黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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25章

おヨメさまとミッシャさん

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 たまに耳飾りを指でシャラシャラ鳴らし、私はミッシャさんに教わってアロマキャンドルを作っていた。
小さなランプの上に陶器のお鍋を用意して蝋燭ろうそくを削った物を入れると、蝋燭がランプの火で溶けて透明になる。
そこに私が選んだハーブや木を削った物を入れ、ガラスの器の中に緑染め粉を入れて、鍋の中身を少し入れる。
そこへ蝋燭の芯となる布紐を入れて、蝋燭と染め粉が混ざるようにかき混ぜる。
しばらくして冷えたら、次は青い染め粉を入れて蝋燭を追加、また冷やして、最後は黒色の染め粉と銀の粒を入れて……完成!!

 世界に一つ、私のルーファスアロマキャンドル~!!
色のグラデーションは、ルーファスと逢った日の夜をイメージしました。

 ちなみに、グランドモアの巨木香がとてもお高い物でミッシャさんに「お値段が結構するけど大丈夫ですか?」と、聞かれたけど、好きな人の香りを再現する為の投資は惜しみませんよ!
むしろ旅行の散財は旅の思い出だと思っています。
若い頃の貧乏癖で「ぐぬぅぅ」と、思ったけど……仕方ない。うん。

 グランモアの巨木香は小指程度でも銀貨四枚(四万円)する、この世界でも珍しい香木らしい。
何千年と香りを集めたグランモアの巨木の中心に人の腕程の香り高い香木が出来るらしいけど、出ない場合もあるので、とても貴重なのだとか。

 森の良い香りがする物がグランモアの巨木なので、これが無くてはルーファスの匂いにならない。
お高い物だけど、絶対、コレじゃなきゃ駄目。

 あとの物はミッカの花は温泉大陸ではお馴染みだけど、ここら辺では採れないらしく、白銅貨八枚(八百円)だった。ミッカの実だけなら流通はしているけど、味は温泉大陸より落ちてしまうし、匂いも飛んでしまうらしく、花も特殊加工の魔法で押し込めて輸送しているから、このお値段らしい。

 パトゥメの葉は、桃みたいな実が生る木の葉なんだけど、葉の匂いは虫よけの効果があるらしく、ローズマリーとセージと杉の匂いから香りを取り除いて、清涼感だけが残った匂いかなぁ? 少し説明しにくいけど、爽やかな香り。
お値段は白銅貨三枚(三百円)と、この近辺では珍しくない植物なのでお安いらしいです。

キャンディハーブは甘い香りの匂いのするハーブで、番の匂いって、こんな感じの甘さがあるかな? って、思ってこれにしたけど、番の甘い匂いって白桃の甘さのような匂いというか味を薄めた様な、それでいて果物って感じじゃなくて、中々にコレですよ! って、匂いも味も見つけるのは難しい。
一番悩んだのが、このキャンディハーブだったりする。

 ちなみにお値段銅貨一枚(千円)で、実はこのキャンディハーブは新種のハーブらしく、まだ出回っていないそうなのだ。
 そのうち温泉大陸に苗を輸入して、製薬部隊に「これでポーションの匂いをどうにかしなさい!」と投げつけたいところ。
たまに、凄い刺激臭のポーションを作る人達だからね。

 最後に蝋燭に入れた銀の粒は星をイメージしたくて入れたけど、ほとんど粉なのでお値段は銅貨一枚(千円)程度で済んだ。
染め粉はサービスなので無料で、ガラスの器もサービスしてもらった。
 手作り体験のお値段は銅貨一枚で、良い体験をさせてもらいました。と、いう感じである。

 アロマキャンドルを箱に入れてもらい、お値段を支払ってカバンに入れる。
そして、まだまだ私の体験コーナーは続く訳です。

 ミッシャさんが先程使ったグランモアの巨木香より大きく、グランモアの巨木香を削り取り、他の材料も大量に出す。
ああ、お値段が怖いけど、これは私のルーファスポプリ枕の為だ!
投資は惜しまないぞ~! 自分への良い旅行のお土産が出来たと思えば、バッチリオッケーである。

「アカリさん、次はポプリですが、先ずは袋を作りましょう!」
「はい。頑張ります!」
「まずは、この布からポプリが出ないように細かく縫いましょう」

 麻布で文庫小説くらいの大きさの袋をチマチマ縫いつつ、私の前では手早い動きでミッシャさんが黒い布を使って狼のお人形を作ってくれている。
私はスクルードのリュックサックを作るのですら、一週間以上かけたのに……手元が見えない程の速さでミッシャさんは縫っていくのだから、凄いなぁ……。
ミッシャさんの手を見ていたら、ぷすっと自分の指に針を刺していた。

「あっ、痛っ!」
「大丈夫ですか?」
「すいません。私、お裁縫ってあんまりしなくて、下手っぴなんです」

 ミッシャさんが私が針で刺した指をそのまま口に持っていき、パクリと舐めた。
ふわぁぁぁぁ!!!! ルーファス以外でこんなことを自然にする人が居るなんて!?
チュッと吸われて、私が真っ赤な顔をしていると、ミッシャさんが「あっ、ごめんなさい。つい主人にするみたいにしちゃったわ」と少し頬を赤く染めた。

「ミッシャさんはご結婚なさってるんですね」
「ええ。この人形の犬は主人をモチーフに作ったの。仕事柄、夜は家に帰れないこともあるから」
「素敵ですね。私も主人をモチーフに、その狼を作って貰っているんです」
「まぁ、私達気が合いそうですね?」
「ええ、本当に。ミッシャさんさえ良ければ、こうしたポプリとお人形を作るお仕事をしませんか? とお誘いしたいくらいです! 私、良いお仕事場をご紹介できますよ!」

 ミッシャさんの手をガシッと握って、目を輝かせるとミッシャさんが困った様に笑う。

「私もこの仕事は大好きなの……でも、私の命の期限はそう無いのよ……」
「え……」
「こんな重い話してごめんなさいね。でも、良かったらアカリさんが、このお仕事をそのまま自分のお仕事に生かしてくれれば、わたしも嬉しいわ」 
「何処が悪いんですか?」

 ミッシャさんは困ったままの顔で笑い、自分の耳の上にある枝を触る。

「ドリアード族特有の病気なの。『開花無カイカム』という、本来、枝に花が咲くはずなのに、人の血が多いせいか花が咲くことは無くて、咲けないままだと枝が落ちてしまうの。昔はもう少し枝があったんだけど、今ではこの右耳の枝だけなの」

 確かにミッシャさんの右耳にしか枝は無い……が、うーん。私の血……舐めたせいだと思う。見事に右耳の枝に小さな花の蕾が出来てる。
人助け、うん……人助けと思えば、リュエールも怒らないはず……だよね?
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