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25章
おヨメさまと子狼
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お宿の部屋の中でルーファスとハガネが帰り支度をしていて、私はベッドの上で邪魔にならないように丸まっている。
あの後、大聖堂に行き、女神像に向かって「元に戻せー!」と騒いだものの、返答はなく、むしろ不審者扱いを受けた私達は、今後のことも考え、早めに温泉大陸に帰ることになった。
「クゥーン」
まだ、旅行続けたかったのになぁ。しかし、お腹に子供がいる以上は無理も出来ないし、安産用の『祝福』をグリムレインに貰わないといけない。
狼と人の体では妊娠期間が違う為に、とにかく急がなければ、人間の妊娠二ヶ月目までしか受け取れない『祝福』が貰えなくなってしまう。
アクエレインに貰ったのは、妊娠率を上げるものなので、大忙しなのである。
一番の懸念は狼の体になった私の子宮では、人型の子供を育てるのは無理ということ。
安産の『祝福』で子供を獣化したまま育てていくしかないのである。
「アカリ、体調はどうだ?」
「キューン……」
「そうか、あまり良くないか……直ぐに帰ろう」
体の中がぐるぐるして、朝ご飯も戻してしまったので私はぐったりモードなのだ。
耳が下がる私を、ルーファスが頭と体をゆっくり撫でてくれる。
私はいつも『祝福』を貰っていたから、悪阻経験は無くて、ここまで酷いものだとは思ってもいなかった。
ハガネが荷物を色々持ってくれて、ルーファスが私を抱きかかえてお宿からチェックアウトを済ませて、外へ出る。
「リューもオレもこの都市を魔法で座標を覚えたから、いつでも来れる。今度は子供が生まれてゆっくりしたら、また来ような」
「キュー……」
雨宿りをさせてくれたお菓子屋のおばさんにお礼をしていないのが少し心残りかな……?
ルーファスが移動魔法を使い、ハガネの袖を掴んで久しぶりの屋敷の庭に出る。
ああ、帰ってきた。
んーっ、匂いが我が家の匂いという感じで、今まで気にしたことは無かったけど、狼の鼻だとよくわかる。
「ちちうー! はがにゃ!」
「スー、ただいま」
「おっ、スーが出迎えか。リューはどうした?」
「おかなさー! りゅーないない!」
「そっか、リュー早速、医者探しに行っちまったかな」
屋敷の縁側から元気なスクルードの歓迎に、口元が緩む。
今日は寒いから半纏を羽織らせてもらっていて、頬っぺたが真っ赤だ。
ルーファスの足にしがみ付き、「んふーっ」と笑っている顔はやはり可愛い。
ハガネが縁側に荷物を置き、スクルードを抱き上げると屋敷の中へと私達と揃って入っていく。
大広間に着くと、カウチソファに置いてもらい私はぐったりと横になる。
我が家が一番ではあるけれど、少し落ち着かない。
最近、貸家暮らしだったからかかなぁ? うーん……お腹の中もぐるぐるするし、気持ちが悪くて考えがまとまらない。
「アカリ、直ぐにグリムレインを呼んでくるから、少し待っててくれ」
ルーファスが部屋から出て行き、ハガネは「なんか飲むもん淹れてくる」と台所へ行った。
スクルードは私の周りをウロウロして、不思議そうな顔をする。
「ふぇねー?」
フェネシーじゃないよ。母上だよ。と、顔を近付けてきたスクルードの顔を舐めると、目を丸くしてコロンと転がると獣化して私の顔を舐めてくる。
尻尾をブンブン振って喜んでいる辺り、私だとわかってくれたみたいだ。
体を丸めるとスクルードが私のお腹の方へ入ってきて、ピッタリと寄り添ってくる。
スクルードの弟か妹が居るんだよ。
お兄ちゃんだね、スクルード。
「ははうー、ははうー」
頭を摺り寄せて甘えてくる姿に、お腹の中の気持ち悪さはあるけど、沈みそうな心は浮上していく。
子供の声と匂いと体温はとても安心出来るものだ。
ついこの間まで、スクルードはミルクの香りのする赤ん坊だったのになぁ。
「アカリ、茶淹れたぞ。スー、お前はミルクで良いな?」
「あい!」
カウチソファからスクルードが下りて、ハガネが木のコップで出したミルクを獣化したままなので鼻を入れて飲んでいる。
いつもならお行儀が悪いという所だけど、私もそうなりそうだ。
「嫁! どういうことだ! 狼になったというのは! 婿では話が分からん!」
グリムレインが大広間に入ってきてルーファスが「少し足音に気を使え!」と怒って入ってくる。
確かに、狼の耳には足音はズガンズガン響くから、気にしてほしいかも?
カウチソファの上の私に気付くと、グリムレインが眉間にしわを寄せる。
「嫁……なのか?」
コクコクと頷くと、グリムレインが目の前まできて私を覗き込むと、手の平に氷の珠を出して私の口の中に入れる。
「我の祝福だ。嫁は安心しろ」
『祝福』はスッと口の中で消えて、まだ具合の悪いのは治らないけど、これで子共は大丈夫だ。
ルーファス達も安堵の表情をして肩から力を抜いている。
「とりあえず、我に説明しろ!」
グリムレインが眉間にしわを寄せたままルーファスに言いつのり、ルーファスが掻い摘んで説明をしてグリムレインがベネティクタの大聖堂の精霊に会って来ると飛び出して行ってしまった。
汽車よりもグリムレインの飛行の方が早いから直ぐに着くだろうけど、今更何を言ってもあの精霊には効かないかもしれない。
女神を有り難がっている精霊は「何故元に戻りたいのか分からない!?」と、不満そうだったと聞くし……まさかの女神オードリーのせいでこんなことになるなんて……これから先、妊婦生活大丈夫なのかが私は非常に心配なところだ。
あの後、大聖堂に行き、女神像に向かって「元に戻せー!」と騒いだものの、返答はなく、むしろ不審者扱いを受けた私達は、今後のことも考え、早めに温泉大陸に帰ることになった。
「クゥーン」
まだ、旅行続けたかったのになぁ。しかし、お腹に子供がいる以上は無理も出来ないし、安産用の『祝福』をグリムレインに貰わないといけない。
狼と人の体では妊娠期間が違う為に、とにかく急がなければ、人間の妊娠二ヶ月目までしか受け取れない『祝福』が貰えなくなってしまう。
アクエレインに貰ったのは、妊娠率を上げるものなので、大忙しなのである。
一番の懸念は狼の体になった私の子宮では、人型の子供を育てるのは無理ということ。
安産の『祝福』で子供を獣化したまま育てていくしかないのである。
「アカリ、体調はどうだ?」
「キューン……」
「そうか、あまり良くないか……直ぐに帰ろう」
体の中がぐるぐるして、朝ご飯も戻してしまったので私はぐったりモードなのだ。
耳が下がる私を、ルーファスが頭と体をゆっくり撫でてくれる。
私はいつも『祝福』を貰っていたから、悪阻経験は無くて、ここまで酷いものだとは思ってもいなかった。
ハガネが荷物を色々持ってくれて、ルーファスが私を抱きかかえてお宿からチェックアウトを済ませて、外へ出る。
「リューもオレもこの都市を魔法で座標を覚えたから、いつでも来れる。今度は子供が生まれてゆっくりしたら、また来ような」
「キュー……」
雨宿りをさせてくれたお菓子屋のおばさんにお礼をしていないのが少し心残りかな……?
ルーファスが移動魔法を使い、ハガネの袖を掴んで久しぶりの屋敷の庭に出る。
ああ、帰ってきた。
んーっ、匂いが我が家の匂いという感じで、今まで気にしたことは無かったけど、狼の鼻だとよくわかる。
「ちちうー! はがにゃ!」
「スー、ただいま」
「おっ、スーが出迎えか。リューはどうした?」
「おかなさー! りゅーないない!」
「そっか、リュー早速、医者探しに行っちまったかな」
屋敷の縁側から元気なスクルードの歓迎に、口元が緩む。
今日は寒いから半纏を羽織らせてもらっていて、頬っぺたが真っ赤だ。
ルーファスの足にしがみ付き、「んふーっ」と笑っている顔はやはり可愛い。
ハガネが縁側に荷物を置き、スクルードを抱き上げると屋敷の中へと私達と揃って入っていく。
大広間に着くと、カウチソファに置いてもらい私はぐったりと横になる。
我が家が一番ではあるけれど、少し落ち着かない。
最近、貸家暮らしだったからかかなぁ? うーん……お腹の中もぐるぐるするし、気持ちが悪くて考えがまとまらない。
「アカリ、直ぐにグリムレインを呼んでくるから、少し待っててくれ」
ルーファスが部屋から出て行き、ハガネは「なんか飲むもん淹れてくる」と台所へ行った。
スクルードは私の周りをウロウロして、不思議そうな顔をする。
「ふぇねー?」
フェネシーじゃないよ。母上だよ。と、顔を近付けてきたスクルードの顔を舐めると、目を丸くしてコロンと転がると獣化して私の顔を舐めてくる。
尻尾をブンブン振って喜んでいる辺り、私だとわかってくれたみたいだ。
体を丸めるとスクルードが私のお腹の方へ入ってきて、ピッタリと寄り添ってくる。
スクルードの弟か妹が居るんだよ。
お兄ちゃんだね、スクルード。
「ははうー、ははうー」
頭を摺り寄せて甘えてくる姿に、お腹の中の気持ち悪さはあるけど、沈みそうな心は浮上していく。
子供の声と匂いと体温はとても安心出来るものだ。
ついこの間まで、スクルードはミルクの香りのする赤ん坊だったのになぁ。
「アカリ、茶淹れたぞ。スー、お前はミルクで良いな?」
「あい!」
カウチソファからスクルードが下りて、ハガネが木のコップで出したミルクを獣化したままなので鼻を入れて飲んでいる。
いつもならお行儀が悪いという所だけど、私もそうなりそうだ。
「嫁! どういうことだ! 狼になったというのは! 婿では話が分からん!」
グリムレインが大広間に入ってきてルーファスが「少し足音に気を使え!」と怒って入ってくる。
確かに、狼の耳には足音はズガンズガン響くから、気にしてほしいかも?
カウチソファの上の私に気付くと、グリムレインが眉間にしわを寄せる。
「嫁……なのか?」
コクコクと頷くと、グリムレインが目の前まできて私を覗き込むと、手の平に氷の珠を出して私の口の中に入れる。
「我の祝福だ。嫁は安心しろ」
『祝福』はスッと口の中で消えて、まだ具合の悪いのは治らないけど、これで子共は大丈夫だ。
ルーファス達も安堵の表情をして肩から力を抜いている。
「とりあえず、我に説明しろ!」
グリムレインが眉間にしわを寄せたままルーファスに言いつのり、ルーファスが掻い摘んで説明をしてグリムレインがベネティクタの大聖堂の精霊に会って来ると飛び出して行ってしまった。
汽車よりもグリムレインの飛行の方が早いから直ぐに着くだろうけど、今更何を言ってもあの精霊には効かないかもしれない。
女神を有り難がっている精霊は「何故元に戻りたいのか分からない!?」と、不満そうだったと聞くし……まさかの女神オードリーのせいでこんなことになるなんて……これから先、妊婦生活大丈夫なのかが私は非常に心配なところだ。
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