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25章
おヨメさまと孫
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黒髪黒目の愛くるしい三人目の孫のシャルちゃんは、私を見ると小さくて可愛い手を伸ばしてくれる。
うーん。うちの孫が可愛い。
ベビーサークルの中でシャルちゃんと二人で居ると、よじよじと寝返りを打とうとしていて「ああ、誰かシャルちゃんが寝返りを打つよー!」と騒ぎたいのだけど、残念ながら首をオロオロ動かすだけしか出来ない。
シャルちゃんは寝返りをまだ打ったことが無いので、貴重な瞬間なのに……今、私しか大広間に居ない。
ワンワン言ってシャルちゃんの寝返りを邪魔してもいけないし、驚いて泣かしちゃったらリュエールに怒られそうだしね。
頑張れ! 頑張れ! シャルちゃん、あと少し―!
私は心の中で応援して一人はしゃいでいる。
ちなみに、何故、私が一人残されているのか。
バレンタインで皆がチョコを配りに行ったりと、バタバタしていてルーファスはスクルードとレーネルくんとルビスちゃんを連れて、バレンタイン限定の甘味が【もんふぇ】であるとかで、せがまれてハガネを伴い行ってしまった。
ナルアは休暇を取ってシノリアくんにチョコを届けに魔国へ行っている為、不在。
いつもなら、私がご近所に配り歩くバレンタインというイベントを利用したご挨拶を、今回はグリムレインとアクエレインがシュトラールと一緒にしている。
アクエレインは新顔なので、街の人に覚えてもらう為でもある。
旧女将亭で魔力の温泉に浸かっていたおかげか、少しふっくらとしたドラゴンっぽい見た目に戻り始めているアクエレインだったりする。
まだ若干ツチノコな感じだけど。
家に居残りしているのはミルアだったのだけど、玄関でお友達とお喋りに夢中になっている。
乳飲み子が居るのだから、目を離してはいけませんよ! と、言いたいところだけど、ずっと私とシャルちゃんのお世話で息抜きもさせてあげなくては、可哀想かな? とも思う。
「あぁ、んー」
寝返りをぱたんっとして、仰向けからうつ伏せになったシャルちゃんに手を叩いて喜んであげたいけど、それは出来ない、悲しい狼の手である。
寝返りを打ったことに喜んではいたけど、問題発生。
うつ伏せは窒息してしまうこともあるから、気を付けてあげなきゃいけない。
「んー、あん、ぅー」
大丈夫かな? ミルアがそろそろお喋りから戻ってくれたら良いのだけど、いざとなったら頭でシャルちゃんを仰向けに戻すしかない。
心配でシャルちゃんをジッと見ていると、お腹の中がコロンと動く。
狼の体になって驚いたのは、お腹の中の子供が割りとゴロンゴロン動くのだ。人だと胎動はあってもこんなにゴロンゴロン動かないと思う。ルーファスが触って確かめようとしても、子供はゴロンと端っこにいったり、ルーファスの手に押されてツルンと動く。
これは面白い違いだと思った。
あと、オッパイが見えるのは少し恥ずかしかったので、長めのケープを作ってもらってお腹を隠している。
流石に家族とはいえ、胸を見られるのは恥ずかしいからね。
狼なのだからと割り切れることと割り切れないところ、これは割り切れないところである。
割り切ってしまったところは食事。
これはもう仕方がない。手で掴むことも出来ないしね。
ルーファスが一緒の時はフォークで口の中に一つずつ入れてくれるけど、居ない時もあるのでお皿からそのまま口をつけて食べている。
スクルードが真似したがるので、教育上良くないと、私は大広間ではなく隣りの応接間で食べることの方が多い。
「ぁー、ん」
おっと、トリップし過ぎていた。
シャルちゃんをちゃんと見ていなくてはいけない。
キリンちゃんはミッシャさんにお店の説明をしに行っていて、リュエールはケイに仕事を案内しているから、責任を持って私がシャルちゃんの面倒を見ておかなくては。
「……ぷぅ」
シャルちゃんの鼻から鼻水が膨らんでる。少し詰まってそう……ううん、拭いてあげたいけど、どうしよう?
少し息も苦しそうかな? 仰向けにしたら余計苦しいかな? 人の手なら抱いて鼻を拭いてあげる事も出来るのに、困った……
仕方がない。シャルちゃんには悪いけど、少しうるさくしてミルアを呼ぼう。
「ァォー、ァォー」
少し小さく遠吠えとまでいかない声を出すと、ミルアが慌てて戻ってきた。
「どうしましたの! なにかありましたの!?」
私はひらがな表をテシテシと手で叩き、『しゃるちゃん はなみず』と指示を出す。
ミルアは首を傾げて「それって呼ぶようなことですの?」と眉を下げている。
この子はー……鼻の上にしわを寄せてグルルと唸ると、ミルアが「わかりましたのー」と、タオルでシャルちゃんの鼻を拭いて、「これでどうですの?」とシャルちゃんを私にみせる。
まだ鼻がぷぅーと音を立てているから、もう少し拭いてあげて欲しい。と、首を横に振るとミルアが「厳しいのですわ」と口を尖らせる。
「あうー、ふぁぁん」
「ごめんなさいですわ。ちょっと強かったですかしら? ああん。泣かないで~」
ミルアはルーシーの時もだけど、あまり赤ん坊の面倒を見るのが上手くないのよねぇ……まぁ、子育てはやってみないと分からないし、私も妹や弟が生まれたのが、物心がちゃんと付いて理解してたからだったし、ミルアには赤ちゃんはまだ無理かしらね?
スクルードに関してはお仕事もあるし、夜帰って来ても、お世話は私かハガネとかだったから、やはり赤ちゃんとの付き合いって薄いのよね。
ミールと結婚してから、自分の子供を持った時に、私がこのことで呼びつけた理由も理解するかな?
でも、心配だからミルアが子供を産んで育てる時は慣れるまでは指導してあげなきゃね。
夕方にキリンちゃんが帰って来て、私はひらがな表で『ねがえりしましたよ』と報告したところ、キリンちゃんが「お義母さんズルい~」と言い、二人でシャルちゃんが寝返りを打つのを一時間程待ったりして眺めて、寝返りを打った時に、二人で「やったー!」と騒いでいた。
ちなみにリュエールは寝返り後に帰宅して「母上もキリンもズルい!」と、シャルちゃんが寝返りを打つまで見ていると宣言して、寝返りが見れないまま、次の日に目の下にクマを作ってお仕事に行っていた。
リュエールは子煩悩で必死なところは誰に似たのやら? まぁ、子供の一瞬一瞬は見逃したく無いよね。
うーん。うちの孫が可愛い。
ベビーサークルの中でシャルちゃんと二人で居ると、よじよじと寝返りを打とうとしていて「ああ、誰かシャルちゃんが寝返りを打つよー!」と騒ぎたいのだけど、残念ながら首をオロオロ動かすだけしか出来ない。
シャルちゃんは寝返りをまだ打ったことが無いので、貴重な瞬間なのに……今、私しか大広間に居ない。
ワンワン言ってシャルちゃんの寝返りを邪魔してもいけないし、驚いて泣かしちゃったらリュエールに怒られそうだしね。
頑張れ! 頑張れ! シャルちゃん、あと少し―!
私は心の中で応援して一人はしゃいでいる。
ちなみに、何故、私が一人残されているのか。
バレンタインで皆がチョコを配りに行ったりと、バタバタしていてルーファスはスクルードとレーネルくんとルビスちゃんを連れて、バレンタイン限定の甘味が【もんふぇ】であるとかで、せがまれてハガネを伴い行ってしまった。
ナルアは休暇を取ってシノリアくんにチョコを届けに魔国へ行っている為、不在。
いつもなら、私がご近所に配り歩くバレンタインというイベントを利用したご挨拶を、今回はグリムレインとアクエレインがシュトラールと一緒にしている。
アクエレインは新顔なので、街の人に覚えてもらう為でもある。
旧女将亭で魔力の温泉に浸かっていたおかげか、少しふっくらとしたドラゴンっぽい見た目に戻り始めているアクエレインだったりする。
まだ若干ツチノコな感じだけど。
家に居残りしているのはミルアだったのだけど、玄関でお友達とお喋りに夢中になっている。
乳飲み子が居るのだから、目を離してはいけませんよ! と、言いたいところだけど、ずっと私とシャルちゃんのお世話で息抜きもさせてあげなくては、可哀想かな? とも思う。
「あぁ、んー」
寝返りをぱたんっとして、仰向けからうつ伏せになったシャルちゃんに手を叩いて喜んであげたいけど、それは出来ない、悲しい狼の手である。
寝返りを打ったことに喜んではいたけど、問題発生。
うつ伏せは窒息してしまうこともあるから、気を付けてあげなきゃいけない。
「んー、あん、ぅー」
大丈夫かな? ミルアがそろそろお喋りから戻ってくれたら良いのだけど、いざとなったら頭でシャルちゃんを仰向けに戻すしかない。
心配でシャルちゃんをジッと見ていると、お腹の中がコロンと動く。
狼の体になって驚いたのは、お腹の中の子供が割りとゴロンゴロン動くのだ。人だと胎動はあってもこんなにゴロンゴロン動かないと思う。ルーファスが触って確かめようとしても、子供はゴロンと端っこにいったり、ルーファスの手に押されてツルンと動く。
これは面白い違いだと思った。
あと、オッパイが見えるのは少し恥ずかしかったので、長めのケープを作ってもらってお腹を隠している。
流石に家族とはいえ、胸を見られるのは恥ずかしいからね。
狼なのだからと割り切れることと割り切れないところ、これは割り切れないところである。
割り切ってしまったところは食事。
これはもう仕方がない。手で掴むことも出来ないしね。
ルーファスが一緒の時はフォークで口の中に一つずつ入れてくれるけど、居ない時もあるのでお皿からそのまま口をつけて食べている。
スクルードが真似したがるので、教育上良くないと、私は大広間ではなく隣りの応接間で食べることの方が多い。
「ぁー、ん」
おっと、トリップし過ぎていた。
シャルちゃんをちゃんと見ていなくてはいけない。
キリンちゃんはミッシャさんにお店の説明をしに行っていて、リュエールはケイに仕事を案内しているから、責任を持って私がシャルちゃんの面倒を見ておかなくては。
「……ぷぅ」
シャルちゃんの鼻から鼻水が膨らんでる。少し詰まってそう……ううん、拭いてあげたいけど、どうしよう?
少し息も苦しそうかな? 仰向けにしたら余計苦しいかな? 人の手なら抱いて鼻を拭いてあげる事も出来るのに、困った……
仕方がない。シャルちゃんには悪いけど、少しうるさくしてミルアを呼ぼう。
「ァォー、ァォー」
少し小さく遠吠えとまでいかない声を出すと、ミルアが慌てて戻ってきた。
「どうしましたの! なにかありましたの!?」
私はひらがな表をテシテシと手で叩き、『しゃるちゃん はなみず』と指示を出す。
ミルアは首を傾げて「それって呼ぶようなことですの?」と眉を下げている。
この子はー……鼻の上にしわを寄せてグルルと唸ると、ミルアが「わかりましたのー」と、タオルでシャルちゃんの鼻を拭いて、「これでどうですの?」とシャルちゃんを私にみせる。
まだ鼻がぷぅーと音を立てているから、もう少し拭いてあげて欲しい。と、首を横に振るとミルアが「厳しいのですわ」と口を尖らせる。
「あうー、ふぁぁん」
「ごめんなさいですわ。ちょっと強かったですかしら? ああん。泣かないで~」
ミルアはルーシーの時もだけど、あまり赤ん坊の面倒を見るのが上手くないのよねぇ……まぁ、子育てはやってみないと分からないし、私も妹や弟が生まれたのが、物心がちゃんと付いて理解してたからだったし、ミルアには赤ちゃんはまだ無理かしらね?
スクルードに関してはお仕事もあるし、夜帰って来ても、お世話は私かハガネとかだったから、やはり赤ちゃんとの付き合いって薄いのよね。
ミールと結婚してから、自分の子供を持った時に、私がこのことで呼びつけた理由も理解するかな?
でも、心配だからミルアが子供を産んで育てる時は慣れるまでは指導してあげなきゃね。
夕方にキリンちゃんが帰って来て、私はひらがな表で『ねがえりしましたよ』と報告したところ、キリンちゃんが「お義母さんズルい~」と言い、二人でシャルちゃんが寝返りを打つのを一時間程待ったりして眺めて、寝返りを打った時に、二人で「やったー!」と騒いでいた。
ちなみにリュエールは寝返り後に帰宅して「母上もキリンもズルい!」と、シャルちゃんが寝返りを打つまで見ていると宣言して、寝返りが見れないまま、次の日に目の下にクマを作ってお仕事に行っていた。
リュエールは子煩悩で必死なところは誰に似たのやら? まぁ、子供の一瞬一瞬は見逃したく無いよね。
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