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23章
温泉街の氷祭り1
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屋敷にティルナール達と一緒に帰り、二人の好物をテーブルの上に並べて置いたので二人が「やったー!」と声を上げるのを聞いて、私も満足して笑顔で口元が緩む。
親になって思うのは、子供達が喜んでくれる声というのは自分の活力になる。
「母上、すっごく美味しい!」
「やっぱり母上の味が一番だね!」
「母上、大好き―!」
「母上を学園に持ち帰りたーい!」
もう、この子達ったら可愛すぎて、逆に私があなた達を食べちゃいたい! と、ニマニマが止まらない。
ハガネも今日まではミシリマーフ国で『出張・女将亭』をしているので居ない為、全部私の手作り料理なところがポイントが高い。
やはり、ハガネに比べるとどうしても大雑把なお母さん料理って感じになってしまうから、ハガネにはまだまだ勝てない。ハガネは匂いとかで焼き具合や煮具合を判断して火の調節とかしちゃうから、そこが私と違うんだよね。
少し、獣人の鼻が羨ましかったりする私だったりします。
「スーも、スーも、ははうー、すしー!」
「やんっ。母上もスーちゃんのこと、すきー!」
私の方へトコトコとスクルードが手を伸ばして歩いてくる。
ギュッとスクルードを抱きしめて「うちの末っ子可愛い!」と頬ずりをしていると、ルーファスに「アカリもスーも可愛い!」とぎゅうぎゅうに抱きしめられてしまう。
ルーファスも参加したかったんだね。うん。わかってます。
「なんか、母上と父上ってスーが生まれてから、新婚家庭みたいになってない?」
エルシオンの言葉に私とルーファスは目線を合わせる。
昔からこんな感じもするけど、やはり当主交替をして隠居生活で暇になった分、子供に向き合う時間が増えたからだろうか?
「なんだ? エルも抱きしめて欲しいのか?」
ルーファスがニッと笑って手で「こいこい」と呼ぶと、エルシオンは目を糸目にして「うへぇー」と舌を出す。
「それは無いよ。どうぞお好きにスーを構い倒してあげててよ」
「遠慮しなくても良いのに」
「そうだぞ? なー、アカリ」
「ねー、ルーファス」
夫婦でエルシオンを揶揄うと、エルシオンが「ボクで遊ばないで」と小さく頬を膨らます。
ティルナール達も笑いながらエルシオンに「遠慮しなくていいよー」と言ってしまう辺り、ノリのいい家族だと思う。
「にしても、このポテトサラダをコロッケにするって……普通にコロッケでいいんじゃないの?」
「それはねー、スーちゃんの好き嫌い対策なの。キュウリが嫌いだから、こうしないと食べてくれないのよ。母上の苦心の策よ」
「キュウリなんて味しないでしょ?」
「スーちゃんはキュウリが嫌いなんて変わった味覚ですね」
ポテトサラダコロッケを口に入れて、小さくキュウリの音をポリッと言わせて食べるティルナールとルーシーは知らないのだ。
スクルードのキュウリ嫌いのお茶碗返しの炸裂を……。
普通に出すと見事にお茶碗返しをされた上、ギャン泣きしてルーファスにしがみついたまま離れなくなる。
そこまで好き嫌いで泣く子は初めて……でもないかな? うん。思い起こせば、子供達は大なり小なり好き嫌いでギャン泣きしていたかも?
誰に似たんだろう?
私……私、だろうなぁ。うん、否定できない。
「あとねー、餃子に入れて揚げポテトサラダ餃子にしても食べるの」
「スーはとりあえず揚げ物にすれば食べるんじゃないの?」
「そうかもー? 今度キュウリ天ぷら……いや、それは流石にないか。うん」
皆がキュウリと騒いでいるから、いつの間にかスクルードは私からルーファスにへばりついている。
危険だとわかると母親より父親を選ぶ辺り、強い者に守ってもらおうとする野生の感は小さくてもあるようだ。
まぁ、嫌いな物をルーファスに「あーん」って出すと食べてくれるのもあるからかもしれないけど。
「エルにいさーん!」
「エルにーさまー!」
レーネルくんとルビスちゃんの声が玄関からして、トテテテと足音がすると二人が大広間に顔を出す。
お昼ご飯を二人共、【刻狼亭】と『女将亭』で食べていたから、食べ終わったら来るように言っておいたのだけど、タイミングが合ったようだ。
「二人共、いらっしゃい」
「おじゃましてます!」
「おじゃましまーす!」
二人の顔を見て、エルシオンもティルナール達もご飯をかき込むように食べて、ティルナールとルーシーは一端、二階で制服から普段着に着替えてくると言い、エルシオンはレーネルくんとルビスちゃんを相手にしながら、隣りの応接間に移動する。
私は子供達に冷たい飲み物を用意してテーブルに置く。
テーブルの上には『こおりのおまつり』と小さな子に読めるようにひらがなで書かれた企画書が広げられている。
ティルナールとルーシーが浴衣に着替えてから応接間に入室すると、ルーファスにしがみついていたスクルードも尻尾を振りながら応接間に行ってしまう。
「スーも、すっかり企画メンバーになってしまったな」
「遊んでもらってるのか、企画に参加してるのかわからないけどね」
ルーファスが目を細めて子供達を見ながら机で頬杖を付き、私は食事の片付けを始めると、子供達の「氷の祭り・温泉大陸の企画会議を始めるよ」という声がしていた。
親になって思うのは、子供達が喜んでくれる声というのは自分の活力になる。
「母上、すっごく美味しい!」
「やっぱり母上の味が一番だね!」
「母上、大好き―!」
「母上を学園に持ち帰りたーい!」
もう、この子達ったら可愛すぎて、逆に私があなた達を食べちゃいたい! と、ニマニマが止まらない。
ハガネも今日まではミシリマーフ国で『出張・女将亭』をしているので居ない為、全部私の手作り料理なところがポイントが高い。
やはり、ハガネに比べるとどうしても大雑把なお母さん料理って感じになってしまうから、ハガネにはまだまだ勝てない。ハガネは匂いとかで焼き具合や煮具合を判断して火の調節とかしちゃうから、そこが私と違うんだよね。
少し、獣人の鼻が羨ましかったりする私だったりします。
「スーも、スーも、ははうー、すしー!」
「やんっ。母上もスーちゃんのこと、すきー!」
私の方へトコトコとスクルードが手を伸ばして歩いてくる。
ギュッとスクルードを抱きしめて「うちの末っ子可愛い!」と頬ずりをしていると、ルーファスに「アカリもスーも可愛い!」とぎゅうぎゅうに抱きしめられてしまう。
ルーファスも参加したかったんだね。うん。わかってます。
「なんか、母上と父上ってスーが生まれてから、新婚家庭みたいになってない?」
エルシオンの言葉に私とルーファスは目線を合わせる。
昔からこんな感じもするけど、やはり当主交替をして隠居生活で暇になった分、子供に向き合う時間が増えたからだろうか?
「なんだ? エルも抱きしめて欲しいのか?」
ルーファスがニッと笑って手で「こいこい」と呼ぶと、エルシオンは目を糸目にして「うへぇー」と舌を出す。
「それは無いよ。どうぞお好きにスーを構い倒してあげててよ」
「遠慮しなくても良いのに」
「そうだぞ? なー、アカリ」
「ねー、ルーファス」
夫婦でエルシオンを揶揄うと、エルシオンが「ボクで遊ばないで」と小さく頬を膨らます。
ティルナール達も笑いながらエルシオンに「遠慮しなくていいよー」と言ってしまう辺り、ノリのいい家族だと思う。
「にしても、このポテトサラダをコロッケにするって……普通にコロッケでいいんじゃないの?」
「それはねー、スーちゃんの好き嫌い対策なの。キュウリが嫌いだから、こうしないと食べてくれないのよ。母上の苦心の策よ」
「キュウリなんて味しないでしょ?」
「スーちゃんはキュウリが嫌いなんて変わった味覚ですね」
ポテトサラダコロッケを口に入れて、小さくキュウリの音をポリッと言わせて食べるティルナールとルーシーは知らないのだ。
スクルードのキュウリ嫌いのお茶碗返しの炸裂を……。
普通に出すと見事にお茶碗返しをされた上、ギャン泣きしてルーファスにしがみついたまま離れなくなる。
そこまで好き嫌いで泣く子は初めて……でもないかな? うん。思い起こせば、子供達は大なり小なり好き嫌いでギャン泣きしていたかも?
誰に似たんだろう?
私……私、だろうなぁ。うん、否定できない。
「あとねー、餃子に入れて揚げポテトサラダ餃子にしても食べるの」
「スーはとりあえず揚げ物にすれば食べるんじゃないの?」
「そうかもー? 今度キュウリ天ぷら……いや、それは流石にないか。うん」
皆がキュウリと騒いでいるから、いつの間にかスクルードは私からルーファスにへばりついている。
危険だとわかると母親より父親を選ぶ辺り、強い者に守ってもらおうとする野生の感は小さくてもあるようだ。
まぁ、嫌いな物をルーファスに「あーん」って出すと食べてくれるのもあるからかもしれないけど。
「エルにいさーん!」
「エルにーさまー!」
レーネルくんとルビスちゃんの声が玄関からして、トテテテと足音がすると二人が大広間に顔を出す。
お昼ご飯を二人共、【刻狼亭】と『女将亭』で食べていたから、食べ終わったら来るように言っておいたのだけど、タイミングが合ったようだ。
「二人共、いらっしゃい」
「おじゃましてます!」
「おじゃましまーす!」
二人の顔を見て、エルシオンもティルナール達もご飯をかき込むように食べて、ティルナールとルーシーは一端、二階で制服から普段着に着替えてくると言い、エルシオンはレーネルくんとルビスちゃんを相手にしながら、隣りの応接間に移動する。
私は子供達に冷たい飲み物を用意してテーブルに置く。
テーブルの上には『こおりのおまつり』と小さな子に読めるようにひらがなで書かれた企画書が広げられている。
ティルナールとルーシーが浴衣に着替えてから応接間に入室すると、ルーファスにしがみついていたスクルードも尻尾を振りながら応接間に行ってしまう。
「スーも、すっかり企画メンバーになってしまったな」
「遊んでもらってるのか、企画に参加してるのかわからないけどね」
ルーファスが目を細めて子供達を見ながら机で頬杖を付き、私は食事の片付けを始めると、子供達の「氷の祭り・温泉大陸の企画会議を始めるよ」という声がしていた。
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