黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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24章

おバカなワンコ

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 屋敷から貸家へ帰る道すがら、ルーファスと一緒に夕飯の食材を買いながら帰っていたら、珍しくリュエールとシュトラールの二人が野菜を大量に買い込んでいた。

 主にリュエールが買い、シュトラールが荷物を持っているような感じだ。
小さかった頃から顔の似ていない二人で、性格も違えば身長差も違う、仲も良いが、フィリアの時の家出以来、シュトラールはリュエールに隠し事は一切無しでやっている為に、リュエールに「そこまで言わないでいい」と、止められるくらいにはけなのだ。

「あら、リューちゃん、シューちゃんどうしたのー?」
「僕等は見習いの歓迎会用の鍋の具材を買いにね」
「二人で歓迎会の準備なのか?」
「他の従業員さんも一緒に労わなきゃだから、リューのお財布で買い物だよー」

 嬉しそうに尻尾を振る次男は、兄のこうした気遣いが出来るところを尊敬しているようで嬉しくて仕方がないようだ。うちの次男は、こうした自分の心を隠せない素直なところが美徳ではある。
逆に兄のリュエールは「そこまで言わなくていいの」と、恩着せがましくないように動こうとしているところが美徳である。
我が家の長男次男は、自慢の子達なのだ。

「そうなの。じゃあ……母上から従業員と見習いに、お鍋の後に入れるうどんでも提供しましょうか」
「なら、オレは肉でも買ってやろう」
「もぉー、母上も父上もいいってば。僕等も子供じゃないんだから自分達で買うってば」
「えー、いいじゃない? 折角、母上と父上が提供してくれるんだし、浮いたお金でお酒でも追加しようよ?」
「よし、そうと決まれば、母上は粉物屋さんでうどんを買ってきてあげる。シューちゃん、荷物持ちにいらっしゃい!」
「はーい。じゃあ、父上とリューは肉屋と酒屋よろしくねー」

 私とシュトラールが一緒に買い物に出かけると、「母上と買い物なんて久しぶりー」と嬉しそうに尻尾をブンブン振るシュトラールに、小さな頃のシュトラールを思い出す。
明るく元気で、少しおっちょこちょいな息子。
でも、人一倍優しい子で素直、そしてリュエールとは別の意味で勉強家で努力を惜しまない子。
まぁ、大型犬のお馬鹿なワンコのようで抜けているところは多々あるけど、そこも含めてシュトラールなのである。

「あら、大女将、大旦那様と随分買い込んだみたいだねぇ」
「いやだわ。もぅ、息子のシューちゃんですよぉ」

 お店の小母さんの勘違いに、笑いながら「ほら、右目が黒いでしょ」と言い、ルーファスとの違いを教える。
お店の小母さんが「あら、ほんとだ。シュー坊大きくなったねぇ」と言い、シュトラールがへらっと笑って頭を下げる。
 ルーファスとシュトラールの違いは、髪の毛の長さと右目の色と身長が四センチ高いのがシュトラール……と、いうくらいしか変わりがないかも?
まぁ、顔つきも多少は違うけど、似ているからパッと他人が見ただけじゃ分り辛いのもある。

 粉物屋さんでうどんを買い込み、シュトラールに持たせて宿舎へと向かいながら、色々話をする。
母子でも、離れて暮らしているから話題は早々に尽きない。フィリアちゃんやルビスちゃんのこと、今現在、シュトラールが冬の診療所に出張して、街の人々の治療をしていること。

「それにしても、シューちゃん背が伸びたよねぇ……ズルーい」
「母上は縮んだよねぇ」
「なっ!! 縮んでません! シューちゃんが伸びたの! 低くなれぇー低くなれぇーそして低くなった分、私に寄越せぇー」
「うわっ、なにその呪い。あはは、でも、オレまだ身長伸びてるからなぁ」
「なっ! そんな馬鹿なっ! ルーファスの遺伝子なの!? トリニア一族めぇえぇぇ!」
「いや、母上もトリニア一族でしょ……」

 ううっ、確かに以前に増してシュトラールの身長が伸びた様な? でも二十歳超えれば伸びないんじゃないの? いや、確か……二十四歳まで伸びるとか芸能人が喋っていたような……?

「母上は身長こだわるねぇ」
「だって身長低い私だと色々出来ないことあるんだもん!」
「ああ、目合まぐあう時に出来ない体位とかありそうだねー」
「なっなっ!! なんてこと言うのー!!! シューちゃんのスケベ! エッチ! 母上はシューちゃんをそんなふしだらな子に育てた覚えはありませんよー!!!」

 うちの子が堂々と破廉恥ハレンチな発言を! ここまで明け透けに喋るのはどうかと思うの!
私はこの世界の建物とか、台所とか色んな家具が背の高いこの世界の人達基準だから大変だって言ってるのに!
ポカスカとシュトラールの背中を叩きながら、シュトラールが尻尾で私の腕をパシパシと叩き返して笑う。

「まぁまぁ、母上。でもね、冬場に結構そういう悩みとか診療所に相談多いんだよ? 蜜籠り時期とか踊り子さんが多い時期だしね」
「そうなの? どういう感じなの?」
「そうだなぁ、母上の場合だと父上の性器を舐める時に父上は母上の性器に触れなかったりしない?」
「はうっ!? にゃにゃなっ!」
「手は届かないし、母上が父上の上に跨って顔の方へお尻を向けても、父上が寝っ転がってだと母上の性器には舌は届かないし、顔を上げてもかなりキツイよねー」
「なっなっ!!」
「まぁ、こればかりは諦めるしか無いだろうけど、逆に出来る体位を考えたら、母上と繋がったまま持ち上げられるし、体位も変えやすいしね。男性にとっては……って、痛っ!」

 スパーンッとシュトラールの後頭部に後ろからリュエールの平手が入り、ルーファスが額に手を当てていた。

「シュー! そういう明け透けなことをペラペラ言わないっ! 下品」
「ハァー、シュー……お前はもう少し言葉と会話を選べ」

 頬を赤くして怒るリュエールと、眉間にしわを寄せて溜め息を吐くルーファス。
二人も買い物が終わった様で、いつの間にか後ろに居た様だ。恥ずかしい会話を聞かれてしまった。
主にシュトラールが悪い。うん。絶対シュトラールのせい!

「えへへー。オレはただ、母上が身長低いと色々出来ないことがあるって言うから」
「シュー、それ、母上は道具が無いと棚に手が届かないとか、日常系の話だよ」
「えー、そうなのー?」
「そうだよ! シューちゃんのバカバカ! 不埒者ふらちもの!」

 ううっ、うちの次男はやっぱり大型犬のお馬鹿なワンコかもしれない。
シュトラールに全部荷物を持たせて、リュエールに怒られつつシュトラールは宿舎の方へ入っていく。

「まったく、シューは……困った奴だ」
「はぅぅ~、シューちゃんの育て方を間違えましたぁ~」
「あれで一児の父親なのだからなぁ……ルビスに変なことを覚えさせないように言い聞かせておかないとな」
「シューちゃんだからねぇ……フィリアちゃんにもしっかり教育してもらわなきゃ」
「全くだな」

 ルーファスに抱き上げて貰って「恥ずかしかった」と、肩に顔を埋めると頭を撫でられて「あれは仕方のない息子だな」と慰められつつ、私達も夕飯の買い出しの続きをするのだった。 
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