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25章
おヨメさまとドリアード駅
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乗り合い馬車は予約が無くても馬車の席が開いていれば乗れる物で、馬車を引いている獣騎も速度はそれ程速度は無く、大人しい部類の魔獣なのだという。
少し馬に似ているけど、体は鱗で覆われていてブルーハワイのかき氷を思わせる色をしている。
白から青へのグラデーションがキラキラしてて、ハイビスカスでも頭に付けたら「あっ、夏っぽい」という感じかな?
早い魔獣の獣騎程、気性が荒い場合が多いから近付いてはいけないらしい。
これは旅の前にルーファスとリュエールに散々、耳にオクトパ状態で聞いた事なので、近付かないでいよう。
でも、うにうにした触手の生えたナメクジっぽい馬車……あれは早いのか遅いのかが気になる……。
ジーッと見ていたら、「ビヒヒーン」とナメクジっぽい獣騎が嘶いて、予想外の馬っぽい声に「ひゃぁ!」と、声を上げて慌てて離れる。
「あれ? ルーファス?」
キョロキョロしていると、頭にぽふっと大きな手が乗る。
「アカリ、こっちだ。よそ見をしていると、攫われるぞ?」
「はぁーい」
黒いコートを着たルーファスに手を引かれ、腕に乗せられて抱き上げられる。
ルーファスが歩くたびに、私の耳からシャランと音が鳴り、迷子防止の耳飾りが揺れる。
黒い耳飾りは『刻』『狼』と左右の珠に金字で書いてあって、ルーファスにだけ聞こえる音を魔法で出している。
ついでに、手錠と鎖……は、付けられてる。
信用って大事だと思うんだけど、すでに馬車に夢中になってルーファスを見失いそうになっていたので、文句は言えそうにない。
一応、旅行前に改良はしてもらった……改良前の方がマシだった気がするけど。
私が首に巻いている黒いレースのチョーカーが手錠だった物で、鎖は魔法で消えているけどしっかりついているらしい。
人がこの鎖で邪魔されることは無いらしく、ルーファスが手首に巻いている黒いリングに魔力が通ると私のチョーカーの鎖が物体化して引き寄せられるらしい。
こういう無駄な物を作ったのは【刻狼亭】の魔道具造り部署、元々は時間移動の魔道具を作ってもらっていた人達が、最近は【風雷商】にも負けず劣らずの発明をし始めて……こうなってしまった。
「ルーファス、私、この世界の汽車初めて!」
「なら、余計にアカリから目を離せないな。直ぐに目を奪われてチョロチョロするからな」
「大丈夫だよ! 汽車は私の世界では普通に電車って言って、十分置きに行きかっていたんだから」
「馬車に目を奪われて迷子になりかけたのに、よく言う」
胡乱な目をするルーファスに、これは……申し開きも出来ない。
ルーファスの肩にグイグイと頭を寄せて、この位置からじっくりしっかり、この世界の汽車を見物するつもりである。
私とルーファスは今現在、観光地の魔法学園があるというベネティクタ都市に行く為に移動中だったりする。
朝早くに荷物いっぱいで出掛けようとして、ルーファスが手の平の鍵を出して、肩掛けカバンのみ残して全部荷物を収納してくれた。
その便利道具……あまりにも使わないから存在を忘れていたよ……私の悩みに悩んだ旅行カバンの衣服達、実は悩まなくても良かったという……ガックリである。
今回の私とルーファスは、黒コーデでペアルックだったりする。
黒いチョーカーに黒い耳飾りというのもあってね……黒服ばかりになったともいう。
温泉大陸を最速馬の獣騎に乗って、タンシム国を抜けると北方面にあるベネティクタ都市に向かう汽車が出ているので、それに乗る為に駅に来たのである!
日本の駅と違って、広さが全然違う。東京にある大きなコンサートホール何個分? という感じで……しかも、これは駅というより大きな樹をくり抜いて作られている様で、頭上には駅員の制服を着たドリアード族の人が木の枝を繋げた橋の上を歩き回っている。
「ふぁぁー、ルーファス、ドリアード族の人が多いね」
「ああ、ここは元々ドリアード族の森があった場所だからな」
「へぇー、あっ、綺麗なステンドグラス」
「樹の穴を利用して、ああして細工を施しているのも、この駅の特徴だな」
「あっ、写真撮りたい!」
「それは帰りにしろ。もう出発まで時間が無いぞ?」
「それは急がなきゃ! ルーファス、行こー!」
丸い木の板に乗っているドリアードの駅長さんに声を掛けて、汽車のチケットを見せると木の板が大きくなってスイーッと、自動で移動して汽車の席の近くまで送ってくれた。
汽車は銅板のような色をした鉱物で形が作られていて、中はフカフカした緑色の絨毯が敷いてあり、切り株のテーブルと長いクッションが置いてある四畳程の広さに両側に大きな丸い窓がついている。
これは寝そべって乗るタイプの汽車なのかな?
首を傾げると、ルーファスが下ろしてくれて、ぽよんとした絨毯は予想外で、踏み外して前のめりにコケそうになると、ルーファスが私の腰を持って支えてくれた。
「アカリは、本当に汽車に乗ったことがあるのか?」
「あるよ! でも、こんなフカフカじゃないし、もっと鉄って感じの……そう、馬車がいっぱいくっついている感じの長ーいのに乗ったりしてたんだよ」
ルーファスがコートを脱がせてくれて、備え付けの木の枝のコート掛けにカバンとコートを掛け、自分のコートも掛けている。それが終わると私を抱いて横になる。
「ふむ。異世界の汽車は乗り心地が悪そうだな」
「うーん、確かに。ずっと立ちっぱなしか、座ったままって感じかな? 人も乗り降り激しいし」
「まぁ、それならこの列車の旅を楽しむと良い」
「うん。電車でごろごろ横になるの初めて」
足をパタパタ動かして窓の外を眺めると、ドリアードの駅長さん達が人を汽車に乗せて頭に大輪のピンク色の鮮やかな花を咲かせると、電車はジリリンと低いけれど、耳にしっかりと届く音を立てて駅を出発した。
少し馬に似ているけど、体は鱗で覆われていてブルーハワイのかき氷を思わせる色をしている。
白から青へのグラデーションがキラキラしてて、ハイビスカスでも頭に付けたら「あっ、夏っぽい」という感じかな?
早い魔獣の獣騎程、気性が荒い場合が多いから近付いてはいけないらしい。
これは旅の前にルーファスとリュエールに散々、耳にオクトパ状態で聞いた事なので、近付かないでいよう。
でも、うにうにした触手の生えたナメクジっぽい馬車……あれは早いのか遅いのかが気になる……。
ジーッと見ていたら、「ビヒヒーン」とナメクジっぽい獣騎が嘶いて、予想外の馬っぽい声に「ひゃぁ!」と、声を上げて慌てて離れる。
「あれ? ルーファス?」
キョロキョロしていると、頭にぽふっと大きな手が乗る。
「アカリ、こっちだ。よそ見をしていると、攫われるぞ?」
「はぁーい」
黒いコートを着たルーファスに手を引かれ、腕に乗せられて抱き上げられる。
ルーファスが歩くたびに、私の耳からシャランと音が鳴り、迷子防止の耳飾りが揺れる。
黒い耳飾りは『刻』『狼』と左右の珠に金字で書いてあって、ルーファスにだけ聞こえる音を魔法で出している。
ついでに、手錠と鎖……は、付けられてる。
信用って大事だと思うんだけど、すでに馬車に夢中になってルーファスを見失いそうになっていたので、文句は言えそうにない。
一応、旅行前に改良はしてもらった……改良前の方がマシだった気がするけど。
私が首に巻いている黒いレースのチョーカーが手錠だった物で、鎖は魔法で消えているけどしっかりついているらしい。
人がこの鎖で邪魔されることは無いらしく、ルーファスが手首に巻いている黒いリングに魔力が通ると私のチョーカーの鎖が物体化して引き寄せられるらしい。
こういう無駄な物を作ったのは【刻狼亭】の魔道具造り部署、元々は時間移動の魔道具を作ってもらっていた人達が、最近は【風雷商】にも負けず劣らずの発明をし始めて……こうなってしまった。
「ルーファス、私、この世界の汽車初めて!」
「なら、余計にアカリから目を離せないな。直ぐに目を奪われてチョロチョロするからな」
「大丈夫だよ! 汽車は私の世界では普通に電車って言って、十分置きに行きかっていたんだから」
「馬車に目を奪われて迷子になりかけたのに、よく言う」
胡乱な目をするルーファスに、これは……申し開きも出来ない。
ルーファスの肩にグイグイと頭を寄せて、この位置からじっくりしっかり、この世界の汽車を見物するつもりである。
私とルーファスは今現在、観光地の魔法学園があるというベネティクタ都市に行く為に移動中だったりする。
朝早くに荷物いっぱいで出掛けようとして、ルーファスが手の平の鍵を出して、肩掛けカバンのみ残して全部荷物を収納してくれた。
その便利道具……あまりにも使わないから存在を忘れていたよ……私の悩みに悩んだ旅行カバンの衣服達、実は悩まなくても良かったという……ガックリである。
今回の私とルーファスは、黒コーデでペアルックだったりする。
黒いチョーカーに黒い耳飾りというのもあってね……黒服ばかりになったともいう。
温泉大陸を最速馬の獣騎に乗って、タンシム国を抜けると北方面にあるベネティクタ都市に向かう汽車が出ているので、それに乗る為に駅に来たのである!
日本の駅と違って、広さが全然違う。東京にある大きなコンサートホール何個分? という感じで……しかも、これは駅というより大きな樹をくり抜いて作られている様で、頭上には駅員の制服を着たドリアード族の人が木の枝を繋げた橋の上を歩き回っている。
「ふぁぁー、ルーファス、ドリアード族の人が多いね」
「ああ、ここは元々ドリアード族の森があった場所だからな」
「へぇー、あっ、綺麗なステンドグラス」
「樹の穴を利用して、ああして細工を施しているのも、この駅の特徴だな」
「あっ、写真撮りたい!」
「それは帰りにしろ。もう出発まで時間が無いぞ?」
「それは急がなきゃ! ルーファス、行こー!」
丸い木の板に乗っているドリアードの駅長さんに声を掛けて、汽車のチケットを見せると木の板が大きくなってスイーッと、自動で移動して汽車の席の近くまで送ってくれた。
汽車は銅板のような色をした鉱物で形が作られていて、中はフカフカした緑色の絨毯が敷いてあり、切り株のテーブルと長いクッションが置いてある四畳程の広さに両側に大きな丸い窓がついている。
これは寝そべって乗るタイプの汽車なのかな?
首を傾げると、ルーファスが下ろしてくれて、ぽよんとした絨毯は予想外で、踏み外して前のめりにコケそうになると、ルーファスが私の腰を持って支えてくれた。
「アカリは、本当に汽車に乗ったことがあるのか?」
「あるよ! でも、こんなフカフカじゃないし、もっと鉄って感じの……そう、馬車がいっぱいくっついている感じの長ーいのに乗ったりしてたんだよ」
ルーファスがコートを脱がせてくれて、備え付けの木の枝のコート掛けにカバンとコートを掛け、自分のコートも掛けている。それが終わると私を抱いて横になる。
「ふむ。異世界の汽車は乗り心地が悪そうだな」
「うーん、確かに。ずっと立ちっぱなしか、座ったままって感じかな? 人も乗り降り激しいし」
「まぁ、それならこの列車の旅を楽しむと良い」
「うん。電車でごろごろ横になるの初めて」
足をパタパタ動かして窓の外を眺めると、ドリアードの駅長さん達が人を汽車に乗せて頭に大輪のピンク色の鮮やかな花を咲かせると、電車はジリリンと低いけれど、耳にしっかりと届く音を立てて駅を出発した。
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