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26章
夏の終わり
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夏祭りが終わり、再び魔国の学園に戻ることになったティルナールとルーシーを港で見送る為に行くと、シノリアくんもうちの子供達を護衛する為に一緒に魔国へ帰る為、ナルアがシノリアくんと一緒に居た。
「これをわたくしだと思って、大事にしてくださいませね?」
「うん。ありがとう。大事にする」
どうやらミッシャさんの所で作った、ポプリ入りのロケットペンダントと香水をプレゼントしているようで、シノリアくんの首にペンダントを掛けて、おでこを合わせて抱きついている。
私の真横で「チッ」という舌打ちがしたのは聞こえなかったことにしておこう。
今にもキスしそうな二人に「ガルルル」と声が出ているので、最終兵器を使いましょう。
「ルーファス、コハルが怖いって言ってますよ?」
「うぐ……っ」
可愛い愛娘に醜態をさらしてはいけない。
うちの末っ子のこの無垢な笑顔を見よ! 邪な父親の顔を出してはいけません。
「うふー、あふー」
「ほら、コハルもルーファスがガルガル言わないと、こんなにご機嫌ですよ?」
「うぐぐ……っ」
ルーファスはどうしてこんなにもコハルに弱いのか? というくらいコハルに弱い。
まぁ小さな我が子は可愛いから仕方がないかな?
「母上、父上に色目使ってないで、ティル達にお土産渡さないと」
「まっ! エル―、私は色目なんか使ってないし、子供がそういうことを言うんじゃありません」
「でも、父上は確実にー……って、痛っ、痛いってばぁ~」
生意気なことを言うエルシオンの頬っぺたをギュギュウと引っ張って、船の中で食べられるように作ったお菓子とお弁当に、学園のお友達用に温泉大陸で流行りの日持ちするお菓子をティルナールとルーシーに手渡す。
「学園生活もあと少しだろうけど、頑張るのよ?」
「はい。母上も変なことに巻き込まれないようにね?」
「母上、わたし達はすぐに駆け付けられないんだから、無茶しないで下さいませ」
「もぅ、母親の私があなた達に言うことでしょ? ティルは生徒会頑張って、ルーシーもね」
すっかり私より背の高くなった二人に抱きしめられて、「元気でまた冬に帰ってきてね」と船のタラップまで見送り、シノリアくんとナルアも別れが済んだのか船にシノリアくんが乗っていく。
「シノ、着いたらちゃんと連絡下さいね!」
「わかってるよ。ナルアは、針で指をささないようにね?」
「もぉー! ミル姉様のお手伝いで、お針子仕事も慣れたのですわ!」
シノリアくんに揶揄われてナルアが頬を膨らませつつ、大きく手を振っている。
帰ったらきっとナルアは来年の為のウエディングドレスを縫う為に、ミルアと二人で部屋に籠るのだろう。
ミルアの為にルーファスが【風雷商】で最新型のミシンを手に入れて、今はナルアのウエディングドレスを作っているのである。
ナルアは清楚なプリンセスラインのドレスに刺繍をしてそこへレースを付け足していくらしく、刺繍がとても時間がかかるので一年で間に合うかどうかである。
一生に一度のドレスだからこだわりが凄いのもわからない訳じゃないから、好きにさせているけど、あまり若い子が徹夜を繰り返さないようにさせなくてはと思っている。
船が港から出ると手を振りながら、エルシオンに「行こっか」と言われて、港から出て神社に寄ると、ハガネとスクルードが境内で座禅を組んでいた。
スクルードの耳がピクピク動くと、ハガネに「スー、集中」とスパルタで魔力をコントロールする精神力の修行をしている。
「ハガネ、スーちゃん、お夕飯は『ぎゅっと』に行きますよー」
「おっ、焼肉か!」
「はがにゃ! しゅーしゅー!」
「悪ぃ。でも、スー、肉屋だってよ」
「おにくぅー!」
座禅を崩してハガネとスクルードが「今日はこれで終いにしようや」と魔法の修行を切り止める。
二人が水玉を出して頭からかぶると、「プハーッ」と言った後でお互いに乾燥魔法で乾かして、頭をプルプル動かすさまは親子のようで面白い。
「ドラゴン達はどーすんだ?」
「腕輪で呼んでるから、もう『ぎゅっと』に行っているんじゃないかな?」
「なら、急がねぇとあいつ等見境なく食い散らかすぞ?」
「うん。多分そうなると思って、温牛の方を『ぎゅっと』に届けておいたの」
「流石、あいつ等の主君やってねぇな」
私も考えが無いわけでは無いのだ。
それに、ドラゴン達は体のサイズを小さくしていたら食事に関しても少量で済むのだけど、美味しい物をいっぱい食べたいドラゴン達は食事時は人型で食べるので、そこだけ注意すればいい。
食べたりない時は、元のサイズになってドラゴン達だけで森等で狩りをしに行き、皆で森でバーベキューをして食べていたりするので、どうとでもなったりする。
「お肉いっぱい食べますのよ!」
「ナル姉様……ウエディングドレスが入らなくなっても知らないよ?」
「まぁ! エル~っ、許しませんのー!」
エルシオンが少し足を速めて逃げるとナルアが「お待ちなさーい!」と追い駆けて走り出し、神社の入り口でエルシオンが捕まり、ナルアに両手で拳骨を頭に叩き込まれていた。
「ふふっ、元気だねぇ」
「エルは最近生意気盛りだからな、困ったものだ」
「まっ、あのぐらいの年頃はあんなもんだろ」
「なるねーぇ、しゅごーい」
このやり取りも来年には見れなくなってしまうのかと思うと、やはり寂しいものがあるけど、娘の幸せも息子の成長も親としては嬉しいから、見守っていくしかない。
エルシオンは十月になれば温泉大陸を出て、冬休みに温泉大陸に戻って来るティルナールと冒険者試験を受けに帰って来るまでは、ギルさんの知り合いの貴族の屋敷で執事見習いをしてくるらしい。
なんで執事見習いなのか? 貴族の人の生活を見たりして、将来的にアーバント家を継ぐらしい。
ギルさんは養子にうちの子供の一人を寄越せと言っていたけど、エルシオン的には貴族の生活や仕事が意外と面白いらしく、アーバント家の養子になってもいいそうだ。
そんなに簡単なお仕事じゃないと思うんだけどね。
「さて、お肉いっぱい食べようね!」
「ああ、ミルアとミールもそろそろ着く頃だろうしな」
「うっしゃ。スー、たっぷり食って魔力補充して明日もやんぞ!」
「あい!」
ミルア達を追って私達も神社を後にした。
夕飯はスタミナをつける為に焼肉と洒落込むのだ!!
「これをわたくしだと思って、大事にしてくださいませね?」
「うん。ありがとう。大事にする」
どうやらミッシャさんの所で作った、ポプリ入りのロケットペンダントと香水をプレゼントしているようで、シノリアくんの首にペンダントを掛けて、おでこを合わせて抱きついている。
私の真横で「チッ」という舌打ちがしたのは聞こえなかったことにしておこう。
今にもキスしそうな二人に「ガルルル」と声が出ているので、最終兵器を使いましょう。
「ルーファス、コハルが怖いって言ってますよ?」
「うぐ……っ」
可愛い愛娘に醜態をさらしてはいけない。
うちの末っ子のこの無垢な笑顔を見よ! 邪な父親の顔を出してはいけません。
「うふー、あふー」
「ほら、コハルもルーファスがガルガル言わないと、こんなにご機嫌ですよ?」
「うぐぐ……っ」
ルーファスはどうしてこんなにもコハルに弱いのか? というくらいコハルに弱い。
まぁ小さな我が子は可愛いから仕方がないかな?
「母上、父上に色目使ってないで、ティル達にお土産渡さないと」
「まっ! エル―、私は色目なんか使ってないし、子供がそういうことを言うんじゃありません」
「でも、父上は確実にー……って、痛っ、痛いってばぁ~」
生意気なことを言うエルシオンの頬っぺたをギュギュウと引っ張って、船の中で食べられるように作ったお菓子とお弁当に、学園のお友達用に温泉大陸で流行りの日持ちするお菓子をティルナールとルーシーに手渡す。
「学園生活もあと少しだろうけど、頑張るのよ?」
「はい。母上も変なことに巻き込まれないようにね?」
「母上、わたし達はすぐに駆け付けられないんだから、無茶しないで下さいませ」
「もぅ、母親の私があなた達に言うことでしょ? ティルは生徒会頑張って、ルーシーもね」
すっかり私より背の高くなった二人に抱きしめられて、「元気でまた冬に帰ってきてね」と船のタラップまで見送り、シノリアくんとナルアも別れが済んだのか船にシノリアくんが乗っていく。
「シノ、着いたらちゃんと連絡下さいね!」
「わかってるよ。ナルアは、針で指をささないようにね?」
「もぉー! ミル姉様のお手伝いで、お針子仕事も慣れたのですわ!」
シノリアくんに揶揄われてナルアが頬を膨らませつつ、大きく手を振っている。
帰ったらきっとナルアは来年の為のウエディングドレスを縫う為に、ミルアと二人で部屋に籠るのだろう。
ミルアの為にルーファスが【風雷商】で最新型のミシンを手に入れて、今はナルアのウエディングドレスを作っているのである。
ナルアは清楚なプリンセスラインのドレスに刺繍をしてそこへレースを付け足していくらしく、刺繍がとても時間がかかるので一年で間に合うかどうかである。
一生に一度のドレスだからこだわりが凄いのもわからない訳じゃないから、好きにさせているけど、あまり若い子が徹夜を繰り返さないようにさせなくてはと思っている。
船が港から出ると手を振りながら、エルシオンに「行こっか」と言われて、港から出て神社に寄ると、ハガネとスクルードが境内で座禅を組んでいた。
スクルードの耳がピクピク動くと、ハガネに「スー、集中」とスパルタで魔力をコントロールする精神力の修行をしている。
「ハガネ、スーちゃん、お夕飯は『ぎゅっと』に行きますよー」
「おっ、焼肉か!」
「はがにゃ! しゅーしゅー!」
「悪ぃ。でも、スー、肉屋だってよ」
「おにくぅー!」
座禅を崩してハガネとスクルードが「今日はこれで終いにしようや」と魔法の修行を切り止める。
二人が水玉を出して頭からかぶると、「プハーッ」と言った後でお互いに乾燥魔法で乾かして、頭をプルプル動かすさまは親子のようで面白い。
「ドラゴン達はどーすんだ?」
「腕輪で呼んでるから、もう『ぎゅっと』に行っているんじゃないかな?」
「なら、急がねぇとあいつ等見境なく食い散らかすぞ?」
「うん。多分そうなると思って、温牛の方を『ぎゅっと』に届けておいたの」
「流石、あいつ等の主君やってねぇな」
私も考えが無いわけでは無いのだ。
それに、ドラゴン達は体のサイズを小さくしていたら食事に関しても少量で済むのだけど、美味しい物をいっぱい食べたいドラゴン達は食事時は人型で食べるので、そこだけ注意すればいい。
食べたりない時は、元のサイズになってドラゴン達だけで森等で狩りをしに行き、皆で森でバーベキューをして食べていたりするので、どうとでもなったりする。
「お肉いっぱい食べますのよ!」
「ナル姉様……ウエディングドレスが入らなくなっても知らないよ?」
「まぁ! エル~っ、許しませんのー!」
エルシオンが少し足を速めて逃げるとナルアが「お待ちなさーい!」と追い駆けて走り出し、神社の入り口でエルシオンが捕まり、ナルアに両手で拳骨を頭に叩き込まれていた。
「ふふっ、元気だねぇ」
「エルは最近生意気盛りだからな、困ったものだ」
「まっ、あのぐらいの年頃はあんなもんだろ」
「なるねーぇ、しゅごーい」
このやり取りも来年には見れなくなってしまうのかと思うと、やはり寂しいものがあるけど、娘の幸せも息子の成長も親としては嬉しいから、見守っていくしかない。
エルシオンは十月になれば温泉大陸を出て、冬休みに温泉大陸に戻って来るティルナールと冒険者試験を受けに帰って来るまでは、ギルさんの知り合いの貴族の屋敷で執事見習いをしてくるらしい。
なんで執事見習いなのか? 貴族の人の生活を見たりして、将来的にアーバント家を継ぐらしい。
ギルさんは養子にうちの子供の一人を寄越せと言っていたけど、エルシオン的には貴族の生活や仕事が意外と面白いらしく、アーバント家の養子になってもいいそうだ。
そんなに簡単なお仕事じゃないと思うんだけどね。
「さて、お肉いっぱい食べようね!」
「ああ、ミルアとミールもそろそろ着く頃だろうしな」
「うっしゃ。スー、たっぷり食って魔力補充して明日もやんぞ!」
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