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25章
おヨメさまと狼生活
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私が女神オードリーに変化球な気に入られ方で『奇跡』という、ありがた迷惑な狼姿にされて三週間が過ぎた。
グリムレインはベネティクタの大聖堂の愛のコインの噴水を凍らせ、白い蝶と喧嘩をして羽を蝶にされるという呪いを受けて帰ってきた。
グリムレインが嘆いたので、落ち着かせようと舐めたら呪いが解けて「我の嫁は、精霊の呪いにも勝てる最強嫁」と担ぎ上げられて、キャインキャイン鳴いて騒いだら、ルーファスが飛んできてグリムレインが追いかけ回されるという珍しいこともあった。
言葉が通じないのでルーファスを説得するのも時間が掛かった。
賑やかで騒がしい我が家という感じで、不自由ではあるけれど、狼姿の妊婦生活を送らせてもらっている。
「呪いじゃねぇから解きようもねぇしな」
「いっそ、呪いの方が解決しやすかったよねぇ」
ハガネとリュエールにそんなことを言われてしまう始末なのだ。
一応、あれこれ周りも調べてくれたりしているけど、『奇跡』というものを解くのは今のところないようだ。
大人しく出産するまではこの姿でいくしかないのかも?
カタンと音がして、玄関まで迎えに行くとルーファスが傘を閉じて雪を落としていた。
今日は雪が降っているらしい。
「アカリ、玄関は冷えるから出迎えは不要だ」
尻尾をパタパタさせると、ルーファスが目を細めてお湯玉で手を温めてから私の頭を触る。
ようやく私も尻尾をパタパタさせるまでに進化した。嬉しいと腰の辺りがムズムズして、尻尾が揺れることを発見してからは、尻尾の振り方は直ぐにわかった。
「貸家の荷物も全部片づけて、今日、ケイ達が引っ越しをしてきた」
それは良かった。流石に私達の荷物をあのままにはしておけなかったし、他人任せにするのも少し気がかりだったからね。
ルーファスがなかなか私の傍を離れなかったから、荷物の回収が遅れていて、ギリギリになった。
ケイとミッシャさんが引っ越してきたなら、女将亭の店舗の話をしたいけど……うーん、キリンちゃんに任せてしまおうかな?
スカウトしたから自分で責任を持ちたいけど、今回はこの状態なので仕方がないか。
大広間に戻って、私は専用の穴倉に戻る。
どうもソファでは落ち着かなくて、布団の中に潜ったり、クローゼットの奥が落ち付いたりと……色々していたら、大広間にかまくらのようなドーム型の大きな物がいつの間にか作られていたのだ。
ドームを支える支柱組は竹で作られていて、外側は綿の入った布で覆われ、中はお布団でフカフカ。
これが意外と落ち着くので、私の穴倉と化している。
ちなみに手先の器用なハガネ作である。安心安全痒いところに手が届くと、そろそろ謳い文句にしていいかもしれない。
狼のお母さんが出産時は穴を掘ったり、洞窟の奥に引き籠るのと同じ現象みたいで、本能的に子供を外敵から守ろうとしているらしい。
まぁ、どう見ても私はお座敷犬なんだけどね。
私一人で寝るには広いこの穴倉は獣化したルーファスも一緒に入ったりするので、私の愛の巣三号かな? 貸家を入れると四号かもしれない。
ふぁ~っと欠伸をして、丸まるとウトウトと眠くなる。
妊婦生活はほぼ寝ている感じで、たまにシルビアが診察に来てくれるくらいかな?
「妊娠なら勉強してきます!」と、産医さんや獣人の医師や獣医さんなどに勉強をさせて貰って、シルビアがレベルアップして色々な知識を持って、診察の度に色々話をしてくれる。
まぁ……乳首をつねられた時は羞恥で死ぬかと思ったけど……長い毛でおおわれてるけど、オッパイが大きいせいで見えてるし、動物は妊娠中から母乳が出るので調べる為につねられたんだけど、でもこれ、やり過ぎると駄目で一回で調べたいシルビアは思いっきりつねったのだ。
「キャイーン!」
「うわっ! アカリさんごめんなさーい!」
「女医! 自分でどれだけの力でつねるかぐらい、自分の胸で調べてからやれ!」
「大旦那様、それセクハラです!」
そんなやり取りもあった。
あとは、やはり我が家の次男様の出番もあるわけで……。
「とにかく、『祝福』で安産かもしれないけど、体は狼なんだから最悪の事態を想定して、オレは準備を進めるからね。母上はいつも斜め上の危険に突き進むからさ」
面目次第もございませんと、言いたいけど最悪の事態とは何なのか?
首を捻ると、シュトラールが獣医学の専門書を出してきた。
「狼のは無いけど、犬の出産図解で難産の時の切開の図解だよ。万が一、人型で生まれそうな時はお腹を切るしかないからね」
「キュー……」
「そんな声出しても、万全は期さないとね。母上の体内にヒドラのクリスタルがあるから、切っても直ぐに塞がることを想定してやらないといけないし……麻酔をかけるにしても、体が狼だからこれも調整しないといけないし……って、母上、逃げるの禁止」
一番難易度の高い出産かもしれない。
ううっ、シュトラールが真面目な分、とても怖いのである。
妊婦さんにプレッシャーを与えないで下さい! ストレスで不安になるよ~っ!
そんなシュトラールに付き合っているのはルーファスで、ヒドラのクリスタルの回復がどこまで通じるのかを、自分の体を切らせて試させるのだから、やめなさいと何度か止めているんだけど……
私に見つからない所でやっているようで、たまに消毒液の匂いや血の微かな匂いがする。
狼の鼻だから気付いただけで、人間の私なら気付けなかったことだろう。
今はリュエール達家族も屋敷に一緒に住んでいる為に、常に人の気配がある。
シャルちゃんの安全の為に移り住んでいるリュエール達にとって、【刻狼亭】の近くの方が子供の為には良いだろうから、当分は二世帯で住むことになりそうだ。
「アカリ、入るぞ」
目をパチッと開けるとルーファスが獣化して穴倉に入ってきた。
私を包み込むように丸くなって、お夕飯まではひと眠りというところかな?
「今日は体調はどうだ?」
尻尾をパタパタして頭をルーファスの首にスリスリさせ「大丈夫」と伝え、目を細めたルーファスの顔を見て、安心して眠りにつく。
私の狼生活はゆったりと流れている感じである。
グリムレインはベネティクタの大聖堂の愛のコインの噴水を凍らせ、白い蝶と喧嘩をして羽を蝶にされるという呪いを受けて帰ってきた。
グリムレインが嘆いたので、落ち着かせようと舐めたら呪いが解けて「我の嫁は、精霊の呪いにも勝てる最強嫁」と担ぎ上げられて、キャインキャイン鳴いて騒いだら、ルーファスが飛んできてグリムレインが追いかけ回されるという珍しいこともあった。
言葉が通じないのでルーファスを説得するのも時間が掛かった。
賑やかで騒がしい我が家という感じで、不自由ではあるけれど、狼姿の妊婦生活を送らせてもらっている。
「呪いじゃねぇから解きようもねぇしな」
「いっそ、呪いの方が解決しやすかったよねぇ」
ハガネとリュエールにそんなことを言われてしまう始末なのだ。
一応、あれこれ周りも調べてくれたりしているけど、『奇跡』というものを解くのは今のところないようだ。
大人しく出産するまではこの姿でいくしかないのかも?
カタンと音がして、玄関まで迎えに行くとルーファスが傘を閉じて雪を落としていた。
今日は雪が降っているらしい。
「アカリ、玄関は冷えるから出迎えは不要だ」
尻尾をパタパタさせると、ルーファスが目を細めてお湯玉で手を温めてから私の頭を触る。
ようやく私も尻尾をパタパタさせるまでに進化した。嬉しいと腰の辺りがムズムズして、尻尾が揺れることを発見してからは、尻尾の振り方は直ぐにわかった。
「貸家の荷物も全部片づけて、今日、ケイ達が引っ越しをしてきた」
それは良かった。流石に私達の荷物をあのままにはしておけなかったし、他人任せにするのも少し気がかりだったからね。
ルーファスがなかなか私の傍を離れなかったから、荷物の回収が遅れていて、ギリギリになった。
ケイとミッシャさんが引っ越してきたなら、女将亭の店舗の話をしたいけど……うーん、キリンちゃんに任せてしまおうかな?
スカウトしたから自分で責任を持ちたいけど、今回はこの状態なので仕方がないか。
大広間に戻って、私は専用の穴倉に戻る。
どうもソファでは落ち着かなくて、布団の中に潜ったり、クローゼットの奥が落ち付いたりと……色々していたら、大広間にかまくらのようなドーム型の大きな物がいつの間にか作られていたのだ。
ドームを支える支柱組は竹で作られていて、外側は綿の入った布で覆われ、中はお布団でフカフカ。
これが意外と落ち着くので、私の穴倉と化している。
ちなみに手先の器用なハガネ作である。安心安全痒いところに手が届くと、そろそろ謳い文句にしていいかもしれない。
狼のお母さんが出産時は穴を掘ったり、洞窟の奥に引き籠るのと同じ現象みたいで、本能的に子供を外敵から守ろうとしているらしい。
まぁ、どう見ても私はお座敷犬なんだけどね。
私一人で寝るには広いこの穴倉は獣化したルーファスも一緒に入ったりするので、私の愛の巣三号かな? 貸家を入れると四号かもしれない。
ふぁ~っと欠伸をして、丸まるとウトウトと眠くなる。
妊婦生活はほぼ寝ている感じで、たまにシルビアが診察に来てくれるくらいかな?
「妊娠なら勉強してきます!」と、産医さんや獣人の医師や獣医さんなどに勉強をさせて貰って、シルビアがレベルアップして色々な知識を持って、診察の度に色々話をしてくれる。
まぁ……乳首をつねられた時は羞恥で死ぬかと思ったけど……長い毛でおおわれてるけど、オッパイが大きいせいで見えてるし、動物は妊娠中から母乳が出るので調べる為につねられたんだけど、でもこれ、やり過ぎると駄目で一回で調べたいシルビアは思いっきりつねったのだ。
「キャイーン!」
「うわっ! アカリさんごめんなさーい!」
「女医! 自分でどれだけの力でつねるかぐらい、自分の胸で調べてからやれ!」
「大旦那様、それセクハラです!」
そんなやり取りもあった。
あとは、やはり我が家の次男様の出番もあるわけで……。
「とにかく、『祝福』で安産かもしれないけど、体は狼なんだから最悪の事態を想定して、オレは準備を進めるからね。母上はいつも斜め上の危険に突き進むからさ」
面目次第もございませんと、言いたいけど最悪の事態とは何なのか?
首を捻ると、シュトラールが獣医学の専門書を出してきた。
「狼のは無いけど、犬の出産図解で難産の時の切開の図解だよ。万が一、人型で生まれそうな時はお腹を切るしかないからね」
「キュー……」
「そんな声出しても、万全は期さないとね。母上の体内にヒドラのクリスタルがあるから、切っても直ぐに塞がることを想定してやらないといけないし……麻酔をかけるにしても、体が狼だからこれも調整しないといけないし……って、母上、逃げるの禁止」
一番難易度の高い出産かもしれない。
ううっ、シュトラールが真面目な分、とても怖いのである。
妊婦さんにプレッシャーを与えないで下さい! ストレスで不安になるよ~っ!
そんなシュトラールに付き合っているのはルーファスで、ヒドラのクリスタルの回復がどこまで通じるのかを、自分の体を切らせて試させるのだから、やめなさいと何度か止めているんだけど……
私に見つからない所でやっているようで、たまに消毒液の匂いや血の微かな匂いがする。
狼の鼻だから気付いただけで、人間の私なら気付けなかったことだろう。
今はリュエール達家族も屋敷に一緒に住んでいる為に、常に人の気配がある。
シャルちゃんの安全の為に移り住んでいるリュエール達にとって、【刻狼亭】の近くの方が子供の為には良いだろうから、当分は二世帯で住むことになりそうだ。
「アカリ、入るぞ」
目をパチッと開けるとルーファスが獣化して穴倉に入ってきた。
私を包み込むように丸くなって、お夕飯まではひと眠りというところかな?
「今日は体調はどうだ?」
尻尾をパタパタして頭をルーファスの首にスリスリさせ「大丈夫」と伝え、目を細めたルーファスの顔を見て、安心して眠りにつく。
私の狼生活はゆったりと流れている感じである。
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