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26章
冒険者試験 兄弟VS兄弟
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冬休みを利用して、魔国から帰ってきている我が家の三つ子、ティルナールとルーシー。
ティルナールはエルシオンと一緒に冒険者試験を受けに行き、ルーシーは【刻狼亭】で行儀見習いの様な形で、旅館の方で雑用をさせて貰っている。
屋敷には私とルーファス、スクルードにコハルの四人で、グリムレインとアクエレインはティルナール達を冷やかしに、冒険者ギルドに行って留守にしている。
洗濯物をたたむ私の横で、コハルがハイハイをしていて、ルーファスはソファでスクルードに絵本を読みながら言葉を教えている。
「あい、あいあいあい」
「あ、あーっ、コハル~っ、洗濯物にハイハイしちゃ駄目って言ってるでしょ?」
「あいあい」
洗濯物の中にハイハイで突っ込み、洗濯物を投げ散らかすのがマイブームなコハルは、今日も元気に洗濯物に突っ込んできた。
「コハル。それ、あなたのオムツなのよ? もう、突っ込んじゃ駄目」
「あいあい!」
「その顔は……言う事聞かない顔ね。悪い子ちゃん」
コハルを捕まえて、洗濯籠に閉じ込めると、「んきゃー!」と声を上げて、またハイハイして歩くのだから、凄くパワフルな子だ。
「アカリも、コハルには手を焼いているな」
「スーちゃんが大人しかった分、コハルには手を焼いてる……と、言うより、我が家の男の子は皆、赤ちゃんの頃は大人しかったのよ? 女の子は皆、こうなのよね……」
どうしてこうなるのか……シャルちゃんを見てると、女の子だから元気って言う訳じゃないのよね。
これは皆でコハルを甘やかしたツケが回ってきているのかしら?
洗濯物をたたんで、テーブルの上に置くと、洗濯籠を背負ったままハイハイしていくコハルを連れ戻す。
「ほら、コハル。気は済んだでしょ?」
「あいあい」
「本当に笑顔とお返事だけは良い子ねー」
「あーぷぅー」
「ルーファス。コハルを少しお願い。洗濯物を入れてくるね」
「ああ、分かった。コハル、父上が本を読んでやろう」
「すーの、すーのほん~」
「ああ、スーも一緒に読もうな」
ルーファスが優しい目で二人を相手にして『お父さん』の顔をしているのは、やっぱり見ていてこちらも嬉しくなる。私の旦那様は子供が好きで、優しい良いお父さんだ。
洗濯物を二階にある子供部屋の引き出しに入れて、またルーファスの所に戻ると、左にはスクルード、右膝にはコハルが居て、二人にペシペシ叩かれるルーファスが居た。
「あらら、どうしたの?」
「あだーぷー!」
「コハルが本を舐めるから、止めたら癇癪を起してな。本を上にあげたら、スーに叩かれている、というところだ」
「スーちゃんは、コハルに絵本を取り返してあげたいのね。ふふっ、お兄ちゃんだね。でも、父上に二人してポコポコ叩くのは、メッ!」
二人のおでこを軽くペシと叩くと、スクルードはフルフルと首を振り、何で叩くの? と涙目で訴えて泣き、コハルは「アブーッ!」と、声を上げて怒っている。
うん。普通に逆だわ、この子達。
「コ―ハール―、怒ってるのは母上だよ? コハルがいけないことしたのよ? わかってる?」
「あぷーっ!」
コハルの頬っぺたをムギュムギュと両手で包むと、ルーファスがオロオロして「アカリ、その辺で」と声を掛けてくる。こういうところが、我が家のコハルの甘やかしの駄目な所だと思う。
一体何人子育てしたと思っているのやら……
「ルーファスは黙ってて。これはコハルの躾なの」
「あぷぅー! あいあい!」
「ははうー、はる、いやいや」
「スーちゃんも黙ってなさい。コハルが良い子にならないでしょう?」
「あぷぅー……ぅぅっ」
「コハル、泣き真似してもダーメ」
お母さんをナメてはいけない。
九人のお母さんは、そんじょそこらのお母さんとはわけが違うのだ。
コハルに叱っても、理解はまだしないのは分かっているけど、キチンと目上の人は怖いんだぞ! と、教え込んでおかないといけない。
「母上ー! もぉー、聞いてよー!」
「母上、聞いてよー! グリムレイン達が酷いんだよ!」
ドカドカと足を踏み鳴らしながら、ティルナールとエルシオンが大広間に入ってきて、その後をケタケタ笑いながら、グリムレインとアクエレインが入って来る。
冒険者ギルドに行っていたはずだけど、何をしてきたのやら?
ティルナールとエルシオンが同じ仕草で、グリムレインとアクエレインを指さして同時に口を開く。
「「ボクらの実技試験の前に、二人が試験官を再起不能にしたんだよ! おかげでボクらの試験は、無し!」」
「あらら。グリムレイン、アクアレイン、そんな事したの?」
ニンマリと笑う二人は、手に冒険者カードを持っていて「「我らも受けてきたのだ!」」と誇らしげだ。
ちゃんと筆記試験を受けての事だろうし、不正は無いだろう。実技の方は試験官が可哀想ではあるけど……
「仕方がないわね。シューちゃんは忙しいだろうから、母上が試験官を治してあげようか?」
「「試験官ならアクアレインが治したよ! でも、もう嫌だって、逃げちゃったんだよ!」」
試験官って逃げたらペナルティが発生したりしないのかな?
私の時は脅されたけど……まぁ、普通にドラゴンを相手にCランク冒険者の試験官が太刀打ちっていうのも、恐怖体験よねぇ……
「じゃあ、お小遣いをあげるから、二人で他のギルド試験の会場に行ったらどうかしら? なんなら、イルブールの街なら年中無休で受けられるし、良いんじゃない?」
「「うーん……手早く合格してランク上げたかったのになぁ……」」
ティルナールとエルシオンの二人が「はぁー……」と溜め息を吐き、グリムレインとアクエレインは「我らの勝利だ」と褒めてくれと、頭を差し出してくる。
「まぁ、合格は合格だものね。二人共、冒険者おめでとう。頑張るんだよ? でも、無茶なランク上げは駄目だからね?」
「我はそこら辺は心得ておる」
「兄者の言う通りだ」
私が二人の頭を撫でると、ティルナールとエルシオンが「「心得てなーい!」」と叫び、ルーファスが今のうちとばかりにコハルを自分の腕に確保して、私からコハルを守っている。
まったく、これではコハルの教育に悪いから、ルーファスもコハルと一緒に叱るべきかな?
ティルナールはエルシオンと一緒に冒険者試験を受けに行き、ルーシーは【刻狼亭】で行儀見習いの様な形で、旅館の方で雑用をさせて貰っている。
屋敷には私とルーファス、スクルードにコハルの四人で、グリムレインとアクエレインはティルナール達を冷やかしに、冒険者ギルドに行って留守にしている。
洗濯物をたたむ私の横で、コハルがハイハイをしていて、ルーファスはソファでスクルードに絵本を読みながら言葉を教えている。
「あい、あいあいあい」
「あ、あーっ、コハル~っ、洗濯物にハイハイしちゃ駄目って言ってるでしょ?」
「あいあい」
洗濯物の中にハイハイで突っ込み、洗濯物を投げ散らかすのがマイブームなコハルは、今日も元気に洗濯物に突っ込んできた。
「コハル。それ、あなたのオムツなのよ? もう、突っ込んじゃ駄目」
「あいあい!」
「その顔は……言う事聞かない顔ね。悪い子ちゃん」
コハルを捕まえて、洗濯籠に閉じ込めると、「んきゃー!」と声を上げて、またハイハイして歩くのだから、凄くパワフルな子だ。
「アカリも、コハルには手を焼いているな」
「スーちゃんが大人しかった分、コハルには手を焼いてる……と、言うより、我が家の男の子は皆、赤ちゃんの頃は大人しかったのよ? 女の子は皆、こうなのよね……」
どうしてこうなるのか……シャルちゃんを見てると、女の子だから元気って言う訳じゃないのよね。
これは皆でコハルを甘やかしたツケが回ってきているのかしら?
洗濯物をたたんで、テーブルの上に置くと、洗濯籠を背負ったままハイハイしていくコハルを連れ戻す。
「ほら、コハル。気は済んだでしょ?」
「あいあい」
「本当に笑顔とお返事だけは良い子ねー」
「あーぷぅー」
「ルーファス。コハルを少しお願い。洗濯物を入れてくるね」
「ああ、分かった。コハル、父上が本を読んでやろう」
「すーの、すーのほん~」
「ああ、スーも一緒に読もうな」
ルーファスが優しい目で二人を相手にして『お父さん』の顔をしているのは、やっぱり見ていてこちらも嬉しくなる。私の旦那様は子供が好きで、優しい良いお父さんだ。
洗濯物を二階にある子供部屋の引き出しに入れて、またルーファスの所に戻ると、左にはスクルード、右膝にはコハルが居て、二人にペシペシ叩かれるルーファスが居た。
「あらら、どうしたの?」
「あだーぷー!」
「コハルが本を舐めるから、止めたら癇癪を起してな。本を上にあげたら、スーに叩かれている、というところだ」
「スーちゃんは、コハルに絵本を取り返してあげたいのね。ふふっ、お兄ちゃんだね。でも、父上に二人してポコポコ叩くのは、メッ!」
二人のおでこを軽くペシと叩くと、スクルードはフルフルと首を振り、何で叩くの? と涙目で訴えて泣き、コハルは「アブーッ!」と、声を上げて怒っている。
うん。普通に逆だわ、この子達。
「コ―ハール―、怒ってるのは母上だよ? コハルがいけないことしたのよ? わかってる?」
「あぷーっ!」
コハルの頬っぺたをムギュムギュと両手で包むと、ルーファスがオロオロして「アカリ、その辺で」と声を掛けてくる。こういうところが、我が家のコハルの甘やかしの駄目な所だと思う。
一体何人子育てしたと思っているのやら……
「ルーファスは黙ってて。これはコハルの躾なの」
「あぷぅー! あいあい!」
「ははうー、はる、いやいや」
「スーちゃんも黙ってなさい。コハルが良い子にならないでしょう?」
「あぷぅー……ぅぅっ」
「コハル、泣き真似してもダーメ」
お母さんをナメてはいけない。
九人のお母さんは、そんじょそこらのお母さんとはわけが違うのだ。
コハルに叱っても、理解はまだしないのは分かっているけど、キチンと目上の人は怖いんだぞ! と、教え込んでおかないといけない。
「母上ー! もぉー、聞いてよー!」
「母上、聞いてよー! グリムレイン達が酷いんだよ!」
ドカドカと足を踏み鳴らしながら、ティルナールとエルシオンが大広間に入ってきて、その後をケタケタ笑いながら、グリムレインとアクエレインが入って来る。
冒険者ギルドに行っていたはずだけど、何をしてきたのやら?
ティルナールとエルシオンが同じ仕草で、グリムレインとアクエレインを指さして同時に口を開く。
「「ボクらの実技試験の前に、二人が試験官を再起不能にしたんだよ! おかげでボクらの試験は、無し!」」
「あらら。グリムレイン、アクアレイン、そんな事したの?」
ニンマリと笑う二人は、手に冒険者カードを持っていて「「我らも受けてきたのだ!」」と誇らしげだ。
ちゃんと筆記試験を受けての事だろうし、不正は無いだろう。実技の方は試験官が可哀想ではあるけど……
「仕方がないわね。シューちゃんは忙しいだろうから、母上が試験官を治してあげようか?」
「「試験官ならアクアレインが治したよ! でも、もう嫌だって、逃げちゃったんだよ!」」
試験官って逃げたらペナルティが発生したりしないのかな?
私の時は脅されたけど……まぁ、普通にドラゴンを相手にCランク冒険者の試験官が太刀打ちっていうのも、恐怖体験よねぇ……
「じゃあ、お小遣いをあげるから、二人で他のギルド試験の会場に行ったらどうかしら? なんなら、イルブールの街なら年中無休で受けられるし、良いんじゃない?」
「「うーん……手早く合格してランク上げたかったのになぁ……」」
ティルナールとエルシオンの二人が「はぁー……」と溜め息を吐き、グリムレインとアクエレインは「我らの勝利だ」と褒めてくれと、頭を差し出してくる。
「まぁ、合格は合格だものね。二人共、冒険者おめでとう。頑張るんだよ? でも、無茶なランク上げは駄目だからね?」
「我はそこら辺は心得ておる」
「兄者の言う通りだ」
私が二人の頭を撫でると、ティルナールとエルシオンが「「心得てなーい!」」と叫び、ルーファスが今のうちとばかりにコハルを自分の腕に確保して、私からコハルを守っている。
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