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25章
おヨメさまと塔
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フワフワした黒い物に包まれて、ちょっと暑苦しいと思って目を覚ますと、洋風な部屋に居た。
私の周りには真っ黒でモコモコした羊達が寝ている。
一応ベッドの上のようだけど、調度品からして貴族屋敷……?
でも、お宿はこんな赤いカーペットでは無かったし、この羊達は何なのか?
「あ……ルーファス? ルーファスどこ?」
周りを見渡しても、黒い羊の中にルーファスの黒い毛並みが無い。
変な深緑色の魔法省の人達に追いかけられて……私が気を失ったから、掴まってここに居るんだろうか?
ベッドを降りて、自分の体を見渡し、服はコートは無いけど服装はそのままだし、腕輪もある。
ベッドサイドにカバンも置いてあり、中身を見れば全部無事のようだ。
ハイウエストのスカートに付いている四つの装飾もある。耳飾りは……ある。
シャランと音をさせて、ルーファスに音が聞こえるように何度か指で触ったけれど、ルーファスが現れない。
首のチョーカーも鎖は出ないし……どうしよう?
腕輪に魔力を通してみるけれど、ルーファスが出てくれない。
「ルーファス、どこ?」
肩掛けカバンを肩に掛けて、寝ている羊達を起こさないように、そろりそろりとドアを目指す。
ドアノブを回して開けると、やはりお宿では無かった。
廊下は赤いカーペットに金色の線が入っていて、歩くと床がキシと鳴る。
ビクビクしながら廊下を歩き、手すりのある階段を降りていくと、階段の途中にある窓の外に、中央の魔法学園の三角の頭の塔がやけに同じような高さで見える。
窓から下を見れば、ここが普通の屋敷ではなく、塔の上だとわかった。
「ひぅっ!」
背筋がゾワゾワして足がギクシャクと動いてしまう。
高所恐怖症の私に、こんな高い場所は恐怖対象でしかない。
でも、ルーファスの居ない恐怖の方が勝って、私はぎこちない足を動かしながら下を目指して降りていく。
どうして塔に私が連れてこられてるんだろう?
それに、これは五つあるうちのどの塔なんだろうか?
わからないことだらけだ。
一番は、ルーファスはあれだけ私がこの旅行で一人にならないように、色々していてくれたのに、そのどれもが反応の無いところ。
私が気を失った後でなにが起きたんだろう……。
階段を何段降りたのか……体力不足に自信があります……あっちゃいけない自信だけど、足が別の意味でギクシャクでガクガクしてきた。
「はひ……ふぇ……足、疲れた……」
この旅行で汽車の中でもルーファスとエッチしてたから、元々体力は削れてたけど、妙な場所が筋肉痛になりそう……明日は確実に筋肉痛に違いない。
明日はルーファスに抱っこして動いてもらおう。うん、最近薄れてきてるけど、抱き上げられての移動って、知らない土地だと少し恥ずかしい。でも、明日はそんなこと言っていられなさそう。
「あ、そういえば……ハガネが色々入れててくれたような……」
カバンの中からポーションの入った救急箱を取り出すと、全てを見越しかのような……疲労回復ポーションと体力回復ポーションの数が入っていた。
流石、我が家の気配り名人ハガネである。
「飴も確かあったかな?」
うちの製薬部隊の疲労回復ポーションの不味さの口直しも予想して、飴をギッシリ入れてたのかな?
飴が入っている缶を開けると、小さな紙が入っていた。
『困ったことがあったら、俺に連絡しろ』
ハガネに腕輪で連絡をすると、ノイズが酷く途切れ途切れのハガネの声がする。
「ハガネ? なに? 聞こえないよ!」
『……魔力か、ん、が……ろ』
「魔力がなに!?」
『干渉、……装飾……で』
魔力、干渉、装飾……?
もしかして、このウエストに付いている装飾の魔力干渉を妨害する装飾が、腕輪の魔力通信にも干渉して邪魔してる?
装飾を外して床に置くと、ようやくハガネの声が聞こえるようになった。
『おっ、ようやく雑音が無くなったな』
「ハガネ~っ!! 助けてぇ~!!」
『今回はなにをやらかしたんだ?』
とりあえず私は、ハガネにカフェで上から人が落ちてきたこと、公園で魔法省の人達に追われたこと、そして今現在、どこかの塔の中に居ることを説明した。
『また面倒なことになってんなぁ。アカリ、窓から見える中央の塔は少しは見上げる感じか?』
「えーと……」
窓の外を見れば、先程と高さは変ってないような気がする。
あんなに降りたのに? もしかして、私は体力が無さ過ぎて少し降りただけでこの疲労困憊状態なの?
「あんまり変わってない気がする……結構降りたつもりだったんだけど……」
『だったら、その階段のどこかに幻惑の魔道具があるのかもしれねぇな』
「それ、どうやって見つければいい?」
『外した妨害の装飾を近づけて、目の前でなにか違和感があれば、それが魔道具だな』
「わかった。やってみるよ!」
『あと、大旦那が反応しないとなると、大旦那は魔法省の妨害魔道具のある部屋に居るかもしれねぇ。一応、小鬼に事件がどうなったか調べさせる。少しばっかし待っててくれ』
「うん。ありがとう」
『いざとなったら、移動魔法で逃げ帰れよ』
「うん……なるべく、頑張れるところは頑張ってみる」
『ああ。無理しねぇ程度にな』
通信を終えて、もう一度ルーファスに腕輪で連絡をしたけど、返答はなかった。
疲労回復ポーションと体力回復ポーションを飲んで、飴を口に頬張ると床に置いた装飾を手に持って、階段と手すりにかざしながら魔道具が無いかを調べ始めた。
私の周りには真っ黒でモコモコした羊達が寝ている。
一応ベッドの上のようだけど、調度品からして貴族屋敷……?
でも、お宿はこんな赤いカーペットでは無かったし、この羊達は何なのか?
「あ……ルーファス? ルーファスどこ?」
周りを見渡しても、黒い羊の中にルーファスの黒い毛並みが無い。
変な深緑色の魔法省の人達に追いかけられて……私が気を失ったから、掴まってここに居るんだろうか?
ベッドを降りて、自分の体を見渡し、服はコートは無いけど服装はそのままだし、腕輪もある。
ベッドサイドにカバンも置いてあり、中身を見れば全部無事のようだ。
ハイウエストのスカートに付いている四つの装飾もある。耳飾りは……ある。
シャランと音をさせて、ルーファスに音が聞こえるように何度か指で触ったけれど、ルーファスが現れない。
首のチョーカーも鎖は出ないし……どうしよう?
腕輪に魔力を通してみるけれど、ルーファスが出てくれない。
「ルーファス、どこ?」
肩掛けカバンを肩に掛けて、寝ている羊達を起こさないように、そろりそろりとドアを目指す。
ドアノブを回して開けると、やはりお宿では無かった。
廊下は赤いカーペットに金色の線が入っていて、歩くと床がキシと鳴る。
ビクビクしながら廊下を歩き、手すりのある階段を降りていくと、階段の途中にある窓の外に、中央の魔法学園の三角の頭の塔がやけに同じような高さで見える。
窓から下を見れば、ここが普通の屋敷ではなく、塔の上だとわかった。
「ひぅっ!」
背筋がゾワゾワして足がギクシャクと動いてしまう。
高所恐怖症の私に、こんな高い場所は恐怖対象でしかない。
でも、ルーファスの居ない恐怖の方が勝って、私はぎこちない足を動かしながら下を目指して降りていく。
どうして塔に私が連れてこられてるんだろう?
それに、これは五つあるうちのどの塔なんだろうか?
わからないことだらけだ。
一番は、ルーファスはあれだけ私がこの旅行で一人にならないように、色々していてくれたのに、そのどれもが反応の無いところ。
私が気を失った後でなにが起きたんだろう……。
階段を何段降りたのか……体力不足に自信があります……あっちゃいけない自信だけど、足が別の意味でギクシャクでガクガクしてきた。
「はひ……ふぇ……足、疲れた……」
この旅行で汽車の中でもルーファスとエッチしてたから、元々体力は削れてたけど、妙な場所が筋肉痛になりそう……明日は確実に筋肉痛に違いない。
明日はルーファスに抱っこして動いてもらおう。うん、最近薄れてきてるけど、抱き上げられての移動って、知らない土地だと少し恥ずかしい。でも、明日はそんなこと言っていられなさそう。
「あ、そういえば……ハガネが色々入れててくれたような……」
カバンの中からポーションの入った救急箱を取り出すと、全てを見越しかのような……疲労回復ポーションと体力回復ポーションの数が入っていた。
流石、我が家の気配り名人ハガネである。
「飴も確かあったかな?」
うちの製薬部隊の疲労回復ポーションの不味さの口直しも予想して、飴をギッシリ入れてたのかな?
飴が入っている缶を開けると、小さな紙が入っていた。
『困ったことがあったら、俺に連絡しろ』
ハガネに腕輪で連絡をすると、ノイズが酷く途切れ途切れのハガネの声がする。
「ハガネ? なに? 聞こえないよ!」
『……魔力か、ん、が……ろ』
「魔力がなに!?」
『干渉、……装飾……で』
魔力、干渉、装飾……?
もしかして、このウエストに付いている装飾の魔力干渉を妨害する装飾が、腕輪の魔力通信にも干渉して邪魔してる?
装飾を外して床に置くと、ようやくハガネの声が聞こえるようになった。
『おっ、ようやく雑音が無くなったな』
「ハガネ~っ!! 助けてぇ~!!」
『今回はなにをやらかしたんだ?』
とりあえず私は、ハガネにカフェで上から人が落ちてきたこと、公園で魔法省の人達に追われたこと、そして今現在、どこかの塔の中に居ることを説明した。
『また面倒なことになってんなぁ。アカリ、窓から見える中央の塔は少しは見上げる感じか?』
「えーと……」
窓の外を見れば、先程と高さは変ってないような気がする。
あんなに降りたのに? もしかして、私は体力が無さ過ぎて少し降りただけでこの疲労困憊状態なの?
「あんまり変わってない気がする……結構降りたつもりだったんだけど……」
『だったら、その階段のどこかに幻惑の魔道具があるのかもしれねぇな』
「それ、どうやって見つければいい?」
『外した妨害の装飾を近づけて、目の前でなにか違和感があれば、それが魔道具だな』
「わかった。やってみるよ!」
『あと、大旦那が反応しないとなると、大旦那は魔法省の妨害魔道具のある部屋に居るかもしれねぇ。一応、小鬼に事件がどうなったか調べさせる。少しばっかし待っててくれ』
「うん。ありがとう」
『いざとなったら、移動魔法で逃げ帰れよ』
「うん……なるべく、頑張れるところは頑張ってみる」
『ああ。無理しねぇ程度にな』
通信を終えて、もう一度ルーファスに腕輪で連絡をしたけど、返答はなかった。
疲労回復ポーションと体力回復ポーションを飲んで、飴を口に頬張ると床に置いた装飾を手に持って、階段と手すりにかざしながら魔道具が無いかを調べ始めた。
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