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25章
おヨメさまと兄弟竜
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四日目の旅行はお土産ツアーと化し、お昼ご飯は少し遅めのオヤツタイムのような感じで、ベネティクタ都市で最近人気だというロールケーキのクリーム部分にパンナコッタが入っているという物を食べた。
パンナコッタの滑らかさにロールケーキのしっとりしたスポンジ……天国がここに!!
ルーファスはコーヒー味の少し苦めのロールケーキにコーヒーゼリーの細かく切った物がクリームの中に入っていて、そっちもそっちで美味しかった。
一口「あーん」で、食べさせて貰いましたとも。
うまうま。
『むっ、嫁御寮。一口だ一口』
「あら? 起きましたか?」
私の髪からスルスルとアクエレインが解けてパカッと口を開ける。
少しだけミミズから龍って感じになったかな? 日本の龍の方。細長い感じの龍。
他のドラゴンは洋風な竜って感じで、漢字も『竜』なんだけど、アクアレインは『龍』なんだよねぇ。
フォークで「あーん」と、アクエレインに食べさせると、パカッとまた口を開ける。
鳥の雛のようで可愛いかもしれない。
「はい。アクエレイン、あーん」
『あー』
『ん』と言う前に、空からドシーンと氷のような塊が落ちてきた。
グラッと揺れる地面に、テーブルを押さえながら耐えると、目の前には巨大な氷の石像__ではなく、グリムレインが口から白い息を吐いて「フーッ」と怒ったような声を出している。
「あれ? グリムレイン? どうしたの?」
「嫁ーっ! なんだ! それは!」
それとは、この「あーん」のことなのかな? それともアクエレインのことなのか? 首を傾げるとプルプルとグリムレインが拳を震わせている。
とりあえず、グリムレインにロールケーキ付きのフォークを向けてみる。
「えーと、グリムレイン。はい、あーん」
「……はぁ。嫁が浮気者だった……」
「なんですと!?」
グリムレインが体を縮めると、アクエレインをスパンと叩く。
『何をするのだ! 兄者は凶暴だの』
「うるさい! 黙れ愚弟! 我の嫁に取り入りおって!」
「まぁまぁ、兄弟喧嘩は止めなさいってば」
『そうだぞ兄者』
「黙れ愚弟! 嫁、このようなヤツを従者にするとは……浮気者め!」
アクエレインをマフラーのように首に巻き付けて、グリムレインが「フンッ」と鼻息荒くフォークの先のロールケーキを口に入れる。
「婿と子作り旅行というから協力してやったのに、こんなものを連れ歩くでないわ」
「へっ? ふっわぁあああ!!!! ちょっ、なっ、えぇぇぇ!!!!」
「婿も婿だぞ! 嫁はなんでも拾う幼子なのだからな! キチンと見ておれ!」
「ククッ、確かに。アカリは何でも拾うからな」
こ、子作り旅行って、なんだそれはぁぁぁ!!!!
このドラゴン……なんて恥ずかしい事を!? そして協力って……リュエールどんな説明をしてグリムレインを説得したのよ?
あと幼子って……人をなんでもかんでも口に入れる幼児扱いしないでほしい。
ルーファスも納得しなーい!
「まったく、我が気を利かせて留守にしておいてやったのに」
「そうなの? それはありがとうだけど、別に子作り旅行じゃ……もがっ」
コーヒー味のロールケーキをルーファスに口に突っ込まれ、最後まで言えずにもごもごしていると、グリムレインが私のお皿の上のロールケーキを平らげて、アクエレインをギュッと手で伸ばすとコロンと小さな球を吐かせる。
「ほれ、これで少しは子作りに役立つだろう」
『兄者……酷い……キュゥ~』
目を回したアクエレインを手に、ルーファスに珠を渡すと「嫁、浮気はするな! わかったな!」と空に飛び立っていってしまった。
浮気って……グリムレイン、浮気はしてないってば……拾いものは知らないうちにしていたけど。
「もぅ、なんだったのか……んぐっ!」
いきなりキスされたかと思ったら、口の中に舌が入って来て、小さな飴が入ったと思ったら、スッと溶けて消えた。この覚えのある感じは『祝福』……?
「あ、ぅ……~っ」
「これで、子が出来やすくなったな」
「はぅぁ~っ!!」
『祝福』は安産の魔法ではあるけれど、妊娠していない時は妊娠率が上がる魔法でもある……確実に子供作る気満々ですか!?
嫌じゃないけど、凄く恥ずかしいのだけど!!
いや、まぁ……今年はヒドラのクリスタルのおかげで結構な回数しましたし、出来ていてもおかしくないとは思うけど、お膳立てされまくりなのが、穴があったら入りたい!
「ううっ、ルーファスのバカ……」
最後は小さい声になったけど、ルーファスが「女の子が出来やすくなる魔法はないものかな?」と嬉しそうな顔をしていて、「まぁ男の子でも良いが、やはりアカリ似の可愛い女の子だな」と私の頭を撫でてキスを繰り返す。
ルーファス、ここは美味しいデザートのお店なので、そろそろデザート屋さんより甘い雰囲気を出すのはおよし下さい~っ!!
「スーの土産を選びながら、新しい子供の物も買うか」
「ふぇっ!? ルーファス、本気ですか?」
「折角の『祝福』だからな。十ヶ月後が楽しみだな」
「そう、ですね……どうせなら、蜜籠りが終わるくらいに出来ればと思っていたのだけど……」
「!!」
あっ、心の声が漏れてしまった。
ルーファスが「うーん」と悩みつつも、午後のお買い物ツアーはスクルードやレーネルくんにルビスちゃんやシャルちゃんのお土産を選びつつ、新しい子供の為に玩具を選ぶことになった。
パンナコッタの滑らかさにロールケーキのしっとりしたスポンジ……天国がここに!!
ルーファスはコーヒー味の少し苦めのロールケーキにコーヒーゼリーの細かく切った物がクリームの中に入っていて、そっちもそっちで美味しかった。
一口「あーん」で、食べさせて貰いましたとも。
うまうま。
『むっ、嫁御寮。一口だ一口』
「あら? 起きましたか?」
私の髪からスルスルとアクエレインが解けてパカッと口を開ける。
少しだけミミズから龍って感じになったかな? 日本の龍の方。細長い感じの龍。
他のドラゴンは洋風な竜って感じで、漢字も『竜』なんだけど、アクアレインは『龍』なんだよねぇ。
フォークで「あーん」と、アクエレインに食べさせると、パカッとまた口を開ける。
鳥の雛のようで可愛いかもしれない。
「はい。アクエレイン、あーん」
『あー』
『ん』と言う前に、空からドシーンと氷のような塊が落ちてきた。
グラッと揺れる地面に、テーブルを押さえながら耐えると、目の前には巨大な氷の石像__ではなく、グリムレインが口から白い息を吐いて「フーッ」と怒ったような声を出している。
「あれ? グリムレイン? どうしたの?」
「嫁ーっ! なんだ! それは!」
それとは、この「あーん」のことなのかな? それともアクエレインのことなのか? 首を傾げるとプルプルとグリムレインが拳を震わせている。
とりあえず、グリムレインにロールケーキ付きのフォークを向けてみる。
「えーと、グリムレイン。はい、あーん」
「……はぁ。嫁が浮気者だった……」
「なんですと!?」
グリムレインが体を縮めると、アクエレインをスパンと叩く。
『何をするのだ! 兄者は凶暴だの』
「うるさい! 黙れ愚弟! 我の嫁に取り入りおって!」
「まぁまぁ、兄弟喧嘩は止めなさいってば」
『そうだぞ兄者』
「黙れ愚弟! 嫁、このようなヤツを従者にするとは……浮気者め!」
アクエレインをマフラーのように首に巻き付けて、グリムレインが「フンッ」と鼻息荒くフォークの先のロールケーキを口に入れる。
「婿と子作り旅行というから協力してやったのに、こんなものを連れ歩くでないわ」
「へっ? ふっわぁあああ!!!! ちょっ、なっ、えぇぇぇ!!!!」
「婿も婿だぞ! 嫁はなんでも拾う幼子なのだからな! キチンと見ておれ!」
「ククッ、確かに。アカリは何でも拾うからな」
こ、子作り旅行って、なんだそれはぁぁぁ!!!!
このドラゴン……なんて恥ずかしい事を!? そして協力って……リュエールどんな説明をしてグリムレインを説得したのよ?
あと幼子って……人をなんでもかんでも口に入れる幼児扱いしないでほしい。
ルーファスも納得しなーい!
「まったく、我が気を利かせて留守にしておいてやったのに」
「そうなの? それはありがとうだけど、別に子作り旅行じゃ……もがっ」
コーヒー味のロールケーキをルーファスに口に突っ込まれ、最後まで言えずにもごもごしていると、グリムレインが私のお皿の上のロールケーキを平らげて、アクエレインをギュッと手で伸ばすとコロンと小さな球を吐かせる。
「ほれ、これで少しは子作りに役立つだろう」
『兄者……酷い……キュゥ~』
目を回したアクエレインを手に、ルーファスに珠を渡すと「嫁、浮気はするな! わかったな!」と空に飛び立っていってしまった。
浮気って……グリムレイン、浮気はしてないってば……拾いものは知らないうちにしていたけど。
「もぅ、なんだったのか……んぐっ!」
いきなりキスされたかと思ったら、口の中に舌が入って来て、小さな飴が入ったと思ったら、スッと溶けて消えた。この覚えのある感じは『祝福』……?
「あ、ぅ……~っ」
「これで、子が出来やすくなったな」
「はぅぁ~っ!!」
『祝福』は安産の魔法ではあるけれど、妊娠していない時は妊娠率が上がる魔法でもある……確実に子供作る気満々ですか!?
嫌じゃないけど、凄く恥ずかしいのだけど!!
いや、まぁ……今年はヒドラのクリスタルのおかげで結構な回数しましたし、出来ていてもおかしくないとは思うけど、お膳立てされまくりなのが、穴があったら入りたい!
「ううっ、ルーファスのバカ……」
最後は小さい声になったけど、ルーファスが「女の子が出来やすくなる魔法はないものかな?」と嬉しそうな顔をしていて、「まぁ男の子でも良いが、やはりアカリ似の可愛い女の子だな」と私の頭を撫でてキスを繰り返す。
ルーファス、ここは美味しいデザートのお店なので、そろそろデザート屋さんより甘い雰囲気を出すのはおよし下さい~っ!!
「スーの土産を選びながら、新しい子供の物も買うか」
「ふぇっ!? ルーファス、本気ですか?」
「折角の『祝福』だからな。十ヶ月後が楽しみだな」
「そう、ですね……どうせなら、蜜籠りが終わるくらいに出来ればと思っていたのだけど……」
「!!」
あっ、心の声が漏れてしまった。
ルーファスが「うーん」と悩みつつも、午後のお買い物ツアーはスクルードやレーネルくんにルビスちゃんやシャルちゃんのお土産を選びつつ、新しい子供の為に玩具を選ぶことになった。
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