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25章
おヨメさまと女神
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産んでから数時間経ち、私は落ち着きを取り戻し、赤ちゃんにオッパイをあげて少しウトウトしていたら、花の匂いが鼻腔に漂い、目を閉じて開けると、目の前に白いローブ姿の金髪碧眼の女性が白い馬のような獣に乗り、私に近付いてくる。
女神オードリーだとなんとなく察して、狼の姿から人の姿に戻してほしいとお願いした。
『貴女にもケモッ子の良さを共感してホシカッターヨ』
……なんだろう? このイントネーションのおかしな外人女神様……
『オゥ! 女神を信じるのデース! ケモ耳最高ヨー!』
あ、はい……
それはともかく、人間に戻してくださいね? この『奇跡』は私には要らないので!
『残念ダーヨ。でも、ケモッ子最高だったーデショ?』
それほどでもなかったです。
まぁ、妊娠、出産まで短かったので、そこら辺が普通の子と同じ様に栄養とか色々与えられているのなら、文句は無いですよ? ちゃんとそこら辺はしてもらっているのですよね?
『……アルェ……?』
あるぇ? って、なんですか!? うちの子は大丈夫なんですか!?
大丈夫じゃなかったら、女神様だろうが神様だろうが許しませんよッ!?
『心配なーい! サービス! サービスしちゃうヨー! オマケにクーポン付けちゃうヨー!』
あっ! こら! 逃げないで話をしなさーい!!
女神を追い駆けて走っていたら、気付けば部屋のベッドの上で、伸ばした手は元の自分の手だった。
胸に抱いていた赤ちゃんを見ると、白黒の耳をした獣化が解けた赤ちゃんだった。
「元に戻ったぁ……わぁ、久々に自分の声だ」
あの女神は夢だったと思いたいけど……ベッドの周りには白い花が散らばり、部屋を埋め尽くしていた。
誰がこれを掃除するのか……あの女神め……
「アカリ、そろそろ……っと、また精霊か!?」
部屋に入ってきたルーファスが部屋から溢れ出した白い花に驚いた声を上げる。
「うん。今回は女神様が来てたよー。参っちゃうね」
「女神がー……って、アカリ!?」
「ふふっ、ただいま……かな?」
泣き出しそうな顔で抱きしめられて「もぅ、赤ちゃんが潰れちゃいますよ?」と囁くと、私の腕の赤ちゃんを見てから、私の唇に唇を合わせる。
「良かった……アカリが、元に戻って……」
「うん。心配かけて、ごめんね。あと、噛みついて、ごめんね」
「オレも最初、アカリと気付かずに噛みついたことで相子だろう? 首は痛くは無いか?」
ああ、そういえば首を噛みつかれたんだった。
でも、もう二ヶ月近く前になってしまうから痛みは無いし、脅しのような感じで噛んでいたのだと狼になって気付いたから、手加減されていたようだし、大丈夫。
さすさすと首を摩ってくるルーファスに、笑いかけて、ルーファスの腕を摩る。
「少し穴が開いてる」
「出産の痛みに比べたら、軽いものだろう?」
「もう、ちゃんと治療しようね?」
「ヒドラのクリスタルで直ぐに出血は止まったし、もう瘡蓋だから平気だ」
「私が気にしちゃうから、治してくださーい」
もう一度ルーファスにキスをされて、「それより着替えないとな」と言われて自分がケープを掛けただけの裸状態で、赤ちゃんも裸状態なことに気付く。
ルーファスに赤ちゃんの着替えをお願いして、お風呂で一度シャワーを浴びて身綺麗にしてから、久々の服に袖を通す。
「私、考えてみれば、ずっと裸だったのよねぇ……」
ケープはあったけど、今思えば、裸の王様がマントだけしてるのと変わらない……あの女神……今度会うことがあったら、ガッツリ文句を言わなければ……
羞恥心と戦った後、体が産後にしては随分とスッキリしたというか、出産後の疲れが全くない。
これが女神の言う、サービスという所だろうか?
それよりも、子供はちゃんと二ヶ月で普通の子供の成長と変わっていないのかが気になるけど……こればかりは、育てながら知るしかない。
子供部屋に行くとルーファスが手慣れた手つきで着替えをさせていて、スクルードでお世話のブランクは無いから私が手伝う必要はなさそうだ。
「ルーファス。九人目のお父さんの感想はどうですか?」
「この子が嫁に行くまでは元気でいなくてはな」
「ふふっ、生まれた日にお嫁行きの話だなんて、困ったお父さんですね~」
「フッ、可愛いから直ぐに嫁に行ってしまいそうだ」
確かに可愛いのは頷ける。
親ばかだけど、小さなお耳も左右で色が違って、尻尾も黒から白へのグラデーションっぽいし、髪も左右で白と黒にキッチリ別れているから、見た目は珍しいだろうけど、顔のパーツをみるなら整っている。
目が開いたらきっともっと可愛くなりそう。
「名前はどうするかな?」
「パンダちゃん!!」
「……アカリ、狼族は名前に「ル」を入れるから、パンダは却下だ」
「うーん……パンダルンルンは?」
「アカリ、とりあえず「ル」を入れたらなんでもいいわけでは無いからな?」
ルンルンって付いたら可愛い名前だと思うんだけどなぁ?
私が首を傾げると、ルーファスが私の肩を抱いて「そういえば、飯に呼びに来たんだった。皆が待っているから行こう」と急かしてくる。
「赤ちゃんの名前、可愛いの付けたいなぁ~」
「春生まれだから、少し春めいた名前にしてやるのも良いかもしれない」
「ハルサメ! 春の漢字も使えるし、強そう!」
「アカリ、可愛い名前を付けたいと言って、強そうな名前を付けてどうする……」
確かに、女の子だし可愛い名前……女の子なら姫が付いた方が良いのかなぁ?
春姫トリニアとか? 少し名字が言いづらくなっちゃうかな?
可愛い九番目の子供に最初にあげるプレゼントなんだし、可愛いものをプレゼントしなきゃ!
女神オードリーだとなんとなく察して、狼の姿から人の姿に戻してほしいとお願いした。
『貴女にもケモッ子の良さを共感してホシカッターヨ』
……なんだろう? このイントネーションのおかしな外人女神様……
『オゥ! 女神を信じるのデース! ケモ耳最高ヨー!』
あ、はい……
それはともかく、人間に戻してくださいね? この『奇跡』は私には要らないので!
『残念ダーヨ。でも、ケモッ子最高だったーデショ?』
それほどでもなかったです。
まぁ、妊娠、出産まで短かったので、そこら辺が普通の子と同じ様に栄養とか色々与えられているのなら、文句は無いですよ? ちゃんとそこら辺はしてもらっているのですよね?
『……アルェ……?』
あるぇ? って、なんですか!? うちの子は大丈夫なんですか!?
大丈夫じゃなかったら、女神様だろうが神様だろうが許しませんよッ!?
『心配なーい! サービス! サービスしちゃうヨー! オマケにクーポン付けちゃうヨー!』
あっ! こら! 逃げないで話をしなさーい!!
女神を追い駆けて走っていたら、気付けば部屋のベッドの上で、伸ばした手は元の自分の手だった。
胸に抱いていた赤ちゃんを見ると、白黒の耳をした獣化が解けた赤ちゃんだった。
「元に戻ったぁ……わぁ、久々に自分の声だ」
あの女神は夢だったと思いたいけど……ベッドの周りには白い花が散らばり、部屋を埋め尽くしていた。
誰がこれを掃除するのか……あの女神め……
「アカリ、そろそろ……っと、また精霊か!?」
部屋に入ってきたルーファスが部屋から溢れ出した白い花に驚いた声を上げる。
「うん。今回は女神様が来てたよー。参っちゃうね」
「女神がー……って、アカリ!?」
「ふふっ、ただいま……かな?」
泣き出しそうな顔で抱きしめられて「もぅ、赤ちゃんが潰れちゃいますよ?」と囁くと、私の腕の赤ちゃんを見てから、私の唇に唇を合わせる。
「良かった……アカリが、元に戻って……」
「うん。心配かけて、ごめんね。あと、噛みついて、ごめんね」
「オレも最初、アカリと気付かずに噛みついたことで相子だろう? 首は痛くは無いか?」
ああ、そういえば首を噛みつかれたんだった。
でも、もう二ヶ月近く前になってしまうから痛みは無いし、脅しのような感じで噛んでいたのだと狼になって気付いたから、手加減されていたようだし、大丈夫。
さすさすと首を摩ってくるルーファスに、笑いかけて、ルーファスの腕を摩る。
「少し穴が開いてる」
「出産の痛みに比べたら、軽いものだろう?」
「もう、ちゃんと治療しようね?」
「ヒドラのクリスタルで直ぐに出血は止まったし、もう瘡蓋だから平気だ」
「私が気にしちゃうから、治してくださーい」
もう一度ルーファスにキスをされて、「それより着替えないとな」と言われて自分がケープを掛けただけの裸状態で、赤ちゃんも裸状態なことに気付く。
ルーファスに赤ちゃんの着替えをお願いして、お風呂で一度シャワーを浴びて身綺麗にしてから、久々の服に袖を通す。
「私、考えてみれば、ずっと裸だったのよねぇ……」
ケープはあったけど、今思えば、裸の王様がマントだけしてるのと変わらない……あの女神……今度会うことがあったら、ガッツリ文句を言わなければ……
羞恥心と戦った後、体が産後にしては随分とスッキリしたというか、出産後の疲れが全くない。
これが女神の言う、サービスという所だろうか?
それよりも、子供はちゃんと二ヶ月で普通の子供の成長と変わっていないのかが気になるけど……こればかりは、育てながら知るしかない。
子供部屋に行くとルーファスが手慣れた手つきで着替えをさせていて、スクルードでお世話のブランクは無いから私が手伝う必要はなさそうだ。
「ルーファス。九人目のお父さんの感想はどうですか?」
「この子が嫁に行くまでは元気でいなくてはな」
「ふふっ、生まれた日にお嫁行きの話だなんて、困ったお父さんですね~」
「フッ、可愛いから直ぐに嫁に行ってしまいそうだ」
確かに可愛いのは頷ける。
親ばかだけど、小さなお耳も左右で色が違って、尻尾も黒から白へのグラデーションっぽいし、髪も左右で白と黒にキッチリ別れているから、見た目は珍しいだろうけど、顔のパーツをみるなら整っている。
目が開いたらきっともっと可愛くなりそう。
「名前はどうするかな?」
「パンダちゃん!!」
「……アカリ、狼族は名前に「ル」を入れるから、パンダは却下だ」
「うーん……パンダルンルンは?」
「アカリ、とりあえず「ル」を入れたらなんでもいいわけでは無いからな?」
ルンルンって付いたら可愛い名前だと思うんだけどなぁ?
私が首を傾げると、ルーファスが私の肩を抱いて「そういえば、飯に呼びに来たんだった。皆が待っているから行こう」と急かしてくる。
「赤ちゃんの名前、可愛いの付けたいなぁ~」
「春生まれだから、少し春めいた名前にしてやるのも良いかもしれない」
「ハルサメ! 春の漢字も使えるし、強そう!」
「アカリ、可愛い名前を付けたいと言って、強そうな名前を付けてどうする……」
確かに、女の子だし可愛い名前……女の子なら姫が付いた方が良いのかなぁ?
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