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22章
魔国の学園祭9
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私とエルシオンはまずはリュエールに報告に料亭の奥にある執務室に急いだ。
執務室を開ける寸前で、私の腕輪が震え、ルーファスからの連絡が入った。
『アカリ、温泉大陸にちゃんと帰ったか?』
「うん。帰ってきた……でも、ナルアを置いてきてる、ルーファスも……」
優しく問いかけるルーファスの声に、ポロッとまた涙が零れると、少し間を置いてルーファスが困った声になってしまう。
『泣かないでくれ。アカリに泣かれると、オレはどうしようもなくなる。こっちは大丈夫だ。ナルアはオレが連れて帰る。それに今はシノリアが側に居るから、心配はいらないだろうしな』
あの時は子供達を連れ帰らなきゃと焦っていたけど、ナルアを置いてきてしまった事に気付いたのは、温泉大陸に着いてからで、でもナルアにはルーファスが言うようにシノリアくんがついていて、オマケに騎士団の人も監視している状態なので、どこか安心もしていたところもあった。
「んっ……ふっ、ごめんなさい……っ」
『謝らなくていい。直ぐに片付けて帰るから、そうだな……アカリの作るおこわの焼きおにぎりが帰ったら食べたいな。お願いできるか?』
「うん。いっぱい作って、帰ってくるの、待ってる」
涙を手で拭って、少しだけいつもの日常に戻ってきたような気がした。
『アカリを一人にしないと、いつだって約束しているだろう?』
「うん……ちゃんと、帰ってきてね。無茶しちゃ、駄目なんだからね……」
『わかっている。リューにロメルス家について小鬼に調べるように言ってくれ』
「わかった。伝えておくね」
『そろそろ動くから切るが……心配はするな』
「うん。ルーファス、愛してるから」
『ああ。オレもだ』
通信が切れると、スンッと鼻をすすり、前を向いて執務室のドアを開ける。
執務室を開けると応接間が目の前に広がり、奥の机でリュエールが書類に判を押しながら、目だけをこちらに向けてた。
「どうしたの? まぁ、廊下の声でなんとなく察しはついてるけど」
「あのね、魔国で何かあったみたいで、ルーファスが魔国に残って何かと戦ってて、それで……」
「うん、落ち着いて。エル、説明は出来る?」
「あっ、うん。ボクが見た範囲でいいなら」
応接室のソファに座って、とりあえずルーファスに頼まれた「ロメルス家」を調べるように伝える。
リュエールが小鬼に連絡を取って探らせている間に、リュエールが私達にお茶を淹れてくれて一口飲んで、ようやく落ち着いてきた。
「学園に変な子が居て、父上もティル達も、母上以外は神経にくる気配で敏感になってたんだ」
「変な子? 名前はわかる?」
「確か……メルデリカ……なんとかって長ったらしい名前の騎士団長の娘って、ルーシーが言ってた」
「騎士団長で絞り込めば……エルドルフィン家、キッカ家、パディオン家、クインシー家辺りのどれかかな?」
「パディオン! 確か、パディオンだった!」
「成程。小鬼、パディオン家のメルデリカという娘に関しても情報を調べて、ついでにパディオン家の事も」
「了解です」と、小鬼が言いつつ、手は調べ上げた事を紙に書きつつ、目は上を向いて左右に忙しなく動いている。前に居た小鬼とは違った作業方法に、少し前に居た小鬼はここまでワーカホリックではなかったなと思う。
「えっと、それでね。その子と別れた後ぐらいから……変な気配がウロウロしてて、ティルが写真を撮りに行くふりして退治してたんだけど、標的はボク等だったんだけど、いつの間にか母上が標的になっちゃって……」
「え? あの時そんな事してたの!?」
「うん、まぁ……母上、鈍いから知らないままでいた方がいいかなって」
エルシオンが耳を下げて、申し訳なさそうに私から目線を反らす。
私をいきなり抱き上げたり、手芸コーナーでいきなり居なくなっていたのは、裏でそういうことをしていたからなのかと、驚きもあるけど私の感じたルーファスの違和感の理由も腑に落ちた。
でも、私そんなに鈍いって思われているのも心外……まぁ、気付かなかったのも事実だけど。
「少し早いけど、学園から帰ろうとして馬車に乗ったら、獣の足音が追いかけてきて、父上が馬車から飛び降りてボク等を逃がしてくれたんだけど、馬車の御者が首を噛みちぎられて走行不能になってたから、馬車を置いて母上を連れて逃げてたら、父上じゃない遠吠えが聞こえて、「探せ」って合図に似てたから……父上に何かあったのかもしれないと思って、母上と温泉大陸に移動魔法で逃げてきたんだ」
「成程。という事は、相手は獣人って事になるのかな?」
「それが、獣人にしてはなんかおかしい感じで……なんていうんだろう? 作り物みたいな、偽物って感じ」
リュエールが顎に手を置いて、目を閉じながら小さく首を捻る。
目を少し開けて、考えをまとめているのか伏し目がちな目はどこか別の場所を見ているようだった。
「小鬼、どこまでわかった?」
「今のところ、ロメルス家は魔国の五大貴族の一つだった事と、『聖女』が亡くなった航海事件を境に没落して、今では反魔国運動の一味になっている……というところでしょうか?」
聖女が亡くなった航海事件……はて? 何やら聞き覚えがある様な?
執務室を開ける寸前で、私の腕輪が震え、ルーファスからの連絡が入った。
『アカリ、温泉大陸にちゃんと帰ったか?』
「うん。帰ってきた……でも、ナルアを置いてきてる、ルーファスも……」
優しく問いかけるルーファスの声に、ポロッとまた涙が零れると、少し間を置いてルーファスが困った声になってしまう。
『泣かないでくれ。アカリに泣かれると、オレはどうしようもなくなる。こっちは大丈夫だ。ナルアはオレが連れて帰る。それに今はシノリアが側に居るから、心配はいらないだろうしな』
あの時は子供達を連れ帰らなきゃと焦っていたけど、ナルアを置いてきてしまった事に気付いたのは、温泉大陸に着いてからで、でもナルアにはルーファスが言うようにシノリアくんがついていて、オマケに騎士団の人も監視している状態なので、どこか安心もしていたところもあった。
「んっ……ふっ、ごめんなさい……っ」
『謝らなくていい。直ぐに片付けて帰るから、そうだな……アカリの作るおこわの焼きおにぎりが帰ったら食べたいな。お願いできるか?』
「うん。いっぱい作って、帰ってくるの、待ってる」
涙を手で拭って、少しだけいつもの日常に戻ってきたような気がした。
『アカリを一人にしないと、いつだって約束しているだろう?』
「うん……ちゃんと、帰ってきてね。無茶しちゃ、駄目なんだからね……」
『わかっている。リューにロメルス家について小鬼に調べるように言ってくれ』
「わかった。伝えておくね」
『そろそろ動くから切るが……心配はするな』
「うん。ルーファス、愛してるから」
『ああ。オレもだ』
通信が切れると、スンッと鼻をすすり、前を向いて執務室のドアを開ける。
執務室を開けると応接間が目の前に広がり、奥の机でリュエールが書類に判を押しながら、目だけをこちらに向けてた。
「どうしたの? まぁ、廊下の声でなんとなく察しはついてるけど」
「あのね、魔国で何かあったみたいで、ルーファスが魔国に残って何かと戦ってて、それで……」
「うん、落ち着いて。エル、説明は出来る?」
「あっ、うん。ボクが見た範囲でいいなら」
応接室のソファに座って、とりあえずルーファスに頼まれた「ロメルス家」を調べるように伝える。
リュエールが小鬼に連絡を取って探らせている間に、リュエールが私達にお茶を淹れてくれて一口飲んで、ようやく落ち着いてきた。
「学園に変な子が居て、父上もティル達も、母上以外は神経にくる気配で敏感になってたんだ」
「変な子? 名前はわかる?」
「確か……メルデリカ……なんとかって長ったらしい名前の騎士団長の娘って、ルーシーが言ってた」
「騎士団長で絞り込めば……エルドルフィン家、キッカ家、パディオン家、クインシー家辺りのどれかかな?」
「パディオン! 確か、パディオンだった!」
「成程。小鬼、パディオン家のメルデリカという娘に関しても情報を調べて、ついでにパディオン家の事も」
「了解です」と、小鬼が言いつつ、手は調べ上げた事を紙に書きつつ、目は上を向いて左右に忙しなく動いている。前に居た小鬼とは違った作業方法に、少し前に居た小鬼はここまでワーカホリックではなかったなと思う。
「えっと、それでね。その子と別れた後ぐらいから……変な気配がウロウロしてて、ティルが写真を撮りに行くふりして退治してたんだけど、標的はボク等だったんだけど、いつの間にか母上が標的になっちゃって……」
「え? あの時そんな事してたの!?」
「うん、まぁ……母上、鈍いから知らないままでいた方がいいかなって」
エルシオンが耳を下げて、申し訳なさそうに私から目線を反らす。
私をいきなり抱き上げたり、手芸コーナーでいきなり居なくなっていたのは、裏でそういうことをしていたからなのかと、驚きもあるけど私の感じたルーファスの違和感の理由も腑に落ちた。
でも、私そんなに鈍いって思われているのも心外……まぁ、気付かなかったのも事実だけど。
「少し早いけど、学園から帰ろうとして馬車に乗ったら、獣の足音が追いかけてきて、父上が馬車から飛び降りてボク等を逃がしてくれたんだけど、馬車の御者が首を噛みちぎられて走行不能になってたから、馬車を置いて母上を連れて逃げてたら、父上じゃない遠吠えが聞こえて、「探せ」って合図に似てたから……父上に何かあったのかもしれないと思って、母上と温泉大陸に移動魔法で逃げてきたんだ」
「成程。という事は、相手は獣人って事になるのかな?」
「それが、獣人にしてはなんかおかしい感じで……なんていうんだろう? 作り物みたいな、偽物って感じ」
リュエールが顎に手を置いて、目を閉じながら小さく首を捻る。
目を少し開けて、考えをまとめているのか伏し目がちな目はどこか別の場所を見ているようだった。
「小鬼、どこまでわかった?」
「今のところ、ロメルス家は魔国の五大貴族の一つだった事と、『聖女』が亡くなった航海事件を境に没落して、今では反魔国運動の一味になっている……というところでしょうか?」
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