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26章
秋が近付く
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夏が終わりを告げるように、段々と夏の花は消え、紅葉にはまだ早いけれど、葉が渋みを増した十月にエルシオンは温泉大陸を出て、ギルさんの紹介で貴族の屋敷へと執事見習いとして出て行った。
我が家はほんの少し賑やかさが消えたかと言うと、そうでも無かったりする。
コハルとシャルちゃんが二人で向かい合って何かを喋っているのだ。
「あうー、あー」
「うなー、あーうー」
赤ちゃん語なので意味があるかはわからないけれど、二人がよくしゃべり合っているので微笑ましいのと、周りの大人達は「うちの子可愛いっ!」と大騒ぎしている為、我が家は今日も賑やかである。
「コハルにシャルちゃんにヘッドドレスですのよ~」
「可愛いのですわ~」
結婚して家を出た娘のミルアが毎日のように我が家に来るので、前と生活は変らないかもしれない。
ウエディングドレスの刺繍に集中力が切れると、二人はコハルとシャルちゃんにヘッドドレスや涎掛けを作っている。
夜にはミールが迎えに来てミルアが「今日は家に泊まりますわ」と言ったりして押し問答が何回かあったりもする。うちの子はお喋り好きだから、ついつい家族で喋っているのに夢中になって、新婚家庭なのになかなか家に帰らない子なのだ。
まぁ、蜜籠りがそろそろシーズンに入るので、ミルアとしては赤ん坊の居る我が家で予行演習のようにコハルやシャルちゃんの世話をしているのもある。
同じ狼族なので子供が出来やすいだろうから、予行演習は大事だろう。
勿論、私もお手伝いをする気は満々なので、早くミルアの子供を抱っこしたいものである。
急かす気はないけど、秋近くなると蜜籠りのシーズンの始まる獣人とかはソワソワしていて、ミールも今年からは番のミルアを得たのでソワソワしているのが傍目から見てもわかるしね。
ミルア、狼族同士の蜜籠りがどういうものかはわからないけど、一日十回とか普通らしいので頑張るのですよ。ミールは昔から女の子に手を出すような子では無いから、きっとミルアが初体験の相手だろう……ガッツき過ぎないように、手加減ですよ! うちのミルアも初めてなんですからね! と、心の中で騒いでおく。
「ミルア、そろそろ帰ろう」
「あーん。折角コハルとシャルちゃんにお揃いのヘッドドレスをしましたのにぃ~」
「ふふっ、ミルア、またいらっしゃいな。ミール、ミルアのことお願いね」
「はい。大女将」
「大女将じゃなくて、お母さんでいいのに」
私が口に手を置いてふふふっと笑うと、ミールが少し顔を赤くして「お義母さん……」とボソッと言う。
照れちゃって可愛いんだから、まぁミールは子供の頃から不愛想な感じではあるから、こうした表情が見れるのは可愛いものだ。
「また来ますの~」
「ええ、気を付けて帰りなさい」
ミールに腰をガッシリ持たれてミルアが名残惜しそうに屋敷から帰っていった。
ゆっくり動くミールの尻尾に、パタパタと嬉しそうなミルアの尻尾は二人の心情が読みとれるので仲が良さそうで何よりである。
「アカリ、ミルアはもう帰ってしまったか?」
「ええ。スーちゃんはどうですか?」
「スーは少し魔法に頼りすぎているから、基礎体力をつけないと駄目だな」
エルシオンが温泉大陸を出て行き、朝と夜の体術訓練はスクルードとレーネルくんにお鉢が回ってきた。
まだ小さいから早い様な気もするけど、レーネルくんは時期当主なので早めに自分でも身を護るすべを覚えるべきだと、リュエールもルーファスも口をそろえている為に逃げようは無かったし、スクルードは魔法と体術のバランスを取らないと将来、ハガネの様に魔法特化型になってしまうと困るということで、魔法と体術の両方を習わされ始めている。
ハガネは別に武闘派でないだけで、それなりには体術も使えるのだ。
この大陸の人達が体力お化けなだけなだけだと、私は思うんだけどね……
まぁ、私みたいに体力のないのも問題なので、そこら辺はルーファスに任せている。
「ルーファス、汗かいたでしょ? お風呂にでも入ったら?」
「子供二人に汗をかく程の運動はしていないが……?」
「そう? なんだか匂いが強いから汗でもかいたのかと思ったけど……」
「……ああ、蜜籠りのシーズンが始まったんだな」
「うっ」
しまった! 自分でも蜜籠りシーズンがそろそろ始まるなぁとは思っていたのに、ルーファスの匂いが濃くなったことにその考えが思い至らなかった!
去年は三日三晩ヤッてしまったり、発情する日が狂ってしまったりで色々と怒涛の様な蜜籠りだった気がする。
ギギギギと油の切れたロボットのようにルーファスを見上げると、蕩ける様な微笑みで「今年はどうするかな?」と言うルーファスに「ひぇぇぇぇ」とブルッと身震いがする。
「あの、でも今年はコハルも居るので……」
「母乳さえストックさせておけば他の者が見てくれるだろう」
「ルーファスはコハルが一番可愛いんじゃないの?」
コハルの為にも二日も三日もエロエロな日々は送りたくない。
ルーファスは間髪入れずに「一番可愛いのはアカリだからな。コハルも子供達も皆可愛いが、一番は譲れない」と良い笑顔で私を抱き寄せてしまう。
ああ、今年も私の怒涛の蜜籠りが始まるのか……せめて発情の日以外は手加減してほしいかも? と、ルーファスと唇を合わせながら思ってしまうのだった。
ああ、でもこの様子だと……哺乳瓶新しいの買い足さないと駄目かもしれない。
我が家はほんの少し賑やかさが消えたかと言うと、そうでも無かったりする。
コハルとシャルちゃんが二人で向かい合って何かを喋っているのだ。
「あうー、あー」
「うなー、あーうー」
赤ちゃん語なので意味があるかはわからないけれど、二人がよくしゃべり合っているので微笑ましいのと、周りの大人達は「うちの子可愛いっ!」と大騒ぎしている為、我が家は今日も賑やかである。
「コハルにシャルちゃんにヘッドドレスですのよ~」
「可愛いのですわ~」
結婚して家を出た娘のミルアが毎日のように我が家に来るので、前と生活は変らないかもしれない。
ウエディングドレスの刺繍に集中力が切れると、二人はコハルとシャルちゃんにヘッドドレスや涎掛けを作っている。
夜にはミールが迎えに来てミルアが「今日は家に泊まりますわ」と言ったりして押し問答が何回かあったりもする。うちの子はお喋り好きだから、ついつい家族で喋っているのに夢中になって、新婚家庭なのになかなか家に帰らない子なのだ。
まぁ、蜜籠りがそろそろシーズンに入るので、ミルアとしては赤ん坊の居る我が家で予行演習のようにコハルやシャルちゃんの世話をしているのもある。
同じ狼族なので子供が出来やすいだろうから、予行演習は大事だろう。
勿論、私もお手伝いをする気は満々なので、早くミルアの子供を抱っこしたいものである。
急かす気はないけど、秋近くなると蜜籠りのシーズンの始まる獣人とかはソワソワしていて、ミールも今年からは番のミルアを得たのでソワソワしているのが傍目から見てもわかるしね。
ミルア、狼族同士の蜜籠りがどういうものかはわからないけど、一日十回とか普通らしいので頑張るのですよ。ミールは昔から女の子に手を出すような子では無いから、きっとミルアが初体験の相手だろう……ガッツき過ぎないように、手加減ですよ! うちのミルアも初めてなんですからね! と、心の中で騒いでおく。
「ミルア、そろそろ帰ろう」
「あーん。折角コハルとシャルちゃんにお揃いのヘッドドレスをしましたのにぃ~」
「ふふっ、ミルア、またいらっしゃいな。ミール、ミルアのことお願いね」
「はい。大女将」
「大女将じゃなくて、お母さんでいいのに」
私が口に手を置いてふふふっと笑うと、ミールが少し顔を赤くして「お義母さん……」とボソッと言う。
照れちゃって可愛いんだから、まぁミールは子供の頃から不愛想な感じではあるから、こうした表情が見れるのは可愛いものだ。
「また来ますの~」
「ええ、気を付けて帰りなさい」
ミールに腰をガッシリ持たれてミルアが名残惜しそうに屋敷から帰っていった。
ゆっくり動くミールの尻尾に、パタパタと嬉しそうなミルアの尻尾は二人の心情が読みとれるので仲が良さそうで何よりである。
「アカリ、ミルアはもう帰ってしまったか?」
「ええ。スーちゃんはどうですか?」
「スーは少し魔法に頼りすぎているから、基礎体力をつけないと駄目だな」
エルシオンが温泉大陸を出て行き、朝と夜の体術訓練はスクルードとレーネルくんにお鉢が回ってきた。
まだ小さいから早い様な気もするけど、レーネルくんは時期当主なので早めに自分でも身を護るすべを覚えるべきだと、リュエールもルーファスも口をそろえている為に逃げようは無かったし、スクルードは魔法と体術のバランスを取らないと将来、ハガネの様に魔法特化型になってしまうと困るということで、魔法と体術の両方を習わされ始めている。
ハガネは別に武闘派でないだけで、それなりには体術も使えるのだ。
この大陸の人達が体力お化けなだけなだけだと、私は思うんだけどね……
まぁ、私みたいに体力のないのも問題なので、そこら辺はルーファスに任せている。
「ルーファス、汗かいたでしょ? お風呂にでも入ったら?」
「子供二人に汗をかく程の運動はしていないが……?」
「そう? なんだか匂いが強いから汗でもかいたのかと思ったけど……」
「……ああ、蜜籠りのシーズンが始まったんだな」
「うっ」
しまった! 自分でも蜜籠りシーズンがそろそろ始まるなぁとは思っていたのに、ルーファスの匂いが濃くなったことにその考えが思い至らなかった!
去年は三日三晩ヤッてしまったり、発情する日が狂ってしまったりで色々と怒涛の様な蜜籠りだった気がする。
ギギギギと油の切れたロボットのようにルーファスを見上げると、蕩ける様な微笑みで「今年はどうするかな?」と言うルーファスに「ひぇぇぇぇ」とブルッと身震いがする。
「あの、でも今年はコハルも居るので……」
「母乳さえストックさせておけば他の者が見てくれるだろう」
「ルーファスはコハルが一番可愛いんじゃないの?」
コハルの為にも二日も三日もエロエロな日々は送りたくない。
ルーファスは間髪入れずに「一番可愛いのはアカリだからな。コハルも子供達も皆可愛いが、一番は譲れない」と良い笑顔で私を抱き寄せてしまう。
ああ、今年も私の怒涛の蜜籠りが始まるのか……せめて発情の日以外は手加減してほしいかも? と、ルーファスと唇を合わせながら思ってしまうのだった。
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