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22章
魔国の学園祭6
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体育館では他にも魔法を使った楽器演奏やコーラスが催されて、次にルーシーが案内してくれたのがルーシーのクラスが開いている模擬店のクレープ屋さん。
フルーツを入れたホイップ入りのものと、少し辛いソーセージの入ったレタス入りのものが売られていて、私はフルーツ入りのをスクルードと分けて食べて、ルーファスとエルシオンは辛いソーセージの方を食べていた。
「ルーシー、親御さんですか?」
「はい。わたしの父上と母上に三つ子の兄と末の弟ですの」
クラスメイトに声をかけられて、ルーシーが笑顔で答えて私達を紹介してくれる。ルーシーはクラスで仲良くやれている様で、親としてはそんな様子を見れただけでも十分な収穫といえる。
離れて暮らしているから、少し心配していたのだ。獣人だと虐められていないかとか、貴族じゃないから虐められていないかと……でも、杞憂だったようで、そこは安心出来た。
「ええ? ティルでしょ?」
「いいえ。ティルの弟のエルシオンで、わたしの兄ですの」
「またー、揶揄って」
「よく見て下さいな。ティルとエルとじゃ顔が違いますわ。ティルよりエルの方が目が優しいのですよ?」
「同じにしか見えないよー」
そんな声にエルシオンは「三つ子だしね」と眉を少し下げて笑って、ルーシーのクラスメイトの前に立って「エルシオン・トリニアです。兄のティルナールと妹のルーシーがお世話になっています」と極上スマイルで挨拶をした。
エルシオンが微笑むとルーシーのクラスの女の子が「キャー」と黄色い声をあげて顔を赤くする。
うちの次男とこの三つ子達はルーファスに似ているとあって顔がいいのよね……キャーッて言いたい気持ちはわかる。自分の子供じゃなきゃ、私も「キャー」って騒ぎたいもの。
「なんでこの学園に入学していないのですか!?」
「やだ。本当にティルじゃないの!?」
「ティルには無い品の良さ!!」
女の子中心に騒いでいると、そこへもう一人の息子が加わる。
「ちょっと、それじゃボクが品が無いみたいじゃない?」
「え! えええ!! ティルが増えたー!!!」
「いや、だから、三つ子だって今紹介してたよね!?」
再び「キャーッ」と騒がれて、今度はクラスメイトの男子達にも囲まれてそのまま撮影会となだれ込み、ルーファスがティルナールからカメラを借りてクラスメイトの子達と一緒にエルシオンを含めて撮っていた。
ティルナールも人気者のようでこれは親としては鼻が高い。
適応力が高いのかな? と思わないでもないけど。
「エルも学園に通いたくなったりしない?」
「ボクにはボクの居場所があるから。こういう非日常をこうして参加させてもらうだけでいいよ」
学園生活が非日常に思えるあたり、エルシオンにとっての日常は温泉大陸の中にあって、こうした学園生活は実際に自分の生活の中に無いと非日常になってしまうのね。
私にとっては学校というものは日常だったけど、この世界では学校自体がまだ金持ちと才能のある特別な人のものという感じかもしれない。
昔も学校を温泉大陸に作ろうとして頓挫して、ようやく学校っぽいものを設けてはいるけれど、温泉大陸の子供達は学校で学ぶことより、生活に基づいた仕事を覚える方が有益だと考える子の方が多い。
多分、私の中にもある裕福な「学ぶことは将来の幅を広げる良い事」という考えがあるからだろうけど、人は考えて生きる事が出来るから、親の仕事を受け継ぐのも、他の道を選ぶのも、その人次第で他の人間が「学校で学べば将来の幅が広がる」なんて事を指示さなくてもいいものかもしれない。
そして、エルシオンの様に親から教わり、自分の将来を探している子供もいるのだから、学校にこだわる事もないのかもしれない。
まぁ、親としてはお友達を沢山作って欲しい気がしてしまうんだけどね。
「あっ、ボクお手洗い行ってくる」
「それなら私も行きたいから、一緒に行きましょう」
「場所わかる?」
「学園案内見たからわかるよ」
「エルについて行くから平気~」
エルシオンと一緒にお手洗いに行って、お手洗いから私が出ると、男子トイレの方で物音がしてエルシオンが男子生徒の首を掴んで出てきた。
「ちょっ! エル何してるの!?」
「なんかわかんないけど、絡んできたから適当に相手しただけだよ?」
小さく首を傾げているけど、なに「それがなにか悪いの?」と分からない様な顔をしているの!? うちの息子さんはサイコパスかなにかだっただろうか?
「エル、放してあげなさい」
「仕方ないなぁ。よくわかんないけど、人に喧嘩売るなら力量を図りなよ?」
なんだか強者のようなセリフを吐いているけど、誰に似ちゃったのかしら?
エルシオンが男子生徒から手を放すと、その男の子は尻もちをついて廊下に落ちてしまって、手を伸ばして起こそうとしたらパシンと手を弾かれて、その反動でよろけるとエルシオンに後ろから支えられて「ありがとう」と、言っている間にエルシオンが男の子を足で蹴り飛ばしていた。
「エルッ! 駄目でしょ!」
「そいつが悪いっ!」
私がエルシオンを叱っていると、「生徒指導」と書かれた腕章をした生徒達がやって来て、倒れている男子生徒を保健室へ運ばせ、眼鏡をかけたインテリで気難しそうな女の子が腰に手を当ててエルシオンと私を交互に見て溜息を吐いた。
「トリニア君! 貴方はこの学園の生徒という自覚はあるの!?」
「いや、無いよ?」
首を傾げて肩をすくめるエルシオンに女の子が一気に顔を真っ赤にして怒りでプルプルしているが、これは完全にティルナールと間違えているのは一目瞭然で、エルシオンも解っていて「やれやれ」と溜め息を吐く。
「貴方って人は! いつもどうしてそんな風なの!」
「あのさ、人違いだからね? ボクはエルシオン。ティルナールは僕の三つ子の兄だから」
「ごめんね。ティルとエルとルーシーは三つ子なの。男の子だからティルとエルを間違えているだけだと思うの」
「部外者は黙ってて! 貴方と同じ顔が二人も三人もいてたまるものですか!」
さすがに私も溜め息を吐いて、エルシオンと顔を見合わせる。そこへカメラのシャッター音をさせてティルナールがニコニコ顔で現れ「生活指導部は相変わらずだね」と揶揄い口調でエルシオンの隣りに並ぶ。
「ごめんね? 同じような顔が二人も三人もいて」
「なっ、なっ! ティルナール・トリニア!!」
「うん。そう、ボクがティルナールだからね。こっちは弟のエルシオンだから」
「だから、ボクも言ったでしょ? エルシオンだって、ティルは兄ってさ」
ティルナールとエルシオンが同じ様にタイミングを合わせて微笑んで、顔を真っ赤にした少女にティルナールは頬を叩かれ「大っ嫌い!」と言われて、その少女は走って行ってしまった。
「大丈夫……って聞きたいけど、今のは女の子を揶揄い過ぎよ?」
「えへへ。でも、こういうパンチの効いてるところがモリィのいい所だから」
「……ティルはマゾッ気でもあるの? ボクには理解できない」
エルシオンが半目でティルナールを見て、私も若干半目で見る。ティルナールは叩かれた頬を嬉しそうに摩りながら、「良いよねぇ」とうっとりしている。
ああ、これはお医者様でも治せない病にかかっている様だ。
フルーツを入れたホイップ入りのものと、少し辛いソーセージの入ったレタス入りのものが売られていて、私はフルーツ入りのをスクルードと分けて食べて、ルーファスとエルシオンは辛いソーセージの方を食べていた。
「ルーシー、親御さんですか?」
「はい。わたしの父上と母上に三つ子の兄と末の弟ですの」
クラスメイトに声をかけられて、ルーシーが笑顔で答えて私達を紹介してくれる。ルーシーはクラスで仲良くやれている様で、親としてはそんな様子を見れただけでも十分な収穫といえる。
離れて暮らしているから、少し心配していたのだ。獣人だと虐められていないかとか、貴族じゃないから虐められていないかと……でも、杞憂だったようで、そこは安心出来た。
「ええ? ティルでしょ?」
「いいえ。ティルの弟のエルシオンで、わたしの兄ですの」
「またー、揶揄って」
「よく見て下さいな。ティルとエルとじゃ顔が違いますわ。ティルよりエルの方が目が優しいのですよ?」
「同じにしか見えないよー」
そんな声にエルシオンは「三つ子だしね」と眉を少し下げて笑って、ルーシーのクラスメイトの前に立って「エルシオン・トリニアです。兄のティルナールと妹のルーシーがお世話になっています」と極上スマイルで挨拶をした。
エルシオンが微笑むとルーシーのクラスの女の子が「キャー」と黄色い声をあげて顔を赤くする。
うちの次男とこの三つ子達はルーファスに似ているとあって顔がいいのよね……キャーッて言いたい気持ちはわかる。自分の子供じゃなきゃ、私も「キャー」って騒ぎたいもの。
「なんでこの学園に入学していないのですか!?」
「やだ。本当にティルじゃないの!?」
「ティルには無い品の良さ!!」
女の子中心に騒いでいると、そこへもう一人の息子が加わる。
「ちょっと、それじゃボクが品が無いみたいじゃない?」
「え! えええ!! ティルが増えたー!!!」
「いや、だから、三つ子だって今紹介してたよね!?」
再び「キャーッ」と騒がれて、今度はクラスメイトの男子達にも囲まれてそのまま撮影会となだれ込み、ルーファスがティルナールからカメラを借りてクラスメイトの子達と一緒にエルシオンを含めて撮っていた。
ティルナールも人気者のようでこれは親としては鼻が高い。
適応力が高いのかな? と思わないでもないけど。
「エルも学園に通いたくなったりしない?」
「ボクにはボクの居場所があるから。こういう非日常をこうして参加させてもらうだけでいいよ」
学園生活が非日常に思えるあたり、エルシオンにとっての日常は温泉大陸の中にあって、こうした学園生活は実際に自分の生活の中に無いと非日常になってしまうのね。
私にとっては学校というものは日常だったけど、この世界では学校自体がまだ金持ちと才能のある特別な人のものという感じかもしれない。
昔も学校を温泉大陸に作ろうとして頓挫して、ようやく学校っぽいものを設けてはいるけれど、温泉大陸の子供達は学校で学ぶことより、生活に基づいた仕事を覚える方が有益だと考える子の方が多い。
多分、私の中にもある裕福な「学ぶことは将来の幅を広げる良い事」という考えがあるからだろうけど、人は考えて生きる事が出来るから、親の仕事を受け継ぐのも、他の道を選ぶのも、その人次第で他の人間が「学校で学べば将来の幅が広がる」なんて事を指示さなくてもいいものかもしれない。
そして、エルシオンの様に親から教わり、自分の将来を探している子供もいるのだから、学校にこだわる事もないのかもしれない。
まぁ、親としてはお友達を沢山作って欲しい気がしてしまうんだけどね。
「あっ、ボクお手洗い行ってくる」
「それなら私も行きたいから、一緒に行きましょう」
「場所わかる?」
「学園案内見たからわかるよ」
「エルについて行くから平気~」
エルシオンと一緒にお手洗いに行って、お手洗いから私が出ると、男子トイレの方で物音がしてエルシオンが男子生徒の首を掴んで出てきた。
「ちょっ! エル何してるの!?」
「なんかわかんないけど、絡んできたから適当に相手しただけだよ?」
小さく首を傾げているけど、なに「それがなにか悪いの?」と分からない様な顔をしているの!? うちの息子さんはサイコパスかなにかだっただろうか?
「エル、放してあげなさい」
「仕方ないなぁ。よくわかんないけど、人に喧嘩売るなら力量を図りなよ?」
なんだか強者のようなセリフを吐いているけど、誰に似ちゃったのかしら?
エルシオンが男子生徒から手を放すと、その男の子は尻もちをついて廊下に落ちてしまって、手を伸ばして起こそうとしたらパシンと手を弾かれて、その反動でよろけるとエルシオンに後ろから支えられて「ありがとう」と、言っている間にエルシオンが男の子を足で蹴り飛ばしていた。
「エルッ! 駄目でしょ!」
「そいつが悪いっ!」
私がエルシオンを叱っていると、「生徒指導」と書かれた腕章をした生徒達がやって来て、倒れている男子生徒を保健室へ運ばせ、眼鏡をかけたインテリで気難しそうな女の子が腰に手を当ててエルシオンと私を交互に見て溜息を吐いた。
「トリニア君! 貴方はこの学園の生徒という自覚はあるの!?」
「いや、無いよ?」
首を傾げて肩をすくめるエルシオンに女の子が一気に顔を真っ赤にして怒りでプルプルしているが、これは完全にティルナールと間違えているのは一目瞭然で、エルシオンも解っていて「やれやれ」と溜め息を吐く。
「貴方って人は! いつもどうしてそんな風なの!」
「あのさ、人違いだからね? ボクはエルシオン。ティルナールは僕の三つ子の兄だから」
「ごめんね。ティルとエルとルーシーは三つ子なの。男の子だからティルとエルを間違えているだけだと思うの」
「部外者は黙ってて! 貴方と同じ顔が二人も三人もいてたまるものですか!」
さすがに私も溜め息を吐いて、エルシオンと顔を見合わせる。そこへカメラのシャッター音をさせてティルナールがニコニコ顔で現れ「生活指導部は相変わらずだね」と揶揄い口調でエルシオンの隣りに並ぶ。
「ごめんね? 同じような顔が二人も三人もいて」
「なっ、なっ! ティルナール・トリニア!!」
「うん。そう、ボクがティルナールだからね。こっちは弟のエルシオンだから」
「だから、ボクも言ったでしょ? エルシオンだって、ティルは兄ってさ」
ティルナールとエルシオンが同じ様にタイミングを合わせて微笑んで、顔を真っ赤にした少女にティルナールは頬を叩かれ「大っ嫌い!」と言われて、その少女は走って行ってしまった。
「大丈夫……って聞きたいけど、今のは女の子を揶揄い過ぎよ?」
「えへへ。でも、こういうパンチの効いてるところがモリィのいい所だから」
「……ティルはマゾッ気でもあるの? ボクには理解できない」
エルシオンが半目でティルナールを見て、私も若干半目で見る。ティルナールは叩かれた頬を嬉しそうに摩りながら、「良いよねぇ」とうっとりしている。
ああ、これはお医者様でも治せない病にかかっている様だ。
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