黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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23章

大浴場のお掃除 ※微R18(?)

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 本日も大女将業の私は、下駄の音を響かせてカラコロと旅館のロビーを走り回っていた。
今日の目玉になるお仕事は大浴場の清掃で、魔法でパッと終わらせれば早いのだけど、それが出来ないのがこの大浴場の困った所だったりする。
清浄魔法を使うと、浴場に染みついた効能も綺麗さっぱり無くなって、温泉を再び入れた時に効能が若干弱くなってしまう為、人力作業での清掃となる。

 着物の袖をたすき掛けにして、裾も半分折るんだけど……足を出す事を破廉恥ハレンチ扱いなこの世界では、女性はやりたがらない事の一つでもある。

「よしっ、やりますかー!」

 温泉は今現在ストップしてもらっているので、浴場にはお湯も無い状態。
ここで気をつけるのはただ一つ。コケないことである。私は過去に何回かコケているので、さすがに繰り返したりはしない。
慎重に丁寧にを心掛けていく。

 デッキブラシでワシワシと床を磨き上げては水玉で洗い流しを繰り返す。
数十分もしたら、腕も腰も悲鳴を上げ始める。

「うちの従業員……本当に手伝いに来ない……私、大女将なのにぃ~っ」

 私の人望の無さに泣いてしまいそう。
まぁ、女性専用の大浴場だから清掃も女性従業員のお仕事だから男性従業員は立ち寄れないのだけどね。
お客様の中に「男性が足を踏み入れた入浴場は嫌」って言う人がいるから、こうした気遣いもあって女性が清掃しているわけです。

「男の人がやっても、お客様にはわかんないと思うんだけどなぁ……」

 まぁ、愚痴っても仕方がない。
でもね、こういうお仕事って……大女将の仕事なのかな? とも思ってしまうのは、流石に私のおごりだろうか?

「大女将、大丈夫ですかー?」

 声のした方に顔を上げると、隣りの男性専用の大浴場の間仕切りから男性従業員が顔を出していた。
多分、桶を使って登ったのだろう。覗き見もああいう風に出来るなら少し考えないといけないかもしれない。

「大丈夫じゃないよー! 腕がプルプルだよー!」
「なんか客のいざこざで他の従業員が出払ってるみたいですよ」
「そうなのー? 私の人望の無さじゃなかったのね」
「あはは。流石に大女将をおざなりにはしないですよ」

 良かった。私は従業員に嫌われてたり、忘れ去られたりしているわけではなさそうだ。
しかし、お客さんのいざこざで皆出払うなんて、どんな騒ぎになっているのやら?
首を傾げる私に、男性従業員は笑って何かを私に投げてよこす。
竹筒の水筒に入った桃の香りのするジュースだった。

「あっ、ジュース。ありがとー!」
「いえいえ。そっちに手伝いに行けませんから、水分補給して休み休みやって下さい」

 男性従業員が手をヒラヒラとさせながら、桶を降りていく音がする。
さて、私ももう少し頑張らなきゃ……その前に水分補給しちゃおう。水筒を持つ手もプルプルしてしまう辺り、私の腕は疲れ切っているみたい。
チビチビと水筒のジュースを飲んで、人心地つくとジワジワと体の疲れが取れていく。

「んっ? んんん!? あーっ! これ疲労回復ポーション!?」

 私が叫ぶと、「アタリでーす」と男性側の大浴場から声がする。
桃味の疲労回復ポーション……ああ、嫌な予感しかしないのは何故かしら?

「製薬部隊の新しい疲労回復ポーションらしいです。飲んだら感想を聞かせて欲しいそうですよー」
「ふぁぁああっ!!! それ、完全に実験体じゃないですかー!」
「大女将なら疲れやすいし、大丈夫ですよ!」
「大丈夫じゃなーい!! 普通、大女将に毒味させる? 従業員が私を労わらないよぅうう!!」

 完全にはめられた! と思うのは私の気のせいでは無いと思う。
道理で皆が大浴場の掃除に来ない訳だ。製薬部隊の疲労回復ポーションの実験台になりたくないから、私を人身御供ひとみごくうにしたというわけだ……。

「ぐぬぬ……っ」
「大女将、直ぐに他の連中も手伝いに来ますから」
「やっぱり! 謀りましたね! 従業員が私に優しくなーい!」

 ワァーッと、私が騒ぐと大浴場に女性従業員が顔を出す。

「大女将、お手伝いしますよー!」
「手伝いは有り難いですけど、私が疲れて、飲み物飲むまで待っていたのは許しません」
「もうー。大女将ったらぁ、誤解ですよ~」
「そうそう。お客さん達が揉めてたのを止めてたんですよ~」

 「ねー」と言い合う従業員にジト目で睨みつけて、まぁ、製薬部隊も「味は二の次、効能一番」から、普通に桃味の物が作れるようになったのだから、進歩はしているのだろう。
きっと大丈夫のはず……。

「さぁ、サボってないで手を動かしますよ!」
「はーい! 大女将頑張りましょう!」

 大浴場の掃除を人手を分けてほぼ一日がかりで終わらせ、今回の疲労回復ポーションは味も良いし、疲れも直ぐに取れて大浴場の掃除が終わった後も元気なまま屋敷に帰れた。
その点を踏まえて、過去最高の出来では? と、花丸をあげようと思っていた。
でもねー……製薬部隊のポーションがそんな可愛らしい物じゃないのは分かり切っていた事だった。

 夜になってルーファスといつも通り一緒に寝ていたら、体の中が火照って下腹部が疼いて、内腿が濡れている感じがしてトイレに駆け込んだら、愛液が凄い出て下着がびしょ濡れだった。
お風呂場で軽くシャワーを浴びてみたものの、全然で……ルーファスには悪いと思ったけど、寝ているルーファスを襲ってしまった……。

「ルーファス、あ、はぁ、んっ、少しだけ、少しだけだから……」

 もう、自分ではどうしようもなかったし、自分でも理性のブレーキが壊れて、手で大きくしたルーファスのモノを自分の中に咥え込むと腰を揺らして快感だけを求めていた。

「ふぁっ、気持ち、いい、んっ、んっ」

 ルーファスが直ぐに起きたけど、私は快楽堕ちというのか……なんなのか、ルーファスの上に跨って求め続けてしまい、ルーファスも私が満足するまで付き合ってくれて、明け方まで搾り取ってしまった感じで、ようやく体の疼きは収まり、蜜籠りの激しい日並みにしてしまった感じだった。

 次の日は疲労感は無かったものの、寝不足で大女将業は半分ウトウトしながらやっていた。
ルーファスには製薬部隊の実験台にされた事は話しておいたから、きっと製薬部隊はこっぴどく怒られているとは思う。
本当に、あの製薬部隊はロクでもないポーションばかり作るのだから困ったものだ。

 もう二度と目にしないだろうと思っていた桃味疲労ポーション。
年末の露店で製薬部隊が売っているのを見てしまって、ルーファスが買う前に買い占めて廃棄しなければ! と、買い占めておいたのだけど……。
結局、ルーファスは私の買い占めより先に製薬部隊から買い取っていて、冬場に泣かされたのだった。

 本当にあの製薬部隊、ロクでもない物しか作らない。


☆4章の初めに書籍記念で特別小説をアップしました☆
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