黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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23章

温泉街の氷祭り3

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 朝ご飯を食べ終わると、元気に子供達は外へと出かけていく。
昨夜のバーベキューの時に、リュエールや従業員の人達にも温泉街の氷祭りに関してアドバイスを貰い、子供達は朝早くに計画書を作成して、グリムレインにお願いして、実際に氷で色々作って、温泉街の人達にも邪魔にならないか聞いたりするらしい。

「子供達は元気が良いよね」

 お茶をルーファスに淹れて、自分の分も淹れるとホッと一息という感じ。
洗濯物も終わったし、クロとフェネシーにもご飯をあげたし、やる事が無くなってしまった。
まぁ、それまでがバタバタと駆けまわっていた感じなので、休憩である。

「子供達には、こんな何もない場所では退屈で仕方がないだろうからな。何かさせておくに限る」
「そうだね。どんな氷のお祭りをするのか楽しみだね」
「アカリには完成するまでは内緒らしいしな」

 そうなのだ。子供達は「母上を驚かせたいから、グリムレイン協力してよー」と、私をダシにしたので、私は完成までは屋敷から出ない様に子供達に言われてしまっている。

 ズズズ……と、お茶を飲んで「ふぅ」と息を吐くと、やる事のない私は、いっそこのままルーファスを枕にお昼寝でもしてしまおうかとさえ思ってしまう。
そんな私の行動を察したのか、ルーファスが私を膝の上に乗せて、頭を撫でてポンポンと寝かしつけるように軽く背中を叩く。
なんだか凄く朝から甘やかされているような感じだ。

 でも、折角の気持ちのいい朝に寝てしまうのも勿体ない気もする。
ルーファスを見上げると、目を細めて「寝てもいいぞ」とまぶたの上にキスを落としてくる。
朝からキュンキュンさせられてしまう! ルーファスは何年たっても、こうして私をキュンッとさせることをしてくるから、倦怠期けんたいきとかにならないんだよね。

 つがいだから余計にキュンッてさせられているけど、これで番じゃなかったらどんな感じなのかも気になる。
私が余計なことを考えていると、野生の感でも働いたのかルーファスが片眉を上げて私のおでこを指でツンと弾く。

「あうっ!」
「なにか余計な事を考えているな。なにを考えている?」
「はぅっ! ……怒らない?」
「話の内容によるな」
「じゃあ、怒られるから、言わない」
「怒られるようなことを考えていたのか? まったく、アカリは仕方がないな」

 カプッと耳朶を噛まれて、犬歯で耳が怪我しない程度にカリカリ嬲られて下手に動くことも出来なくて、ルーファスの浴衣の薄衣をギュッと握りしめる。
これは大人しく考えていたことを聞いてしまった方がいいだろうか? でも、それで気まずくなったら……それはそれで嫌だなぁ。

「で? アカリは何を考えていたんだ?」
「うーっ……、ルーファスが番じゃなかったら、私に、どういう態度をするのかなって……」

 ルーファスが耳から口を放して、ふぅと耳の中に吐息を吹きかけてくる。
ぞわわっとして、ブルッと頭を振るとルーファスが半目で私を見つめて、「そうだなぁー……」と口を開く。

「アカリと出会う前は、女性というのは『可愛い』という生き物だとは思っていなかったな。少女の頃は可愛いが、大人になればそういったモノは無くなるものだと思っていた」

 うん? それは私は子供っぽいっと言われているのかな? 「ああ、別にアカリが子供っぽいと思っているわけではないぞ?」すぐさまルーファスが私の考えを読んで否定する。

「女性との付き合いは華やかなひと時を過ごすだけの一時の物。そういう考えだったな。だから、付き合う女性に関しては、一時、時間を共有するだけの飾りのようなもので、甘い言葉を囁いたりはしない。『愛してる』なんて言葉を自分が口に出すなんて有り得なかったな」
「それじゃあ、ルーファスと付き合っている女性は不満じゃないの?」
「なるべく、あと腐れのないサバサバした性格の女性と付き合っていたし、不満のある女はすぐに消えていったな」

 うーん。何だか、私の知っているルーファスからは想像がつかないというか……ルーファスはいつでも、甘々の世話焼きで好きな人にはとことん尽くすタイプにしか思えないんだけどな?
チュッと私の頬にキスをしてルーファスが「こういうのもしたことは無い」と笑う。

「女性からキスはされても自分からはしないし、手を繋いだりもしたことは無いな」
「ルーファス、それってお付き合いしている意味あったの?」
「んー……、こういう言い方をしたらアカリに嫌われそうだが、大人の経験少しと、周りが女性を連れておけば、ちゃんと【刻狼亭】の跡継ぎのことを考えていると、横からチクチク言ってこなかったから、その為の虫よけだな」

 まぁ、若い頃はエッチなことに興味がある、いわゆる『お年頃』というやつだよね。
私はそういったことは中学時代に友人達と「〇〇くんと〇〇さんがキスしたんだって」と、キャーキャー騒ぐ感じではあったけど、性に関して少しは考えていた時期でもあると思う。

「なんだか、出会った当初からのルーファスとかけ離れている気がします」

 苦笑い気味でルーファスが私の頬に手を当てて撫でながら、おでこにキスをして旋毛つむじにもキスをしてくる。

「オレも、自分の中にこんな感情や、誰かを愛おしくて、大事にしたくて、尽くしたい気持ちがあるなんて、思ってもいなかった」
「番効果だね」
「番の効果……だろうな。でも、この気持ちが正解だと自分で分かる。もし、番で無ければ……アカリに対しての態度はどうかなんて分からないな。アカリに会うまでのオレが女性に対して、特に感情も抱けなかったのも、自分の番がどこかにいるとわかっていたからかもしれない」

 頬を両手で包み込まれるように添えられて、口づけの甘さに目を閉じると舌が口の中に入っていて、味わうように口内を舐め尽くして、口の中が熱くて子宮がきゅんと疼く。

「んぅ、ふぁ……ぁ……」
「ふぅ、やはり、アカリだけだ。こんな風にキスをしたいと思うのも、キスして胸が高鳴るのも」
「ん……っ、私も、ルーファスだけ」
「番じゃなかったら、なんて、言わないでくれ。オレにはアカリしか居ないし、アカリ以外は要らないんだからな」
「ごめんなさい」

 また唇を重ね合って、番じゃなかったら……こんな風にキスもしてもらえなくて、一時しか付き合ってもらえないのは、辛いなって思う。
格好いいルーファスに遊びでも良いから、一時の恋人だと思われて満足しちゃうような女では私はないから、捨てられてもしつこく付きまとってしまうかもしれない。
うん、番で良かった。

「ルーファス、これからも番でいようね?」
「ククッ、オレがアカリを手放すわけがないのだから、末永く共に生きていこうな」
「うん。不束者ふつつかものですが、末永く可愛がってくださいね? ふふっ」
「もちろんだ」

 本日何度目かのキスを交わして、私達は微笑み合う。
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