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23章
オセロ
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また雨が降り始め、今年の夏は雨が多いと思いながら、少し気温の下がった部屋でスクルードと子供用のオセロで遊んでいる。
ルーファスがスクルードに作ってくれた物で、木で作ってあるクロとフェネシー形をした駒をしている。
スクルードが誤飲しないように、立体で作ってあるところがルーファスの優しさだと思う。
「ははうーのばん」
「アカリ、何処に置く?」
私は指で升目を指さすと、ハガネが駒を置いてくれる。
私が置いた駒で、クロの駒はフェネシーの形に変化する。実はこれ、魔法が掛けてある玩具で、割りと高度な魔法らしいけど、ルーファスはまだ実験段階と言っていて、玩具などに使っている。
魔力が上がった事で、ルーファスの新しい魔法がこの変化魔法なのだけど、まだ大掛かりな物は無理らしい。
ちなみに、この玩具は孫のレーネルくんとルビスちゃんにも作ってあげているから、世界に3つある玩具といえる。
そのうち温泉鳥のオセロを作って売り出せないかと、私はひそかに思案していたりする。
「あうー、うーっ、うー……」
「ほれ、スー頑張って考えろ。まだ手はあんぞ」
クロの駒を持ってスクルードが眉間にしわを寄せて口を尖らせ、助けを求める目を私に向ける。
いつもならば、ルーファスと一緒にオセロで遊んでいて、スクルードにアドバイスして助けるのは私の役目だから、スクルードは困ると私を見る癖がついている。
「お邪魔しまーす!」
玄関で声がして、大広間にキリンちゃんがシャルちゃんとレーネルくんを連れてやってくる。
「おう、いらっしゃい。茶でも淹れるから、座っててくれ」
「はーい。ありがとうございます。あっ、お茶ならいいお茶持ってきたので、淹れさせてください!」
ハガネを追うようにキリンちゃんがシャルちゃんを大広間のベビーベッドに置くとついて行く。
「おばあさま、こんにちは。スーちゃん、オセロ?」
「うー! れーね!」
私は小さく頷いて、「いらっしゃい」と微笑む。
スクルードはレーネルくんにタックルしながら抱きついて、尻尾をブンブン振ってスリスリと頬を摺り寄せ、頭をコツコツと合わせている。
狼族同士の挨拶なので攻撃しているわけでは無い。
「れーね、これかてる?」
オセロを指さしてスクルードがレーネルくんに助けを求める。
まぁ、一歳半の子供にオセロは少し難しい気もするから助けを求めるのはいいけれど、たまには自分で考えることをしていけば、頭の運動にはならないのでは? と、私は思う。
「そうだねー。んーっ、ここかな?」
レーネルくんが升目を指さして、スクルードが升目の上にクロの駒を置くと、パタンパタンと音を立ててフェネシーの駒がクロに変わる。
「れーねすごい! すごいねー」
「えへへ。ぼくも同じのもってるからね」
パチパチと手を叩くスクルードに照れながら、レーネルくんが私に「おばあさまはどこにおきますか?」と聞いてきてくれる。
私が指で升目を叩くと。レーネルくんが升目にフェネシーの駒を置いてくれる。
「お義母さん、お茶がはいりましたよ。レーネル、スーくん、遊びはいったん中止ね。テーブルの上を片付けて」
「はーい。スーちゃん、またあとでやろうね」
「あい! スーもあとー」
レーネルくんがオセロのボードを片付け、テーブルの上に木のコップに蓋がついてストローのさしてある物が三つ置かれ、もう三つはガラスのコップに入っている。
「ははうー、どーじょ」
木のコップを私の方へ持ちあげて、スクルードが私の口にストローを入れてくれる。
いつもはルーファスがしてくれることを、ちゃんと見ていたようでルーファスが居ない間はスクルードはこんな感じで私を手助けしようとしてくれる。
将来、好きな子が出来たら、きっとこの甲斐甲斐しさはモテる要素になると思う。
狼族はただでさえ、好きな人には尽くしてしまう種族だから、プラスになることは間違いない。
「スー、偉ぇーぞ。ちゃんと母ちゃんを補助出来るのはモテる男の秘訣だぜ」
ハガネが私と同じことを口にしてスクルードの頭を撫でる。
「キリンお義姉様、いらっしゃい」
「お邪魔してるよ。ルーシーも一緒にお茶しようよ。新作のお菓子が『もんふぇ』さんで売ってたから買ってきたよ」
「本当ですか! 食べます!」
小さな頃からキリンちゃんにお世話になっているせいか、ルーシーはキリンちゃんには懐いていて、キリンちゃんも砕けた喋り方で接している。
ルーシーはルーファス達に置いて行かれたのだとキリンちゃんに話して、キリンちゃんが困った顔で「仕方ないよー」と笑っている。
「大旦那や、他の兄姉は体を鍛えてるけど、ルーシーはそうじゃねぇからな。本気での戦闘じゃギリギリ、ティルナールも邪魔になるぐらいなのに、ルーシーまでもは手が回らねぇだろ」
「わたし、それなりに強いよ?」
「それなりじゃ、駄目だっつーの。エルシオンは毎日、大旦那に鍛えられてるから戦闘は出来る。でもルーシーは素人が素人相手に自分は強いって、言ってんのと同じだ」
「でも、わたしは狼族だから……」
「狼族でも鍛えてなきゃ、そこらの獣人と大差ねぇ。それにな、アカリの世話をするのに俺だけじゃ手が回らねぇし、スーの世話もある。家族の誰かが必要なんだよ」
「……わたしだって、母上の役に立ちたいのに……」
「だから、アカリの側に居てやれって、言ってんだよ。他の家族が側に居ない今、アカリの側に居て安心させてやれんのは家族のお前の役目だろ?」
私としては家族に迷惑を掛けていて、居たたまれない話なのだけど、ハガネは私にもルーシーにも言い聞かせるように話して、「家族は大事にしねぇとな」と話をまとめてニッと白い歯を見せて笑う。
ルーファスがスクルードに作ってくれた物で、木で作ってあるクロとフェネシー形をした駒をしている。
スクルードが誤飲しないように、立体で作ってあるところがルーファスの優しさだと思う。
「ははうーのばん」
「アカリ、何処に置く?」
私は指で升目を指さすと、ハガネが駒を置いてくれる。
私が置いた駒で、クロの駒はフェネシーの形に変化する。実はこれ、魔法が掛けてある玩具で、割りと高度な魔法らしいけど、ルーファスはまだ実験段階と言っていて、玩具などに使っている。
魔力が上がった事で、ルーファスの新しい魔法がこの変化魔法なのだけど、まだ大掛かりな物は無理らしい。
ちなみに、この玩具は孫のレーネルくんとルビスちゃんにも作ってあげているから、世界に3つある玩具といえる。
そのうち温泉鳥のオセロを作って売り出せないかと、私はひそかに思案していたりする。
「あうー、うーっ、うー……」
「ほれ、スー頑張って考えろ。まだ手はあんぞ」
クロの駒を持ってスクルードが眉間にしわを寄せて口を尖らせ、助けを求める目を私に向ける。
いつもならば、ルーファスと一緒にオセロで遊んでいて、スクルードにアドバイスして助けるのは私の役目だから、スクルードは困ると私を見る癖がついている。
「お邪魔しまーす!」
玄関で声がして、大広間にキリンちゃんがシャルちゃんとレーネルくんを連れてやってくる。
「おう、いらっしゃい。茶でも淹れるから、座っててくれ」
「はーい。ありがとうございます。あっ、お茶ならいいお茶持ってきたので、淹れさせてください!」
ハガネを追うようにキリンちゃんがシャルちゃんを大広間のベビーベッドに置くとついて行く。
「おばあさま、こんにちは。スーちゃん、オセロ?」
「うー! れーね!」
私は小さく頷いて、「いらっしゃい」と微笑む。
スクルードはレーネルくんにタックルしながら抱きついて、尻尾をブンブン振ってスリスリと頬を摺り寄せ、頭をコツコツと合わせている。
狼族同士の挨拶なので攻撃しているわけでは無い。
「れーね、これかてる?」
オセロを指さしてスクルードがレーネルくんに助けを求める。
まぁ、一歳半の子供にオセロは少し難しい気もするから助けを求めるのはいいけれど、たまには自分で考えることをしていけば、頭の運動にはならないのでは? と、私は思う。
「そうだねー。んーっ、ここかな?」
レーネルくんが升目を指さして、スクルードが升目の上にクロの駒を置くと、パタンパタンと音を立ててフェネシーの駒がクロに変わる。
「れーねすごい! すごいねー」
「えへへ。ぼくも同じのもってるからね」
パチパチと手を叩くスクルードに照れながら、レーネルくんが私に「おばあさまはどこにおきますか?」と聞いてきてくれる。
私が指で升目を叩くと。レーネルくんが升目にフェネシーの駒を置いてくれる。
「お義母さん、お茶がはいりましたよ。レーネル、スーくん、遊びはいったん中止ね。テーブルの上を片付けて」
「はーい。スーちゃん、またあとでやろうね」
「あい! スーもあとー」
レーネルくんがオセロのボードを片付け、テーブルの上に木のコップに蓋がついてストローのさしてある物が三つ置かれ、もう三つはガラスのコップに入っている。
「ははうー、どーじょ」
木のコップを私の方へ持ちあげて、スクルードが私の口にストローを入れてくれる。
いつもはルーファスがしてくれることを、ちゃんと見ていたようでルーファスが居ない間はスクルードはこんな感じで私を手助けしようとしてくれる。
将来、好きな子が出来たら、きっとこの甲斐甲斐しさはモテる要素になると思う。
狼族はただでさえ、好きな人には尽くしてしまう種族だから、プラスになることは間違いない。
「スー、偉ぇーぞ。ちゃんと母ちゃんを補助出来るのはモテる男の秘訣だぜ」
ハガネが私と同じことを口にしてスクルードの頭を撫でる。
「キリンお義姉様、いらっしゃい」
「お邪魔してるよ。ルーシーも一緒にお茶しようよ。新作のお菓子が『もんふぇ』さんで売ってたから買ってきたよ」
「本当ですか! 食べます!」
小さな頃からキリンちゃんにお世話になっているせいか、ルーシーはキリンちゃんには懐いていて、キリンちゃんも砕けた喋り方で接している。
ルーシーはルーファス達に置いて行かれたのだとキリンちゃんに話して、キリンちゃんが困った顔で「仕方ないよー」と笑っている。
「大旦那や、他の兄姉は体を鍛えてるけど、ルーシーはそうじゃねぇからな。本気での戦闘じゃギリギリ、ティルナールも邪魔になるぐらいなのに、ルーシーまでもは手が回らねぇだろ」
「わたし、それなりに強いよ?」
「それなりじゃ、駄目だっつーの。エルシオンは毎日、大旦那に鍛えられてるから戦闘は出来る。でもルーシーは素人が素人相手に自分は強いって、言ってんのと同じだ」
「でも、わたしは狼族だから……」
「狼族でも鍛えてなきゃ、そこらの獣人と大差ねぇ。それにな、アカリの世話をするのに俺だけじゃ手が回らねぇし、スーの世話もある。家族の誰かが必要なんだよ」
「……わたしだって、母上の役に立ちたいのに……」
「だから、アカリの側に居てやれって、言ってんだよ。他の家族が側に居ない今、アカリの側に居て安心させてやれんのは家族のお前の役目だろ?」
私としては家族に迷惑を掛けていて、居たたまれない話なのだけど、ハガネは私にもルーシーにも言い聞かせるように話して、「家族は大事にしねぇとな」と話をまとめてニッと白い歯を見せて笑う。
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