黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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24章

氷の従者

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 私達三人で大広間に向かう最中、ペテロピの言うように私を探していた見習いが居て「アンタのせいで失格になったら、許さないから!」と言われたり、掴みかかって来ようとした見習いをグリムレインが壁に押さえつけたりで……本当に、ルーファスが護衛にグリムレインを呼んでくれて良かった。

「嫁、帰りにあの店に寄っていかんか?」
「そうだねぇ、無事に終わったら、スーちゃんも連れて行ってみようか?」
「うむ! 直ぐに終わるといいのぅ!」

 肉鍋屋さんを見て、ウキウキしているグリムレインに私も笑って、多分、私の見習い期間もこれで終わりかな? と思っている。
本当は一ヶ月くらいやっているつもりだったんだけど、今回のことでかなりの人数が見習いでは無くなってしまうから……少し、それは残念だ。

 グリムレインとは反対側にペテロピが居るのだけど、少し困惑している様で曖昧あいまいに笑いながら一緒に歩いている。
まぁ、見習いに来るような人で従者を連れている人は珍しいというか……従者って、基本、相当の覚悟と忠誠がないと契約しないものだからね。
グリムレインの場合は私がうっかりで契約してしまったのだけどね……呪いに掛かっていたグリムレインに【聖域】を使ってあげようと思って、手っ取り早く血を使ったら、契約完了してしまい、以来、ずっと私の従者のままなのだ。

「嫁、寒くないか?」
「うん。大丈夫だよ。グリムレインは少し熱いんじゃない?」
「うむ。ここらは足湯で地面が熱いからの。まぁ、足湯を凍らせて良いならいつでも凍らすんだがの」
「それはしちゃ駄目でーす」
「あの、ミヤ……なんでこの人、嫁って言ってるの? 旦那さん……じゃないよね?」
「婿の嫁だから嫁だ。嫁の婿だと名乗ったら、婿に殺されてしまう」

 グリムレインが氷色の髪を揺らして、首を振る。
でも、グリムレイン、それじゃ説明になってないと思うよ?
ペテロピは案の定、混乱した顔をしている。

「私の旦那様は事務所に居るルーフですよ」
「ええ!? 夫婦で応募して見習いになっていたの?」
「うん。だから、ルーフは大丈夫だって言ったでしょ?」
「あー、うん。あっ、じゃあウチ、ミヤの旦那さんをヤバい人扱いしてたんじゃん! ごめんね!」

 両手を合わせて謝るペテロピに、「気にしないの」と笑う。
内緒にしていたのはこちらの方だし、ペテロピの言う通り、ルーファスは体付きが良いし冒険者としてはヤバい部類に入ってしまうと思う。

 旅館の大広間に着くと、少しざわつきながら見習い達が集まっている。
クミンと目が合うと、あの子は少し勝ち誇ったような顔をしていて、他の見習いの子にコソコソと話をして、他の見習いの子がクミンを庇うように私から隠す。

「クミン、大丈夫だよ。あんな子、今日で終わりだよ」

 そう慰める見習いに、クミンが泣きながら「うん、でもミヤも悪気があるわけじゃないのよ……もしかしたら、何か理由があるのかも……」と、私をかばってくれる親切さで、私も涙が出そうです。欠伸が出た時の涙程度だけど。

 フンッと私も顔をクミンから背けると、真後ろに居たグリムレインに「嫁がおかしな顔をしている」と、頬っぺたをぷにぷにされて揶揄からかわれてしまう。
 いつものドラゴンの姿じゃないから、人の手だと爪が氷色でキラキラしてて意外と綺麗なのが少し羨ましい。

「ん? なんだ?」
「その爪綺麗だなぁって」
「なら嫁の爪にもやってやろうか? 凍傷で指先が無くなるかもしれんが」

 高速で首を横に振る。デンジャーな従者め! 一度きりのお洒落の為に指先を無くしたくはない!!
大広間に他の従業員も集まり始め、マグノリアさんが小鬼ちゃん達を連れて入ってきた。
シュトラールとルーファスも入って来て、ルーファスが私の方を見て小さく笑うと真っ直ぐ私の方へ来る。

「大丈夫だったか?」
「我が護衛しておるのだ。大丈夫に決まっておる」
「ふふっ、大丈夫。護衛を寄越してくれて、ありがとうね」
「ああ。ミヤの安全が一番大事だからな。お前も悪かったな」
「礼なら後で、嫁とも言っていたのだが、肉鍋屋に行くことだの」
「わかった。スー達も連れて行ってやろう」

 これで肉鍋屋さんに行くことは決定事項のようだ。
終わったら美味しいお肉を食べれるのを自分のご褒美に反撃開始である。

「みんな揃ったね。見習いの間で小鬼見習いへの薬物使用が判明した。そのことについて緊急招集をかけた。忙しいのに悪いね」

 リュエールの言葉に何人かの見習いが私の方を睨みつける。

「まずは、今から呼び出された人達は前に来て欲しい」

 「ミヤ」と、一番最初に呼ばれて、私が前に移動していると足を引っ掛けられて、転びそうになるのを後ろからついてきたグリムレインが腰に手を伸ばして助けてくれる。

 クスクス笑う声にムカッとして、睨みつけるとグリムレインが笑った見習い達の鼻の穴に氷を飛ばしていて、思わず「ブフッ」と笑ってしまって、妙なツボに入ってしまい……それは他の従業員のツボにも入ったみたいで、一番ウケていたのが笑いの沸点が低いシュトラールだった。
前かがみになってお腹を押さえて笑っていた。
ああ、もう、グリムレインやり過ぎだけど、ナイス!
肉鍋屋さんでデザートも大盛りで付けちゃおう!
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