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23章
温泉街の氷祭り4
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ザクザクと土を鍬で耕しながら、額に浮かんだ汗を拭って小さなミッカの苗木を植える作業を繰り返すルーファスを横目に、私は畑で鈴生りに実ったトゥートを籠の中へもいで収穫している。
ここは旧女将亭の畑で、私は相変わらず子供達から「氷が出来るまでは母上は外出禁止」と言われてしまい、完成までは1週間かかるみたいで……それまで暇なので、温泉街とは正反対にある街から離れた旧女将亭の畑仕事に精を出すことにした。
勿論、街中は見ては駄目のようなので移動魔法で来た。
「アカリ、ミッカの苗木はそろそろ全部植え終わるぞ」
「はーい。じゃあ、飲み物を用意するから休憩しましょうか」
この畑は元々、土竜ニクストローブの遺体が卵孵りした時に出た土で出来ている為に、土竜の祝福たっぷりな上に魔獣の王の魔石で魔力も豊富とあって、非常に植物の育ちが良い。
ミッカの果樹園とハーブ園、そして野菜畑を作っていて、いつかはココで老後を過ごそうとしている私達の自給自足畑である。
女将亭の中はもうアルビーによって一階部分は酒屋と化しているけど、二階部分は相変わらずの元の生活空間のまま。二階に上がって冷たい麦茶とお茶うけにキュウリのピクルスを持って、また一階へ降りる。
酒屋のバーカウンターの椅子に座っているルーファスにお茶とピクルスを出して、私も椅子に座ってキューッとお茶を飲み干す。
「ふぅー、暑いから喉カラカラだね」
「お疲れ様。アカリは体が弱いのだから、しっかり水分を補給しておけ」
「体が弱いのは病気とかにだけだよ~」
「オレ達に比べたら弱すぎていつも心配になる」
「ふふっ、獣人に比べたら人族は弱いけど、大丈夫だよー」
キュウリのピクルスをポリポリと食べて、お酢の酸っぱさに両頬がキューッと痛くなる。
今年のピクルスもよく出来ている。このキュウリもこの畑の物で、浅漬けにしたり、お味噌に付けて食べたりと色々しているのだけど、ぬか漬けとかピクルスが一番長持ちな感じである。
キュウリは体の火照りをしずめてくれるから夏に食べるのはおススメ食材なので、食べきれない分は従業員さんやご近所に配っている。
「休憩したら私はトゥートのコンポートとトマトソースを作るね」
「あまり無理するな」
「無理はしてないけど、トゥートは毎日大量に出来上がるから、早めに料理して瓶詰めにしないと実が割れちゃうからね。時間との勝負なの」
「なら、オレがトゥートを収穫してくるから、アカリはここで料理に精を出してくれ」
「わぁ、ありがとう! 流石、頼りになる旦那様! 枝豆とトウモロコシも収穫お願いね」
ルーファスが麦茶を一気に飲み干して、「行ってくる」とキスをすると籠を持って出て行く。
こういうのをスローライフというのかな?
「よし、私も頑張ろう!」
トゥートのヘタを取って、上部分にバツ印をナイフで薄く入れていく作業をして、お湯にサッと潜らせると薄皮がスルッと剥けていく。
トゥートの皮を剥いた物をお鍋にいっぱい入れて弱火でぐつぐつさせている間に、少し小さめのトゥートも同じように皮を剥き、お砂糖とワインで煮込む。
これはワインのお酒が揮発したら火を止めて、レモーネの果汁を少しだけ入れておく。
あとは冷めるまで放置。
冷めたら、瓶詰めにして、氷庫で冷たく冷やせばトゥートのコンポートの出来上がり。
トマトが嫌いな子供でも食べれちゃうフルーツ感覚のもので、私のお祖母ちゃんが妹と弟が「トマトきらーい」って言うからよく夏に作っては食べさせていたものだ。
うちの子にトゥートが嫌いな子は居ないけど、夏の定番のオヤツとして私はよく作っている。
さて、ぐつぐつ煮込んでいた方のトゥート、火が通ってきたらかき混ぜて潰しつつ……塩コショウとバジルの刻んだ物を混ぜて、あとは粗熱をとって瓶詰めにしておけば、トマトソースの出来上がり。
パスタに使う時も、これにみじん切りの玉ねぎとひき肉を炒めた物を絡めたりして味を調えつつ使えるし、ピザやミネストローネスープなんかにも使えてとても便利なので作れるだけ作っておくのをおススメしたい。
なんせ我が家はドラゴンや食べ盛りの子供がいるから、お料理の手間が省けるところは省きたい。
あとは……トゥートのピクルス……は、去年失敗したのでやめておこう。
ちょっとばかり、皮を剥くのが面倒でそのまま漬け込んだら、口に淹れたらパンッと皮から弾けたトゥートを口から吹き出してしまったからね……あれは酷い事件だった。
それで皮を剥いてお酢に漬け込んだら、皮がないとぐちゃっとしちゃって上手くいかなかったんだよね。
ピクルスはキュウリだけにしろってことかな? と、私は諦めている。
「アカリ、採ってきたぞ」
「はーい。ありがとー。アルビーの隠しワイン飲む? 何かパッと作っちゃうから一緒にお昼ご飯にしましょ」
「ああ。その前に風呂に入ってくる」
「そうだね。お風呂でサッパリしてきて」
ルーファスからトゥートと枝豆とトウモロコシの入った籠を受け取り、枝豆はそのまま塩ゆで、トウモロコシは芯から粒を剥ぎ取って、トウモロコシ天ぷら、トゥートは輪切りにして間に温牛のもっちゃりチーズとバジルの葉を挟み込む、あとは今作ったトゥートのトマトソースを屋敷から持ってきた鶏肉と一緒にワインで煮込んで鳥のワイン煮にしてしまう。
お昼は簡単にこれでオッケー。
お風呂から上がったルーファスと一緒に、酒場のカウンターでお昼からお酒を飲んでの贅沢な時間を過ごす。
あと五日間はこの二人だけの畑でまったり土いじり生活になりそうである。
ここは旧女将亭の畑で、私は相変わらず子供達から「氷が出来るまでは母上は外出禁止」と言われてしまい、完成までは1週間かかるみたいで……それまで暇なので、温泉街とは正反対にある街から離れた旧女将亭の畑仕事に精を出すことにした。
勿論、街中は見ては駄目のようなので移動魔法で来た。
「アカリ、ミッカの苗木はそろそろ全部植え終わるぞ」
「はーい。じゃあ、飲み物を用意するから休憩しましょうか」
この畑は元々、土竜ニクストローブの遺体が卵孵りした時に出た土で出来ている為に、土竜の祝福たっぷりな上に魔獣の王の魔石で魔力も豊富とあって、非常に植物の育ちが良い。
ミッカの果樹園とハーブ園、そして野菜畑を作っていて、いつかはココで老後を過ごそうとしている私達の自給自足畑である。
女将亭の中はもうアルビーによって一階部分は酒屋と化しているけど、二階部分は相変わらずの元の生活空間のまま。二階に上がって冷たい麦茶とお茶うけにキュウリのピクルスを持って、また一階へ降りる。
酒屋のバーカウンターの椅子に座っているルーファスにお茶とピクルスを出して、私も椅子に座ってキューッとお茶を飲み干す。
「ふぅー、暑いから喉カラカラだね」
「お疲れ様。アカリは体が弱いのだから、しっかり水分を補給しておけ」
「体が弱いのは病気とかにだけだよ~」
「オレ達に比べたら弱すぎていつも心配になる」
「ふふっ、獣人に比べたら人族は弱いけど、大丈夫だよー」
キュウリのピクルスをポリポリと食べて、お酢の酸っぱさに両頬がキューッと痛くなる。
今年のピクルスもよく出来ている。このキュウリもこの畑の物で、浅漬けにしたり、お味噌に付けて食べたりと色々しているのだけど、ぬか漬けとかピクルスが一番長持ちな感じである。
キュウリは体の火照りをしずめてくれるから夏に食べるのはおススメ食材なので、食べきれない分は従業員さんやご近所に配っている。
「休憩したら私はトゥートのコンポートとトマトソースを作るね」
「あまり無理するな」
「無理はしてないけど、トゥートは毎日大量に出来上がるから、早めに料理して瓶詰めにしないと実が割れちゃうからね。時間との勝負なの」
「なら、オレがトゥートを収穫してくるから、アカリはここで料理に精を出してくれ」
「わぁ、ありがとう! 流石、頼りになる旦那様! 枝豆とトウモロコシも収穫お願いね」
ルーファスが麦茶を一気に飲み干して、「行ってくる」とキスをすると籠を持って出て行く。
こういうのをスローライフというのかな?
「よし、私も頑張ろう!」
トゥートのヘタを取って、上部分にバツ印をナイフで薄く入れていく作業をして、お湯にサッと潜らせると薄皮がスルッと剥けていく。
トゥートの皮を剥いた物をお鍋にいっぱい入れて弱火でぐつぐつさせている間に、少し小さめのトゥートも同じように皮を剥き、お砂糖とワインで煮込む。
これはワインのお酒が揮発したら火を止めて、レモーネの果汁を少しだけ入れておく。
あとは冷めるまで放置。
冷めたら、瓶詰めにして、氷庫で冷たく冷やせばトゥートのコンポートの出来上がり。
トマトが嫌いな子供でも食べれちゃうフルーツ感覚のもので、私のお祖母ちゃんが妹と弟が「トマトきらーい」って言うからよく夏に作っては食べさせていたものだ。
うちの子にトゥートが嫌いな子は居ないけど、夏の定番のオヤツとして私はよく作っている。
さて、ぐつぐつ煮込んでいた方のトゥート、火が通ってきたらかき混ぜて潰しつつ……塩コショウとバジルの刻んだ物を混ぜて、あとは粗熱をとって瓶詰めにしておけば、トマトソースの出来上がり。
パスタに使う時も、これにみじん切りの玉ねぎとひき肉を炒めた物を絡めたりして味を調えつつ使えるし、ピザやミネストローネスープなんかにも使えてとても便利なので作れるだけ作っておくのをおススメしたい。
なんせ我が家はドラゴンや食べ盛りの子供がいるから、お料理の手間が省けるところは省きたい。
あとは……トゥートのピクルス……は、去年失敗したのでやめておこう。
ちょっとばかり、皮を剥くのが面倒でそのまま漬け込んだら、口に淹れたらパンッと皮から弾けたトゥートを口から吹き出してしまったからね……あれは酷い事件だった。
それで皮を剥いてお酢に漬け込んだら、皮がないとぐちゃっとしちゃって上手くいかなかったんだよね。
ピクルスはキュウリだけにしろってことかな? と、私は諦めている。
「アカリ、採ってきたぞ」
「はーい。ありがとー。アルビーの隠しワイン飲む? 何かパッと作っちゃうから一緒にお昼ご飯にしましょ」
「ああ。その前に風呂に入ってくる」
「そうだね。お風呂でサッパリしてきて」
ルーファスからトゥートと枝豆とトウモロコシの入った籠を受け取り、枝豆はそのまま塩ゆで、トウモロコシは芯から粒を剥ぎ取って、トウモロコシ天ぷら、トゥートは輪切りにして間に温牛のもっちゃりチーズとバジルの葉を挟み込む、あとは今作ったトゥートのトマトソースを屋敷から持ってきた鶏肉と一緒にワインで煮込んで鳥のワイン煮にしてしまう。
お昼は簡単にこれでオッケー。
お風呂から上がったルーファスと一緒に、酒場のカウンターでお昼からお酒を飲んでの贅沢な時間を過ごす。
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