
お団子屋さんでフィリアちゃんとルビスちゃんと別れて、満足そうなコハルを連れて帰っていると、ケイトとケルチャが「ねぇ、花が飛んでるわよ」と教えてくれた。
私が歩いた後に花が地面に落ちていて、コハルを見ればコハルは笑顔で、笑う度に花がふわふわ飛んでいた。
これはまた、『温泉大陸の花咲か赤ちゃん』とか言われちゃいそうだ。
まぁ、このぐらいなら夜にでも、温泉鳥達がゴミ箱に咥えて捨ててくれるから大丈夫なんだけどね。
コハルも早めにハガネか誰か魔法をコントロール出来る人に教わらなきゃいけないかもしれない。
お買い物にコハルを連れて出たら、お店の前でチューリップに籠ってしまったコハルにどうしたものかと、腰に手を当てる。
場所はお団子屋さんの前、そう、コハルの興味を引いてしまったのはお団子屋さんで、コハルにはまだ食べれないと言い聞かせているのに、ピンクと白と緑色と黄色の四色団子を食べると言って聞かず、癇癪を起したのである。
「大女将、立派な花が今日も咲いてるねぇ」
「咲いてないですよ。蕾状態ですから。お店の前を占領してごめんなさいね。直ぐに退けますから。コハル! 出てきなさい!」
「やああぁぁーっ!」
「嫌じゃないでしょ! ケイト、ケルチャ、コハルを回収!」
花竜と木竜に命令を出して回収するのも、最近の日課でお買い物は二人に付き合ってもらわないと、なかなか上手くいかなくなってきた。
「仕方がないわね。ケイト、上のチューリップをお願いね」
「はい。兄さん。コハルちゃん、もいじゃうからねー」
「やあぁぁぁ!」
ケイトがチューリップの花弁部分を上に持ち上げて、下の茎部分をケルチャが枯らして足で地面を慣らす。
チューリップの中のコハルが、ぶっすり顔でケイトに花から出されて、私の腕に戻ってくる。
「コハル、お買い物の時は我が儘をいってはいけません。わかった?」
「やいなー!」
「知らないじゃないでしょ! 母上の言う事を聞かないと、お尻を叩きますよ?」
「やっ!」
プイッと顔を背けるコハルの反抗的態度……うちの子に一歳でここまで主張する子は居ただろうか?
スクルードは甘えてばかりな感じの子だったから、コハルの主張の激しさが余計に目に余る感じだ。
白と黒に別れた髪に黒と金の目、着物も白と黒の縦じまに赤いサクランボの絵柄、帯は赤い帯で、後ろが金魚のヒレになっていて、なかなかに目立つ上、チューリップを生やしたりするから、余計に目立つ。
着物に関しては髪の色が色なので、濃い目の配色でないと似合わないから、目立っちゃうんだよね。
温泉街の旅行客や常連さんには、ウケているみたいだけど、見世物では無いし、コハルの回収は結構手を焼くのだ。
「コハル、父上にも怒ってもらいますよ?」
「やっ!」
「じゃあ、ハガネに怒ってもらおうかしら?」
「やあぁぁぁ!!」
「嫌なら、お外でチューリップ出すのを止めなさい」
流石にハガネは怖いようで、コハルも全力で拒否して、大人しくなる。
ハガネは何だかんだで、説得力があるから、コハルもよく言い聞かされて言い負かされちゃうんだよね。
我が家の親指姫ちゃんは撫すくれたまま、私の胸に顔を埋める。
多分、少し早いイヤイヤ期なのだと思うけど、スクルードはもう少し可愛いイヤイヤ期だった様な? いや、ルーファスが散々イヤイヤされて困っていたから、どちらも似たようなものかな?
コハルを連れてケイトとケルチャと買い物の続きをしていると、我が家のお嫁さんフィリアちゃんと孫のルビスちゃんが手を繋いで歩いていた。
「フィリアちゃん、ルビスちゃん、お買い物?」
「あ、お義母様、こんにちは。お夕飯のお買い物です」
「おばあさま。こんにちはー」
「ふふっ、ルビスちゃんしっかりお姉さんらしくなったわね」
「あたし、おねえさんだもん!」
フィリアちゃんが第二子の妊娠で、最近はルビスちゃんが我が儘を言わずに、フィリアちゃんのお手伝いを進んでする様になったと、シュトラールが嬉しそうに話していたけど、やっぱり下の子が出来ると、小さくてもお姉さんの自覚がでてしっかりするみたいで、微笑ましい成長だ。
スクルードもお兄さんをしているから、コハルも下にも弟か妹が出来たら大人しくなるだろうか……いや、その為だけに、子供を作るのもね。
「コハルちゃん、こんにちはー」
「ぬぬあ!」
「ルビスお姉ちゃんでしょ? 呼び捨てはダーメ」
挨拶をしてくれたルビスちゃんに、コハルは「私、名前知ってますよ! 凄いでしょ!」と、言わんばかりのエッヘンとした得意顔をする。
これもコハルの成長ぶりで、人の名前はキチンと発音しては言えないけど、顔と名前を言い当てる凄いところである。
「お義母様って、赤ちゃんの言葉よく理解できますよね」
「なんとなくよ。これでも九人のお母さんだもの」
ほぼニュアンスで聞き取っているようなものだから、話が通じない時も多々ある。
フィリアちゃんとルビスちゃんに「折角だから、何か食べていく?」と誘うと、コハルが先程のお団子屋さんを指さす。
耳ざとい子である……そして、諦めの悪い子でもある。
「コハルがお団子屋さんが良いみたいなんだけど、一緒に行く?」
「はい。ご一緒させてください」
「わぁーい。おだんごー」
「あいあーい!」
「コハルはアンコ玉だからね?」
「あんあ!」
お団子屋さんに入って、お店の人にコッソリと「赤ちゃん用に小さいアンコを串に刺したお団子に見立てたの作ってもらえます?」と聞いて、コハル用に作ってもらった。
こし餡の練りきりで色とりどりの串団子にしてもらい、コハルが手づかみでワシワシと口に入れても、これなら大丈夫である。
コハルはお口いっぱいに頬張るのが好きな、小さい頃の私に似てしまって、証拠写真がある為に私も「そんなに頬張るんじゃありません!」と、怒りきれないでいる。
ルーファスは「可愛い」とコハルの食事写真をよく撮っているから、コハルが大きくなったら恥ずかしがりそう。
「フィリアちゃんは、今回は悪阻はどう?」
「今回はそれ程ないですね。むしろ色々食べ過ぎちゃって、シューが心配するくらいですし」
「シューちゃんが? なら、いっぱい食べているのね。ふふっ」
「健診の時に、体重増加し過ぎても怒られるので、気を付けなきゃいけないんですけどね」
「それは分かるわ。スクルードの時に食べ過ぎて、私も怒られたもの」
お腹の赤ちゃんの為にいっぱい食べたい気持ちもあるし、周りの皆も気をつかって色々食べ物を持って来てくれたりで、つい食べ過ぎちゃうのも妊婦の悩みだよねえ。
お団子屋さんでフィリアちゃんとルビスちゃんと別れて、満足そうなコハルを連れて帰っていると、ケイトとケルチャが「ねぇ、花が飛んでるわよ」と教えてくれた。
私が歩いた後に花が地面に落ちていて、コハルを見ればコハルは笑顔で、笑う度に花がふわふわ飛んでいた。
これはまた、『温泉大陸の花咲か赤ちゃん』とか言われちゃいそうだ。
まぁ、このぐらいなら夜にでも、温泉鳥達がゴミ箱に咥えて捨ててくれるから大丈夫なんだけどね。
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