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22章
魔国の学園祭18
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食事の後、冒険服に着替えて、再び魔国エグザドルへ戻ろうとして、何かを忘れている事に引っ掛かったものの、それが何か思い出せず、夫婦の部屋で上目遣いで心配そうに眉を下げているアカリを宥めている間に、頭の片隅に押しやられた。
「気を付けてね。テンと小鬼さんにも無茶しないように言ってね」
「ああ、伝えておく。アカリは心配せずに屋敷で待っていてくれ」
アカリが両手を伸ばすと、ルーファスは少し屈んでアカリの腰に手を回し、アカリはルーファスの首に手を回していつもより長めの口づけを交わし合う。
口に広がる番同士の甘さを味わって、唇を離すと名残惜しそうにアカリが首に回した手を下ろして、代わりに台の上に用意しておいた風呂敷をルーファスに差し出す。
「テンと小鬼さんにもお弁当渡してね。私とドラゴン達の手作りだから、聖域と有り難さ百パーセントだよ」
「アカリのご利益付きは金を払ってでも手に入れたくなるから、あいつ等も喜ぶだろう」
「ふふっ、ルーファスにもご利益があると良いね」
「それはいつでも肖っているから、そのうちアカリを祭り上げたいぐらいだ」
「もう、ルーファスったら」
ククッと笑いながら、もう一度唇を重ね合わせて「行ってくる」と言ってルーファスは移動魔法でエグザドルへと行く。
エグザドルの城の騎士団宿舎へ戻ると、医務室へ向かい、医務室ではテンと小鬼がゼリティアと何気ない世間話で盛り上がっていた。
「大旦那さん、おかえりなさいです!」
「大旦那、おかえりなさい~」
「今、戻った。二人共変わりなかったか?」
二人は首を横に振り、ルーファスはゼリティアに向かい合う。
「ゼリティア夫人、喉の方はどうだ?」
「ええ、大丈夫ですよ。……そうですか、あなたは黒狼族のトリニア家でしたのね」
「ああ、騙した形ですまないが、褐色の肌にターバン姿だと直ぐに見つけられてしまうからな。変装は解いてきた」
ゼリティアが少し目を細めた後で、淑女の礼をとり、頭を軽く下げる。
礼儀正しく、騎士の血筋のゼリティアの礼は、ピシッとした角度でどこか騎士が正式な場所で挨拶するようにも見える。
「テン、小鬼。アカリからお前達に弁当だそうだ」
「わぁ! 大女将さんのお弁当ですか!」
「では、お茶でも淹れましょうか」
二人がいそいそとルーファスに渡された風呂敷包みを解き、医務室に常備されている茶器でお茶を淹れている。
その姿を見て、ルーファスはハッとする。
自分が何か引っ掛かっている物の正体に気付き、慌てて腕輪に手を触れてアカリに連絡を取る。
腕輪に連絡を入れてもアカリからの反応が無く、ルーファスの血の気が引いていく。
「オレはまた屋敷の方へ戻る!」
「え?」
「大旦那さん?」
首を傾げている二人に構っている暇は無いと、ルーファスは詠唱を速めて、再度屋敷へと戻り、中庭から急いで屋敷の中へと入っていく。
「アカリ!? どこにいる!」
ルーファスの慌てようにハガネとドラゴン達も驚いた顔をして、ルーファスの姿を追う。
「ルーファスどうしたの?」
「大旦那、どうしたんだよ?」
「アカリを見なかったか!?」
「アカリならスーの部屋にいると思うけど?」
階段を駆け上がり、スクルードの部屋を開けると、たたまれた洗濯物の中でアカリが横たわり、スクルードがたたんだ洗濯物を散らかして、キャッキャッとはしゃいだ声をだしていた。
「アカリ!? 大丈夫か!?」
ルーファスがアカリを抱き起こすと、アカリが目を半分開けて「あら……」と、眠そうな声を出す。
小さく欠伸をして、ルーファスを見てふにゃと笑う。
「ルーファス、もう帰ってきたの? 私そんなに寝てたのかな?」
「いや、出掛けて10分も経ってはいない。アカリ、オレが持ち帰った洗濯物に触ったりはしていないか?」
「あっ、そうだ。それも洗濯しないとって、思ってたのに……たたんでたら、つい、眠くて……」
ルーファスが「はぁぁー……」と長い安堵の吐息を吐くと、ハガネやアルビーが眉間にしわを寄せて、アカリも首を傾げる。
「オレが持ち帰った着替えの中に、毒を染み込ませてあるハンカチがあったんだ……製薬部隊に届けるのを忘れていて……慌てて帰ってきた。アカリが触ってなくて、良かった……」
「おいおい。大旦那、物騒なもん持って帰ってくるなよ」
「そうだよ。ルーファス、スーが口に入れたら大変じゃない」
ここぞとばかりに心配して付いてきたハガネとアルビー達にチクチク言われ、ルーファスがバツの悪そうな顔をする。
「眠気に助けられちゃった。ふふっ、でも、こっちの洗濯物は被害にあっちゃった」
スクルードから洗濯物を取り上げて、アカリが洗濯物をたたみ直しながらスクルードの鼻先を指でつんつん突いて「メッでしょ」と叱っている。
ルーファスが「悪かった」と言いながら、毒を染み込ませたハンカチを【刻狼亭】へ持っていくと、製薬部隊が目を爛々とさせ、毒の成分がなにかわかったら腕輪で連絡すると言って、新しい玩具を手に入れたように楽し気に製薬室へ引き籠っていった。
「ルーファス。指を出して」
「ん、指か?」
「よいしょ。毒とか怖いから……これで良いよ」
アカリがルーファスの指に自分の髪の毛を巻き付けて結び、「いってらっしゃい」と送り出してくれた。
自分の失態とはいえ、最悪の事態を想像して肝を冷やしたルーファスは、早く片をつけて戻ろうと気持ちを新たに、再びテン達のいる医務室へと帰った。
「気を付けてね。テンと小鬼さんにも無茶しないように言ってね」
「ああ、伝えておく。アカリは心配せずに屋敷で待っていてくれ」
アカリが両手を伸ばすと、ルーファスは少し屈んでアカリの腰に手を回し、アカリはルーファスの首に手を回していつもより長めの口づけを交わし合う。
口に広がる番同士の甘さを味わって、唇を離すと名残惜しそうにアカリが首に回した手を下ろして、代わりに台の上に用意しておいた風呂敷をルーファスに差し出す。
「テンと小鬼さんにもお弁当渡してね。私とドラゴン達の手作りだから、聖域と有り難さ百パーセントだよ」
「アカリのご利益付きは金を払ってでも手に入れたくなるから、あいつ等も喜ぶだろう」
「ふふっ、ルーファスにもご利益があると良いね」
「それはいつでも肖っているから、そのうちアカリを祭り上げたいぐらいだ」
「もう、ルーファスったら」
ククッと笑いながら、もう一度唇を重ね合わせて「行ってくる」と言ってルーファスは移動魔法でエグザドルへと行く。
エグザドルの城の騎士団宿舎へ戻ると、医務室へ向かい、医務室ではテンと小鬼がゼリティアと何気ない世間話で盛り上がっていた。
「大旦那さん、おかえりなさいです!」
「大旦那、おかえりなさい~」
「今、戻った。二人共変わりなかったか?」
二人は首を横に振り、ルーファスはゼリティアに向かい合う。
「ゼリティア夫人、喉の方はどうだ?」
「ええ、大丈夫ですよ。……そうですか、あなたは黒狼族のトリニア家でしたのね」
「ああ、騙した形ですまないが、褐色の肌にターバン姿だと直ぐに見つけられてしまうからな。変装は解いてきた」
ゼリティアが少し目を細めた後で、淑女の礼をとり、頭を軽く下げる。
礼儀正しく、騎士の血筋のゼリティアの礼は、ピシッとした角度でどこか騎士が正式な場所で挨拶するようにも見える。
「テン、小鬼。アカリからお前達に弁当だそうだ」
「わぁ! 大女将さんのお弁当ですか!」
「では、お茶でも淹れましょうか」
二人がいそいそとルーファスに渡された風呂敷包みを解き、医務室に常備されている茶器でお茶を淹れている。
その姿を見て、ルーファスはハッとする。
自分が何か引っ掛かっている物の正体に気付き、慌てて腕輪に手を触れてアカリに連絡を取る。
腕輪に連絡を入れてもアカリからの反応が無く、ルーファスの血の気が引いていく。
「オレはまた屋敷の方へ戻る!」
「え?」
「大旦那さん?」
首を傾げている二人に構っている暇は無いと、ルーファスは詠唱を速めて、再度屋敷へと戻り、中庭から急いで屋敷の中へと入っていく。
「アカリ!? どこにいる!」
ルーファスの慌てようにハガネとドラゴン達も驚いた顔をして、ルーファスの姿を追う。
「ルーファスどうしたの?」
「大旦那、どうしたんだよ?」
「アカリを見なかったか!?」
「アカリならスーの部屋にいると思うけど?」
階段を駆け上がり、スクルードの部屋を開けると、たたまれた洗濯物の中でアカリが横たわり、スクルードがたたんだ洗濯物を散らかして、キャッキャッとはしゃいだ声をだしていた。
「アカリ!? 大丈夫か!?」
ルーファスがアカリを抱き起こすと、アカリが目を半分開けて「あら……」と、眠そうな声を出す。
小さく欠伸をして、ルーファスを見てふにゃと笑う。
「ルーファス、もう帰ってきたの? 私そんなに寝てたのかな?」
「いや、出掛けて10分も経ってはいない。アカリ、オレが持ち帰った洗濯物に触ったりはしていないか?」
「あっ、そうだ。それも洗濯しないとって、思ってたのに……たたんでたら、つい、眠くて……」
ルーファスが「はぁぁー……」と長い安堵の吐息を吐くと、ハガネやアルビーが眉間にしわを寄せて、アカリも首を傾げる。
「オレが持ち帰った着替えの中に、毒を染み込ませてあるハンカチがあったんだ……製薬部隊に届けるのを忘れていて……慌てて帰ってきた。アカリが触ってなくて、良かった……」
「おいおい。大旦那、物騒なもん持って帰ってくるなよ」
「そうだよ。ルーファス、スーが口に入れたら大変じゃない」
ここぞとばかりに心配して付いてきたハガネとアルビー達にチクチク言われ、ルーファスがバツの悪そうな顔をする。
「眠気に助けられちゃった。ふふっ、でも、こっちの洗濯物は被害にあっちゃった」
スクルードから洗濯物を取り上げて、アカリが洗濯物をたたみ直しながらスクルードの鼻先を指でつんつん突いて「メッでしょ」と叱っている。
ルーファスが「悪かった」と言いながら、毒を染み込ませたハンカチを【刻狼亭】へ持っていくと、製薬部隊が目を爛々とさせ、毒の成分がなにかわかったら腕輪で連絡すると言って、新しい玩具を手に入れたように楽し気に製薬室へ引き籠っていった。
「ルーファス。指を出して」
「ん、指か?」
「よいしょ。毒とか怖いから……これで良いよ」
アカリがルーファスの指に自分の髪の毛を巻き付けて結び、「いってらっしゃい」と送り出してくれた。
自分の失態とはいえ、最悪の事態を想像して肝を冷やしたルーファスは、早く片をつけて戻ろうと気持ちを新たに、再びテン達のいる医務室へと帰った。
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