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25章
おヨメさまと白狼
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おかしいと思いながら、ベッドに戻りルーファスに相談しようとして、もっとおかしなことに気付いた。
私、なんで四足歩行?
というか、私の手が白い。白い毛のあるワンコのような手なのだけど?
ハハハ……夢かな?
うん。これは夢だよ。私が獣人でもないのに獣化してるとか、有り得ないよ。
部屋のクローゼットを前脚で開き、中にある姿見で自分の姿を見る。
真っ白な狼、目は黒目。
さっき目の端に見えていたのは私の尻尾かー……って、随分リアルな夢だなぁ。
そろそろ私は起きるべきだよ? 昨日エッチで散々イッちゃい過ぎて眠りが深いのかな?
「ん……アカリ?」
ゴソゴソとルーファスが身じろぐ音がして、ベッドに飛び乗る。
おおっ! 狼の体って足のバネが凄い。普段ならこんな動き出来ないのに、ヒラッとベッドに乗れた。
ルーファスの傍に行って、いつものように頭を撫でて貰ってキスをしてもらおうと近付いたら、「ガアッ」と怒鳴るような声と共に、黒い狼に獣化したルーファスに首を噛まれていた。
牙が食い込んでる! 痛い! 痛いってば!
「キャイン! キャイン!」
「グルルルルッ」
叫ぶと、余計に喉に力を入れて噛みつかれ、「ヒュー……」と小さく声が出る。
夢なのに、すごく痛いし、喋れないなんて獣化として出来損ない過ぎる!
フンフンとルーファスの鼻の音がして、首から口を放してもらえた。
匂いで私って分かってもらえたかな?
「アカリの匂い……? はぁ……アカリがまた、何か拾ってきたか」
いやいや、私です! 色々拾うことはあるけど、正真正銘、朱里だからね?
グイグイとルーファスに頭を押し付けると、ルーファスは獣化を解いて「アカリ、どこだ?」と浴室の方へ歩いて行ってしまう。
そういえば、さっきまで部屋にバラ撒かれていた白い花も綺麗さっぱり無くなっている。
やっぱり夢だからパッと消えちゃうんだねぇ……。
浴室とトイレを開け、部屋に戻ってきたルーファスが次はクローゼットを開けて、私の服をチェックしている。
「服は、全部、あるー……」
飛び出すようにルーファスが部屋から出ようとして、私は慌ててルーファスの足に噛みつく。
ルーファス、あなた裸だからね! それでお宿の中を歩いたら不審者で捕まるからぁぁぁ!!!!
「離せ!」
やはり私程度では軽く振り払われて、絨毯にべしゃっと倒れ込む。
でも、ルーファスも自分の姿に気付いたのか、服を着替え始める。
「クゥーン……」
「悪いが、お前に構っている暇は無い」
私、ここに居るよ? 気付いてよ?
必死に頭をルーファスに擦り付けるのに、邪険に扱われてしまって耳がぺしゃっと下がってしまう。
ああ、獣化して耳がぺしゃっとなる構造が分かった気がする。
眉が下がるような感じなのね。一つ獣人の人との感覚が分かった気がする。
まだ尻尾はよく分からない。
うーん、耳と尻尾がルーファスや子供達は連動してたけど、耳は動かせるけど、尻尾は連動しないなぁ……。
尻尾に夢中になっていたら、ルーファスに「行くぞ」と首を手で掴まれた。
ルーファス、痛いから! 動物に優しくだよ! 手加減を覚えてー!
首根っこを持たれながら、ルーファスがお宿の老婆メイドさんに話し掛ける。
「すまない。オレの連れを見なかったか?」
「いいえ。見ていませんが……」
「あと、コイツはこの宿の狼か? 部屋に連れが入れてしまったようなんだが」
「いいえ。この宿では狼は飼っていませんし、狼を連れたお客様も居ません」
「そうか……オレは少し出るが、連れが戻ったら部屋に居るように言っておいてくれ」
「はい。いってらっしゃいませ」
メイドさんに見送られてルーファスがお宿を出て、フンフンと匂いを嗅いで足元の私を見る。
匂いを嗅いでも私はココに居るから、無意味だと思うのだけど……
「はぁ……お前の匂いがアカリの匂いに混ざり過ぎて困るな……仕方がない」
ルーファスが何かを内ポケットから探り出し、プシュッと私に香水のような物を吹きかける。
特に匂いはしないけど、何だろうコレ?
「獣人用の追尾阻害の匂い消しだが、お前にも効くみたいだな」
ふぁっ!? ルーファスそんな物持ち歩いていたの??
っていうか、それされたら私の匂いが消えてルーファスが困るだけでは?
「じゃあな。アカリにまた拾って貰えたら、少しは考えてやる」
え? 待ってー!!
ルーファスが走り出し、私はルーファスを追って必死に走る。
狼の姿だから体の動きは良いはずなのに、ルーファスの足に追いつけない。
どんどん遠ざかっていくルーファスの背中に、息切れを起こして私はゼィゼィと息を吐く。
ガラガラという物音の大きさにビックリして、後ろを振り向けば、お店が開くのかシャッターを上げる音、通勤する人々の話声や馬車の音が耳に響く。
周りを見渡せば、背の高い建物ばかり。
ルーファスに抱っこしてもらって街を歩いていたから、こんな低い視線で見上げることも無かったし、歩いた場所も視線が違い過ぎて分からない……。
ここは、どこだろう?
ただでさえ迷路みたいなベネティクタの街並みで、置き去りにされたらわかんないよ……。
これ、夢……だよね……?
私、なんで四足歩行?
というか、私の手が白い。白い毛のあるワンコのような手なのだけど?
ハハハ……夢かな?
うん。これは夢だよ。私が獣人でもないのに獣化してるとか、有り得ないよ。
部屋のクローゼットを前脚で開き、中にある姿見で自分の姿を見る。
真っ白な狼、目は黒目。
さっき目の端に見えていたのは私の尻尾かー……って、随分リアルな夢だなぁ。
そろそろ私は起きるべきだよ? 昨日エッチで散々イッちゃい過ぎて眠りが深いのかな?
「ん……アカリ?」
ゴソゴソとルーファスが身じろぐ音がして、ベッドに飛び乗る。
おおっ! 狼の体って足のバネが凄い。普段ならこんな動き出来ないのに、ヒラッとベッドに乗れた。
ルーファスの傍に行って、いつものように頭を撫でて貰ってキスをしてもらおうと近付いたら、「ガアッ」と怒鳴るような声と共に、黒い狼に獣化したルーファスに首を噛まれていた。
牙が食い込んでる! 痛い! 痛いってば!
「キャイン! キャイン!」
「グルルルルッ」
叫ぶと、余計に喉に力を入れて噛みつかれ、「ヒュー……」と小さく声が出る。
夢なのに、すごく痛いし、喋れないなんて獣化として出来損ない過ぎる!
フンフンとルーファスの鼻の音がして、首から口を放してもらえた。
匂いで私って分かってもらえたかな?
「アカリの匂い……? はぁ……アカリがまた、何か拾ってきたか」
いやいや、私です! 色々拾うことはあるけど、正真正銘、朱里だからね?
グイグイとルーファスに頭を押し付けると、ルーファスは獣化を解いて「アカリ、どこだ?」と浴室の方へ歩いて行ってしまう。
そういえば、さっきまで部屋にバラ撒かれていた白い花も綺麗さっぱり無くなっている。
やっぱり夢だからパッと消えちゃうんだねぇ……。
浴室とトイレを開け、部屋に戻ってきたルーファスが次はクローゼットを開けて、私の服をチェックしている。
「服は、全部、あるー……」
飛び出すようにルーファスが部屋から出ようとして、私は慌ててルーファスの足に噛みつく。
ルーファス、あなた裸だからね! それでお宿の中を歩いたら不審者で捕まるからぁぁぁ!!!!
「離せ!」
やはり私程度では軽く振り払われて、絨毯にべしゃっと倒れ込む。
でも、ルーファスも自分の姿に気付いたのか、服を着替え始める。
「クゥーン……」
「悪いが、お前に構っている暇は無い」
私、ここに居るよ? 気付いてよ?
必死に頭をルーファスに擦り付けるのに、邪険に扱われてしまって耳がぺしゃっと下がってしまう。
ああ、獣化して耳がぺしゃっとなる構造が分かった気がする。
眉が下がるような感じなのね。一つ獣人の人との感覚が分かった気がする。
まだ尻尾はよく分からない。
うーん、耳と尻尾がルーファスや子供達は連動してたけど、耳は動かせるけど、尻尾は連動しないなぁ……。
尻尾に夢中になっていたら、ルーファスに「行くぞ」と首を手で掴まれた。
ルーファス、痛いから! 動物に優しくだよ! 手加減を覚えてー!
首根っこを持たれながら、ルーファスがお宿の老婆メイドさんに話し掛ける。
「すまない。オレの連れを見なかったか?」
「いいえ。見ていませんが……」
「あと、コイツはこの宿の狼か? 部屋に連れが入れてしまったようなんだが」
「いいえ。この宿では狼は飼っていませんし、狼を連れたお客様も居ません」
「そうか……オレは少し出るが、連れが戻ったら部屋に居るように言っておいてくれ」
「はい。いってらっしゃいませ」
メイドさんに見送られてルーファスがお宿を出て、フンフンと匂いを嗅いで足元の私を見る。
匂いを嗅いでも私はココに居るから、無意味だと思うのだけど……
「はぁ……お前の匂いがアカリの匂いに混ざり過ぎて困るな……仕方がない」
ルーファスが何かを内ポケットから探り出し、プシュッと私に香水のような物を吹きかける。
特に匂いはしないけど、何だろうコレ?
「獣人用の追尾阻害の匂い消しだが、お前にも効くみたいだな」
ふぁっ!? ルーファスそんな物持ち歩いていたの??
っていうか、それされたら私の匂いが消えてルーファスが困るだけでは?
「じゃあな。アカリにまた拾って貰えたら、少しは考えてやる」
え? 待ってー!!
ルーファスが走り出し、私はルーファスを追って必死に走る。
狼の姿だから体の動きは良いはずなのに、ルーファスの足に追いつけない。
どんどん遠ざかっていくルーファスの背中に、息切れを起こして私はゼィゼィと息を吐く。
ガラガラという物音の大きさにビックリして、後ろを振り向けば、お店が開くのかシャッターを上げる音、通勤する人々の話声や馬車の音が耳に響く。
周りを見渡せば、背の高い建物ばかり。
ルーファスに抱っこしてもらって街を歩いていたから、こんな低い視線で見上げることも無かったし、歩いた場所も視線が違い過ぎて分からない……。
ここは、どこだろう?
ただでさえ迷路みたいなベネティクタの街並みで、置き去りにされたらわかんないよ……。
これ、夢……だよね……?
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