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25章
おヨメさまと大聖堂
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「わぁぁ~っ! やめてくださいぃぃ!!」
「大人しくして、くださ、いー!」
ドボンッと真っ白なバスタブに漬け込まれ、私、まさに大ピンチである!!
耳飾りも取られたし、裸にも剥かれたし、この大聖堂の修道女は私に何をする気なのー!!
暴れる私に、修道女二人掛かりである。しかも気付けば修道女が増えている……ペンギンの獣人の修道女さんも居て、獣化した姿が滅茶苦茶ペンギン可愛い! って、なごんでいる場合ではない!!
念入りに洗われて、回復魔法まで使われる始末……この大聖堂は聖属性の回復魔法の使い手までいるとは……まさか私が昨日、水魔法で回復をしたから教会に目を付けられたの!?
「放してぇ~!!」
「少し、大人しくしなさーい!」
ペシンとペンギン修道女に手、フリッパー部分で頭を叩かれて涙目である。
体を洗い上げられ、お肌に香油を塗りこめられて、私、いよいよ食べられるの!?
【聖域】は確かに有効活用は出来るだろうけど、ヒドラのクリスタルがあるから、一口齧られたくらいなら元に戻る……かなぁ?
「アクエレイン! アクエレイン起きてぇ~!!」
髪にリボンのように付いているアクエレインは、昨日の水魔法の回復からスヤスヤと寝ていて、起きる様子が一向に無い。
主君のピンチに起きないとか! グリムレインに言いつけますよー!!
私はルーファスが気付いてくれるように、結構大騒ぎしているんだけど、ルーファスも助けには来てくれないし、中庭で私を探しているかもしれない。
「さて、このリボンどうします?」
「髪に編み込んじゃいましょう」
アクエレインが解けないので、修道女さん達に髪と一緒にアクエレインが編み込まれていく……私は何故かコルセットで腰をギュッと絞られ、真っ白いドレスを着せられて、化粧までされている。
なんだか、ウエディングドレスに見えなくもない。
エンパイヤドレスでV字に開いた胸元に、白いレースが肩から腕に掛けて長いラッパのように広がる袖。
ドレスのスカートには銀糸で大輪の花がレース編みされていて、これ、銀糸で作るにはかなりお金が掛かると思う。
私の体型は胸のせいでアンバランスだから、既製品だと胸に布を取られてスカートの前が上にあがって不格好になるのだけど、ちゃんと体に合っている。
耳飾りがブドウの房のようにダイヤがピカピカぶら下がっているのだけど?
ネックレスもゴージャス感丸出しの大粒ダイヤに、蜘蛛の巣状に広がる小粒ダイヤ……なにこれぇ……。
花嫁さん? いやいや、私は人妻なんだけどー!?
ハッ、私、思い出してしまった……。
「私は結婚しているのですが? 修道女になる気はこれっぽちも無いのですが……」
「はい?」
不思議そうに首を傾げる修道女さん達に、私はオロオロとしてしまう。
「修道女って、神様と結婚するんですよね? 私、こんなの着せられても、人妻なので無理です!」
修道女さん達が「ここまで察しの悪い子初めてだわ」とか言っている。
なんですか? その「あっ、この子駄目な子だ」みたいな目は~っ!!
「こちらをどうぞ。お預かりしていました」
修道女さんが白いケースに入ったヴェールとブーケを取り出し、ようやく私もホッと息を付いた。
白いヴェールには氷で出来たティアラとブーケの花にはブルースター。
この世界には無いブルースターを作れるのは私の従者のドラゴンくらいなものだ。
溶けない氷のティアラも、うちのグリムレインにしか出来ない芸当だろう。
ルーファスが用意したのだろうか?
「さぁ、仕上げですよ」
「はい! 色々、暴れて……すいませんでした……」
「いえいえ。サプライズは私達も楽しいですから」
訳も分からず大暴れして手を煩わせてしまった私に、修道女さん達はにこやかに笑って扉を開いてくれた。
大聖堂の中にはステンドグラスの光がキラキラと差し込んで、幻想的な空間を作り出していた。
祭壇では白い燕尾服のルーファスが立っていて、私に気付くと優しく笑って目を細めて近付いてくる。
「ルー……ふぁぁっ!」
私も駆けだそうとして、ドレスの裾を踏んづけて前のめりになると、ルーファスの腕に抱きとめられる。
「アカリらしいな」
「……面目無いです……」
ううっ、私のあんぽんたん!
大事なところでミスるのが私ですよ~! やり直し、ワンモアチャンスを要求したい!!
穴があったら入りたい……私があわあわしていると、クククッといつものルーファスの笑い声に上を向くと、珍しくルーファスの前髪がオールバック!
おおぉ~大人な感じが凄くする! これで眼鏡があれば完璧ですよ!
「ルーファス、格好いいね」
「そうか? オレにはアカリの姿が眩し過ぎるぐらいだが」
「おだてても、なにも出ませんよ?」
「綺麗だ。白い着物もよく似合っていたが、ドレスも似合ってる」
きゅんっと胸がときめいてしまった……リップサービス過剰は、私が悶えてしまうのでお止め下さい~っ。
ルーファスに手を取ってもらって、祭壇前まで行くと、愛のコインの所に居た白い牧師さんがニコニコとして立っている。
「あなた方はもう夫婦として歩んでおられるようですので、簡略しますね」
「ああ。頼む」
結婚式……かな? えーと、この状態なんだろう?
誰か説明を! 私にリハーサル下さい!! 心の中が大忙しな私はドキドキで牧師さんとルーファスのやり取りを見る。
「ルーファス・トリニア。アカリ・トリニア。お二人は夫婦として、これから先も共に歩み苦難も喜びもお互いに共有し、支え合い、二人の愛を永遠に誓い続けますか?」
「誓おう。オレの愛は永遠にアカリのものだ」
ふぁぁ~っ、ルーファスの微笑みが眩しいっ!!
って、ルーファスにときめいている場合ではない。私もなにか言わないと……ええっと、こういう時は「はい。誓います」くらいしかバリエーション思い浮かばないのだけど……?
頭が真っ白になるぅー!
「お……All my love! 私の愛の全て! ですっ!」
あ、私、完全にテンパりました……頭真っ白すぎて、愛のコインの文字そのまま言ってる。
やっちゃった感がありまくりなのだけど、牧師さんもルーファスも口元に笑みを浮かべていて、白い花がどこからともなくヒラヒラと落ちてくる。
「女神様も、この結婚を祝福して下さっています」
演出なのかなぁ? 白い花がどこからともなく天上の高い位置から降って来ていて、どこからなのか見えない。
牧師さんに「あなた方の婚姻が末永く続くことを、口づけを交わす事で誓約とします」と言われ、ヴェールを上に持ち上げられて、ルーファスが唇を重ねた。
「アカリ、これからもよろしく頼む」
「こちらこそ。不束者ですが、末永くよろしくお願いしますね?」
これって、一番初めにやらなきゃいけない挨拶だったよね?
二十四年も結婚生活をしていて、今更な感じもするけど、私達らしいのかな?
修道女さん達が現れて、カメラで記念写真を撮ってくれたり、ルーファスに今日の記念にと指輪を貰ったりした。
ウエディングドレス……本当は着てみたかったから、結構というか、かなり嬉しい。
「ルーファス、このドレスとか色々準備してくれてたの?」
「いや、恥ずかしながら……これを用意したのはリューだ。この大聖堂で式は予約制だと聞いたが、出来るか聞いたら、オレ達の滞在期間中はリューが予約していつでも使えるようにしていたと聞いた」
うちの長男様はなにをしているのか……いや、まぁ、ルーファスが式をしそうだなとか、予想して先回りしてくれたと言うべきなのか、このベネティクタの旅行はここを使って貰えるように手配してくれたのかなぁ?
息子の育て方は間違えてはいなかったようだ。うちの息子は出来た息子さんだ。
「グリムレイン達も協力してくれたんだね」
「そのようだな。オレは指輪くらいしか用意して無かったから、少し出し抜かれた感がある」
「そんなこと無いよ。すっごく嬉しい! 指輪は何個か貰ったけど、結婚式に貰えるのは特別だよ?」
指輪はブラックダイヤに両脇にイエローダイヤが一つずつ付いてるルーファスみたいな指輪で、少し照れてしまう。
「ルーファス、私幸せです」
「オレもアカリが側に居て、笑ってくれているだけで幸せだ」
もう一度キスをして、ルーファスにお姫様抱っこしてもらうと、また上から白い花が降ってきた。
「綺麗だね」
「ああ。こういう演出は粋なものだな。イトルメの花だしな」
「イトルメの花?」
「幸せはいつも近くに……という、花言葉の花だ」
「素敵な花言葉だね」
私達がそう言っていると、修道女さんが「これは演出じゃないですよ?」「たまにあるんですよ。だから、これは女神様の祝福って言われてるんです」「滅多に見れないんですよ」「女神様の花と言われている花ですし、本当に祝福だと思いますよ」と口々に言って、「お幸せに~」と笑って大聖堂から見送ってくれて、大聖堂の前には白い馬車が用意されていた。
後部座席が丸見えのオープン状態……流石に後ろに缶はついてなかったけど、お宿に帰るまで、見世物状態で観光客や街の人に手を振られて振り返していましたとも。
リュエール……流石にここまではお母さん望んでなかったなぁー……いや、これはむしろミルアやナルアの考えそうなことの気がしてきた。
うちの娘達はこういうメルヘンなの好きだからね。
「お帰りなさいませ」
「特別メニューのランチをご用意していますよ」
お宿の人達も一枚かんでいたのか、用意されたランチはウエディングケーキ付きでした。
うちの子供達は~っ、帰ったらみんなにハグとキスをして回ろう。
お土産も奮発しますよ! お母さんは子育てに自信を持ちそうだよ~っ!!
ルーファスに抱きかかえられて部屋に着くと、これでウエディングドレスもお終いか~……まぁ、素敵な夢をありがとう。一生に一度のドレスだから、もう着ることは無いから名残惜しいけど、大事にしよう。
「アカリ、泣いてるのか?」
「えへへ、嬉しくて。私、今までもすっごく、幸せだったのに、こんな幸せな日をプレゼントされるなんて思ってなかったから……」
「これからも、アカリに幸せだと思える日々をプレゼントしていく」
チュッとキスをされて、「私もルーファスに幸せを届けられるように頑張るね」と言ってキスをし返す。
あとはなだれ込むようにベッドの上で昨日も激しいことをしたようなのに、今日は気持ちが盛り上がり過ぎて……凄かった……と、だけ言っておきましょうか。
目が覚めて、目の前が真っ白……ではなく、白い花に埋もれていた。
「な、なにこれ??」
「ん……、なんだ? 花?」
ベッドの周りを白い花__イトルメの花が埋め尽くしていた。
そして、白い蝶がヒラヒラと飛んでいた。
「また蝶々だ……」
「蝶? オレには見えないが……もしかして精霊か?」
「精霊なのかなぁ? 昨日、扉に閉め出されてたの助けたけど……お礼かな?」
「アカリはやはり、一人にしておくと何かしら縁を結んでくるようだな」
それは否定できないかも……?
白い蝶が外に行きたそうに窓の周りを飛ぶから、窓を開けたら外にヒラヒラと飛んでいった。
ちゃんと大聖堂の花の場所まで帰れるかな? と、少し心配ではあるけど、精霊ならなんとかなるだろう。
「アカリ、今日は何処に観光に行こうか?」
「そうだねぇ……とりあえず、朝ご飯かな? ふふっ」
朝ご飯を食べたら、花を掃除かなぁ?
精霊の加減を知らないお礼に苦笑いしつつ、ルーファスにキスをしてベッドを降りた。
「大人しくして、くださ、いー!」
ドボンッと真っ白なバスタブに漬け込まれ、私、まさに大ピンチである!!
耳飾りも取られたし、裸にも剥かれたし、この大聖堂の修道女は私に何をする気なのー!!
暴れる私に、修道女二人掛かりである。しかも気付けば修道女が増えている……ペンギンの獣人の修道女さんも居て、獣化した姿が滅茶苦茶ペンギン可愛い! って、なごんでいる場合ではない!!
念入りに洗われて、回復魔法まで使われる始末……この大聖堂は聖属性の回復魔法の使い手までいるとは……まさか私が昨日、水魔法で回復をしたから教会に目を付けられたの!?
「放してぇ~!!」
「少し、大人しくしなさーい!」
ペシンとペンギン修道女に手、フリッパー部分で頭を叩かれて涙目である。
体を洗い上げられ、お肌に香油を塗りこめられて、私、いよいよ食べられるの!?
【聖域】は確かに有効活用は出来るだろうけど、ヒドラのクリスタルがあるから、一口齧られたくらいなら元に戻る……かなぁ?
「アクエレイン! アクエレイン起きてぇ~!!」
髪にリボンのように付いているアクエレインは、昨日の水魔法の回復からスヤスヤと寝ていて、起きる様子が一向に無い。
主君のピンチに起きないとか! グリムレインに言いつけますよー!!
私はルーファスが気付いてくれるように、結構大騒ぎしているんだけど、ルーファスも助けには来てくれないし、中庭で私を探しているかもしれない。
「さて、このリボンどうします?」
「髪に編み込んじゃいましょう」
アクエレインが解けないので、修道女さん達に髪と一緒にアクエレインが編み込まれていく……私は何故かコルセットで腰をギュッと絞られ、真っ白いドレスを着せられて、化粧までされている。
なんだか、ウエディングドレスに見えなくもない。
エンパイヤドレスでV字に開いた胸元に、白いレースが肩から腕に掛けて長いラッパのように広がる袖。
ドレスのスカートには銀糸で大輪の花がレース編みされていて、これ、銀糸で作るにはかなりお金が掛かると思う。
私の体型は胸のせいでアンバランスだから、既製品だと胸に布を取られてスカートの前が上にあがって不格好になるのだけど、ちゃんと体に合っている。
耳飾りがブドウの房のようにダイヤがピカピカぶら下がっているのだけど?
ネックレスもゴージャス感丸出しの大粒ダイヤに、蜘蛛の巣状に広がる小粒ダイヤ……なにこれぇ……。
花嫁さん? いやいや、私は人妻なんだけどー!?
ハッ、私、思い出してしまった……。
「私は結婚しているのですが? 修道女になる気はこれっぽちも無いのですが……」
「はい?」
不思議そうに首を傾げる修道女さん達に、私はオロオロとしてしまう。
「修道女って、神様と結婚するんですよね? 私、こんなの着せられても、人妻なので無理です!」
修道女さん達が「ここまで察しの悪い子初めてだわ」とか言っている。
なんですか? その「あっ、この子駄目な子だ」みたいな目は~っ!!
「こちらをどうぞ。お預かりしていました」
修道女さんが白いケースに入ったヴェールとブーケを取り出し、ようやく私もホッと息を付いた。
白いヴェールには氷で出来たティアラとブーケの花にはブルースター。
この世界には無いブルースターを作れるのは私の従者のドラゴンくらいなものだ。
溶けない氷のティアラも、うちのグリムレインにしか出来ない芸当だろう。
ルーファスが用意したのだろうか?
「さぁ、仕上げですよ」
「はい! 色々、暴れて……すいませんでした……」
「いえいえ。サプライズは私達も楽しいですから」
訳も分からず大暴れして手を煩わせてしまった私に、修道女さん達はにこやかに笑って扉を開いてくれた。
大聖堂の中にはステンドグラスの光がキラキラと差し込んで、幻想的な空間を作り出していた。
祭壇では白い燕尾服のルーファスが立っていて、私に気付くと優しく笑って目を細めて近付いてくる。
「ルー……ふぁぁっ!」
私も駆けだそうとして、ドレスの裾を踏んづけて前のめりになると、ルーファスの腕に抱きとめられる。
「アカリらしいな」
「……面目無いです……」
ううっ、私のあんぽんたん!
大事なところでミスるのが私ですよ~! やり直し、ワンモアチャンスを要求したい!!
穴があったら入りたい……私があわあわしていると、クククッといつものルーファスの笑い声に上を向くと、珍しくルーファスの前髪がオールバック!
おおぉ~大人な感じが凄くする! これで眼鏡があれば完璧ですよ!
「ルーファス、格好いいね」
「そうか? オレにはアカリの姿が眩し過ぎるぐらいだが」
「おだてても、なにも出ませんよ?」
「綺麗だ。白い着物もよく似合っていたが、ドレスも似合ってる」
きゅんっと胸がときめいてしまった……リップサービス過剰は、私が悶えてしまうのでお止め下さい~っ。
ルーファスに手を取ってもらって、祭壇前まで行くと、愛のコインの所に居た白い牧師さんがニコニコとして立っている。
「あなた方はもう夫婦として歩んでおられるようですので、簡略しますね」
「ああ。頼む」
結婚式……かな? えーと、この状態なんだろう?
誰か説明を! 私にリハーサル下さい!! 心の中が大忙しな私はドキドキで牧師さんとルーファスのやり取りを見る。
「ルーファス・トリニア。アカリ・トリニア。お二人は夫婦として、これから先も共に歩み苦難も喜びもお互いに共有し、支え合い、二人の愛を永遠に誓い続けますか?」
「誓おう。オレの愛は永遠にアカリのものだ」
ふぁぁ~っ、ルーファスの微笑みが眩しいっ!!
って、ルーファスにときめいている場合ではない。私もなにか言わないと……ええっと、こういう時は「はい。誓います」くらいしかバリエーション思い浮かばないのだけど……?
頭が真っ白になるぅー!
「お……All my love! 私の愛の全て! ですっ!」
あ、私、完全にテンパりました……頭真っ白すぎて、愛のコインの文字そのまま言ってる。
やっちゃった感がありまくりなのだけど、牧師さんもルーファスも口元に笑みを浮かべていて、白い花がどこからともなくヒラヒラと落ちてくる。
「女神様も、この結婚を祝福して下さっています」
演出なのかなぁ? 白い花がどこからともなく天上の高い位置から降って来ていて、どこからなのか見えない。
牧師さんに「あなた方の婚姻が末永く続くことを、口づけを交わす事で誓約とします」と言われ、ヴェールを上に持ち上げられて、ルーファスが唇を重ねた。
「アカリ、これからもよろしく頼む」
「こちらこそ。不束者ですが、末永くよろしくお願いしますね?」
これって、一番初めにやらなきゃいけない挨拶だったよね?
二十四年も結婚生活をしていて、今更な感じもするけど、私達らしいのかな?
修道女さん達が現れて、カメラで記念写真を撮ってくれたり、ルーファスに今日の記念にと指輪を貰ったりした。
ウエディングドレス……本当は着てみたかったから、結構というか、かなり嬉しい。
「ルーファス、このドレスとか色々準備してくれてたの?」
「いや、恥ずかしながら……これを用意したのはリューだ。この大聖堂で式は予約制だと聞いたが、出来るか聞いたら、オレ達の滞在期間中はリューが予約していつでも使えるようにしていたと聞いた」
うちの長男様はなにをしているのか……いや、まぁ、ルーファスが式をしそうだなとか、予想して先回りしてくれたと言うべきなのか、このベネティクタの旅行はここを使って貰えるように手配してくれたのかなぁ?
息子の育て方は間違えてはいなかったようだ。うちの息子は出来た息子さんだ。
「グリムレイン達も協力してくれたんだね」
「そのようだな。オレは指輪くらいしか用意して無かったから、少し出し抜かれた感がある」
「そんなこと無いよ。すっごく嬉しい! 指輪は何個か貰ったけど、結婚式に貰えるのは特別だよ?」
指輪はブラックダイヤに両脇にイエローダイヤが一つずつ付いてるルーファスみたいな指輪で、少し照れてしまう。
「ルーファス、私幸せです」
「オレもアカリが側に居て、笑ってくれているだけで幸せだ」
もう一度キスをして、ルーファスにお姫様抱っこしてもらうと、また上から白い花が降ってきた。
「綺麗だね」
「ああ。こういう演出は粋なものだな。イトルメの花だしな」
「イトルメの花?」
「幸せはいつも近くに……という、花言葉の花だ」
「素敵な花言葉だね」
私達がそう言っていると、修道女さんが「これは演出じゃないですよ?」「たまにあるんですよ。だから、これは女神様の祝福って言われてるんです」「滅多に見れないんですよ」「女神様の花と言われている花ですし、本当に祝福だと思いますよ」と口々に言って、「お幸せに~」と笑って大聖堂から見送ってくれて、大聖堂の前には白い馬車が用意されていた。
後部座席が丸見えのオープン状態……流石に後ろに缶はついてなかったけど、お宿に帰るまで、見世物状態で観光客や街の人に手を振られて振り返していましたとも。
リュエール……流石にここまではお母さん望んでなかったなぁー……いや、これはむしろミルアやナルアの考えそうなことの気がしてきた。
うちの娘達はこういうメルヘンなの好きだからね。
「お帰りなさいませ」
「特別メニューのランチをご用意していますよ」
お宿の人達も一枚かんでいたのか、用意されたランチはウエディングケーキ付きでした。
うちの子供達は~っ、帰ったらみんなにハグとキスをして回ろう。
お土産も奮発しますよ! お母さんは子育てに自信を持ちそうだよ~っ!!
ルーファスに抱きかかえられて部屋に着くと、これでウエディングドレスもお終いか~……まぁ、素敵な夢をありがとう。一生に一度のドレスだから、もう着ることは無いから名残惜しいけど、大事にしよう。
「アカリ、泣いてるのか?」
「えへへ、嬉しくて。私、今までもすっごく、幸せだったのに、こんな幸せな日をプレゼントされるなんて思ってなかったから……」
「これからも、アカリに幸せだと思える日々をプレゼントしていく」
チュッとキスをされて、「私もルーファスに幸せを届けられるように頑張るね」と言ってキスをし返す。
あとはなだれ込むようにベッドの上で昨日も激しいことをしたようなのに、今日は気持ちが盛り上がり過ぎて……凄かった……と、だけ言っておきましょうか。
目が覚めて、目の前が真っ白……ではなく、白い花に埋もれていた。
「な、なにこれ??」
「ん……、なんだ? 花?」
ベッドの周りを白い花__イトルメの花が埋め尽くしていた。
そして、白い蝶がヒラヒラと飛んでいた。
「また蝶々だ……」
「蝶? オレには見えないが……もしかして精霊か?」
「精霊なのかなぁ? 昨日、扉に閉め出されてたの助けたけど……お礼かな?」
「アカリはやはり、一人にしておくと何かしら縁を結んでくるようだな」
それは否定できないかも……?
白い蝶が外に行きたそうに窓の周りを飛ぶから、窓を開けたら外にヒラヒラと飛んでいった。
ちゃんと大聖堂の花の場所まで帰れるかな? と、少し心配ではあるけど、精霊ならなんとかなるだろう。
「アカリ、今日は何処に観光に行こうか?」
「そうだねぇ……とりあえず、朝ご飯かな? ふふっ」
朝ご飯を食べたら、花を掃除かなぁ?
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