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25章
おヨメさまとステンドグラス
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大聖堂の中は冬だというのに、牡丹に似た花が薄いピンク色の花や白い花を咲かせていて、大聖堂の中を華やかに彩っている。
白い蝶がふわふわと飛んでは花の上で休んでいる。
祭壇の近くには立派な女神像があった。
温泉大陸にもある神社に聖獣の像があるけど、女神はその聖獣麒麟の上に乗って、周りを四聖獣と呼ばれる四体の聖獣が囲んでいる。
後ろのステンドグラスには真ん中は女神と麒麟で、左右に白虎、玄武、朱雀、青龍が描かれている。
「立派な像に、ステンドグラスだね」
「この世界の始まりの女神オードリーに聖獣達だな」
金髪碧眼の女神様……少しイルマールくんの女装した花魁道中の時の顔に似ているかも?
髪の色も目の色も同じだし、イルマールくんって白虎だから、聖獣の白虎と関係があるのかなぁ?
「女神オードリー様がこの大聖堂にある愛のコインを作られた方なのですよ」
先程の牧師さんがそういい、手を両手で握り女神像に祈っている。
女神オードリー……もしかして、異世界召喚された女神様で外国の人だったりしたのかな?
それならコインの文字が英語なのも頷けてしまう。
「女神様はどうして、始まりの女神様なんですか?」
「この世界は元々、麒麟様しか居なかったのです。そこへ女神オードリー様が降臨し、麒麟様の番になり、四聖獣を産み、四聖獣から、様々な種族の子供達が増えていき、今に至るのですよ」
「そうなんですかー……」
そうなんですかー……としか言えない。他に言いようがないよ? ボキャブラリーが少なくて申し訳ないけど、大昔の御伽噺のような話をされても、検証は出来ないからね。
いや、出来るけど……さすがに好奇心でそんなことをしたりはしないよ?
「それより、ステンドグラスが作れると聞いたのだが……」
「ええ。この左の扉を開いて中庭を行きますと、ステンドグラスの工房がありますよ」
「ありがとうございます~。ルーファス、行きましょう!」
ニコニコとした牧師さんにお礼を言って、言われた通りに左の扉を開いて中庭に行くと、簡素なテーブルを並べて、大きなガラス瓶や小さなガラス瓶にカラフルな石が入っているのを売っている黒服の牧師さんや、棒状のカラフルなガラスを売っている黒い服の牧師さんがバザーを開いているような感じだった。
私達のような観光客もそれなりに居て賑わっている。
「大聖堂には人が少なかったのに、中庭は人が凄いね」
「ステンドグラスが人気だからな。見て回ろう」
牧師さん達はみんな笑顔で対応してくれて、親切にステンドグラスの作り方などを教えてくれたり、既に出来ているステンドグラスを見せてくれたりした。
私は作りたいステンドグラスがあったので、絵を描いて図案を決めてくれる牧師さんに絵を描いてもらっていて、ルーファスはその間に少し見て回ると言い、人混みの中に消えて行った。
まぁ、塔の中ではないので、魔法干渉をされる魔道具もこの大聖堂には無いから少し離れていても大丈夫だったりする。
あまり長く離れられると、私は腰が鈍痛で歩き回れないから困るのだけどね。
あれ? 鈍痛で歩き回れないからこそ、安心して離れたりしたのだろうか? 私は下手に動き回ると余計なことしかしないと思われていそう。
「狼の眼は黄色のステンドグラスでお願いします」
「ええ、周りはどういたしますか?」
「あっ、この写真にある建物をステンドグラスに出来ますか?」
「これは……東国風の建物ですね。出来ますよ」
「じゃあ、これでお願いします」
ふっふっふっ、ルーファスと刻狼亭のステンドグラスを作るのよ~。
刻狼亭のロビーに飾ったらさぞかし映えることだろう。十九代目のリルさんは目が金色だったし、飾ったままにしていても、トリニア家の黒狼族という感じに残れば良いだろうしね。
「あと、これに背景を森にして、月が出ているものも作って欲しいのですが、出来ますか?」
「ええ、出来ますよ」
「では、それもお願いします!」
これは私とルーファスの出会いをイメージした一枚として、旧・女将亭に私の趣味として飾ろう。
牧師さんにお金を渡して、出来上がった物は温泉大陸のお屋敷の方へ送ってもらうことになった。
腰をトントンと手で叩いて、テコテコ歩いてステンドグラスを見て回っていると、先程の大聖堂に居た蝶が大聖堂の扉から閉じめされてしまったのか、扉の前を左右にウロウロ飛んでいた。
「ほら、お外は寒いよ。中に入らないと」
扉を開けてあげると、白い蝶は扉の中へ入っていった。
うん。いいことをした。冬なのに蝶が外を飛んでいるなんて凍死するようなものだしね。
満足してステンドグラスのお土産品コーナーに行こうと、後ろを振り向いたら黒い服の修道女のような女性が二人立っていた。
「アカリ・トリニア様ですか?」
「え? あ、はいそうです……」
うん? さっきのステンドグラスの注文でなにか問題でも起きたのかな?
修道女の二人に「では、どうぞこちらへ」と、大聖堂の中へ連れて行かれる。
「えーと、どこへ?」
何事? 私またなにかやらかしてる??
左右の修道女の人を交互に見て、どうしようかと考えていると、大聖堂の奥にある小部屋へ連れてこられた。
「さて、【解錠】」
「ふぁっ!」
修道女さんに魔法をかけられ、腕を掴まれて腕輪を外され、首のチョーカーもスルリと外れた。
一体全体、私はなにをされようとしているのだろう?
白い蝶がふわふわと飛んでは花の上で休んでいる。
祭壇の近くには立派な女神像があった。
温泉大陸にもある神社に聖獣の像があるけど、女神はその聖獣麒麟の上に乗って、周りを四聖獣と呼ばれる四体の聖獣が囲んでいる。
後ろのステンドグラスには真ん中は女神と麒麟で、左右に白虎、玄武、朱雀、青龍が描かれている。
「立派な像に、ステンドグラスだね」
「この世界の始まりの女神オードリーに聖獣達だな」
金髪碧眼の女神様……少しイルマールくんの女装した花魁道中の時の顔に似ているかも?
髪の色も目の色も同じだし、イルマールくんって白虎だから、聖獣の白虎と関係があるのかなぁ?
「女神オードリー様がこの大聖堂にある愛のコインを作られた方なのですよ」
先程の牧師さんがそういい、手を両手で握り女神像に祈っている。
女神オードリー……もしかして、異世界召喚された女神様で外国の人だったりしたのかな?
それならコインの文字が英語なのも頷けてしまう。
「女神様はどうして、始まりの女神様なんですか?」
「この世界は元々、麒麟様しか居なかったのです。そこへ女神オードリー様が降臨し、麒麟様の番になり、四聖獣を産み、四聖獣から、様々な種族の子供達が増えていき、今に至るのですよ」
「そうなんですかー……」
そうなんですかー……としか言えない。他に言いようがないよ? ボキャブラリーが少なくて申し訳ないけど、大昔の御伽噺のような話をされても、検証は出来ないからね。
いや、出来るけど……さすがに好奇心でそんなことをしたりはしないよ?
「それより、ステンドグラスが作れると聞いたのだが……」
「ええ。この左の扉を開いて中庭を行きますと、ステンドグラスの工房がありますよ」
「ありがとうございます~。ルーファス、行きましょう!」
ニコニコとした牧師さんにお礼を言って、言われた通りに左の扉を開いて中庭に行くと、簡素なテーブルを並べて、大きなガラス瓶や小さなガラス瓶にカラフルな石が入っているのを売っている黒服の牧師さんや、棒状のカラフルなガラスを売っている黒い服の牧師さんがバザーを開いているような感じだった。
私達のような観光客もそれなりに居て賑わっている。
「大聖堂には人が少なかったのに、中庭は人が凄いね」
「ステンドグラスが人気だからな。見て回ろう」
牧師さん達はみんな笑顔で対応してくれて、親切にステンドグラスの作り方などを教えてくれたり、既に出来ているステンドグラスを見せてくれたりした。
私は作りたいステンドグラスがあったので、絵を描いて図案を決めてくれる牧師さんに絵を描いてもらっていて、ルーファスはその間に少し見て回ると言い、人混みの中に消えて行った。
まぁ、塔の中ではないので、魔法干渉をされる魔道具もこの大聖堂には無いから少し離れていても大丈夫だったりする。
あまり長く離れられると、私は腰が鈍痛で歩き回れないから困るのだけどね。
あれ? 鈍痛で歩き回れないからこそ、安心して離れたりしたのだろうか? 私は下手に動き回ると余計なことしかしないと思われていそう。
「狼の眼は黄色のステンドグラスでお願いします」
「ええ、周りはどういたしますか?」
「あっ、この写真にある建物をステンドグラスに出来ますか?」
「これは……東国風の建物ですね。出来ますよ」
「じゃあ、これでお願いします」
ふっふっふっ、ルーファスと刻狼亭のステンドグラスを作るのよ~。
刻狼亭のロビーに飾ったらさぞかし映えることだろう。十九代目のリルさんは目が金色だったし、飾ったままにしていても、トリニア家の黒狼族という感じに残れば良いだろうしね。
「あと、これに背景を森にして、月が出ているものも作って欲しいのですが、出来ますか?」
「ええ、出来ますよ」
「では、それもお願いします!」
これは私とルーファスの出会いをイメージした一枚として、旧・女将亭に私の趣味として飾ろう。
牧師さんにお金を渡して、出来上がった物は温泉大陸のお屋敷の方へ送ってもらうことになった。
腰をトントンと手で叩いて、テコテコ歩いてステンドグラスを見て回っていると、先程の大聖堂に居た蝶が大聖堂の扉から閉じめされてしまったのか、扉の前を左右にウロウロ飛んでいた。
「ほら、お外は寒いよ。中に入らないと」
扉を開けてあげると、白い蝶は扉の中へ入っていった。
うん。いいことをした。冬なのに蝶が外を飛んでいるなんて凍死するようなものだしね。
満足してステンドグラスのお土産品コーナーに行こうと、後ろを振り向いたら黒い服の修道女のような女性が二人立っていた。
「アカリ・トリニア様ですか?」
「え? あ、はいそうです……」
うん? さっきのステンドグラスの注文でなにか問題でも起きたのかな?
修道女の二人に「では、どうぞこちらへ」と、大聖堂の中へ連れて行かれる。
「えーと、どこへ?」
何事? 私またなにかやらかしてる??
左右の修道女の人を交互に見て、どうしようかと考えていると、大聖堂の奥にある小部屋へ連れてこられた。
「さて、【解錠】」
「ふぁっ!」
修道女さんに魔法をかけられ、腕を掴まれて腕輪を外され、首のチョーカーもスルリと外れた。
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