黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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23章

小さな叔父さんと甥っ子

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 世界の中心イルブールの大陸から西南にある温泉大陸では、四季でいえば春に辺り、桜で彩られた温泉街を走る事を覚えた我が家のやんちゃ坊主くんが走る。

「スーちゃん、コケるから走らないの!」
「こけにゃー! っ!」

 コケないと言ったそばからベショッと転んで、プルプル震え、泣く寸前の顔で振り向くスクルードに「だから言ったのに……」と思いつつも、手をうっかり放してしまった私も悪いので、しゃがんでスクルードの手を取って立ち上がらせる。

「スーちゃん、泣かないの」
「にゃいてにゃー! ぴぇぇぇっ」
「よしよし。ちゃんと母上とお手々繋いで歩こうね?」
「ははうー、だっこぉー」
「はいはい。っと、スーちゃん重くなったねぇ」

 スクルードも一歳半を過ぎて、いつの間にかどっしりと重くなった。
ベビーカーに乗ってくれたら良いのだけど、ルーファスが抱き上げて移動が多かったせいか……ベビーカーを嫌がる子になってしまい、そしてとても抱き癖が強い子になっている。
ルーファスが抱き上げてくれたら楽なんだけど、スクルードのイヤイヤ期がまさに今で……「ちちうー、いやっ!」とルーファスを拒否。
ついこの間までルーファスにベッタリだったのに、なにがスクルードの中で起きたのやら?

 そんなルーファスは孫のレーネルくんと手を繋いで歩いている。
今現在、キリンちゃんは第二子を出産して休養中なので、レーネルくんのお世話は私達が引き受けている。
リュエールとキリンちゃんの二人目の子供は女の子で……なんというか人族の私の血が多く出てしまった感じ。
獣人の耳も尻尾も無く、かといってエルフの長い耳も無い。
私と同じ耳に髪色に目の色……多分、私の子供って言ったら納得されそう。
お顔はキリンちゃんに似ているから可愛いです。身内贔屓ひいきめに見ても本当に可愛いっ!!
名前はシャルちゃん。
レーネルくんも大人しい子だけど、シャルちゃんはもっと大人しい感じで手のかからない赤ちゃんである。
それでも乳幼児の育児は大変なので、こうしてレーネルくんのお世話をかって出ているというわけです。

 なんというか、やっぱりシャルちゃんに注目がいっちゃって、レーネルくんが我慢とかしていないかな? と少々メンタルケアもしてあげなきゃと思っている。

「レーネルくん、お茶屋さんでお花見団子でも食べようか?」
「はい。ありがとうございます。おばあさま」
「レーネルは小さいのに、しっかりしているな」
「うちの子達って三歳ぐらいの時、こんなにしっかりしてなかったよね」

 リュエールも子供の頃はシュトラールと一緒になって、つたないお喋りで「ははえー」と可愛く言ってくれたりしていたなぁ……。でも、三歳の時ってこんなにしっかり喋っていたかどうか……やはり、一人っ子だとしっかりするものなのかな?
スクルードも割りと成長早いし。

「スー、おりるぅー」
「はいはい。それじゃ、今度は転ばないように手を繋ぐよ」

 下ろして手を繋ぐと「いやにゃー」と握った手をパシパシされる。
うーん、この我が儘っ子どうしてくれよう? と思っていたら、レーネルくんがスクルードに手を差し出す。

「スーちゃん、ぼくとてをつなごう?」
「んふーっ」

 二人が手を繋いで、スクルードはご満悦で笑顔を見せる。

「よかったな、スー。スーは小さいが叔父さんだからな。ちゃんと手を繋いでおけ」
「あい!」
「ふふっ、ルーファスったらスーちゃんをのせるの上手いんだから」

 それにしても、レーネルくんはスクルードの扱いも慣れているから、お兄さんだなぁと感心する。
これならシャルちゃんにも良いお兄さんぶりを発揮するだろう。
 ちなみに、スクルードはリリスちゃんの所に生まれた男の子とシャルちゃんを見てから、やたらとお兄さんぶりたがるようになった。
なので、こうしてレーネルくんがスクルードを気遣ってくれたり、ルーファスがお兄さんみたいに「叔父さん」と強調しておだてて、スクルードが小さな子にも気遣いのできる子になるように誘導している。

 お茶屋さんに着くと、大きな黒い番傘の下にある長椅子に座って、店員さんを呼ぶ。
メニューを持った店員さんがすぐにやってきて、子供達にメニューを見せてくれた。

「スーちゃんどれがいい?」
「じぇんぶー!」
「ぜんぶはむりだよ。ぼく、これがいいな。スーちゃんたのんでくれる?」
「あい!」

 店員さんがニコニコと二人のやり取りに耳を傾けて、注文を二人の目線に合うようにしゃがんで聞いてくれる。
こうした店員さんの心遣いは嬉しいものである。
 
「んっ! これ、これ!」
「はーい。三食お団子にゴマお団子ですね」
「あい!」

 指さしで注文するスクルードにレーネルくんが微笑ましそうに目を細める。
ああ、うちの子達本当に可愛いっ! ニマニマしていると、ルーファスに「アカリが、すごく可愛い顔で笑ってる」と耳元で囁かれてほっぺにチューとされてしまった。

「ルーファス~っ」
「ククッ、店員、三食団子とみたらし団子も追加で頼む」
「はーい。かしこまりました!」

 店員さんが店内に入り、ザァッと風が吹くと、桜の花弁が舞って今年も良いお花見日和になりそうだ。
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