731 / 960
23章
屋敷の静けさ
しおりを挟む
朝からルーファスは温泉大陸の顔役である街の住民の代表たちとの会合に子供達と出掛けて行った。
私はシャルちゃんのお世話をしながら屋敷の中でいつも通りの家事をしている。
家事も一通り終わってしまうと、暇を持て余してしまう。
異世界の娯楽はほぼないに等しく、いつもなら子供達の相手とかをしているうちにあっという間に過ぎていくけど、一人……シャルちゃんもいるけど、寝た子は起こしちゃいけないから、実質一人のようなものだ。
「お昼ご飯でも食べちゃおうかなー?」
ルーファスと子供達は会合に行ったから、仕出し弁当が出るのでお昼の心配もない。
私一人だと、特に何か作って食べようって気があまり起きない。
キュウリを薄切りに切って、お味噌に絡めてご飯の上に乗せて麦茶を上に掛ける。
「夏の簡単料理~……あとは……昨日の残り物のきんぴらでいいか」
もくもくとご飯を食べつつ、元の世界ならテレビでも見て食べていたのかも? まぁ、私はテレビ、持ってなかったんだけどね。家族の事件があってから、マスコミもテレビも嫌いになってしまったし、あのアパートでは隣りの壁は薄く、テレビの音なんて筒抜けだったしね。
「ふぅー……」
んーっ、少し物足りないけど、まぁいいかな?
一人だと簡単に済ませちゃうし、手間もかからない。
久々に手抜き料理で一人ご飯をしたかも? お茶碗を洗うのも一人分なのでサッサと終わる。
「夏だと暑くて何かしようっていうのもないのよねー……って、一人だと独り言も多くなっちゃう」
いつも誰かしら居るから、話せば誰かが応答してくれるのもあるけど、独り言はさすがに駄目ね。
私は寝ているシャルちゃんの顔を覗き込む。
小っちゃくて可愛い私の三人目の孫は、ミルクの香りたっぷりで毎日見ているけど、ゆっくり確実に大きくなっているので、この時期をたっぷり目に焼き付けておかなくてはいけない。
子供の成長は早いのだから。
「またアカリは子供を美味そうな顔で見ているな」
ルーファスの声に後ろを振り向けば、真後ろにルーファスがいて、子供達もルーファスの後ろで楽しそうな顔で笑っている。
「おかえりなさい。早かったね」
「ただいま。一人で寂しかったか?」
「シャルちゃんが居たし大丈夫ですよ? 皆、ご飯は食べてきた?」
「仕出し弁当を持ち帰ったから、今からだ」
子供達がテーブルの上に置かれた仕出し弁当の紐を解いて広げ始めている。
お弁当に夢中の子供達の目を盗んで、ルーファスが軽く唇を重ねて、「寂しかったくせに、強情だな」と、こめかみにもキスをしてから、子供達に「弁当の前に手を洗え」と水玉を出して手を洗わせている。
少しだけ静かな屋敷は寂しかったけど、ルーファス達が帰ってきた事で、私の心からは寂しいという気持ちは直ぐに消え去ってしまったのに、ルーファスの目は誤魔化せなかったみたいだ。
「それじゃあ、お祖母ちゃんは飲み物を持ってくるね」
「じゅーしゅ!」
「はーい。ジュース持ってくるねー」
台所に行ってジュースと麦茶を用意して戻ると、子供達は仕出し弁当に入っていたフキがお気に召さなかったらしく、ルーファスに「あげる」と渡していた。
「皆、フキは季節がもう終わっているから、今食べないと来年まで食べれないよ?」
「いにゃにゃい」
「おいしくないもん……」
「ボクもにがてです」
「ボクは普通。でも好き好んでは要らないかな」
エルシオンすらも拒否とは……まぁ、お子様達には少し馴染まない味なのかな? ルーファスが「あーん」と言うので口を開いたら、フキを口に入れられる。
少し薄味……と、いうか上品な味すぎて、素材の味が強いのかも? 子供向けにするならもう少し甘く煮付けた方がいいだろう。
「んーっ、来年のフキの時期にお祖母ちゃんが皆に『美味しい』って言わせるようなフキ料理を作ってあげるね」
子供達の表情はとても微妙だったけど、フキの季節に油揚げとフキの美味しい煮物を作ろう。
仕出し弁当は他に、魚の切り身を焼いた物、蓮根の細かく入った肉団子、高野豆腐の煮つけ、切り干し大根とニンジンの酢の和え物、卵焼き、豆の入った炊き込みご飯が入っていて、少し子供向きではなかった。
まぁ、会合に来るのはお年寄りとかばかりだから、これは仕方がないかも?
ちょっとお弁当にテンションの上がっていた子供達は、少しガッカリ気味でスクルードはそれほど食べられないのもあって、私が半分食べた感じだった。
「みんな会合はどうだったの?」
「夏場はお客さんが多いから、色々設置するにも今からだと難しいから、【刻狼亭】にお任せだって」
「あー、確かにお昼間に設営するとお客さんのお邪魔になっちゃいそうだよね」
エルシオンが頷いて、他のお店の参加に関しては移動屋台がミシリマーフから戻ってきたら、それをそのまま使っての参加で、氷の設営関係はグリムレインに一任___つまり、【刻狼亭】に任せるという事らしい。
「グリムレインにまた特別手当を出してあげないとね」
「それに関しては、アカリが頼めばすぐにやってくれるだろう」
「夏バテしなきゃいいんだけど……。グリムレインが帰ってきたらいっぱいアイスをあげなきゃね」
私の従者は今年は引っ張りだこのようだ。いや、今年もというべきかな?
私はシャルちゃんのお世話をしながら屋敷の中でいつも通りの家事をしている。
家事も一通り終わってしまうと、暇を持て余してしまう。
異世界の娯楽はほぼないに等しく、いつもなら子供達の相手とかをしているうちにあっという間に過ぎていくけど、一人……シャルちゃんもいるけど、寝た子は起こしちゃいけないから、実質一人のようなものだ。
「お昼ご飯でも食べちゃおうかなー?」
ルーファスと子供達は会合に行ったから、仕出し弁当が出るのでお昼の心配もない。
私一人だと、特に何か作って食べようって気があまり起きない。
キュウリを薄切りに切って、お味噌に絡めてご飯の上に乗せて麦茶を上に掛ける。
「夏の簡単料理~……あとは……昨日の残り物のきんぴらでいいか」
もくもくとご飯を食べつつ、元の世界ならテレビでも見て食べていたのかも? まぁ、私はテレビ、持ってなかったんだけどね。家族の事件があってから、マスコミもテレビも嫌いになってしまったし、あのアパートでは隣りの壁は薄く、テレビの音なんて筒抜けだったしね。
「ふぅー……」
んーっ、少し物足りないけど、まぁいいかな?
一人だと簡単に済ませちゃうし、手間もかからない。
久々に手抜き料理で一人ご飯をしたかも? お茶碗を洗うのも一人分なのでサッサと終わる。
「夏だと暑くて何かしようっていうのもないのよねー……って、一人だと独り言も多くなっちゃう」
いつも誰かしら居るから、話せば誰かが応答してくれるのもあるけど、独り言はさすがに駄目ね。
私は寝ているシャルちゃんの顔を覗き込む。
小っちゃくて可愛い私の三人目の孫は、ミルクの香りたっぷりで毎日見ているけど、ゆっくり確実に大きくなっているので、この時期をたっぷり目に焼き付けておかなくてはいけない。
子供の成長は早いのだから。
「またアカリは子供を美味そうな顔で見ているな」
ルーファスの声に後ろを振り向けば、真後ろにルーファスがいて、子供達もルーファスの後ろで楽しそうな顔で笑っている。
「おかえりなさい。早かったね」
「ただいま。一人で寂しかったか?」
「シャルちゃんが居たし大丈夫ですよ? 皆、ご飯は食べてきた?」
「仕出し弁当を持ち帰ったから、今からだ」
子供達がテーブルの上に置かれた仕出し弁当の紐を解いて広げ始めている。
お弁当に夢中の子供達の目を盗んで、ルーファスが軽く唇を重ねて、「寂しかったくせに、強情だな」と、こめかみにもキスをしてから、子供達に「弁当の前に手を洗え」と水玉を出して手を洗わせている。
少しだけ静かな屋敷は寂しかったけど、ルーファス達が帰ってきた事で、私の心からは寂しいという気持ちは直ぐに消え去ってしまったのに、ルーファスの目は誤魔化せなかったみたいだ。
「それじゃあ、お祖母ちゃんは飲み物を持ってくるね」
「じゅーしゅ!」
「はーい。ジュース持ってくるねー」
台所に行ってジュースと麦茶を用意して戻ると、子供達は仕出し弁当に入っていたフキがお気に召さなかったらしく、ルーファスに「あげる」と渡していた。
「皆、フキは季節がもう終わっているから、今食べないと来年まで食べれないよ?」
「いにゃにゃい」
「おいしくないもん……」
「ボクもにがてです」
「ボクは普通。でも好き好んでは要らないかな」
エルシオンすらも拒否とは……まぁ、お子様達には少し馴染まない味なのかな? ルーファスが「あーん」と言うので口を開いたら、フキを口に入れられる。
少し薄味……と、いうか上品な味すぎて、素材の味が強いのかも? 子供向けにするならもう少し甘く煮付けた方がいいだろう。
「んーっ、来年のフキの時期にお祖母ちゃんが皆に『美味しい』って言わせるようなフキ料理を作ってあげるね」
子供達の表情はとても微妙だったけど、フキの季節に油揚げとフキの美味しい煮物を作ろう。
仕出し弁当は他に、魚の切り身を焼いた物、蓮根の細かく入った肉団子、高野豆腐の煮つけ、切り干し大根とニンジンの酢の和え物、卵焼き、豆の入った炊き込みご飯が入っていて、少し子供向きではなかった。
まぁ、会合に来るのはお年寄りとかばかりだから、これは仕方がないかも?
ちょっとお弁当にテンションの上がっていた子供達は、少しガッカリ気味でスクルードはそれほど食べられないのもあって、私が半分食べた感じだった。
「みんな会合はどうだったの?」
「夏場はお客さんが多いから、色々設置するにも今からだと難しいから、【刻狼亭】にお任せだって」
「あー、確かにお昼間に設営するとお客さんのお邪魔になっちゃいそうだよね」
エルシオンが頷いて、他のお店の参加に関しては移動屋台がミシリマーフから戻ってきたら、それをそのまま使っての参加で、氷の設営関係はグリムレインに一任___つまり、【刻狼亭】に任せるという事らしい。
「グリムレインにまた特別手当を出してあげないとね」
「それに関しては、アカリが頼めばすぐにやってくれるだろう」
「夏バテしなきゃいいんだけど……。グリムレインが帰ってきたらいっぱいアイスをあげなきゃね」
私の従者は今年は引っ張りだこのようだ。いや、今年もというべきかな?
40
お気に入りに追加
4,628
あなたにおすすめの小説

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。
鯖
恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。
パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。

婚約者である皇帝は今日別の女と結婚する
アオ
恋愛
公爵家の末娘として転生した美少女マリーが2つ上の幼なじみであり皇帝であるフリードリヒからプロポーズされる。
しかしその日のうちにプロポーズを撤回し別の女と結婚すると言う。
理由は周辺の国との和平のための政略結婚でマリーは泣く泣くフリードのことを諦める。しかしその結婚は実は偽装結婚で
政略結婚の相手である姫の想い人を振り向かせるための偽装結婚式だった。
そんなこととはつゆ知らず、マリーは悩む。すれ違うがその後誤解はとけマリーとフリードは幸せに暮らしました。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。