黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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24章

アルバム

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 朝食が終わり、ルーファスが持ち帰ってくれたアルバムを一冊出す。
真っ白なアルバムに金色の枠がしてあって『あかりちゃん』と達筆な筆書きで名前シールが貼ってある。
一番古い物。
開くと懐かしいお線香の匂いがする。
お祖母ちゃんのお部屋の匂い。アルバムはお祖母ちゃんの部屋にあったから、染みついちゃったんだよね。
 一ページ目は紙が貼って合って、小さな手形と足型がある。
生まれたばかりの私の手形と足型。
そう、私の生まれた時のアルバムなのである。
いきなり、家族写真を見る勇気が無いので、自分の子供時代からいくことにした。

「アカリ、この赤ん坊はアカリだろう?」
「うん。生まれたての私だよ。ちょっとスーちゃんの生まれた時の顔に似てるかな?」
「ああ。ミルア達の生まれた時の顔にも似ているな」

 赤ん坊を抱いて笑うセミロングの女性、お母さん。
若いなぁ……私を産んだ時は、実は大学三年生の時だったのでお母さんは一年休学して、産んだ後に大学を卒業する為に大学に通っていた。

 お父さんとお母さんは大学の先輩後輩で、大学四年生の時に一年生のお母さんに一目惚れしてお付き合いして……お父さんは卒業の日にお母さんに公開プロポーズして入籍したので、学生結婚なのである。
しかもお父さんは式場の予約とか色々してて、春休み中に結婚式も挙げてしまったのだ。
親戚中が「こっちの予定を考えろー!」と怒ったみたいだけど、お父さんはどうしてもお母さんにウエディングドレスを着て欲しかったらしい。
だから、順番としては結婚してからの妊娠と出産なのだけど、周囲は結構色々言っていたみたいで、お母さんは意地で大学に通い続けた。

 なので、私はお母さんが大学の時はお祖母ちゃんと一緒に居て、写真は大学と会社で家に居ないお母さんお父さんの為に、お祖母ちゃんが撮っていたのだ。だから、写真の文字はお祖母ちゃんの達筆な筆ペン文字が多い。

「アカリの母親はやはり、アカリに似ているな」
「ふふっ、母娘だからね」

 『食いしん坊あかりちゃん』
赤ちゃんの私が食べれもしない大きなメロンパンをべちゃべちゃに舐めている。しかも袋に入っているのを。
 『メロンパンを取られて泣くあかりちゃん』
先程のメロンパンをお祖母ちゃんに回収されて大泣きしているらしい。
本当に食いしん坊な子だったようだ。まだ私歯が生えてないでしょうに……。

「可愛いな。抱っこして擦り寄りたいぐらいだ」
「その子の四十四年後が目の前に居ますよー」
「ああ、変わらない可愛さだ」

 チュッと私のこめかみにキスをして、ルーファスはアルバムを楽しそうに一緒に見てくれる。
尻尾のパタパタ具合がたまにお尻と足に当たってくるのが半端ないけど。

 『あかりちゃんとムック』
赤ちゃんの私をお腹の上に乗せて身を丸めている大きなシベリアンハスキーのムック。
お母さんの愛犬で私が四歳の時に亡くなってしまったワンコである。

「この犬に嫉妬していると言ったら、笑うか?」
「ふふっ、ルーファスらしい。でも、もうずーっと前に亡くなってるんだよ?」
「そうなのか? まだ若そうだが」
「私が四歳の時に病気にかかっちゃったの」
「それは残念だったな。しかし、アカリを四年間独占していたのか……」
 
 私がルーファスのお腹に埋もれれ寝るのが好きなのは、このムックの思い出があるからかも?
お腹に埋もれて眠ると凄く安心するんだよね。

 『ミルクを飲むあかりちゃん』
お父さんに抱かれて哺乳瓶でミルクを飲んでいる赤ん坊の私。
お父さんの顔はへにゃっと笑っていて少しだらしない。お父さんも若いなぁ。

「この男は……アカリの父上だな」
「うん。お父さん。ルーファスの義父ですよー」
「リュエールの顔がアカリにも似ているがどこか違う感じがしたが、父上似でもあるんだな」
「そうかな? リューちゃんに似てるかなぁ?」
「ああ、シャルを抱いている時は大体同じ表情だから似ているのが分かるぞ」

 そういえば、同じ様な顔をしていたかも? そっかー、三野宮家の男性の血も流れていましたか。
私に似てるから、お母さんの血ばかりが受け継がれていると思ったけど、お父さんの血もちゃんと子供達に流れていたようだ。

 『あかりちゃんの入浴』
赤ちゃんの私がお風呂に入っているだけなのだけど、裸なわけで……ルーファス、なに顔を赤くしているんですか?
って、手で鼻を押さえるようなところなの!?

「コホンッ、ルーファス、赤ちゃんですよ?」
「いや、それはわかっている。ただ、番の生まれたままの姿のこんなところ、普通見れないしな」
「まぁ、確かに……この世界にカメラってまだ出回って無いですからねぇ」
「アカリの胸が小さい……」
「ルーファースゥ~、どこ見てるんですか? もぅ、赤ちゃんはみんなこんなものです」

 ルーファスの頬っぺたを摘まみながら、サッサと次のページをめくる。
私のお宮参りや、お雛様の写真もあって、ルーファスに「これが本当のお雛様です」と言うと、「随分と怖い人形だな」と言われてしまいました……うーん、お雛様は不評のようです。
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