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24章
見習いドッキリ作戦
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冬の湯治でお客さんが混み合う前に、見習いさん達が来るということで私は小鬼の子供達を【刻狼亭】に預けた後で、従業員達に「ミヤさん」と呼ばれている。
「いやぁー、大女将って呼び名に慣れてきたところだから、むず痒いですね」
「ほら、みんな練習ですよ! 私のことは特別扱いしない!」
髪の毛もオパール色の冒険者ミヤのスタイルでエッヘンと腰に手を当てる。
実は見習いの人達の性格を見る為にも、何人か従業員が見習いとして紛れ込んでいるのである。
私もその一人で、ルーファスも金髪に染めて見習いに扮装している。
人手が足りなかったのもあるし、私は人になめられやすいのもあるから、リュエールが「母上は絶対参加で」と言い、心配したルーファスも参加すると言い、スクルードはハガネが冬眠返上で見てくれることになった。
顔でバレるといけないので、ミルアとナルアは休業予定だったお店へ店番として出ているので、バレる心配は無いだろう。
黒狼族はうちの家族だけなので、すぐに身バレしちゃうしね。
私に似てるリュエールに見習いが会うことなんてほぼ無いだろうから、そこは心配がない。
ルーファスに似ているシュトラールは、テンが事務に帰ってきたので、冬場は街で医療班として診療所に勤務しているし、エルシオンはティルナール達が魔国から帰ってきたら、ギルさんが貴族界のパーティーに連れ回すとかで数日後には温泉街から旅立ってしまう。
「それにしても、アカリはどこに行っていたんだ?」
「小鬼ちゃん達をお迎えに港にケルチャと一緒に行ってたの」
「一人でウロチョロしないのは良いが、スーが昼寝から起きてピィピィ泣いて大変だったぞ」
「あらら。ぐっすり寝てたから大丈夫だと思ったんだけどなぁ」
リュエールが現れて従業員達を見渡す。
「みんな集まってもらってごめんね。明日からの動きに関してミーティングするよ」
「「「はい!」」」
ベテランの従業員達は統率のとれた返事をして、悪戯前の子供のような顔をしている。
私もその一人だけど、ドッキリ企画みたいで少しワクワクもしている。
「流石に小鬼の子供をみんなにも付ける訳にはいかないから、見習いより二ヶ月前に見習いに入った新人だと説明を見習いにはするからね」
「それなら多少手慣れてても誤魔化せますしね」
「うん。そうだよ。ああ、そうそう。【刻狼亭】で雇うから、見習いもそれなりに腕っぷしはあるだろうから、再起不能にならない程度の小突き合いで済ませてね」
「それはどうだろうなー?」
「一番それを気を付けなきゃいけないのは大旦那だな」
「ああ、違いない! 手加減下手だからな大旦那は」
ドッと笑って、従業員がルーファスを冷やかしつつも、私もルーファスは見習い仕事なんて出来るのかな? と小首を傾げて見上げる。
「オレは事務所の書類担当だ。配膳だの掃除だのはせんぞ? 見習いと小突き合う必要もない」
「そうそう。父上には、見習いに書類をたっぷり押し付ける嫌味な上司を僕が演じてあげますからね」
「なっ! リュー!?」
リュエールが笑顔で、この祭ルーファスをこき使う気でいるのは目に見えている。
うちの長男はそういう子だということを私はよぉーく知っていますよ。
そして見習いは上司に押し付けられた仕事をやらされて、残業させられるものだよ……。
「見習い教育には料亭はシュテンとテンにフリウーラ。旅館はネウロとピルマーにシレーヌが担当になるから、みんな挨拶は丁寧にを心掛けてね」
「「「はい!」」」
少しの油断もしてはいけない。見習い期間が終わった最後に、ネタバラしで「あー、挨拶の仕方がなんか気易かったもんなー」とか言われない様にキチンと演技しておきたいところです。
「もう温泉大陸の人達にも、見習いの羽織を着ている中に従業員が居ても、変に声を掛けないように言ってあるからね。こちらからも気を付けるように!」
「「「了解です!」」」
街の人達にもご協力いただけるのは有り難いことでもあるし、温泉大陸の【刻狼亭】というブランドでお客さんが来ているのもあるから、【刻狼亭】の従業員になるかもしれない人達を、住民全体で見極めるのも必要なことでもある。
「一応、後ろに変な国や商売人の間者では無さそうな人材を集めたつもりだけど、少しでも怪しいと思ったら、直ぐに連絡するように!」
「「「はい」」」
「明日から見習いが入ってきますが、小鬼達の見習いは既に入国してるから気付かれないようにね。見習い用の羽織を持って、今日は解散にします。明日から頑張ろうね! では、お疲れ様です!」
「「「お疲れ様です!」」」
それぞれ見習い用の羽織を手に持って、旅館の大広間から出て行く。
私とルーファスは見習い期間中は貸家住まいなので、今日から平屋の一軒屋で過ごすことになる。
さすがに【刻狼亭】の斜め横の屋敷に帰るのはバレ過ぎるからね。
スクルードが心配ではあるけど、ミルアとナルアにハガネ、冬眠に入るまではドラゴン達も面倒を見てくれるはずだ。
いざとなれば移動魔法で屋敷の中に入り込むつもりでもある。
「さて、ここが今日からオレ達の住まいだな」
「こじんまりしてて懐かしい感じ」
玄関を入って直ぐに台所があって、トイレと浴室もこの部屋のようだ。
奥の部屋は和室が二部屋で、小さい縁側に庭付き。元の世界だと、これなら家賃五万か六万くらいかな?
「荷物も、もう入っているな」
「お布団にちゃぶ台に食器類くらいだけどね」
ルーファスにお姫様抱っこで持ち上げられると「新婚みたいだろ?」と言われる。
確かに家具の少なさとか、これから二人で物を集めて自分達の家を作っていく感じではあるかも?
「よろしくお願いしますね。旦那様?」
「ああ、今日からよろしくな。奥さん」
二人で笑いながら口づけを交わして部屋の中に入る。
「これから、見習い生活の始まりだねー」
「その前に、家に帰ってきたら新婚生活といこうか?」
「えっ!?」
ルーファスが持ち込んでいた荷物の中に、つい先日、製薬部隊の露店で買い占めて破棄した桃味のエロエロになっちゃう疲労回復ポーションが出てきたことに私は戦慄を覚えたのだった。
「いやぁー、大女将って呼び名に慣れてきたところだから、むず痒いですね」
「ほら、みんな練習ですよ! 私のことは特別扱いしない!」
髪の毛もオパール色の冒険者ミヤのスタイルでエッヘンと腰に手を当てる。
実は見習いの人達の性格を見る為にも、何人か従業員が見習いとして紛れ込んでいるのである。
私もその一人で、ルーファスも金髪に染めて見習いに扮装している。
人手が足りなかったのもあるし、私は人になめられやすいのもあるから、リュエールが「母上は絶対参加で」と言い、心配したルーファスも参加すると言い、スクルードはハガネが冬眠返上で見てくれることになった。
顔でバレるといけないので、ミルアとナルアは休業予定だったお店へ店番として出ているので、バレる心配は無いだろう。
黒狼族はうちの家族だけなので、すぐに身バレしちゃうしね。
私に似てるリュエールに見習いが会うことなんてほぼ無いだろうから、そこは心配がない。
ルーファスに似ているシュトラールは、テンが事務に帰ってきたので、冬場は街で医療班として診療所に勤務しているし、エルシオンはティルナール達が魔国から帰ってきたら、ギルさんが貴族界のパーティーに連れ回すとかで数日後には温泉街から旅立ってしまう。
「それにしても、アカリはどこに行っていたんだ?」
「小鬼ちゃん達をお迎えに港にケルチャと一緒に行ってたの」
「一人でウロチョロしないのは良いが、スーが昼寝から起きてピィピィ泣いて大変だったぞ」
「あらら。ぐっすり寝てたから大丈夫だと思ったんだけどなぁ」
リュエールが現れて従業員達を見渡す。
「みんな集まってもらってごめんね。明日からの動きに関してミーティングするよ」
「「「はい!」」」
ベテランの従業員達は統率のとれた返事をして、悪戯前の子供のような顔をしている。
私もその一人だけど、ドッキリ企画みたいで少しワクワクもしている。
「流石に小鬼の子供をみんなにも付ける訳にはいかないから、見習いより二ヶ月前に見習いに入った新人だと説明を見習いにはするからね」
「それなら多少手慣れてても誤魔化せますしね」
「うん。そうだよ。ああ、そうそう。【刻狼亭】で雇うから、見習いもそれなりに腕っぷしはあるだろうから、再起不能にならない程度の小突き合いで済ませてね」
「それはどうだろうなー?」
「一番それを気を付けなきゃいけないのは大旦那だな」
「ああ、違いない! 手加減下手だからな大旦那は」
ドッと笑って、従業員がルーファスを冷やかしつつも、私もルーファスは見習い仕事なんて出来るのかな? と小首を傾げて見上げる。
「オレは事務所の書類担当だ。配膳だの掃除だのはせんぞ? 見習いと小突き合う必要もない」
「そうそう。父上には、見習いに書類をたっぷり押し付ける嫌味な上司を僕が演じてあげますからね」
「なっ! リュー!?」
リュエールが笑顔で、この祭ルーファスをこき使う気でいるのは目に見えている。
うちの長男はそういう子だということを私はよぉーく知っていますよ。
そして見習いは上司に押し付けられた仕事をやらされて、残業させられるものだよ……。
「見習い教育には料亭はシュテンとテンにフリウーラ。旅館はネウロとピルマーにシレーヌが担当になるから、みんな挨拶は丁寧にを心掛けてね」
「「「はい!」」」
少しの油断もしてはいけない。見習い期間が終わった最後に、ネタバラしで「あー、挨拶の仕方がなんか気易かったもんなー」とか言われない様にキチンと演技しておきたいところです。
「もう温泉大陸の人達にも、見習いの羽織を着ている中に従業員が居ても、変に声を掛けないように言ってあるからね。こちらからも気を付けるように!」
「「「了解です!」」」
街の人達にもご協力いただけるのは有り難いことでもあるし、温泉大陸の【刻狼亭】というブランドでお客さんが来ているのもあるから、【刻狼亭】の従業員になるかもしれない人達を、住民全体で見極めるのも必要なことでもある。
「一応、後ろに変な国や商売人の間者では無さそうな人材を集めたつもりだけど、少しでも怪しいと思ったら、直ぐに連絡するように!」
「「「はい」」」
「明日から見習いが入ってきますが、小鬼達の見習いは既に入国してるから気付かれないようにね。見習い用の羽織を持って、今日は解散にします。明日から頑張ろうね! では、お疲れ様です!」
「「「お疲れ様です!」」」
それぞれ見習い用の羽織を手に持って、旅館の大広間から出て行く。
私とルーファスは見習い期間中は貸家住まいなので、今日から平屋の一軒屋で過ごすことになる。
さすがに【刻狼亭】の斜め横の屋敷に帰るのはバレ過ぎるからね。
スクルードが心配ではあるけど、ミルアとナルアにハガネ、冬眠に入るまではドラゴン達も面倒を見てくれるはずだ。
いざとなれば移動魔法で屋敷の中に入り込むつもりでもある。
「さて、ここが今日からオレ達の住まいだな」
「こじんまりしてて懐かしい感じ」
玄関を入って直ぐに台所があって、トイレと浴室もこの部屋のようだ。
奥の部屋は和室が二部屋で、小さい縁側に庭付き。元の世界だと、これなら家賃五万か六万くらいかな?
「荷物も、もう入っているな」
「お布団にちゃぶ台に食器類くらいだけどね」
ルーファスにお姫様抱っこで持ち上げられると「新婚みたいだろ?」と言われる。
確かに家具の少なさとか、これから二人で物を集めて自分達の家を作っていく感じではあるかも?
「よろしくお願いしますね。旦那様?」
「ああ、今日からよろしくな。奥さん」
二人で笑いながら口づけを交わして部屋の中に入る。
「これから、見習い生活の始まりだねー」
「その前に、家に帰ってきたら新婚生活といこうか?」
「えっ!?」
ルーファスが持ち込んでいた荷物の中に、つい先日、製薬部隊の露店で買い占めて破棄した桃味のエロエロになっちゃう疲労回復ポーションが出てきたことに私は戦慄を覚えたのだった。
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