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25章
おヨメさまと小芝居
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腕輪が振動して魔力を通すと、ハガネがどうなったかを聞いてきたので無事に合流出来たことと、ケイの話をしておいた。
ハガネ達の方は大丈夫か聞いたら、リュエールとシュテンが算盤を片手に怪しげな笑みをしているようなので、多くは聞くまい。
『うー! ははうー!』
「あら、スーちゃん。ハガネの腕輪貸してもらったの?」
『あー、コラ。スー、水は出すな。これは映像は送れねぇんだよ』
『うーにゃー!』
「ふふっ、元気みたいだね。スーちゃん、お土産いっぱい買っておくからね」
『あい!』
『まぁ、こっちは心配すんな』
「うん。ハガネがそっちに居る限り、私は安心してるよ!」
腕輪の向こうでハガネが頬でも掻いてそうな気がする。
思えば、子供達より付き合いの長い人でもあるから、トリニア家の長男とも言えるかもしれない。
まぁ、年上だけど。
通信を終わらせると、ガランッと扉が鳴り、ミッシャさんが「あら? 主人だわ」と出て行く。
ミッシャさんが席を外したうちに、私はルーファスの耳元でミッシャさんの『開花無』を治してしまったことと、ミッシャさんのポプリ屋さんが『女将亭』に欲しいことを相談した。
「まぁ、夫のケイ次第だろうな」
「うん。このお店も素敵だから、捨てろとは流石に言えないしね……」
このお店はミッシャさんがこだわっているのもわかる内装だし、ケイもお仕事があるだろうし、直ぐに決めてもらうつもりは無いけど、検討はしてほしいかな?
ケイとミッシャさんが部屋に入って来て、ケイが床に正座をすると私とルーファスを見上げる。
その目は何処か泣きそうで必死な目をしていて、どうしたのだろう? と、首を傾げるとケイが土下座をした。
「魔法省を辞めてきました! だからって言う訳じゃないんですが、おれを温泉大陸で働かせてください! ミッシャは『開花無』という病気で、温泉大陸なら魔力が豊富で少しは長生き出来るかもしれない……、お願いしますっ!」
「ちょっ……ケイ!?」
「お願いです! せめてミッシャだけでも、こいつは手先が器用だし、なんでも出来るんです! まだいっぱいやりたいこともあると思う。無茶言ってるのはわかっているんです。でも、ここに住んでいたらこいつは長生き出来ない! お願いしますッ!」
「ケイ、止めて! わたしは良いの! 充分だから!」
土下座するケイを立たせようと、ミッシャさんが必死にケイの背中を叩いたり持ち上げようとしているが、ケイはビクともしない。
ケイも番を得て、少し大人になったのかな?
ルーファスを見れば、私の方を見て小さく笑う。
「【回復】……これで『開花無』は治ったはずだ。これは先行投資だ。お前が番を想う気持ちを信じよう。すぐに温泉大陸の通行証明証を作ってやる。しかし、欲しいのはミッシャの仕事能力だ。ケイ、お前はオマケだ。精々、うちの見習いから叩き上げてもらうといい」
おお、ナイス! ルーファス。これなら私が【聖域】で治したとは思われない。
まぁ、既に『開花無』は治してあるから、気付かなかったケイ達が悪いのです。
「ミッシャさん、耳の枝先に花の蕾が出ていますよ」
私もルーファスに便乗してミッシャさんにそう言い、ケイはポカンとした顔をして、ミッシャさんは自分の耳の上にある枝を手で触って、指先が震えている。
「ケイ、私の、枝に蕾は、ある?」
「ああ、ある。あるよ。ミッシャ、良かった!」
土下座からミッシャさんを抱きしめて立ち上がった、ケイの尻尾が嬉しそうに揺れているのを見て、私もルーファスの耳元で「ありがとう」と言って笑うと、「やったのはアカリだがな」と笑った。
ひとしきり抱き合って泣いて落ち着いた二人が、改めて土下座しようとしたのを止めて、私はミッシャさんに「温泉大陸で、素敵なポプリやアロマにお人形を作りましょうね!」と逃がさないぞーと、笑う。
だって、こんなに素敵な技術を温泉大陸に持ち帰らないなんて、損ではないですか?
きっと番が多く集まりやすい温泉大陸なら人気は出るはず。
うちの娘達とか凄く喜びそうなお店だもの。
「本気……なんですか?」
「はい。だから、私、ミッシャさんに言ったじゃないですか? 良いお店場を紹介できますよって。ふふっ温泉大陸の大女将に二言は無いですよ」
私はオオカミのお人形を腕に抱いて、「お店の内装とか、決めないとですね」とニコニコ笑顔で言うとケイの頬っぺたを摘まんで「夢? え? 大丈夫? 騙されてない?」とギュムギュム引っ張っている。
私達がそんなことをしている横で、ルーファスはリュエールに連絡をして二人が温泉大陸に行く手配をさせている。
即断実行である。
お家に関しては、このお店もあるので、直ぐにとはいかないだろうけど、温泉大陸の方では私達が使っている貸家を提供して、もし他にお家が見付かれば自分達で決めて貰えばいいかな? という話もした。
その後は少し業務的な話をしつつ、ルーファスが私の匂いに近いポプリを厳選したので、私がポプリの袋をチクチク縫って、ミッシャさんに白い狼のお人形を作ってもらい、ポプリ袋を入れた。
匂いは甘い匂いに優しい花の香っぽく、石けんの爽やかな匂いもある。
これがルーファスが私の番の匂いだというけど、そうかなぁ?
「これは、確かに番持ちには堪らんアイテムだな」
「でしょ! だから、ミッシャさんには是非うちのお店で店子をして欲しかったのー」
「しかし、本物の匂いには敵わないな」
「だから、離れている間とか、そういう時に疑似番の香りを傍にってことです」
「ナルア辺りが喜びそうだな」
ナルアならきっとシノリアくんの香りを作って、離れている間の寂しさを紛らわせるのにいいかもしれない。むしろ寂しさが募っちゃうかもしれないけど。
夕暮れ時になり、家路に帰る人が増え始めたのか、外は人通りが多くなる。
「今日はまだ魔法省の動きがありますから、我が家に泊まっていってください」
「ありがとうございます~。えへへ、ルーファス今日はお泊りですよ?」
「まぁ、宿は見張られているだろうからな」
ミッシャさんのお言葉に甘えて本日のお宿は確保である。
ただ事件? を見ていた目撃者で救護までしたのに、ここまでルーファスと私が重要視されているのかが分からず、ケイにそこら辺を聞くことになった。
ハガネ達の方は大丈夫か聞いたら、リュエールとシュテンが算盤を片手に怪しげな笑みをしているようなので、多くは聞くまい。
『うー! ははうー!』
「あら、スーちゃん。ハガネの腕輪貸してもらったの?」
『あー、コラ。スー、水は出すな。これは映像は送れねぇんだよ』
『うーにゃー!』
「ふふっ、元気みたいだね。スーちゃん、お土産いっぱい買っておくからね」
『あい!』
『まぁ、こっちは心配すんな』
「うん。ハガネがそっちに居る限り、私は安心してるよ!」
腕輪の向こうでハガネが頬でも掻いてそうな気がする。
思えば、子供達より付き合いの長い人でもあるから、トリニア家の長男とも言えるかもしれない。
まぁ、年上だけど。
通信を終わらせると、ガランッと扉が鳴り、ミッシャさんが「あら? 主人だわ」と出て行く。
ミッシャさんが席を外したうちに、私はルーファスの耳元でミッシャさんの『開花無』を治してしまったことと、ミッシャさんのポプリ屋さんが『女将亭』に欲しいことを相談した。
「まぁ、夫のケイ次第だろうな」
「うん。このお店も素敵だから、捨てろとは流石に言えないしね……」
このお店はミッシャさんがこだわっているのもわかる内装だし、ケイもお仕事があるだろうし、直ぐに決めてもらうつもりは無いけど、検討はしてほしいかな?
ケイとミッシャさんが部屋に入って来て、ケイが床に正座をすると私とルーファスを見上げる。
その目は何処か泣きそうで必死な目をしていて、どうしたのだろう? と、首を傾げるとケイが土下座をした。
「魔法省を辞めてきました! だからって言う訳じゃないんですが、おれを温泉大陸で働かせてください! ミッシャは『開花無』という病気で、温泉大陸なら魔力が豊富で少しは長生き出来るかもしれない……、お願いしますっ!」
「ちょっ……ケイ!?」
「お願いです! せめてミッシャだけでも、こいつは手先が器用だし、なんでも出来るんです! まだいっぱいやりたいこともあると思う。無茶言ってるのはわかっているんです。でも、ここに住んでいたらこいつは長生き出来ない! お願いしますッ!」
「ケイ、止めて! わたしは良いの! 充分だから!」
土下座するケイを立たせようと、ミッシャさんが必死にケイの背中を叩いたり持ち上げようとしているが、ケイはビクともしない。
ケイも番を得て、少し大人になったのかな?
ルーファスを見れば、私の方を見て小さく笑う。
「【回復】……これで『開花無』は治ったはずだ。これは先行投資だ。お前が番を想う気持ちを信じよう。すぐに温泉大陸の通行証明証を作ってやる。しかし、欲しいのはミッシャの仕事能力だ。ケイ、お前はオマケだ。精々、うちの見習いから叩き上げてもらうといい」
おお、ナイス! ルーファス。これなら私が【聖域】で治したとは思われない。
まぁ、既に『開花無』は治してあるから、気付かなかったケイ達が悪いのです。
「ミッシャさん、耳の枝先に花の蕾が出ていますよ」
私もルーファスに便乗してミッシャさんにそう言い、ケイはポカンとした顔をして、ミッシャさんは自分の耳の上にある枝を手で触って、指先が震えている。
「ケイ、私の、枝に蕾は、ある?」
「ああ、ある。あるよ。ミッシャ、良かった!」
土下座からミッシャさんを抱きしめて立ち上がった、ケイの尻尾が嬉しそうに揺れているのを見て、私もルーファスの耳元で「ありがとう」と言って笑うと、「やったのはアカリだがな」と笑った。
ひとしきり抱き合って泣いて落ち着いた二人が、改めて土下座しようとしたのを止めて、私はミッシャさんに「温泉大陸で、素敵なポプリやアロマにお人形を作りましょうね!」と逃がさないぞーと、笑う。
だって、こんなに素敵な技術を温泉大陸に持ち帰らないなんて、損ではないですか?
きっと番が多く集まりやすい温泉大陸なら人気は出るはず。
うちの娘達とか凄く喜びそうなお店だもの。
「本気……なんですか?」
「はい。だから、私、ミッシャさんに言ったじゃないですか? 良いお店場を紹介できますよって。ふふっ温泉大陸の大女将に二言は無いですよ」
私はオオカミのお人形を腕に抱いて、「お店の内装とか、決めないとですね」とニコニコ笑顔で言うとケイの頬っぺたを摘まんで「夢? え? 大丈夫? 騙されてない?」とギュムギュム引っ張っている。
私達がそんなことをしている横で、ルーファスはリュエールに連絡をして二人が温泉大陸に行く手配をさせている。
即断実行である。
お家に関しては、このお店もあるので、直ぐにとはいかないだろうけど、温泉大陸の方では私達が使っている貸家を提供して、もし他にお家が見付かれば自分達で決めて貰えばいいかな? という話もした。
その後は少し業務的な話をしつつ、ルーファスが私の匂いに近いポプリを厳選したので、私がポプリの袋をチクチク縫って、ミッシャさんに白い狼のお人形を作ってもらい、ポプリ袋を入れた。
匂いは甘い匂いに優しい花の香っぽく、石けんの爽やかな匂いもある。
これがルーファスが私の番の匂いだというけど、そうかなぁ?
「これは、確かに番持ちには堪らんアイテムだな」
「でしょ! だから、ミッシャさんには是非うちのお店で店子をして欲しかったのー」
「しかし、本物の匂いには敵わないな」
「だから、離れている間とか、そういう時に疑似番の香りを傍にってことです」
「ナルア辺りが喜びそうだな」
ナルアならきっとシノリアくんの香りを作って、離れている間の寂しさを紛らわせるのにいいかもしれない。むしろ寂しさが募っちゃうかもしれないけど。
夕暮れ時になり、家路に帰る人が増え始めたのか、外は人通りが多くなる。
「今日はまだ魔法省の動きがありますから、我が家に泊まっていってください」
「ありがとうございます~。えへへ、ルーファス今日はお泊りですよ?」
「まぁ、宿は見張られているだろうからな」
ミッシャさんのお言葉に甘えて本日のお宿は確保である。
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