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22章
魔国の学園祭16
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思案していても直ぐに追手は来るだろうと、屋根の上からこの老女を連れて行けるかどうかを考えるが、ゼリティアは「わたくしの事は大丈夫です。騎士の家系ですよ」と先程まで息を切らせていた老人とは思えぬほど気丈に笑って見せる。
「テーンさーん!」
屋敷の裏側からルーファス達が乗ってきた馬車が移動し、小鬼が御者台でピョンピョン跳ねている。
ルーファスとテンは頷いて、ゼリティアを抱えて馬車の荷台に屋根から飛び降りる。
三人を回収すると、小鬼が馬車の手綱を叩き、門を目指して獣騎を走らせる。
「小鬼、ナイスですよ~!」
「僕もやる時はやるんです」
「いや、お前等、門が閉まっている! ぶち壊すか?」
「「壊しましょう!! 強行突破です!!」」
門番が「止まれ!」と叫んでいる途中で、ルーファスの雷属性の魔法と風竜スピナの加護によって威力を増した風魔法を同時に詠唱を唱えると、門番ごと門が吹き飛び、馬車は轟音と共に外へと脱出していく。
「大旦那……やり過ぎでは~?」
「オレは手加減が苦手だと、昔から言っているだろ?」
「そういえば~、昔から大雑把でしたねぇ~」
騒ぎながら馬車を進ませると、開けた場所で騎士団の一群が待ち構えていた。
騎士団の服の色からして白は魔王の側近騎士団、騎士団の中に黒髪をなびかせて手を振っている少女に気付き、小鬼が馬車の手綱を引いて馬車を停める。
「父上ー!」
「ナルア!無事だったようだな。こんな場所にどうして来た?」
白い騎士服に身を包んだナルアに抱きつかれ、ルーファスがナルアのおでこにコツコツとおでこを合わせる。
ナルアが尻尾を振りながら、ルーファスを見上げて笑顔を見せる。
「父上こそ、こんな所で、そんな変な変装で何をしていますの?」
「いや、これは色々事情があるが……ナルアこそ、その騎士服はどうした?」
「服の替えもありませんし、父上が気を付けるように言っていましたので、騎士団に紛れさせてもらっているのですわ」
ナルアの後ろのシノリアと目が合い、ルーファスが目で小さく礼を伝えると、シノリアは首を横に振り、頭をさげる。子供の頃に比べてシノリアは落ち着きが出て、いい青年になったとルーファスは少しばかり評価を上げる。
「パディオン騎士団長の屋敷に、賊が侵入し大奥様を殺害したと通報が入ったのです。まさか父上なんてことありませんわよね?」
「随分と話が回るのが早いな……執事も屋敷の騎士も、予定通りという形で進めていた様だし……」
屋敷の中でお茶を飲んで喉を押さえて苦しそうにしたゼリティアを見て、執事は助けを呼ぶより先に「毒殺された」と叫んで助けを呼び、部屋に入ってきた騎士達も部屋の前に最初から居たようだ。
ターバンをしていて、少し耳が聞こえ辛かったのもあるが、物音があまりにもしなかったのだ。
「もう! やはり父上なのですか! 殺害とはどういうことなのです!」
「いやいや、ナルア違う。馬車に乗っているゼリティア夫人こそが大奥様だ。屋敷の者に殺害されそうになったのを助けて逃げているところだ」
「本当ですの? シノ! 馬車の人物はパディオン騎士団長の大奥様で間違いないですか?」
なぜ、父親の言うことを信じずに、シノリアに確認を取るのかと少しばかりルーファスは肩を落とすが、シノリアと騎士団の一行が確認して、半分はパディオンの屋敷へ、残る半分はゼリティアの警護として別れて行動する事になった。
ルーファス達はゼリティアの警護としてシノリアとナルアと共に魔国の王城の騎士団宿舎へ行き、特殊ポーションを飲ませてはいるが、老体ということもあり医務室で医者に診せている。
側には小鬼とテンがつくことになり、ルーファスは一先ずナルアを温泉大陸へ送り届けることになった。
「あとで宿の方の荷物を騎士団の方で取りに行って届けます」
「悪いな、シノリア」
「いいえ。このくらいお安い御用です。ナルア、元気でね。今度休みが取れたら遊びに行くから」
「シーノー!」
ヒシッとナルアがシノリアに抱きついて、耳元でコソコソ話をするとシノリアの頬が赤くなり、耳まで真っ赤になって「ナルア!?」と悲鳴のような声を上げる。
ナルアも少し頬を染めてルーファスのところへ戻っていく。
「それでは、シノ。またですの!」
「では、あとでまた戻ってくる。何かあれば連絡してくれ」
ルーファスが移動魔法を展開し、移動すると、そこはもう温泉大陸だった。
屋敷の中庭に出たルーファスとナルアをギョッとした顔で見たのはドラゴン達だった。
「ルーファス!?」
「ルー! なにその変な格好!」
「婿が焼け焦げた!?」
「お肌が変なの!」
ワッと騒ぐドラゴン達にルーファスが先に変装を解いてから戻るべきだったかと、思っていると縁側から騒ぎを聞きつけてアカリが顔を出す。
「ルーファス……?」
小さく首を傾げてから、パチパチと瞬きをした後でアカリがくしゃっと顔を歪めてポロポロ泣き出して外に出て来る。
ルーファスに抱きつくと堰を切った様に泣いて「ごめんなさい」と繰り返す。
「ただいま。アカリ」
「うんっ、おが、えりな、さいっ! ふぇっ、ぐすっ」
「アカリは昔から泣き虫だな。まぁ、そこが可愛いんだが、でも、そろそろ泣き止んでくれ」
「んっ、先に、帰って……ごめんなさい、すんっ」
「気にするな。英断だ」
服の袖でアカリの涙を拭きながら抱き上げると、首元に顔を埋めてアカリがすんすん泣いては鼻をすすり、直ぐに魔国へ戻るつもりだったが、これは泣き止むまではこのままだなと、小さく笑って屋敷の中に入っていく。
「テーンさーん!」
屋敷の裏側からルーファス達が乗ってきた馬車が移動し、小鬼が御者台でピョンピョン跳ねている。
ルーファスとテンは頷いて、ゼリティアを抱えて馬車の荷台に屋根から飛び降りる。
三人を回収すると、小鬼が馬車の手綱を叩き、門を目指して獣騎を走らせる。
「小鬼、ナイスですよ~!」
「僕もやる時はやるんです」
「いや、お前等、門が閉まっている! ぶち壊すか?」
「「壊しましょう!! 強行突破です!!」」
門番が「止まれ!」と叫んでいる途中で、ルーファスの雷属性の魔法と風竜スピナの加護によって威力を増した風魔法を同時に詠唱を唱えると、門番ごと門が吹き飛び、馬車は轟音と共に外へと脱出していく。
「大旦那……やり過ぎでは~?」
「オレは手加減が苦手だと、昔から言っているだろ?」
「そういえば~、昔から大雑把でしたねぇ~」
騒ぎながら馬車を進ませると、開けた場所で騎士団の一群が待ち構えていた。
騎士団の服の色からして白は魔王の側近騎士団、騎士団の中に黒髪をなびかせて手を振っている少女に気付き、小鬼が馬車の手綱を引いて馬車を停める。
「父上ー!」
「ナルア!無事だったようだな。こんな場所にどうして来た?」
白い騎士服に身を包んだナルアに抱きつかれ、ルーファスがナルアのおでこにコツコツとおでこを合わせる。
ナルアが尻尾を振りながら、ルーファスを見上げて笑顔を見せる。
「父上こそ、こんな所で、そんな変な変装で何をしていますの?」
「いや、これは色々事情があるが……ナルアこそ、その騎士服はどうした?」
「服の替えもありませんし、父上が気を付けるように言っていましたので、騎士団に紛れさせてもらっているのですわ」
ナルアの後ろのシノリアと目が合い、ルーファスが目で小さく礼を伝えると、シノリアは首を横に振り、頭をさげる。子供の頃に比べてシノリアは落ち着きが出て、いい青年になったとルーファスは少しばかり評価を上げる。
「パディオン騎士団長の屋敷に、賊が侵入し大奥様を殺害したと通報が入ったのです。まさか父上なんてことありませんわよね?」
「随分と話が回るのが早いな……執事も屋敷の騎士も、予定通りという形で進めていた様だし……」
屋敷の中でお茶を飲んで喉を押さえて苦しそうにしたゼリティアを見て、執事は助けを呼ぶより先に「毒殺された」と叫んで助けを呼び、部屋に入ってきた騎士達も部屋の前に最初から居たようだ。
ターバンをしていて、少し耳が聞こえ辛かったのもあるが、物音があまりにもしなかったのだ。
「もう! やはり父上なのですか! 殺害とはどういうことなのです!」
「いやいや、ナルア違う。馬車に乗っているゼリティア夫人こそが大奥様だ。屋敷の者に殺害されそうになったのを助けて逃げているところだ」
「本当ですの? シノ! 馬車の人物はパディオン騎士団長の大奥様で間違いないですか?」
なぜ、父親の言うことを信じずに、シノリアに確認を取るのかと少しばかりルーファスは肩を落とすが、シノリアと騎士団の一行が確認して、半分はパディオンの屋敷へ、残る半分はゼリティアの警護として別れて行動する事になった。
ルーファス達はゼリティアの警護としてシノリアとナルアと共に魔国の王城の騎士団宿舎へ行き、特殊ポーションを飲ませてはいるが、老体ということもあり医務室で医者に診せている。
側には小鬼とテンがつくことになり、ルーファスは一先ずナルアを温泉大陸へ送り届けることになった。
「あとで宿の方の荷物を騎士団の方で取りに行って届けます」
「悪いな、シノリア」
「いいえ。このくらいお安い御用です。ナルア、元気でね。今度休みが取れたら遊びに行くから」
「シーノー!」
ヒシッとナルアがシノリアに抱きついて、耳元でコソコソ話をするとシノリアの頬が赤くなり、耳まで真っ赤になって「ナルア!?」と悲鳴のような声を上げる。
ナルアも少し頬を染めてルーファスのところへ戻っていく。
「それでは、シノ。またですの!」
「では、あとでまた戻ってくる。何かあれば連絡してくれ」
ルーファスが移動魔法を展開し、移動すると、そこはもう温泉大陸だった。
屋敷の中庭に出たルーファスとナルアをギョッとした顔で見たのはドラゴン達だった。
「ルーファス!?」
「ルー! なにその変な格好!」
「婿が焼け焦げた!?」
「お肌が変なの!」
ワッと騒ぐドラゴン達にルーファスが先に変装を解いてから戻るべきだったかと、思っていると縁側から騒ぎを聞きつけてアカリが顔を出す。
「ルーファス……?」
小さく首を傾げてから、パチパチと瞬きをした後でアカリがくしゃっと顔を歪めてポロポロ泣き出して外に出て来る。
ルーファスに抱きつくと堰を切った様に泣いて「ごめんなさい」と繰り返す。
「ただいま。アカリ」
「うんっ、おが、えりな、さいっ! ふぇっ、ぐすっ」
「アカリは昔から泣き虫だな。まぁ、そこが可愛いんだが、でも、そろそろ泣き止んでくれ」
「んっ、先に、帰って……ごめんなさい、すんっ」
「気にするな。英断だ」
服の袖でアカリの涙を拭きながら抱き上げると、首元に顔を埋めてアカリがすんすん泣いては鼻をすすり、直ぐに魔国へ戻るつもりだったが、これは泣き止むまではこのままだなと、小さく笑って屋敷の中に入っていく。
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